寝て起きたらデスゲームに巻き込まれていたんだが。 作:リベリオン
この話、まだ未登場のキャラや出るタイミングを失ったキャラ、短編でちょっとだけ出てきたキャラも出てますが、こまけぇこたぁ良いんだよ! と思える人だけ読んでください。
バレンタインだからイチャコラをする中、こんな話にした自分は捻くれてると自覚してます(笑)
個人的にアスナとのやり取りが書いていて楽しかったです(爆)
「どうも。みんなの兄貴クラインだ。
『バレンタインチョコを1個しかもらえなかった。お母さんから』とか、
『勝った。俺は2個。ねーちゃんから』とか、
バレンタイン翌日に教室で嬉々として喋ってる奴ら――来年からお前たち死刑!
そんなネタもう何万年も前からカカオとお母さんが誕生した時から使い古されてんだよ。
鬱陶しいんだよ、ネタにしてるくらいなんだから俺たちぜーんぜん気にしてないよね的なやっすい虚栄心がうんざりなんだよォォ!
義理だの本命だの今年は義務だの下らねーやりとりしてるバレンタインという悪習そのものがァァ!
やめるべきだろこんな茶番! 来年からチョコ送った奴も! 貰った奴も全員死刑で!
ファイナルアンサー!?!?」
「ファーイッナルアンサー!」
そうだ、よくぞ言ったクライン! そこに痺れる! 憧れるッッッ!
「…………」
「あ…あれ? どうしたクライン? 元気ないぞ?」
「――ファイナルアンサーじゃ、ヌェェェェイッ!!!!」
「げほぁっ!」
テーブルを乗り越えてクラインの放った飛び蹴りが俺に炸裂する。
逆ギレされて蹴られる事なんて予想もしてなかった俺は受身も取れずひっくり返った。
「1個くらい誰か持って来いよ! なんだよこの銀○のノリはよォ! やってて泣きたくなったじゃねぇか!」
「ぐ…ふっ。クライン、それは間違ってる! 俺たちは愛を捨てた修羅だろう!」
「あと何よりもお前が賛同するって言うのが許せねぇわッ!」
「うわっちょそれ真剣!!」
哀と怒りと悲しみの涙を流しながら抜刀し、問答無用で振り下ろされたクラインの刀を辛うじて白羽取りしてキャッチする。
何故だ!? 俺はお前の理解者にして同志のはず!
「お前今年は確実に本命貰えるだろうが!」
「あ。そっか」
言われてあっさり納得できた。
そうだよ、俺もう年齢=彼女いない暦デッドスパイラルから脱出できたんじゃん。ありがとうシリカ。
「そのにやけっ面がさらに腹立つぜチクショー!」
「うぉぉっ……バレンタインが血のバレンタインに変わるぅぅぅっ!」
「なーに男同士でバカやってるのよ」
スパーン、と乾いた結構良い音が鳴って、クラインの頭が横にスライドした。
その背後、つまり俺から見れば正面なんだが、その手にハリセンを装備したリズが呆れ顔で俺たちを見下ろしている。
「た…助かった……ありがとなリズ」
「クラインには少しだけ同情してあげなくもないけど、ミスト……アンタはなにやってんのよ」
「いや……長年の習慣からついダークサイドに堕ちて」
何しろ今まで貰ったチョコなんて家族(母親から)だけだったから。
「はぁ~……ミストらしいといえばらしいかもしんないけどねぇ」
「面目ない……」
「だったらこれ受け取っておきなさいよ」
はい、と素っ気ない感じでリズが差し出してきたのはラッピングされた四角い薄い板みたいなものだった。
メガテン……じゃない。目が点になった俺は、リズの差し出したものが分からずじっと凝視する。
「何よ。受け取れないっての?」
「いや……なにこれ?」
「チョコに決まってるでしょう、バレンタインなんだから。もちろん義理のね」
「…………」
ほら、と強引に受け取らされ、俺は手元のチョコとリズを何度も何度も繰り返し交互に見てしまった。
「なによ。嬉しくないっての? そりゃ義理だけど……ってクラインもいつまでも不貞寝してないで受け取りなさいって」
「え…お、俺にもか?」
「当たり前でしょう。義理だけど」
言いつつリズはクラインの分もチョコを渡し、俺みたいに目を点にしてチョコとリズを交互に見てしまう。
「あのねえ……いくら実感沸かないからってノーリアクションは、ってえええぇ!?」
何か言いかけたリズは次の瞬間目の前の光景に仰天し、驚きのあまり飛び退いてしまう。
俺とクラインの間に言葉は何も要らなかった。ただお互いにするべきことは知っている。
だから――リズの前にひれ伏した。
「「あなたが神かっ!」」
「ちょ、さすがにそんな事されるとあたしも困るんだけど!?」
「だってよぅ、生まれてこの方母親からしかチョコ貰ったこともないし、社会人になってからはそんなこともなくなってずっと……ずっと……うぉぉぉぉんっ!」
「俺だってそうだ! 生まれて……生まれて……」
「……生まれて、なに?」
「いや……俺の場合1度死んだから、この場合カウントをリセットする方がいいのかなって考えて」
「どうでもいいわっ!」
ですよねー。
義理だけど人生初の家族以外からチョコを貰えたぜひゃっほう! あまりにも嬉しくてテンションがおかしいね!
