寝て起きたらデスゲームに巻き込まれていたんだが。 作:リベリオン
ちなみに今回登場したキャラですが、アニメ版で皆口裕子さんが演じた前提でやっています。つまりメタ。(真顔
第3話
空中ダンジョン「スリュムヘイム」の入口に到着すると、何も聞けなかった俺はキリトから事の顛末を聞かされた。
現在ヨツンヘイムでは、《霜巨人の王スリュム》が率いる霜の巨人族が丘の巨人族を根絶やしにしようと暴れまわっており、もし全滅すればこの地を統べる《湖の女王ウルズ》は消滅し、このダンジョンをアルヴヘイムにぶつけるつもりだ……とウルズ本人がキリト達に話したらしい。
で、それを防ぐためにこのダンジョン最下層にある要の台座から、《エクスキャリバー》を引っこ抜いて阻止してくれ、と。
「――なるほど、大体分かった。けどこのクエスト、別に隠しってわけでもないんだろ? なのにこんな大規模クエストを、運営が事前の告知なしでするもんなのか?」
「俺もそれは考えたんだ。やっぱりおかしいよな、今回のクエストは」
話を聞いて浮かんだ疑問を口にすると、キリトも同意しながら頷く。まあ、サプライズって可能性もゼロじゃない……かもしれないけど。
「あの、これはあくまで推測なのですが……」
すると、そう前置きしながらユイちゃんが口を開いた。
「このアルヴヘイム・オンラインは《ザ・シード》規格のVRMMOとは大きく異なる点が、1つあります。それはゲームを動かしている「カーディナルシステム」は機能縮小版ではなく、旧SAOに使われていたフルスペック版の
「フルスペック版……?」
「本来の「カーディナルシステム」にはクエスト自動生成機能があります。ネットワークを介して、世界各地の伝説や伝承を収集し、それらの固有名詞やストーリーパターンを流用、考案してクエストを無限に
「ならこのクエストも、カーディナルが自動生成したものなのか?」
「先ほどのNPCの挙動からして、その可能性が高いです」
「はぁ~、どうりでか」
「ってミストは知らなかったの? アンタ、一応ラスボスと一緒に行動してたでしょう?」
「いやまあ、カーディナルの事に関しては聞いていたさ。俺にも関わる事だったから。けど道理で、アーサー王伝説に出てくる聖剣が北欧神話に出てくるわけだな」
北欧神話はそこまで詳しいわけじゃないが、今回のクエストで似たようなポジションを担っていたのは《魔剣グラム》だったはずだし。
ずっと抱いていた謎だったが、ユイちゃんのお陰で解決したわけだ。
リズのツッコミ通り、確かに俺はヒースクリフと一時行動を共にしていたけど、だからと言って全てを聞いたわけじゃない。合間の休みにちらほらと「カーディナルシステム」に関しては掻い摘んで聞いていた。
――って言っても一般的な男子高校生の理解力を大幅に超えるような内容だったので、その大部分がチンプンカンプンだったわけだが。
「――待てよユイちゃん、つまり今回の結果次第で……本当に最終戦争……
「はい……その可能性はあります。ヨツンヘイムやニヴルヘイムから霜の巨人族が侵攻してくるだけでなく、さらにその下層にあるムスプルヘイムと言う灼熱の世界から炎の巨人族までもが現れ、世界を焼き尽くすと言う……」
「いっ、いくらなんでも、ゲームシステムがマップを丸ごと崩壊させるなんて出来るはずが……!」
「それが出来るんだよ、オリジナルのカーディナルは浮遊城アインクラッドを崩壊させるのが最後の任務だった。だからシステムにはワールドマップ全てを破壊し尽くす権限がある。オリジナルをコピーしたALOのカーディナルだって、当然それが可能だな」
リーファの言い分をきっぱり否定しつつ、俺はヒースクリフから聞かされた事を思い出しながら口にした。
