寝て起きたらデスゲームに巻き込まれていたんだが。   作:リベリオン

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 1週間で出来た。びっくりだ。
 さあ8話はミストとシリカの2人がついに……! やってしまったとも思うがもうやっちゃったんだから仕方ないですよね。
 今回ミストのキャラをぶっ壊して某絶園のテンパリストをイメージしながら書いて見ました。んでもって隠れヘタレ属性も追加されてどこぞのはがないかと。
 結局クラインの人生相談は出しませんでしたが、ちょっとだけ良い所を見せられるように頑張りました。キリトたちから散々な評価を受けているのは、クラインだから当然かと割り切ってください(えー


第8話 繋がる心

第8話 繋がる心

 

前回のあらすじ:

 

 シリカに告白された……だと……!?

 

 

 よくぞ集まってくれた勇者たちよ! ここに集いしは各々名を馳せた歴戦の勇士ばかり! そなたたちならば必ずや魔王を打ち倒し世界に光を取り戻す事だろう!

 

「いやなんだよその語り」

「すまん。寝不足で頭が回らないんだ」

 

 半眼で突っ込みを入れてきたキリトに素直に謝った。

 場所はエギルの店。大事な話があるからとクラインとキリトを呼び出し、さらにエギルも加えての4人がこの場に居る。

 

「寝不足って、俺たちが帰ってから何してたんだ?」

「いやその……話って言うのはその後に起きた事で。相談がしたいって言うか……」

「相談? まあ聞くだけなら聞くが」

「助かる。正直この手の話を誰にすればいいのかすぐに浮かばなくて……」

 

 俺が本気で困っているのがそれほど意外なのか、3人とも目を丸くしていた。

 

「一体どうしたんだ? 何か謎解きが必要なクエストでも受けてしまったとか?」

「そんなのだったらどれほど気が楽だった事か……。えっとー……あのですね、えー……」

「なげぇよっ!」

 

 いざ言葉にするとなるとかなり恥ずかしい。そんなだからうーうー唸っている俺にクラインが一括を入れて来て、俺はびくりと肩を震わせて、思い切って口にした。

 

「実は昨夜、シリカに「好きです」と告白を受けました……」

 

 うあー! うあああー! 言った、言ってしまった! 改めて口にするとものすごく恥ずかしい!

 だってしょうがないだろ!? 告白された事なんて初めてなんだから! もうどうすりゃいいのかわかんないんだよ! 自分のキャラを自分で崩壊させてるよちくしょう!

 

「「「………………」」」

 

 けど、俺が心の中で身悶えているのとは裏腹に、当の相談を受けた3人はぽかーんと口を半開きにしていた。……え。なにそのリアクション。俺的にはMMRの団員みたいなリアクションが来ると思っていたんだが。

 

「なんだ。そんなことか」

「え」

「ようやくかよ。もったいぶらせやがって」

「え」

「そうなのか。おめでとうミスト」

「ちょ…ちょっと待てー!」

 

 なんで皆そんなにあっさり塩味!? あとキリト、まだ受けただけで交際には至ってないんだよ!

 

「なんでお前らそんなに冷静なんだよ!」

「なんでってそりゃぁ、知ってたからに決まってるだろ」

「な、なんだってー!?」

 

 知ってたの皆!? 初耳なんですけどっ!

 

「と言うかあんなイチャイチャしていながら付き合ってないって言うのが、俺は逆に不思議でならなかったな。シリカのファンもお前がいるから殆ど諦めていったのに」

「……マジで?」

「って言うか一見して分かるだろうがよ。シリカちゃん、明らかにお前さんに好意持ってたのによ。な、キリ公」

「え……いや、うん……そ、そうだな。うん」

 

 いきなり話を振られてキリトは若干テンパった反応をしたが、一応同調した。

 「こいつ、絶対気づいてなかったな」とキリトを除いた面子が思ったのは言うまでもない。いや、当の本人も気づいていなかったんだが。

 

「そもそも恋愛ごとなら女子に相談するほうが良かったんじゃないか?」

「いや……あの2人(アスナとリズ)に相談すると怖い結果になりそうで」

 

 色々と根掘り葉掘り聞き出して、辱められる結末しか浮かんでこない。

 

「そ、それに男の意見を聞きたいんだよ。ここにいるのは人生経験ほう……ふ……」

 