ああ……思えば俺って不幸な道のりしかなかったからなぁ。上がったかと思ったらさらに底へ底へと繰り返しで地球換算で言えば核に突入してるくらい。ザ・コアって映画知ってる? あ、知らない? そっかー……。
「だがしかし! 俺には本命のチョコがある! 我が世の春がキタァァァ!」
「ひゃっ!?」
嬉しい余り叫んだ所、後ろで小さな悲鳴が。
振り返るとアスナが俺の奇行に目を丸くしていた。
「お、おお。どうしたんだアスナ?」
「ミスト君に渡すものがあったんだけど……突然どうかしたの?」
「いや……今日くらい俺、幸せになる権利があってもいいよね? って天に叫んでただけだ。ところで渡すものって?」
「あ、うん。私からのバレンタインチョコなんだけど……もちろん義理のね?」
「……マジで?」
「うん、大マジ」
……なんということでしょう。まさかアスナからも貰えるとは。絶対手作りの予感がする。だってアスナだから間違いない。
感激する余り言葉を失って、俺はアスナから渡されたラッピングされているチョコを受け取ると深々と頭を下げた。
「感謝の言葉もございません……」
「そんな気にしなくていいよ、義理なんだから。それより開けてみてくれる? きっと気に入ってもらえるから」
「喜んで!」
ニコニコとやたら上機嫌なアスナが引っかかったが、そんな事よりも頼まれたならば引き受けるしかない。
ラッピングの紙を剥ぎ、中身を取り出して――俺は固まった。
――夕焼けをイメージした黄色いパッケージ。
――のどかな農村をイメージしたイラスト。
――そしてでかでかと書かれた『○治チョコスナック きのこの山』。
「きのこの山……だと……」
おい……これは何の冗談だ? 何故仇敵が俺の手元にある。
愕然とした思いで手にした箱を見つめる俺に、怪しげな笑い声が響いた。
「ふっふっふ……騙されたねミスト君」
「アスナ……」
「この時が来るのを待ち望んでいたわ! なぜ憎きたけのこ派にチョコをやらなければいけないの!? それでも食べて悔し涙を流しているといいわっ!」
くっ……ぬかった。俺と奴は永遠に相容れない仇敵。このイベントに便乗して何か仕掛けてくると予想できなかったとは!