『だから君は100層まで生き残っていても、ゲームがクリアされればその崩壊に巻き込まれ消滅する』――とヒースクリフが言っていたのを覚えている。
『………………』
どんより……まさにそんな表現がぴったりなくらいに沈むキリトたち。
「……もし仮にその《ラグナロク》が起きたとしても、バックアップデータからサーバーを巻き戻す事は可能じゃない?」
「カーディナルの自動バックアップ機能を利用していた場合は、巻き戻せるのはプレイヤーデータだけでフィールドは含まれません……」
シノンの考えもあっさり破れ、再び重い空気に包まれる。
が、そんな中クラインが「そうじゃん!」といきなり叫んでメニューウインドウを開き、「ダメじゃん!」と速攻で頭抱えて叫んだ。
「なんのコントよ……」
「いや、GM呼んでこの状況知ってんのか確認しようと思ったんだけどよ、人力サポート時間外でやんの」
「年末の日曜、しかも午前中だからな……」
そりゃあ大抵の会社は正月休みに入ってるだろうさ……現在もお仕事している社会人の方々、お勤めおつかれさんです。
仮に運営が動いていたとしても、この事態を把握していたとは考えにくい。もし知っていたらとっくの昔に修正を入れているはずだ。
「要するに、だ。この場でALOの崩壊を食い止められるのは俺たちだけってことだな」
「責任重大じゃねーか! なに考えてんだよカーディナルは!」
「……ドジッ娘?」
「萌え要素入れた所で誰得だよ!?」
いやぁ、受ける人には受けるんじゃね? 吼えるクラインに対して淡々と答える。
「どっちにしろ、今回の目的は《エクスキャリバー》を手に入れる事なんだ。ちょっと大事になったけど、やる事は変わらないだろ」
「うん。トンキーたちを助けるためにも、絶対にクリアしないと!」
メダリオンを握りしめながらリーファが頷く。
中心に埋め込まれた宝石は鮮やかな緑と半分以上が黒くなっていて、全て黒くなるとゾウクラゲ型邪神は全滅したことを意味する。それほど時間に余裕はないし、サクサク行こうか、サクサクと!
そんなわけでダンジョンに突入したキリトとゆかいな仲間たち一向(仮)なわけだが、中はなんと雑魚はほぼ不在、中ボスも半分近くが留守状態。聞けばウルズ曰く、地上に配下をほとんど出していたため現在この城は相当……いや、かーなーり、手薄になってるらしい。
しかしそれでもフロアボスはきちんと残っていて、第1層を担当する単眼の巨人……えっと、なんだっけ? アトラス……じゃなくて、そう、サイクロプスがふんぞり返っていたが、そこはそれ。圧倒的な数の暴力に任せたゴリ押しで難なく倒すと、そのまま次の層へ降りる。
第2層も上層と同じような感じだったが、フロアボスと戦闘に入った所で思いもよらず苦戦を強いられた。
この層を守護するのは所謂「ミノタウロス」と言われる、牛頭人身の巨人で、しかも1体ではなく黒と金の合計2体。
こいつら、何が面倒かって、黒は魔法耐性、金は物理耐性にそれぞれ極振りしているって言うから物理攻撃メインのこのパーティには本当に辛い。
ならばと黒を優先攻撃したら、ピンチに陥った黒を金がカバーし、後方に下がった黒は禅を組んで瞑想状態に入るとHPが徐々に回復している。
「シンプルだけどそれが逆に難しいか……」
ポツリと呟きつつ、俺は複数の火炎弾を撃つ火属性の下位攻撃魔法を唱えて後方から金に魔法攻撃で前衛を支援。
魔法スキルは種族によって得意分野があり、概ね下位~中位までなら他の種族でも覚えることが出来る。より上位までとなるとより条件が設けられ、たとえば全体回復が出来る上位回復魔法は《水妖精族》か《歌妖精族》が他種族に比べて比較的緩い条件で習得でき、広域爆裂魔法ならば火妖精族が簡単に覚えやすいなど、強力な魔法になるほどその属性に対応した種族が有利になる。