 いや……待て。この面子は……。

 

 キリト:人付き合いが苦手。

 クライン:彼女居ない。

 エギル:唯一の既婚者。

 

「……あれ。人選ミス?」

「うっせー!」

 

 ボソッと呟いた言葉にクラインが涙目で反論した。

 

「助けてほしいってメッセージが届いたから攻略投げ出して駆けつけてみたら、恋愛相談を受ける羽目になったこっちの身にもなりやがれ! つかうらやましいんだよチクショウ! 俺だって……俺だってなぁ! うぐっ、えぐっ……」

「いい歳した男が本気で泣くなよ……」

 

 エギルがマジ泣きしているクラインに呆れている。おかしい、俺が相談者のはずなのに立場が入れ替わってる。

 そっとしておこう……いや、何かしらいい意見をもらえるかもしれないし、ここはどうにか宥めないと。

 

「あれだって、クラインにもきっといい人が見つかるって……なあ、キリト」

「そ、そうだよな。SAOの中だと女性プレイヤーの数が少ないけど、現実の世界ならクラインを好きになる人が見つかるって。うん、きっとそうだ!」

 

 俺の意図を察したキリトが相槌を打ち、2人でどうにかご機嫌を取ろうと試みる。

 だがしかし、それで納得すれば世界のモテない男は納得しない。なぜかと言うと目の前に実例がいるからだ。

 

「そんなテンプレフォロー腐るほど聞いたわ! なんでだ、なんでお前たちはモテて俺だけがモテない! 子供より大人の魅力溢れるのに!」

「無精ヒゲ生やした野武士面が大人の魅力なのか……?」

「ああ、そうだよな。やっぱり第1印象って見た目だし、清潔感がある方が印象良いよな」

「それでもって、大人の魅力って言うとやっぱり多少の事でも動じない余裕を持つこととか?」

「器の広さか……うん、なるほど。……ってことは」

 

 とりあえず大人の魅力とやらで浮かぶ物を手当たり次第に言っていくと、身近に該当者が1人居た。

 俺もキリトと同じ結論に至り、揃ってその主に目を向ける。

 

「……おい、なんで俺を見るんだ?」

「いや……」

「やっぱりエギルは大人の魅力があるよなぁと」

「ぐっはぁッッッ!」

 

 あ、クライン見事に撃沈した。

 

 

「くっ……お前ら揃いも揃って、人の心を完膚なきまでにハートブレイクしやがって」

「そもそも今回の相談者はクラインじゃなくてミストだろう。アドバイスは納得するほど的確だったが」

「ちょっとはフォローしてくれよエギル!?」

「まあまあ、クラインの話はまた今度にして、今回はミストの相談を真面目に答えないか?」

 

 うん、そうだ。出来ればそうしてくれ。俺本気で困ってるんだから。

 

「んなこと言ったってよ、あとはミストの気持ち次第じゃねえか」

「まあ確かにな。シリカはミストのことが好き。だったら後はミストがどう思っているかだ」

「お、俺次第?」

「おう、そうだ。実際ミストはシリカちゃんの事をどういう風に思ってるんだ? もちろん異性として。はっきり言ってみろよ」

「いや…そ、それはその……」

 

 さっきの仕返しも兼ねているのか、実に楽しそうに悪い笑みを浮かべてクラインが問い詰める。

 なんて言い返そう……意味もなく呻いていると、したり顔でクラインは逃げ道を塞ぎに来る。

 

「ちゃんと本心で答えろよ。お前は誰とも仲良くしているが、その実本心の本心を晒すってことをあまりしてなかったように見えるんだよな、俺は。意識してるかしてないかは分からんがよ」

「そんな事していたつもりなんて無かったんだけど……周りからしてみればそう見えたのか」

 

 確かに重要な事――俺の事とか、他にもこの世界の事とか――は迂闊に話せないと思って誰にも話していなかった。

 それが結果的に本心を隠す事になって、皆によく思われていなかったのかな。

 

「ああけど、勘違いするなよ? 本心を見せないから悪人だとか言ってるつもりはねぇんだ。誰だって言えないことがあるしよ。けど今回は、お前の本心を知らなきゃどうにもできねぇだろ」

「クライン……」

 