「今日こそきのことたけのこの戦いに終止符を打つ! 勝つのは私たちきのこの山よ!」
「ぬかせ! たけのこの里が唯一にして至高! それは天地宇宙の理が変わったとしても永遠に代わることは無い不変の摂理だ!」
レイピアを抜いて構えるアスナに俺もテラー・オブ・ジェネシスを抜き、《魔装術》を起動させて迎え撃つ。
「今こそ決着の時! たけのこの里覚悟ーーーっ!」
「この命を糧とし、彼の者の魂すらも焼き尽くせ――! 轟け、黙示録の黒雷! 【アポカリプス】!!!」
「きゃあああー!?」
助走をつけて一気に突撃したアスナを瘴気と荒れ狂う雷が飲み込んだ。
攻撃が止むと、そこには悔しげに顔を歪ませるアスナが倒れている。
「く…っ。開幕でいきなり大技使うなんて、卑怯な……」
「そう言うお前だって開幕【フラッシング・ペネトレイター】使ってきただろ」
人の事言えないだろ、と突っ込みつつ剣を収める。代償? ギャグだから気にするな。
「ら……来年こそはきのこの山が、勝つから……がくっ」
捨て台詞を残してアスナは気を失ってしまった。
……虚しい戦いだった。俺たちが分かり合うことは永遠に来ない事を感じつつ、それでも虚しさが胸に去来する。
「…………」
せめてもの情けだ……それにせっかくのバレンタインチョコだったんだし。
箱の封を解き、中を覗き込んだ。
「ああ……やっぱり」
あれだけ激しい動きをしたからあってもおかしくは無いと思っていたが、やっぱりあって俺は虚しくなった。
俺がきのこの山を敵視する最大の理由が、箱の中にはあった。
突然だがきのこの山がどういう構造をしているかはご存知だろうか?
軸の部分はクラッカーで、傘の部分は2層のチョコレートになっている。
で、このクラッカー部分が問題だ。構造上どうしても脆くなり、箱に衝撃が加わると中で衝突して折れることがある。
想像してほしい……中を開けたら1つだけぽつんと軸の折れたきのこがあった時の光景を。虚しさしかない。
「…………」
折れた軸と軸の無いきのこ部分を取り出し、口に放り込む。
さくっとした軽い歯ざわり。そして口の中で溶けていくチョコ……これを気に入ると言う人もいるかもしれない。
「けどやっぱ俺、たけのこ派だわ」
うん、あとでたけのこの里買おう。俺はそう心に決めた。
「あ、ミストさん!」
きのこの山を食べ終えてまたブラブラしていたら、よく知る声に声を掛けられた。
声のした方へ振り返ると、シリカが俺のところへ小走りでやってくる。
「どうした? そんなに慌てて」
「ミストさんのこと、探してたんですよ……渡したい物があって」
結構探し回っていたのか、シリカは少し息を切らせてる。
渡すもの……って、やっぱアレだよな?
「あの、えっと……今日って2月14日ですよね?」
「ああ。バレンタインデー……だな」
ちなみに昨日は13日で金曜日だったから、あのジェイソンが暴れまわる日だ。いや、詳しくは知らないけど。
それはともかく、少しだけ緊張気味のシリカに俺はふざけることなく真面目に答えた。
「そっ、そうですよね? それで――あ、あたしのチョコ、受け取ってくださ「ここにいたのミスト」いぃぃっ?」
哀れ、シリカの決死のアタックに誰かが割り込んで、勢い余ってシリカは倒れこみそうになる。
幸い俺が受け止めたから無事だったが……にしても誰だ?
「シ、シノンさん!?」
「シリカ……? なに、やってるのかしら。2人して」
振り返ればそこにシノンがいて、抱き合っている俺たちを目にした瞬間冷ややかに俺を睨む。
「いや……これはなんと言えばいいのか……」
あかん。(確信)
さっきまでの少し嬉し恥ずかしなムードから一転、場に少し張り詰めた空気が漂いだした。
この2人、仲がいいんだよ。本当だよ? けどちょっとしたきっかけ(主に俺絡み)で犬も食わないどころかヘルダルフも尻尾巻いて逃げ出すってくらい急に仲悪くなるんだよ。
見える……見えるぞ。俺にもシリカとシノンの間で火花が飛び散ってるのが。
この2人、どうしてこうなった……俺が原因? デスヨネー。
「ああ、シノンさんじゃないですか。どうかしたんですか? まさか、誰かに本命チョコを渡すつもりだったとか」
「そういうシリカこそ、こんな時間から彼に抱きついて何やってるのかしら? あんまりイチャイチャしてると御両親が泣くから自重した方がいいんじゃない?」
あかん。(確信)
どうしようか策を講じる前に2人の間でバトルが勃発してしまった。
え? 普通の会話に見えるだって? お前の目は節穴かっ!
