寝て起きたらデスゲームに巻き込まれていたんだが。 作:リベリオン
第2話 ALOでのある1日
傍から見てると今にも魂が抜け出してしまいそうな勢いだな、シリカの奴。
チラッと横目でシリカの様子を窺ってから、俺はそんな感想を抱いた。
場所はイグドラシルシティのリズベット武具店。今日は皆でリズの強化素材集めに付き合うことになっている。
メンバーは俺、アスナ、リーファ、リズ、シリカ。そして――
「……ミストさんまだかなぁ」
ポツリと呟き、シリカはそのままこてんと横になった。
そう。あと1人はシリカの恋人、ミスト。
まだ約束の時間まで10分はあるのにこれってのは……大丈夫なのかと俺はシリカ以外の面子とアイコンタクトを交わす。
アスナ、苦笑い。
リズ、呆れて肩竦めてる。
リーファ、どう反応すればいいか分からず曖昧な笑み。
俺はため息をついて、最近のミストについて振り返った。
半年くらい前――海底ダンジョンをクリアしたのと前後して、ミストは「色々見て回ってみる」と言って他のVRMMOにダイブする旅みたいなことを始めから、めっきりALOに来る機会も減っている。
それでも定期的には――1週間に1度のペースだが――来ているから余り問題はないんだが、リアルで同じ学校、あるいは家族いつでも顔を合わせられる俺たちと違って、ミストの場合は立場が特殊だからここでしか会えない。
おかげでシリカは「ミストニウム」なる物を著しく欠いて、あんな風に今にも口から魂が抜け出て行きそうな状態に陥っていた。
「そりゃ、2度と会えないと思っていた所にひょっこり顔出されて嬉しいとは思うけどさぁ……」
「あれはちょっと……ねぇ?」
「依存しすぎだろ……」
基本、ミストがいればいつものシリカになるんだが、いないととたんにミストニウムが減少して徐々にあんな状態に陥っていく。大体6日目にあんな状態になるから、目安が分かりやすい。
……こうしてみると種族も相まって完全に主人とペットだよなぁ。今の状態のシリカって飼い主が2、3日家を空けていて早く会いたくて待っているって感じだし。
これは一刻も早くミストに来てもらって、シリカにミストニウムを補充してもらわなければ……。
「ちーっす」
「!!!!」
来客を告げるベルの音と共に店に誰かがやって来た。
声を聴いた瞬間、シリカの耳と尻尾がピーンッと立って一目散にダッシュ。
「ミストさーん!」
「おわっ! ど、どうしたんだよシリカ!?」
……どうやらミストニウムを補充する事ができたらしい。って言うかミストが入ってきてからシリカが動くまでがあまりにも早すぎた。
周りも俺と同じ意見だったようで、顔を見合わせると呆れながらもその光景を見て微笑ましく感じる。
入り口へ行ってみると、シリカに抱きつかれたミストが困ったような笑みを浮かべていた。
「遅いぞ、ミスト」
「遅いって……約束の時間5分前だっただろ?」
「シリカ的には1時間くらいの大遅刻だったってことだ」
「そこまでか……?」
「だって1週間も会えなかったんですよ」
そりゃそうだけどさ……と俺たちに助けを求めてくるミストを、俺たちはそっぽを向いて知らん振りする。
ま、クラインとリズに殺されないように気をつけることだ。特に前者には。
/
「じゃあ始めるか」、と言いつつ自分たちは暢気に休憩か、おいそこのバカップル夫婦。
草の生えた高台っぽい岩の上で寝転がっているキリトと、その隣に座っているアスナ夫婦を一瞥して、髪を掻き揚げながら俺は嘆息した。
「へっへーん! 以前の私とは違いますよぉ!」
なんだか見覚えのあるパックンみたいなモンスターの触手が足に巻きついて、そのまま持ち上げられそうになったシリカだったが、翅を展開して自慢げに浮く。
随意飛行を完全にマスターするのに半年かかったのにまぁ……。