で、この脳筋ばっかりのパーティメンバーの中で唯一攻撃魔法もこなせる俺は一通りの攻撃魔法は覚えている。例外としては聖属性は覚えられないけど。「闇」妖精なのに光(聖)が使えるってのも確かにどうだよって思うし。
……とは言え得意属性以外は軒並み中位まで。純粋な火力ではどうしてもメイジに譲る。
「キリトくん、今のペースだとあと150秒でMPが切れる!」
前衛が金の衝撃波攻撃をどうにか回避し、すかさずアスナが回復しながら叫ぶ。
俺の魔法攻撃で金色のHPゲージは確かに削れているものの、あのゲージを一気に消し飛ばすにはもう一押し必須だ。
……この状況で考えられる攻略パターンは2つ。1つは二手に分かれて物理耐性の低い黒を倒しにかかり、その間囮と後衛で金を足止めする。その後前衛が黒を倒した所で再び金を攻撃し、タゲを取っている間に後衛が魔法攻撃で一気に殲滅する時間はかかるが安全重視パターン。
もう1つはこうなったら総員突撃、魔法属性付きの攻撃で金を全力で倒しにかかる。ただし魔法攻撃が使えない連中は必然的に魔法属性の上位スキルを使うことになるため、長い硬直が入って反撃を喰らうリスクが非常に高いハイリスク・ハイリターンの最短最速パターン。
「どうするキリト、安全重視で二手に分かれて攻めるか?」
「――ッ、いや……!」
金が振り下ろした戦斧を二刀を交差させてブロックしたキリトに向けて問う。
確実性を求めるなら、時間はかかるが前者を選ぶべきだ。しかしキリトは――
「ここはイチかバチか、ソードスキルの集中攻撃で金色を倒し切るっ!」
あえて、危険な賭けを選んだ。
ま、そうするよな……とその選択に俺は内心微笑む。だってここはSAOじゃないんだからな、死んでも現実で死ぬわけじゃない。
「ミスト、お前は大技あるんだろ!?」
「あるぞ! けど20秒は必要だ!」
闇属性魔法は火属性魔法と似た性質を持ち、即ち火力が高く攻撃範囲もそれなりに広い……が、詠唱が長く、発動が遅めで上位魔法になればMP効率がクッソ悪い――と言う特徴を持つ。
で、《
「なら俺たちで時間を稼いで、ミストの魔法に合わせてソードスキルの集中攻撃! 頼むぞ!」
「責任重大だな…………けどやってやるよ!」
斜に構えた言い草だが、それが俺なりに信頼へ応えようとしているのだと知っているキリトは口元に小さく笑みを浮かべ、他の前衛組と共に金を足止めに掛かる。
それを見届けて俺はガシガシと乱暴に頭を掻き、両手を頭上に掲げて詠唱を開始した。
前線では金の戦斧から繰り出される恐怖の一撃を危なげなくやり過ごし、HPが減れば即座にアスナが回復。
その間、俺は長ったらしくて「こんなのあるんだったらルーンでも入れろよ」って古ノルド語の詠唱に対して内心突っ込みつつ、詠唱完了まで残り5秒を切ったタイミングでアスナにアイコンタクト。
――もうすぐ撃つ。お前も前に出ろ。
その意図をくみ取ったアスナは頷くと、本当に偶然手に入ったと言う伝説級武器【世界樹の枝】を仕舞い、素早く細剣を出すと勢いよくそれを抜いて前線に飛び出していく。
それを見届けて、俺はニヤリと不敵に笑った。
「デカイの行くぞ、オルァ!」
吼えたと同時、既に詠唱完了し発動状態に入っていた魔法が起動する。
金を中心とした上下の空間が激しく歪み、紫のオーラが包み込む。
確か、空間を捻じ曲げて範囲内の敵に闇属性8割と地属性2割の混合ダメージを与える高位呪文、だったか。
魔法耐性を持たず、さらに高位魔法の直撃ともなれば金に対抗する手段はない。少なくとも瞬間火力であれば、この脳筋パーティ最強クラスのダメージを叩き出して金のHPゲージを6割近くはぶっ飛ばす。そして俺のMPゲージは8割消し飛んだ上に、結構な硬直が入った。
「ゴー!」