「いいじゃないですかこれくらい。『メ・イ・ン』ヒロインの特権ですよ」
「『アインクラッド編の』、が抜けてるけど? ファントム・バレットでは私がメインなんだから……ミストもいつまで抱き合っているつもり?」
「はっ、はいっ! 大変申し訳ございませんでした!」
「あ~ん! ごめんなさいミストさん、さっき倒れそうになった時に足を捻ったみたいで……もう少しこのままでいいですか?」
「(ひぃぃぃ!?)」
甘えた声でさらにしな垂れかかってきたシリカに内心悲鳴を上げた。
どうしてこうなった!? 最初の話じゃ「ヒロインはシリカ1人だけですよ」って話だったのに、気付いたらあれよあれよと1人2人3人と芋蔓式に増えていって! おまけにSAOからも飛び出しちゃったし!
昔は「ハーレム形成する奴なんて爆発すればいい」とか笑って言ってたのに気付いたら俺が笑われる側になっていたよ! ハーレム系主人公って実はすっごく苦労してるんだね、イッセーとかワンサマの苦労が分かったわ!
「……ミ・ス・ト?」
「まままっ、待て落ち着けシノン! 冷静になれ、普段クールなお前はどこへ行った!?」
「ええ……、十分落ち着いているわ」
落ち着いてないだろお前! 明らかに界○拳みたいな赤いオーラ出してますけど!
やめてー、マジでやめてくれこういうシチュエーション! 俺苦手なの、弱いの、ダメなの。『称号:絶園のテンパリスト』ってあるんだよ? グニャァリベサモンさんと同類なんだよ!?
「ミストさん…あたし、ミストさんのために頑張ってチョコを作ってきたんです。貰ってくれますよね?」
「っ…! ミスト! 私、ミストのためにチョコを作ってきたわ。初めて作ったから美味しくないかもしれないけど、気持ちだけはたっぷり篭ってるから受け取ってくれるでしょう!?」
「(ぎゃー!)」
もはや口からは声にならない声しか出ず、内心では絶叫していた。
ついに全面戦争始まったよ、俺じゃ止められないって!
誰か助け……おお、心の友キリトじゃないか! よっしゃ目が合った助け……って有無を言わさず逃げ出しやがった薄情者め!
「「ミスト(さん)!」」
「あたしのチョコ、貰ってくれますよね!?」
「私のチョコ、貰ってくれるでしょう!?」
あかん。(血涙)
やっぱり俺の人生がハーレムルートに入ったのは何かの間違いだと信じてる。……こんなタイトルのラノベ、あったら俺迷わず手に取ってるね。きっと共感できるから。
もはや骨を埋める覚悟で2人からチョコを同時に受け取るしか、道は……!
「あ、居た居た。おーい、ミストー!」
だがそこに舞い降りたのは天使か悪魔か。
明るい声と共に正面から走って来る人影。あれは間違いなく……。
「ユウ、キ……?」
「こんな所にいたんだ。探しちゃったよ」
こんな状況にも拘らずユウキはいつもの屈託ない笑みを浮かべている。
突然の介入者に少し毒気を抜かれたのか、今にもバトりそうだった2人はぽかんとしてユウキを見ていた。
ユウキ……お前マジで救いの女神だなぁ。感激の余り涙が出てしまいそうだよ。
「探してたって、俺を?」
「うん。ほら、今日ってバレンタインでしょ? だから大好きな人にチョコを送ってみたいなーなんて思って」
てへへ、と少し照れくさそうに笑うユウキに、俺は一転して嫌な予感を抱き始める。
「けどボク、料理ってやったことなかったからさ……チャレンジして失敗するなら、最初から美味しい物を渡す方が良いよねって思って、買ってきたんだ」
そう良いながら後ろに隠していた小箱を前に出すユウキ。
なんだろう……周りで「ザワ… ザワ…」って○イジっぽいサウンドが聞こえる気がする。
「これ、チョコレートケーキがすっごい美味しいって評判のお店で買ってきたチョコレートケーキ! アスナにも普段お世話になってるから友チョコってことで渡してきたんだよ。あと2つはボクとミストの分で、一緒に食べようねっ☆」
ピシッ!