「シリカ、それフラグな」
「え?――え???」
ボソッと突っ込みを入れた直後、パックンモドキが触手を束ねて翼にして、浮き上がる。
顔を青くして、またもひっくり返るシリカ。なんかこれ、どっかで見たことのある光景だなー。
「ミ! ミストさん助け! 見ないで助けて見ないで助けてー!」
「どっちですか……」
ギリギリスカートを押さえてブンブン短剣を振り回しているシリカに、俺は隣に居たリーファにアイコンタクトを送る。
すぐに意図を汲み取ったリーファが長刀を抜き、翅を展開して飛ぶとシリカに巻きつく触手を切り裂いた。
パニックを起こして落ちそうになったシリカを、俺も翅を広げて飛ぶとすかさず受け止め、遅延させておいた3発の火炎弾を発動させてパックンモドキに叩き込むと、すかさず頭上からリズが脳天にメイスを叩き込んで粉砕した。何度見ても痛そうで思わず顔を顰めてしまう。
「大丈夫か?」
「はいぃ……見て、ないですよね?」
「見てない見てない」
そんな事したらリズとリーファに「変態!」って言われて殴られ斬られますってば。
顔を真っ赤にしていたシリカは俺の言葉にほっとして、俺が地面に降り立つとそのまま下ろしてやる。
「いやー、やっぱ攻撃魔法使える人がいると安定感が違うわねー」
「私もどっちかって言うと補助がメインですから。攻撃専門の人がいてくれると助かります」
コンビプレーでパックンモドキをのしたリズとリーファがハイタッチを交わして降りてきた。
リーファの言い分は、まあ……分からなくもない。リズも基本鍛冶職人だから攻撃系のスキルよりもそっちを育てているのは分かる。……だが、敢えて言わせてもらおう。
「脳筋特化過ぎるんだよお前らは!」
SAO生還者の皆はあそこで暮らしていた癖と言うか、経験から物理攻撃特化型にしすぎる傾向がある。よくてちょっとした補助程度。
この中で魔法スキルを習得しているのは俺、シリカ、アスナ、リーファ。その内攻撃魔法専門が俺のみと偏りすぎてるだろ。俺だってメインは白兵戦なんだから。
「なによ、女の子に向かって脳筋ってのは失礼じゃない?」
「そんな物騒な鈍器を振り回してよくいうぉぉぉぉ!?」
口を尖らせて文句を言ってきたリズに突っ込むと、問答無用でメイスを振り下ろしてきて間一髪白羽取りで受け止めた。こ、こいつ……目がマジだ。
「大体、そう言うミストはどうしてあたしたちと同じ傾向にならなかったのよ?」
「元々魔法剣士系に憧れていたんだよ……! 俺のは一般的なイメージとだいぶかけ離れてるけどっ!」
ギリギリの所で拮抗しながら言い返す。
魔法剣士に憧れていたって言うのは嘘ではない。MMOに限らず、魔法剣士系のジョブがあるゲームだったらそれを選んでいた事もある。
一般的な魔法剣士といえば剣と魔法を使いこなして、盾も加えた安定の防御力とオールマイティなものをイメージするが、今の俺はそれとややかけ離れている。
まず、補助・回復は全部捨てた。だって担当者が大勢いるから。
次に、盾も捨てて拳術スキルを上げた。だってこっちの方が今は馴染んでるから。
結果、出来上がったのが斬って殴って蹴っては魔法を使う攻撃偏重型の魔法剣士。今ではパーティーで貴重な攻撃魔法担当だ。
「まあまあリズさん、実際ミスト君のおかげで楽になってるのは確かなんですし」
「そりゃまあ、そうだけど……」
リーファに仲裁されてリズは渋々ながらも引き下がる。
「それで、肝心の素材は集まったんですか?」
「はいはい、ちょっと待ちなさいよ……んー、大体は足りたって所ね」
「まだまだいけるから、遠慮しないで言ってね。リズベット武具店にはいつもお世話になってるし」
「……って言っても、このエリアは狩りつくしたぞ?」
周りを見ればモンスターの影も形もない。さっきのがラストだったみたいだな。
