寝て起きたらデスゲームに巻き込まれていたんだが。   作:リベリオン

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 4話を投稿します。今回はフィールドボス討伐直前……で、終了です。
 いや、6話からはがっつり書きますので……その前に次の話ではミストとシリカのイチャイチャ回にしていますが。
 その前にミストの設定を出して、土日は更新お休みするかもしれないですけど……。


第4話 攻略の鬼

第4話 攻略の鬼

 

前回のあらすじ:

 

ちょっといいとこ見せてやんよ。

 

 

 エギルたちと別れを告げて、道具屋でアイテムの補充をしてきて宿屋に戻ってきたころには日が暮れていた。

 待っていたシリカと夕食を食べている途中、俺は明日前線に行ってくる事をシリカに話す。

 

「前線……ですか?」

「そうなんだよ。フィールドボス討伐やるって言うから、俺もそれに参加してくる。キリトも一緒だ」

 

 パンを千切ってピナに食べさせながら聞き返してきたシリカに、俺は簡潔に答えた。

 俺にとって初めてのレイドボスになるわけだが……まあ、無理をせず安全第1でやらないといけないだろう。

 

「そうですよね。ミストさんは元々攻略組の人ですし……あたしが、無理につき合わせてしまってて」

「いや、シリカが責任に感じることはないって。《盾剣技》の性能を確認できる良い機会にもなったし、前線で戦ってくれる人が増えてくれれば俺たちも助かるんだから」

 

 おまけにそれが知り合いと言うなら、連携も取りやすいしボッチにならなくて済む(ここ重要)。

 あとは、どうしても参加したい理由があったりするからな。

 

「シリカが前線に来る時には相応の装備が必要になるし……ラストアタックボーナスで運よくシリカの使えそうな装備が落ちれば、そのままシリカに使えるしさ」

「それって……あたしのために、ボスと戦ってくれるんですか?」

「えっと……まあ、そんなところか? キリトにも話して協力してくれるって言ってくれたし」

「あ、ありがとうございます。……ミストさんやキリトさんに助けてもらってばかりですね、あたしって」

「下のプレイヤーを助けるのも上のプレイヤーの務めって奴だって。ゲットする保証は……まあ、ないんだけど」

「それでも嬉しいです。ありがとうございます、ミストさんっ」

「っ……」

 

 にっこり笑ったシリカに顔の表面温度が少し上がる。

 ああもう、こんな子に慕われるなんて……これがいわゆるモテ期と言うものなのか。こんな状況だけどやっぱ嬉しい。

 こういう時ってやっぱりこう言うんだろうな………我が世の春が来たぁぁぁ(ガプッ)アッー!?

 

「ピ、ピナ!?」

『きゅいー!』

「ピ、ピナさんやめっ、鼻は止めて! 噛み付いた理由は分かるからごめんなさい!」

 

 ごめんなさいピナさん! 俺が悪かった! 今後はピュアな気持ちを心がけますからぁぁぁ!

 

 

 ――翌日、転移門広場でキリトとエギルと合流し、俺たちは最前線である56層に向かい、主街区から徒歩でパニの村と呼ばれる場所に向かう。聞けばこの層には《聖竜連合》の本部があるそうだ。まったく気づかなかった。

 

「今回討伐するボスって、情報はもう出回っているのか?」

「ああ。オオカミの亜人型で、名前を《ヴェアヴォルフ・ブルート》。特殊攻撃や武器の類はないが、その分スピードが高いらしい」

「スピードアタッカーかよ……俺やエギルの苦手な部類だな」

 

 キリトみたいに機動力を重視したパワーファイター型ならともかく、俺は盾を持ってどっしりと構える前衛。エギルは両手斧の威力を生かして側面からの攻撃を得意とするタイプだ。

 

「お前の《シールドバッシング》なら注意を引けるだろう。が、代わりにお前へのリスクが大きくなるな」

 

 攻略のことになればエギルも真面目な顔つきになる。この世界では命がかかっているんだからそれも当然だろう。

 

「難しいなぁ……俺が攻撃受け止めている間にキリトたちが削って、回復のために交代した場合はかく乱して足止めしてもらう……ってパターンがベターになるか?」

「《聖竜連合》の防御部隊も来るはずだけどな……ここはあいつらのホームだし。場合によってはそいつらに任せて、ミストは《盾剣技》でアタッカーに専念……ってこともできるけど。ところで《盾剣技》はどこまで使えるようになったんだ?」

「とりあえずはスキル発動後の硬直を別のスキルでキャンセルできる程度まで。問題が剣のほうで使うソードスキルとの組み合わせになる。火力を求めるなら盾にも連撃系が欲しいところなんだけど……今のところ突進系しか使えないのがなぁ」