 クラインにしては珍しく良いことを言って、俺は多分初めてこいつに尊敬の念を抱いた気がした。

 そうだよ、普段女好きでお笑い担当だけど、義理堅いのがクラインだったよな。その一面をもうちょっと押し出せば女性も寄って来ると思うのに。

 

「今回は珍しくクラインの言うとおりだな。結局お前がシリカを本当にどう思っているのか……それで決まるんじゃないのか?」

「珍しく、はよけーだ!」

 

 エギルにクラインが突っ込みを入れるのを見ながら、俺は考えた。

 俺が、シリカのことをどう思っているのか……。

 そんなの……そんなの………………。

 

「……………」

 

 もう、隠し通す事なんてできない。3人に顔を見られたくなかった俺は両手で顔を覆って俯いた。

 

「ミスト?」

「……あーもー……嬉しくないわけねーじゃねぇか!」

「え」

「シリカみたいに可愛い子に好きだって言われたら嬉しいに決まってるだろ! 付き合えたらなーとか考えたことだってあるさ! でも兄ポジションでも満足出来てたから別に良かったんだよ!」

「ちょ、おい! いきなりどうした!?」

「うっさい天然女たらし!」

「たらっ!?」

 

 抑え込めない感情が激流となって言葉になる。自分でも何を言っているのかもうわけが分からなくなって、キリトたちを唖然とさせていた。

 

「告白されて驚いたけど内心にやけるのが止まらなかったわ! ああ、そうさ! そうだよ! 俺だってシリカの事が大好きだ! 年齢差がなんだ! 文句あるかゴルァーッ!」

「おい落ち着け! お前キャラぶっ壊れてるぞ!」

「ぶっ壊したのはどこぞのクラインさんですかねぇ!?!?」

「ひとまず落ち着け、ミスト。クラインは煮るなり焼くなり好きにしていいが、後にしろ」

「俺を生贄にするなよなぁ!?」

 

 ついには暴れだそうとする俺をエギルがどうにか宥め、俺も少し落ち着きを取り戻す。

 言った……言ってしまった……めっさ恥ずかしい。穴掘って埋まりたい。誰かスコップ貸してくれ。

 思い返してもやっぱりどうしても恥ずかしさしか出てこず、俺は身悶えていた。

 

「けど、お互い好きだって分かったならどうしてその場でOKしなかったんだ?」

「だ……だって……」

 

 ごもっともなキリトの疑問に思わず唸る。

 確かに、実は両想いでしたって分かったならそのときに告白受ければよかったはず……はず、なんだが。

 

「シリカ怒っていたし、突然告白されてテンパッてたし……」

「あー、なるほどなぁ。そりゃ確かに言えないか」

「あと……」

「あと?」

「なんて返事返せばいいか分からないんだよ! 告白された事なんて人生で初だし、勝手が分からないんだよ俺!」

 

 それが最大の理由。

 告白されるなんて初めての経験にどうしていいか分からず、おまけにすっとぼけを演じていた結果があの醜態。どんな顔してシリカに会えばいいのかわからない……。

 

「もうだめだ……シリカに嫌われた……今ならさ○かの気持ちもよく分かる」

「さ○かって誰だよ!?」

「浮き沈み激しいな、おい!」

「俺って、ほんとバカ」

「落ち着けぇぇ!?」

 

 

 結局「素直に謝罪して、気持ちを伝える」と言うありふれた結論に至ってしまい、解決したのかしていないのかよく分からないまま追い出され、現在はシリカの部屋の前。位置情報は追い出された時に確認済みだ。

 ……けどいざ前にすると頭の中が真っ白になって、逃げ出したくなる。なんてヘタレだ俺は。

 

「(大丈夫だ……落ち着け)」

 

 何度も自分に言い聞かせ、意を決して扉を叩いた。

 

「シリカ。少しいいか?」

 

 返事は無い。直接顔を合わせて言いたかったが仕方ないと諦めて、俺はこのまま言葉を口にした。

 

「昨日はごめん……俺の鈍感のせいでシリカを怒らせて。――でも、なんとなくだったけどシリカが俺に好意を持ってくれてるって気づいていたんだ。それは嬉しかったんだけど、思い違いだったらバカみたいと思ってて……今のポジションでも十分満足していた。けどそれが、却ってシリカを傷つけることになってしまってたんだよな。本当にごめん、謝って済む問題じゃないと思うけど」

 