エフェクトが終わるタイミングを見計らい、キリトが合図を出す。各々の武器がライトエフェクトの輝きを放ち、烈火を帯びたクラインの剣撃、疾風と共に放たれるリーファの斬撃、雷光を放つリズの強打、水飛沫を散らしながらシリカの短剣が突き立てられ、後方からはシノンの放った氷の矢が金の急所らしい鼻の頭を正確に射抜く。
さらに正面からは気勢を吐きながらキリトが8連撃の片手剣ソードスキル《ハウリング・オクターブ》が全段叩き込まれたほんの僅かな差で、前線に合流したアスナが目にも止まらぬ速さでレイピアを5回突き出す。
見ているだけでなんだか敵に同情したくなる怒涛のラッシュだったが、しかしそれでも、金はタフだった。
既に技を出し終えた面々は長い硬直に入って動けない。
「キリトッ!」
クラインが叫ぶ。
金がキリトにタゲを取り、動けないキリトへ戦斧の一撃を撃ち込もうとしたその時――
「――ここだッ!」
確信を持って叫んだキリトは、右手の剣から炎が消えた瞬間、
間髪入れず氷の剣撃が金の横っ腹を深く切り抉り、さらに深く突き込み、跳ね上げると氷塊が断面から炸裂する。大型モンスターに有効な3連重攻撃《サベージ・フルクラム》だ。さらに右手の剣が再び輝きを放ち出す頃には他の硬直も解け、クラインを先発としたラッシュの第2弾が金に殺到する。
さらにキリトが垂直4連撃《バーチカル・スクエア》、トドメとばかりに《ヴォーパル・ストライク》が炸裂し、驚異とも言えるソードスキル4連携は終わった。
ラッシュに次ぐラッシュで金のHPゲージはレッドゾーンまで突入し、そのまま――と言うわけにはいかず、僅かばかりのHPを残して減少が停止する。
「ッ!」
まさか、と驚愕するキリト。金がそんなキリトを見下ろしながら獰猛な笑みを浮かべ――
後方から殺到した数多の闇の弾丸が全身を撃ち抜き、ダメ押しとばかりに残りを削り取った。
思わぬ追撃に驚いて振り返るキリト。その視線の先には闇属性攻撃魔法を唱えた俺の姿。
「……なあ、やっぱメイジ1人居ないと辛いと思うんだが」
「同感……」
ポツリと呟いて肩を竦めると、キリトは半ば呆れたように苦笑いを浮かべる。
で、瞑想から復帰した黒は相棒がいない事に気づいて動揺し、その後全員(主にクライン)のフルボッコによって特に惜しまれることもなく爆発四散するのだった。南無。
「おいキリ公、なんだよ今のは!?」
「……言わなきゃダメか?」
「ったりめぇだ! 見たことねェぞあんなの!」
黒相手に鬱憤を晴らし終えた後、その場に散らばったドロップアイテムに目もくれずクラインがキリトを問い詰めるが、そのキリトは答えるのが面倒くさそうだ。
「システム外スキルだよ。《
「け、けどよ、おめェ今さっき両手で――」
「いや、アレは《二刀流》ソードスキルじゃなかっただろ。全部片手剣のソードスキルだった」
このメンバーの中ではキリト以外の片手剣使いである俺が、クラインのツッコミを否定する。
多分アレは片手剣ソードスキルを左右交互に発動して、スキル使用後の硬直を潰すんだろう。第一、《二刀流》スキルだったなら両手で技を繰り出しているはずだ。
「ああ。それに、本家本元はミストだったからな」
「あっ……それって《
キリトの捕捉にシリカが思い当たる所があって答えた。
確かに俺がこの世界に来た最初の頃、どういうわけか所持していたエクストラスキルと組み合わせることで片手剣ソードスキルを両手で使う、なんて芸当をしていたっけ。
「ああ。感覚的にはミストが使っていた時と同じ感じだから、やろうと思えばミストもできると思う」
「って言ってもなぁ……ブランクあるし、細かい感覚だって違うだろうしすぐには無理さ」
「……そっか」
チラッと一瞬俺を見たキリトだったが、すぐにリーファへ顔を向けて何かを聞いている。
何か言いたげだったが、なんだったんだろう?