「懐に潜って連撃系でダメージを与えた後、突進系で離脱、がセオリーになりそうだな。しかしその《盾剣技》スキルに対応した盾はあったのか?」

「エギル、なんか対応している奴はあったか?」

「それが中々見当たらないんだ。エクストラスキルだけあって対応した盾は見当たらないな……」

 

 念のためエギルにもこのスキルに対応するかもしれない盾を探してもらっているが、今のところ中々出てこないらしい。

 ユニークスキルと違って、スキル同士の組み合わせだからレア度は高い方ではないんだろうが……元々盾持ちは防御の担当だ。そこに格闘である《体術》スキルを習得する奴はあまりいないだろう。

 

「斬撃系って事は、なんかこう……クローみたいな形状なんだろうけど」

「そもそも攻撃力を持つ盾自体、レアなものだからな。基本的に盾に要求されるのは防御力だけだ」

 

 その通りなんだよなぁ。わざわざ盾で殴る奴なんて……あ、ヒースクリフがキリトとのデュエルでやったっけ。けどあれとはちょっと違う。ただ殴っただけでソードスキルは発動されていない。

 使いようによっては攻防自在と《神聖剣》に似ていながらも、使用できる盾が限定されていて使い方に困る。完全に《神聖剣》の下位互換だな。

 

「ま、こいつのことは今はほっといて……そんなボスだったら敏捷系のアイテムをドロップしそうだし、シリカへの土産にはなりそうだ」

「そうだな。シリカのためにもなんとしても倒さないと」

「だから、お前らが倒す前提で……いや、もういい」

 

 やる気満々な俺たちにエギルは突っ込む気力を完全に失ってしまう。

 そして道中ポップしたモンスターを軽く蹴散らしながら、俺たちは目的地であるパニの村へとやって来た。

 

「まずは攻略会議から、だよな……集合場所は?」

「えっと……あれみたいだな」

 

 キリトが指差し方向には、岩山をくり貫いて作られたらしい住居があり、その入り口に2人の鎧を纏った男たちがいる。あそこが会議の場所のようだ。

 

「今回の陣頭指揮って……」

「最強ギルド《血盟騎士団》副団長にして、『閃光』の異名を持つアスナ……だな」

「……マジで?」

 

 まさかこんなに早くキリトの嫁とエンカウントする事になるとは……けどキリトが憂鬱そうな表情を浮かべるのはなんでだ?

 

「今回もまた意見が合わないんだろうなぁ……」

「合わない?」

「キリトとアスナだよ。この2人、いっつも意見が合わなくて衝突してたからな」

 

 そうか、そうだ。思い出した。

 このころのアスナは「攻略の鬼」なんて呼ばれるくらい徹底していた時期だ。しばらくすれば《圏内事件》でその性格も本来の明るい性格を取り戻していくんだっけ……この頃のアスナってどんなに怖いんだろう。

 

 ……と、ちょっとした好奇心を抱いた俺は激しく後悔している。

 

 攻略会議でアスナがフィールドボスを村に誘い込んでNPCを殺させて、その間に殲滅すると言う作戦に参加していた全員がどよめいた。

 確かにNPCで、しばらくしたらリポップするデータだけの存在って言うのは分かるけど……明らかに常軌を逸している。

 当然キリトは猛反対。俺もさすがにそんな作戦は気が引けてつい反対意見に加わっちゃったら、思いっきり睨みつけられた。こえーって。あの気が利いて優しい性格のアスナはどこに行ったの。ナマで聞くとマジ怖い。

 結局ボス攻略はその方法で行われる事に決まり、一旦解散してしまったんだが……。

 

「マジ怖すぎだろ……」

「ミストはアスナが責任者の攻略会議参加は初だったか?」

「え? あ、ああ。うん」

 

 初って言うか攻略会議自体初なんだが、一応攻略組という建前上はそう言う事にしておこう。

 俺のビビリ具合を気の毒に思ったのか、エギルはバンバン俺の肩をたたいてくる。

 

「ま、気にするな。この攻略が終わればお前も当分は前線に出てこないし、今だけの辛抱さ」

「そ、そうだな……しかしさすが鬼。迫力が違う……本人の前で言ったら鼻の穴が1つになっちまう」

「違いない。俺はキリトと話しているが、お前はどうする?」

「俺は……時間になるまで村をぶらついてる。またあとでな」

「そうか。またな」

 

 決まってしまった以上、不本意だがこの村を戦場にするしかない。そのためにもこの村の地形を把握しておかないと。

 こうして見ると、やっぱり特徴的なのは住居の穴倉だろう。これを利用すればボスをかく乱できるだろうな……。うまく利用して囲めば袋叩きできる可能性もある。

 人の数は……プレイヤーを除けば多いほうではない。小さい村だし当然か。

 