あ…あかん。(震え声)
救いの女神かと思われたユウキは実は、掬ってまた落とす無自覚な悪魔だった。なんていうかニトログリセリンを搭載したタンクローリーで石油精製プラントに突撃するとか、そんなレベルの。
「…………」
は…背後からものスッゴイプレッシャーを感じる……。
これって振り返ったら絶対ヤバイフラグだよな。でもどうしても振り返りたくなって結局振り返っちゃうの。見るなよ! 絶対見るなよ!!! って言われるとどうしても見たくなる人間心理って奴。
「ミストさん……」
「ミスト……」
ボソリ、と地の底から響くような声に俺はついに振り返った。
顔を俯かせ、どす黒いオーラを放つ女の子が、2人。
「あの……2人とも? 落ち着こうじゃないか。落ち着いて話し合わないか? な? あ……あれ、シノンさん? どうしてヘカートのセイフティー外して? シリカさんもスコーピオンとダガーなんて用意して……」
「どうしてだと思いますか?」
「どうしてだと思う?」
にっこりと、菩薩のような笑顔を浮かべて問い返す2人。が、次の瞬間鬼に豹変した!
「「あなた(アンタ)を修正するためです(よ)! この第1級フラグ建築士!」」
「お…俺は……俺は悪くヌェー!!!!」
もはや話し合いの余地など彼女たちには無く、俺は血相を変えてその場を逃げ出す。
当然悪鬼羅刹に豹変した2人は各々ライフルをぶっ放し、あるいはフルオートで銃を撃ちかける。
マジだ、この2人本気で殺すつもりだ! どうしてこうなった!
「ひぃぃぃ! お助けぇー!」
「「待てぇー!」」
立ち止まるな俺! 止まれば死ぬ! もう1度死ぬのはやだよ!
ちくしょう! やっぱバレンタインなんて悪習撤廃で! ファイナルアンサァァァ!
「あーあ……行っちゃった」
どうも渡すタイミングが悪かったみたいで、ミストはシリカたちに追われて逃げていった。どうしてこういう時だけ情けないくらいヘタレになっちゃうのかなぁ?
「結局ケーキ渡しそびれたし……あれ?」
少しだけ残念に思っていたら、知り合いが何か探しているらしくきょろきょろ周りを見て歩いていた。
「フィリア、どうかした?」
「あ、ユウキ」
声を掛けるとようやくボクに気付いたみたいで、アンケート結果でルートが潰れて出番が見送りになったフィリアが「ちょっと待ってよ!」
「どうかした?」
「ようやく登場できたと思ったらいきなり弄られるの!?」
「ごめんねー。こう言えって書いてあって……」
「うぅ……確かに否定できないけど。おかげで私、ことある毎にこうやって弄られる運命になったし……」
「うん、本編だともう出るタイミング無いからね……」
そればっかりはボクもフィリアに同情してしまう。
あれこれと考えられていたイベントだったけど、アンケート結果でフェアリィ・ダンス編に行っちゃったから全部パーになっちゃって。ある意味で主人公のミストより不幸かもしれない。
まあ……あれは常に不幸を地で行くって言うか、不幸の星に生まれたと言うか……天の采配が面白おかしくなるのを優先してミストを幸せにする気が無いと言うか、そんな感じだけど。
「それでどうかした? ミストならついさっき、シリカとシノンに追われて逃げていった所だよ」
「うっ……またしても出遅れ……うぅぅ」
うん……フィリアもフィリアでやっぱりミストに劣らぬくらい不憫かも。
「すいませーん。○マト運輸ですけど、白峰霞さん宛ての荷物が届いているんですが」
「あ、はいはーい」
同情していたら宅急便がやって来た。本人は居ないけど別にいいよね?