実際に今やれと言われたら……まあ、やっぱり無理だな。多少なりとも練習は必要だから。
「よっし! 全員HPMP全快したら、3層もさくさくっと片付けようぜ!」
キリトの言葉に俺たちは異口同音に応じ、開かれた下層への階段を駆け降りた。
このダンジョン「スリュムヘイム」は逆ピラミッド型の全4層構造になっている。
3層は2層の7割程度の面積。最後の4層はほぼボス部屋のみとなっていた。
狭いが細く入り組んでいる通路をユイちゃんのナビでさくさく進み、途中で2回の中ボス戦を挟み3層のフロアボスと接敵。
待ち構えていたムカデに人の上半身がくっついた邪神系ボスで、上層のボスと比べて2倍近い体躯を誇っている。
耐性こそそこまで高くない代わりに攻撃力が異常に高く、前衛に参加した俺を加えたキリトとクラインの3人でタゲを取り続け、その間に他がムカデ足を切り落として丸裸にしたのち、キリトの《スキルコネクト》を含む多重ソードスキルで仕留める事に成功。
なんかテンションがハイになってきて一気に4層に雪崩れ込み、スリュムの部屋まで駆け抜けようとしたその途中――「それ」が姿を現した。
それは細長い氷柱で作られた氷の檻で、その中に1人の女性が蹲っている。サイズは俺たちと同じ人間(妖精)サイズで、肌は白くて長く流れる美しい金髪が良く映える。大胆に胸元が開いたドレスから覗くボリュームは……なんと言うか、例えるなら見た目も相まって大人の魅力溢れる美女、と言っていい。
「お願い……。私を……、ここから出して……」
これは間違いなく男が寄って来る。そう、助けを求める女性の声に釣られる。その美しさに心奪われてフラフラ氷の檻に近付こうとしたクラインのように。キリトがバンダナの尻尾を掴んで止めたけど。
「罠だ」
「罠よ」
「罠だね」
以上、上からキリト、リズ、シノンの3人による冷静なコメント。
「お、おう。罠、だよな……罠、かな……?」
3人に突っ込まれて正気に返ったクラインだったが、まだかなり揺れ動いている。
実際に罠かどうかはともかくとして、この人はNPCっぽい……けど変わった点が2つほど。1つはHPゲージがある事と、もう1つ……これは俺にしか見えない視点だからかもしれないが。
「(なんか……このサイズにしては密度が『濃い』な)」
首を捻っている俺の横でユイちゃんから俺と似たような話を聞いたシリカたちが、
「罠だよ」
「罠ですね」
「罠だと思う」
と、上からアスナ、シリカ、リーファの3人が断言。
ほぼ全員から断言されて涙目のクラインは、唯一何もコメントを発さず首を傾げていた俺を見て助けを求めた。
「ミ、ミストよ! オメェは罠じゃないって思うのか!? だよなぁ、こんな美女が罠のはずないよなぁ!」
「はっ……?」
なんか1人で考えていたら、勝手に同志扱いされてたんですけど。
と、全員から無言の視線が一斉に突き刺さる。あのー……俺は別にクラインのように魅了されていたわけじゃないんですが。
「ミストさん……?」
「クラウド……?」
「待った、待ってくれ2人とも。俺は何も同意していないぞ」
「じゃあ、どうして黙っていたんですか?」
「それは、その……敵か味方か判断材料が無くて、困っていたからって言うのと……」
「のと?」
「……なんと言うか、こう……学校の先輩で同じバイト先で働いている包容力のある女性のような声に安心感を抱くというか……」
「お前が何を言っているのかまったくサッパリ分からないけど、限りなくメタい事を言っているってのは俺にも分かるぞ……」
いや、うん。なんと言うかごめんなさい。他に言い訳が思いつかなかったし、実際NPCの声になんと言うか癒しを抱いたのも事実なんだ。
「……とにかく、罠じゃない可能性だってあるけど今は時間が無いんだ。1秒でも早くスリュムの所にたどり着かないと」
「お、おう……。うん……」
キリトに促されて、クラインは小刻みに頷くと、やっと氷の牢屋から視線を外した。
再び奥に見える階段に向かって数歩走りだすと、背後からまたか細い助け声が。
「お願い……誰か……」
そりゃあ俺にだって良心はあるし、助けてあげたいと言う気持ちだってある。
仮にこれが罠だったとしても、通常のクエストならまあそれはそれで面白いかと納得して楽しむんだろうが今は緊急時。時間的余裕も無いし、危険を冒すリスクだって避けたい。