「休憩がてら、リポップするまで待とっか?」
「リーファに賛成。次はあそこでサボってる奴らも手伝わせるぞ」
くいっと上でサボってる2人を顎でしゃくる。聞いた話によると、学校でもあんなイチャコラしてるらしい。
まったくけしからんとリズが言っていたが、本当にその通りだ。
「ちょっくらからかってやるか」
「や、やめておいた方がいいんじゃないかな?」
「いいや、甘いぞリーファ。俺たちがリズのために身を粉にして手伝っているのに、向こうはただぼけーっと空を見たり旦那を見たりするだけ……正義は俺たちにあると思わないか?」
「え? えぇ? えぇぇ???」
俺の悪魔みたいな囁きにリーファの気持ちが激しく揺らいだ。
今頃「お兄ちゃんたちをラブラブさせてあげたい!」って天使と「アスナさんばっかりズルイ!」って悪魔の戦いが繰り広げられていることだろう。
「ほーんと、やっぱりこのミストの方が似合ってるわ。ちょっと悪戯好きで茶目っ気ある感じの」
「でも、少し変わったと思いますよ」
「変わった? どの辺が?」
「えっと……隠し事が無くなったからか、あんな事のあった反動かどうか分からないですけど、昔よりふわふわしてるって言うか。ね?」
『きゅいー♪』
「……そう?」
ん? なんだよ、2人して俺の方見て内緒話なんて。
「別にー? ただ、あんたの彼女は彼氏をよく見てるなーって感心しただけよ」
「えへへ……♪」
「なんだかよく分からんが……まあいいけど」
妙にご機嫌のシリカと呆れるリズ。この短時間の間で何があったのか不明だが、今はリーファを陥落させるのが重要だ。……別に楽しんでいるわけじゃないぞ? これはあの夫婦がサボっているのが悪いんだ。俺は! 悪くねぇー!
「さてリーファさんや。俺は何も押すだけ押してはいさよならとはしないぞ。ナイスなお膳立てをしてやろう」
「お、お膳立て?」
「おう」
目をぐるぐる回してどっちかに傾こうとしているリーファへ、俺なりの最大限の援助を送ろう。
頷いてキリトたちのいる方へ向き、大きく息を吸い込む。
「そこの夫婦ー! サボってないでいい加減こっち手伝えー!」
「「!?!?」」
ガタンッ、ズルッと言う音が聞こえた気がした。ここからじゃ離れていて聞こえないけど。
顔を真っ赤にして上にいた2人は慌てふためいて、そのままダッシュで俺のところにやって来て詰め寄る。
「ミミ、ミミミミミスト!?」
「大声で変なこと言わないでよっ!」
「変なこと? ああ、まるで縁側でのんびり寛いでいた熟年夫婦に対して言った事か?」
「「熟年!?」」
からから笑って言ってやると、よほどショックだったのか2人はかなり落ち込んでしまう。
すると、キリトの肩に乗っていたピクシーモードのユイちゃんが浮き上がって俺の前までやって来た。
「もう、ダメですよミストさん。パパたちは真面目な話をしていたんですから」
「いやいや、悪い悪い。俺たちが真面目に狩りしてたのに2人がサボっているのが理不尽だったもんで」
「それは悪かったけど……熟年夫婦は酷いよぉ」
「俺……そんなに老けたのか……?」
「ほれほれ、凹んでないで話聞けって。えー、次にモンスターがポップしたら、ちょっとしたゲームをやりたいと思います。ルールは単純明快で、3on3のチームに分かれてどっちが多くのモンスターを狩れるか。相手チームへの妨害は無し、最後の1体は早い者勝ちで。負けたチームは勝利チームにドリンク奢るってことで」
「……お前まさか、それを見越して先に精神攻撃しかけたのか?」
「勘ぐりすぎだろ」
いつぞやの決闘のことを思い出したのか、キリトは半眼で尋ねてくる。
確かにあの時はどんな手段を使ってでも勝つって思っていたから、先に精神的に叩いておいたんだが。
「っていうかキリトよ、お前俺をどんな風に見てるんだ?」