「けどやっぱ、気乗りはしないんだよな……」

 

 シリカのために頑張ると張り切ったはいいが、作戦の内容が内容だから気乗りはしない。

 確かにNPCを狙わせればプレイヤーへの被害も減る。認めたくはないが安全な方法だ。

 ……でもそれって、犯罪者ギルドの連中とやる事が同じって事じゃないのか? ただカルマが減る減らないかの違いだけで。

 

「はぁ~……これなら来るんじゃなかったなぁ」

 

 せめて《圏内事件》のあとならアスナとも気軽に話せただろう。今のアスナとは……出来れば関わりあうのは遠慮したい。

 もう1度ため息。すると、タイミングよくメッセージを受信して、俺は受信アイコンをタッチする。メッセージ主は……シリカ?

 

form シリカ

 

 ミストさん、そっちは大丈夫ですか?

 

 どうやらこっちの心配をしてくれているようだ。なんだかほっこりさせられる。

 俺は微笑を浮かべながら、メッセージの返信のために指を走らせた。

 

form ミスト

 

 今さっき攻略会議が終わったところ。終わったらまたメッセージ飛ばすよ。お土産楽しみにしててくれ。

 

「よし……っと」

 

 メッセージを送信し終えて、俺は気合を入れるため頬を叩いた。

 作戦は気に食わないが、シリカのためにもラストアタックボーナスを達成しないと。もちろん生きて帰る事も最優先で。

 

「ん? お前さんは……」

「俺?」

 

 不意に誰かが俺の事を呼んだ気がして辺りを見回した。

 見れば和風の鎧姿に身を包み、赤いバンダナに無精髭といった野武士面の風貌をした男が、その後ろに他の男たちを引き連れている。

 

「お前さん確か、攻略会議でキリトと一緒に反対していた奴だよな?」

「ああ……そうだけど。あんたは?」

「俺はクライン。ギルド《風林火山》のリーダーをやってんだ」

「俺はミスト。ソロだ」

 

 もちろん俺はその男の事を知っている。

 キリトがSAOに来て初めて知り合った奴で、理解者にして親友。さっき会議に出席しているのが見えたけど、まさか声を掛けられるとは思わなかった。

 

「お前さんもソロなのか。いや、キリトと親しそうだったから知り合いなのかと思って声を掛けたんだが……」

「最近知り合ってな。クラインもキリトの知り合いか?」

「ああ。まあな。しっかし、あのキリトに歳の近い同性の友達か……」

「まあ……歳は近いだろうけど。それがなにか?」

「いやな……実はキリトの奴、前に色々あってよ。それで自分のことを責め続けていたんだよ。それからはますますソロで無茶な攻略をするようになって心配していたんだが……なんだ、仲の良さそうな友達が出来たんじゃねぇか。ほっとしたぜ」

「そう……なのか」

 

 クラインが言っているのは《赤鼻のトナカイ》の話で起きた事だろう。以来キリトはより孤立してソロで動いていたはずだ。

 その時のことはクラインも知っていたんだよな……ギルドに入るよう誘っても、キリトはクラインを見捨てたって言う負い目を感じていてずっと気まずそうに避けていて。クラインは気にしていなかったのに。

 

「まあ、なんだ。俺が言いてぇことはだな……あんな奴だけど、これからも仲良くしてやってくれ。あいつも歳の近い男友達がいれば、色々といい方向に向くかもしれねぇ」

「……もちろん。あいつが違うって言っても、俺はそう思ってるさ」

 

 頭を下げながら言ったクラインに俺は笑みを浮かべて断言した。

 まだまだ背中を合わせて戦うのは先かもしれないが、キリトはそんな事で見捨てたりするような奴じゃない。それは分かっているつもりだ。

 

「そうか……ありがとよ。――ところでおめぇもソロって言っていたが……」

「あ、ああ。まああんまり目立たない攻略組さ。今は攻略休んで、知り合いの中層レベルプレイヤー育成の専属パートナーになってる」

「専属パートナー……? そういや、どっかで聞いた事があるな……「攻略組のソロプレイヤーが、中層プレイヤーに大人気の女の子を攫っていった」って。あれってお前さんのことか?」

「……不本意ながら、そういう風に呼ばれてる」

 

 おいおい、前線にまで知れてるのかよ……この勢いじゃ尾ひれに背びれ、胸びれまでつきそうな勢いじゃないのか。

 