「……クライン?」
不意に、俺の横を並走していたクラインが立ち止って、俺も思わず立ち止まって声をかける。
俺たちに気付いた前の連中も立ち止って振り返ると、件の無精髭面をした野武士男は顔を俯かせ、両手をきつく握りしめていた。
「……罠だよな。罠だ、わかってる。……でも、罠でもよ……!」
低い声で呟きながら、がばっと顔を上げたクライン。
なんとなく、ほんとうになんとなーくだけど、クラインが言わんとしている事が俺は分かってしまった。
「……罠だと解っていてもよ、それでも俺ァ、どうしてもここであの人を置いてけねェんだよ! 例えそれでクエが失敗して、アルンが崩壊しちまっても! それでもここで助けるのが俺の生き様! 武士道って奴なんだよーーーッ!」
あ……戻っていったよあいつ……。
その言葉と後ろ姿に、俺は残念さとカッコよさの両方を覚えていた。
「……バカッコイイ」
「誰が上手い事言えと」
呟いた俺を、キリトがボソッと突っ込む。
その間にもクラインは吠えながら刀を抜き、氷の柱を真っ二つに切り裂いた。
――結論から言えば、女性NPCは罠でも何でもなく、ここの主で巨人の王スリュムに盗まれたと言う宝を取り戻すために忍び込んでいたらしい。
しかし門番に見つかってこの檻に閉じ込められて、たまたま通りかかって助けた俺たちに同行したい、と申し出てきた。
「なんか、キナくさい展開だね……」
「かといってあのNPCがスリュム本人、って可能性は無いだろ……自分から檻に閉じこもるって、どんな引きこもりだよ」
小さく囁いたアスナに同調しながらも、真っ先に考えられるだろう可能性は除外してみる俺。
いや、案外そんな閉じ込められたりするのが好きな特殊な性癖の持ち主という可能性もあるかもしれないが。
「おい、キリの字よぅ……」
美女の頼みでも流石に自分の一存ではどうにもできず、困り果てたクラインは情けない顔でキリトに顔を向ける。
「……あーもー、解った解ったって。こうなりゃ最後までこのルートで行くしかないだろ。まだ100パー罠だと決まったわけじゃないし」
で、結局パーティリーダーのキリトは半ばあきらめたように肩をすくめながら言った。
その答えに涙目だったクラインの顔がパァァッ、と喜色満面となって、美女に威勢良く宣言する。
「おっしゃ、引き受けたぜ姉さん! 袖すり合うも一蓮托生、一緒にスリュムの野郎をブッチめようぜ!」
「ありがとうございます、剣士様!」
それって「袖すり合うも多生の縁」なのか「一蓮托生」なのかどっちなんだよ社会人、と内心突っ込んでいると、横でキリトが「ユイに妙なことわざ聞かせるなよ……」とぼやきつつ、NPC加入の許可を出すと、視界の左上から順に並ぶ仲間たちのミニゲージに9人目のゲージが追加される。
名前は……フレイヤって読むのか? フレイじゃないのか。確か同じ北欧モチーフのRPGゲームでめっちゃ強いキャラがいたんだけど。
いや、けど実際このフレイヤって人もかなり強い。特にMPなんてこの中じゃMPが一番高いアスナを軽く超えるほどだ。MP効率に難のある魔法を覚えている俺からするとちょっと羨ましい。
「ダンジョンの構造からして、あの階段を降りたらすぐにラスボスの部屋だ。今までのボスよりさらに強いだろうけど、あとはもう小細工抜きでぶつかってみるしかない。序盤は攻撃パターンを掴めるまで防御主体、反撃のタイミングは指示する。ボスのゲージが黄色くなるとこと赤くなるとこでパターンが変わるだろうから注意してくれ」
キリトが作戦を伝えると、その場に居た全員がこくりと頷く。
「――ラストバトル、全快でぶっ飛ばそうぜ!」
『おー!』
このクエスト開始から3回目の気合いにキリトの頭上に座るユイちゃん、シリカの肩に留まるピナ、そして新たに加わったNPCの金髪美女フレイヤさんまでもが唱和する。
「――ところでミストさんって年上の女性が好みなんですか?」
「――そうよね。その辺り詳しく聞きたいわね、クラウドの口から直接」
「なして!?」
「そこの3人修羅場はクエストが終わってからにしてくれ」
完全なとばっちり&だんだん慣れてきたキリトの塩対応。
あと途中でうっかり間違って閉じちゃったんで前書き後書きがロストしました(^p^)
おかげでちょっと内容が違ってると思う……ダンテコッタイwww