「普通に戦っても充分強いのに、小技ばっかり使って勝つイメージだな」
「ほほう……」
こいつめ……そこまでして俺を本気にさせたいか。
…………いや、やっぱダメだ。どうあっても全力は出せない。出しちゃ、いけない。
ギリギリの所で踏みとどまって、キリトの言葉を水に流す。例え全力を出さない事が相手にとって失礼に当たるとしても、絶対に出したらいけないんだ。少なくとも、皆の前では、よほどのことがない限り。
「……ま、実際その通りだしな」
「……怒らないのか?」
「否定はしないさ。先に自分が有利な状況を作って勝率を上げたりするってのは」
意外そうに首を傾げるキリトに肩を竦めて答える。
「それより、チーム別け発表するからな。えーっと、そっちがキリト、アスナ、リーファ。こっちが俺、シリカ、リズで」
「おいおい、勝手に決めるなよ」
「何か問題でも?」
「いや……ないけど」
事実戦力バランスは互角だし、皆もこれで不満はないだろう。
不満はないが、ちょっとだけ納得がいかない、と言った感じにキリトは唇を尖らせているが、まあそっちの都合は関係ない。
チームごとに分かれようとして、俺はリーファに近づいて肩を叩く。
「グッドラック」
「……へぅっ!?」
左手をサムズアップした俺を見て、全てを理解したリーファは顔を真っ赤にして変な声を出した。
いやいや、弄りがいがあるのはお兄さんと一緒ですな。いや、正確には従妹なんだけど。
頭から煙が出そうなくらい顔を真っ赤にして、金魚みたいに口をパクパクさせているリーファに激励してシリカたちの所に行こうとすると、唐突にキリトの呼び止められた。
「ん? どうした」
「ちょっと話があるんだが……少しいいか?」
「いいけど……改まってどうした? あ、八百長やってくれって言うなら勘弁な」
「そんなんじゃないって。――ガンゲイル・オンラインってVRMMOを知ってるか?」
「ガンゲイル? ああ、GGOね。知ってるけど」
あの世界は別の意味で有名な所だからな。
ガンゲイル・オンライン。その名の通り銃を武器に戦うALOやSAOとはジャンルが大きく異なるサイバー系のVRMMOだ。
開発したのはアメリカの企業で、日本にもサーバーを置いている。
最大の特徴はゲーム内で稼いだ金を現実に還元できるシステムで、俗に「プロ」と呼ばれるヘビーユーザー連中は月数十万も稼いでいるとのことだ。
「行った事はあるか?」
「ああ、あるぞ。なんていうか、ミリタリーとかガンマニアが多い所だったな」
「殺伐としていてすぐ抜けたけど」と肩を竦めて付け加える。
「で、GGOがどうかしたのか?」
「……関連性はまだ分からないが、GGO内のトッププレイヤーが2人死んだ」
「死んだ? どうせずっとログインし続けて飯も食わずにプレイしていたんだろ?」
「死因は心不全だ。餓死とかじゃない」
「心不全って……また妙な話だ」
それは少なくともフルダイブマシンによるものじゃないな。あれは脳に作用するが、他の内臓とかには作用できないはずだ。
それに、現実世界ではナーヴギアに代わるアミュスフィアと呼ばれるフルダイブマシンが普及していて、おまけに厳重なセキュリティを講じている。マイクロウェーブの出力も弱められているから脳を焼き切る事もできない。
それから色々とキリトから話を聞いたが、俺も同じ結論にたどり着いた。つまり――。
「不可能だ。仮想世界から現実世界に干渉し、人体に何かしらの影響を及ぼす事は」
「そうだよな……」
「でも、なんでその話を? って言うかどこで仕入れたんだよその情報」
「実は……クリスハイトって知ってるだろ?」
「あのメガネかけた頼りなさそうな感じの?」
確か、多少話した記憶はあるけど……。そこまで親しいって間柄でもないな。確かリアルでは総務省でネットワーク関連の仕事をしているって聞いたが。