「はっはぁ、やっぱりそうか。なんか珍しいエクストラスキル持ちって聞くからどんな奴かと思っていたんだが、まさかキリトの知り合いとはなぁ。ちょっと納得したぜ」

「ちょっと待てどういう意味だ」

「お前さんもキリトと同じって意味だ」

 

 それは性格とかそういう意味じゃなく、女の子にもてるから……とかそんな理由なんだろう。

 

「お れ は し ん し だ !」

「紳士ねぇ……ロリコンって言う名のおふぉ!」

「「「「「「リーダー!?」」」」」」

 

 すっごく失礼な事を言いかけてきたクラインに問答無用でアッパーカット。見事に顎を打ち抜いてクラインはひっくり返る。

 

「失礼だろお前!」

 

 すぐにクラインの仲間がクラインを囲って、慣れた手つきで運んでいった。「リーダーが悪かったな」とか言われる辺り、比較的あるあるなパターンらしい。

 ああ、うん……キリトが躊躇なく殴ったりする理由が、ちょっとだけ分かった。俺も今後はそうしようと思う。

 

 

 そろそろ作戦開始の時刻が迫りつつあり、俺は集合場所に戻りながらスキルの確認と変更を行っていた。

 盾持ちだから当然防御強化の《シールドコーティング》にHPリジェネの《バトルヒーリング》、さらには挑発できる《シールドバッシング》も入れてある。……自分で入れておいてなんだが、なにこの堅いの。ヒースクリフに劣るだろうけど。

 ああでも、防御は《聖竜連合》の連中がするって言っていたからな……《シールドコーティング》は必要ないかもしれない。かと言って入れる奴がないけど。

 

「このままでいいか」

 

 耐久力があるに越した事はないんだし。

 スキルの変更を完了し、メニューウインドウを消す。集合場所には既にエギルとキリトも揃っていた。

 

「どこほっつき歩いてたんだ?」

「村の地形を確認に」

「お前、そう言うところマメだよな……」

 

 感心したような、呆れたような様子のエギル。地の利を生かすに越した事はないだろう。

 そんな風に話して時間を潰していると、陽動隊から間もなくターゲットが村に入ると言う報告が届く。

 いよいよだ……正真正銘、俺の初のボス戦。今までのレベルが低い雑魚とは違う、正真正銘現段階で最強の敵と戦う。

 

「武者震いか?」

「かもな」

 

 僅かに震える手を見たキリトが、少し勘違いしながら言った。

 無論、恐怖もある。だけどただで負けるつもりはない。

 見ると数人の軽装の剣士3人が、その後ろにいるモンスターに追われている。あれが今回のターゲットらしい。

 《ヴェアヴォルフ・ブルート》。その名のとおり血に塗れたように真っ赤な毛並みは、その一部が硬質化して刃物のように鋭い。サイズもこの中で1番でかいエギルを上回る辺り、2、3mはあるだろう。

 

「こういう時、なんて言いながら始めればいいと思う?」

「景気よく前口上って奴か? そうだな……「俺は太陽の子!」なんてどうだ?」

「ねえエギルあんた本当にアメリカ人? なんでそんな古いの知ってるの。俺だってレンタルでようやく知ってる程度なのに」

「え……2人して何の話だ?」

 

 俺とエギルのアダルトすぎる会話についていけないキリトは小首をかしげる。そうだよねー、普通なら知らないもんね俺たちの世代は。バイオライダーマジチート乙。

 

「機会あればBLACK○Xを借りて観てみろよ」

「ブ…ブラック?」

「俺はあれより……あ、思いついた。「その命……神に返しなさい!」はどうだ?」

「だから何の話だよ!?」

 

 どうやらキリトは特撮物に興味はないらしい。面白いと思うんだけどなぁ。

 そんな事していたら、俺たちがふざけていると思ったのか攻略の鬼が「そこの3人! 真面目にやりなさい!」って怒られた。ごめんなさい。

 

「えーっとじゃあ時間も無いし……よし、これで行こう」

 

 ただいま絶賛大人気放送中のあのシリーズから、今回は引用しよう。

 村に赤い毛並みの狼男が飛び込み、遠吠えで吠える。

 それを聞きながらエギルは斧を構え、俺とキリトは剣を抜いた。

 

「――ここからは俺たちのステージだ!」




 打ち切りエンド感が半端ない終わりだ(おい
 次は《心の温度》の回。リズベットも登場し、さらに今度こそアスナが出て来ます。
 前編はリズがキリトとアイテム採りに行っている間の話に仕立てる予定です。最初はシリカとラブラブして、後半アスナに引きずられて現在攻略済みの階層を駆け回ります。

 誤字、脱字などがあったら報告していただけるとありがたいです。それでは。
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