伝票にサインすると、配達人の人(なんか某アイドルのリーダーっぽい)は一礼して去っていく。
「良かったの? 勝手に受け取っても」
「いいんじゃない? 後で本人に渡すから。えーっと……差出人は、と……」
伝票を見てみると、そこには「商人ギルド セキレイの羽」と書かれていて、さらに連名でアリーシャ、ライラ、エドナ、ロゼとある……。
「これって……いいの?」
「さあ…?」
隣から覗き込んできたフィリアが尋ねてくるが、ボクもなんとも言えない。
そもそもどうしてセキレイの羽名義なのか、あとゼスティリアチームの女性しかいないのかってツッコミが色々あるけど……気にしたら負けなのかなぁ。ボクたちだってまだ本編に登場してないし、そもそもフィリアは出番すらなかったのに。
「だから! いちいちそれを言わなくてもいいからっ!」
「ごめんごめん。ちょっと中身、見てみよっか?」
「でもいいの? ミストに怒られるんじゃ……」
「多分大丈夫じゃないかなぁ? それにやっぱり気になるでしょ?」
「そ、それは……気にはなる、けど」
余りはっきりと言えないあたり、フィリアも中身が気になるってことなんだよね。
と言う事でフィリアのナイフで封を切って、中身を開けてみる。中に入っていたのは……
「何かの飲み物と……あとこれ、饅頭、かな?」
容量的には500ミリリットルくらいの瓶にこげ茶色の濃厚そうな液体が詰まっていて、一方の饅頭みたいなものも似たような色合いをしていた。
「あ…底に手紙が入ってた。多分説明書とかかな」
中身に首を傾げていたら、底にあった折りたたまれた紙を見つけたフィリアがそれを手にとって声に出して読み始める。
「『本日はバレンタインデーと言うことで、セキレイの羽の新商品のサンプルを送ります。ボトルの中身はアンマルチア産チョコの噴水から汲んだ生チョコ。ホットドリンク、チョコレートフォンデュと色々な利用が出来ます。もう一方は『チョコまん』で、生地にもココアパウダーを練りこんだ中華まんです。通常のスタンダード、男性向けのビター、子供や女性向けのスウィートの3種類を取り揃えました。出来れば試食した感想をもらえるとありがたいです』……だって」
「商い魂逞しいねぇ……」
わざわざこっちにも引っ張ってくるなんて逆に感心するよ。商品の狙い目は悪くないかもしれないけど。
でもこの生チョコって大丈夫? 明らかに産地がグレイセスだったよね。業務提携でもした?
「あ…まだ続きがある。『追伸、ホワイトデーのお返しは婚姻届がほしいってアリーシャが』『冗談だからな!? エドナ様のいつもの悪戯だからな!?』『と言うのが冗談でやっぱり婚姻届がほしいって』『ライラ様の悪戯だからな!? 勘違いしないでくれ!』『ミスト、アンタ風の骨のブラックリフトに入れておくから。『女の敵』ってことで』……」
「はは……は」
ミスト……なんだか君の知らないところで大騒ぎになってるみたいだけど……この先大丈夫なのかな? ボク、結構心配だよ。
「俺は悪くねぇ! 悪くねぇんだー!」
「「逃がすかー!」」
と言うわけで、来年からバレンタイン撤廃でファーイッナルアンッサァァァ!
その後のおまけ。
「あれ……ミスト? どうしたんだそんな荷物背負って」
「キリト、か……ちょっと自分を見つめ直す旅に出てくる。――ネクロゴンドまで」
「ネクロゴンドってどこだよ!?」
今度はロンダルキアに流れ着くフラグ(えー)
と言う事で、バレンタインと言うよりかはミスト君が第1級フラグ建築士疑惑を受けてネクロゴンドに旅立つと言う、なんだかよく分からない内容でした。
ただ、書いていて楽しかった。ミスト君を弄るの楽しい(爆)
え? とっくに日付変わってるだって? じゅ、10時間で頑張って書いたんだから勘弁してください……何気に本編の1話分に匹敵する量まで膨らんだし。
最初はきのこ・たけのこ・すぎのこ(!?)、コアラ、パイの実の五つ巴大戦争なんてのも浮かんだんですけど……こっちもこっちでいいですよね?
何? チョコは貰えたのかって? だから撤廃すればいいんだよォォォォ!