「あの男に頼まれて、今度GGOの内情をリサーチに行く事になって」
「確かにGGOは黒に近いグレーなゲームだけど……そもそも2人が心不全で死んだからってなんでリサーチに行くんだ? フルダイブ中の変死なんてそこまで珍しくないと思うが」
別段VRMMOに限った話じゃない。あまりにも物事に熱中して飲まず食わずになった結果死んでしまった事故はネットのニュースでちらほら見かけている。
「《
「《死銃》?」
「ああ。2人はそいつの銃で撃たれて、直後に死んだそうだ。因果関係は不明だけど、接点がないとは言えないんだ」
「ふぅん……で、クリスハイトに「GGOに行ってちょっと撃たれてきて」とでも言われたか?」
「まあ……そんな所」
「あのなぁ……」
それでほいほい首を突っ込もうとするキリトに呆れ、何も言えなくなる。キッパリ断ればいいものを……。
「大体、その《死銃》って奴がほいほいお前に接触してくるとは限らないだろ?」
「それで近々開催される「バレット・オブ・バレッツ」って言うイベントに出ることになったんだよ。わざわざコンバートまでして」
「おいおい……コンバートするってことはALOでのアイテムとか全部捨てるってことになるじゃないか」
「いやいや、もちろんエギルの店に全部預けて出るつもりだから。そのあたりは大丈夫」
本当に大丈夫なのかよ……さすがに俺も不安を覚えるぞ。
「って言うかその話、アスナにはちゃんと話したのか?」
「触り程度だけどな。さすがに《死銃》の存在は不確かだから、そう言う事は伏せたんだけど」
「だったらどうしてその話を俺に?」
「ミストならGGOの事を少しは知ってるんじゃないかと思って。どんな所だった?」
「どんな所って言われても……最大の特徴はSAOやALOみたいなファンタジー要素は一切ない、純粋なSF物だったってことだな。PvPが盛んで、銃がメインになる」
「銃……か」
「俺も触り程度だから詳しくは知らないが、「
他にもいくつか俺の知っている基本的な知識を教えると、キリトは眉間に皺を寄せて難しそうな顔をする。
GGOはSAOほど単純な戦闘システムじゃない。難易度的にはVRMMOでもかなり難しい部類に入るだろう。
それでも人気なのはリアリティとゲームをしながら金を稼ぐことができるから、と言うのが大きい。GGOにいるトッププレイヤーのプレイ時間は他のMMOプレイヤーとは比較にならないほどだ。
「今からでも遅くないんじゃないか? 断るのは」
キリトの身を案じて、俺は不安を抱きながらも提案する。
《死銃》の話は根も葉もない噂と言うのが実際の所だろう。仮想世界からどうやっても現実世界に干渉する事は不可能だと、キリトも結論を出したじゃないか。
「ああ……でも、引っかかるんだよ。勘って言うか……」
「勘……ねえ」
「それに調査協力費も掲示されたし、以前色々無理を聞いてもらった手前、引き下がるわけにも……」
それが本音か、と内心ツッコミ、同時にジロリと半眼でキリトを睨む。
睨まれたキリトはバツの悪そうな顔をする。はぁ……もう言った所で聞きそうにないな、こりゃ。
「分かったよ。俺からはこれ以上何も言わない。けどくれぐれも無茶はするなよ? 俺だけじゃない、アスナや皆が心配するんだからな」
「ああ、わかってる。ちょっとした観光感覚で行ってみるさ」
「おーい、そこの2人ー! いつまで話してるのよー!」
話が終わった所でリズに呼ばれた。
見ればフィールドのモンスターはあらかたポップを終えて、うろうろとエリアを徘徊して回っている。
「色々話してくれてありがとな、参考になった」
「ああ……」
肩を叩き、自分のチームに向かっていくキリトを釈然としない思いを抱いて見送る。
キリトの話に出たプレイヤー2人――ゼクシードと薄塩たらこ――が死んで、噂の《死銃》が関わっている……か。それでキリトがGGOへ調査に、ねぇ……。
「――ったく、仕方ない奴だな」
あんな話を聞いて、知らん振りなんて出来るはずないだろ。
そこまで乗り気じゃなかったが……ついでに上位入賞でも狙ってみるかな。一気に稼げそうだし。
「ミストさーん! 始めますよー!」
「今行くー!」
シリカに呼ばれてチームに合流する。開始の合図はユイちゃんが仕切ってくれるようだ。
「じゃあ、行きますよ? よーい――スタート!」
ピナの背に乗ったユイちゃんの合図と共に俺たちはそれぞれ狙いを定めていたモンスターに飛び掛った。
「じゃ、また後でな」
「あいよー」
キリト、アスナ、リーファ、リズたちは夕飯の時間と言う事で一旦ログアウトする事になって、俺たちはその場で別れた。
「シリカも行かなくていいのか?」
「うぅ……行かなくちゃいけない、ですけど」
で、残ったシリカも同じように夕飯の時間なんだが、どうやらもう少し一緒にいたいご様子。なんだかんだで皆と一緒にいたから2人きりって状況にはならなかったからなぁ……。
「じゃあこうしよう、戻ってきたら2人きりで出かけるってことで」
「えっ、それって……」
「まあ、うん。デートだな」
はっきり言うのがちょっとだけ恥ずかしく、シリカから目を逸らしながらデートと口にする。
再会してからも何度かデートはしたことがあるが、まだまだ照れくささが抜けない。それでキリトたちにからかわれるのがお約束だった。何も言い返せないのが悔しい。ぐぬぬ。
「早く戻らないとデートの時間が減ってくぞ?」
「うぅ、ずるいですよそれ!」
慌ててシリカはウィンドウを開いてログアウトを操作しようとする。
「約束ですよ? 絶対絶対、デートしてくださいね?」
「分かってるよ。親御さんによろしくな」
「はいっ!」
上機嫌になったシリカは嬉しそうに頷いて、ログアウトボタンを押してALOから出て行った。
皆がログアウトして1人だけ取り残されると、俺は笑みを消した。
1人……か。今更何てことないが、どうしても寂しさが拭えない。
「俺……いつからこんなに寂しがりやになったんだ?」
自嘲するように呟いて、自分の手を見つめる。
皆は昔と変わらず接してくれているのに、どうしても距離を感じてしまっていた。
「ああ……やめやめ。どうにも1人になるとナーバスになりがちなんだから」
頭を振って思考を切り替え、戻ってくるまでにどこに行くか考えておくかと思いながらその場を立ち去った。
さぁて、どこに行くか……と言ってもリアルはまだしもALOの内部だとなぁ。狩りやクエストなんてデートっぽくないし。新生アインクラッドもフローリアはおろかダナクすら解放されていないからなぁ。
……こうして考えると、やっぱり俺って彼氏力が限りなく低いと痛感してしまう。
もっとぐいぐいリードできればいいんだが、いかんせん経験値が限りなく低い上に仮想世界限定って言うのがまた難しい。
ここはアスナとキリトに教えを請うべきか。あの2人自重という言葉を知らないみたいだし。リズにはこれ以上弱みを握られたくないし。
そもそも最近はALOを離れていて内部事情に疎くなっているからな。やっぱり人に聞くのが手っ取り早い。
「……って完全に後手に回ってないか?」
そもそもこの後デートするのに聞いている時間なんてあるだろうか? いや、ない。
……ド定番だけどウィンドウショッピングで今日は凌ごう。何か良さ気なアクセサリーがあったらプレゼントしよう。
「ああ……情けないなぁ、俺って」
自分のヘタレっぷりに呆れて、俺は肩を落とすのだった。
デートも入れようと思ったけど挫折したorz
と言うか、次の話も全然書き終わってないのにもうすぐテイルズオブゼスティリアが発売とか。やっべぇ、マジでやっべぇ。
BoBは次の話を挟んでからになりそうです。