 何をどう言葉にすればいいのか、そんな事分からない。

 けど一々考えて口にするよりただ浮かんだ事を言葉にすればとも考えるが、どうしても途中途中でどもってしまう。

 

「前にも言ったけど、俺って彼女もいないし告白とかも当然された事はなかったから、シリカに好きだって言われた時は嬉しかったし、けど驚きすぎてテンパッてしまって……それで、その……あのだな……」

 

 いざ、俺の気持ちを口にしようとしても、どうしても恥ずかしくて言い出せなくなってしまう。ただ一言を口にすればいいだけなのに、今はその言葉を引っ張り出すのがどんなボスよりも強敵に思えた。

 手遅れだったらどうしよう……そんなネガティブな事ばかりが頭にちらつく。

 けどそれは自業自得だ。俺の振る舞いのせいでシリカに呆れられたなら、それでもうすっぱり……いいや、諦めきれない。

 明確に自覚したとたんにシリカと離れたくないという思いが強くなる。これまでも、これからもシリカと一緒にいたい……俺は……俺は……!!

 

「……俺はシリカの事が好きだ! まだ間に合うのなら、俺と付き合ってくれ! お願いします!」

 

 言……った。ついに言ってしまった……。

 生まれて初めて告白したから顔から火が出そうなぐらい熱い。他の誰かに見られたら、隠居してしまうくらいに。

 そもそも告白した所でシリカがまだ振り向いてくれるのか? あんなに怒らせてしまったのに……。

 暫くし待っても反応が無いため、やっぱりダメだったか……と諦めモードでその場を後にしようとしたが、ふと鍵の開く音が聞こえ、扉が僅かに開く。見れば隙間からピナが覗き込んでいた。

 

「ピナ?」

『きゅるるっ』

 

 どうやら掛かっていた鍵を勝手に開けて出てきたらしい。けどピナが居ると言う事は、シリカも部屋に居るという事だ。

 

「シリカ……」

 

 ピナを抱えて、半開きの扉を開ける。

 やっぱりシリカは部屋に居た。と言うより扉の前に居た。

 背を向けていてどんな表情をしているのかは分からないが、俺は踏み出そうとした足を止める。

 

「……シリカ、俺……」

「もう1度……」

「え?」

「……もう1度、聞かせてください。さっきの言葉」

 

 さっきの言葉というのは、俺の告白の事だろう。

 恥ずかしいとも思うが、けれどもシリカときちんと向き合わなければならない。はっきりと俺の気持ちを伝えるためにも。

 

「……俺はシリカが好きだ」

 

 一切偽らずに気持ちを口にする。最初に比べて2度目はもっと自然に口に出す事ができた。

 今更何を言ってるんだとか、そんな事考えてるんだろうな……。

 

「……ずるいですよ。あたしの気持ち気づいていたのに、惚けてたなんて」

「本当にごめん。嬉しかったけど……怖かったんだ。女の子に好意を抱かれるなんて初めてだったから、どうすればいいのかわからなくて」

 

 気づいていない振りをして目を背けた結果、シリカを傷つけてしまった。

 酷いことをして今更虫が良い話かもしれない。ぶん殴られるのも覚悟している。

 

「……初めて出会った時のこと、覚えてます?」

「え? ああ、35層の迷いの森だな」

 

 突然訊かれて少し戸惑いもあったが、すぐに答えることが出来た。

 突然このデスゲームに放り出され、たまたまその場に居たキリトの後をくっついていたら、モンスターに殺されそうになっていたシリカと出くわしたんだっけ。

 あれが4ヶ月前になるのか……ずっと昔の事みたいに懐かしく感じる。

 

「街に戻った後、ミストさん言いましたよね。「ちやほやされていい気になってた報いを受けたんだ」って」

「あー……確かにそんな風に言ったっけ」

 

 考えてみれば大事な友達が死んだ直後にあんな言葉は酷すぎたかもしれないと、今更になって反省する。しかも年下の子供相手にそんなこと言えば、確かにキリトに咎められる。

 

「でもその後に言ってくれた言葉で、あたし思ったんです。全部あたしを思って言ってくれた事なんだって。最初はちょっと冷たい人なのかなとか思ってたんですけど、実際はそんな人じゃなかった。むしろピナに噛まれたら大慌てしちゃうような面白い人でしたよね」

「ぬぐっ……い、いや、あの時は俺とピナは互いに探りあい状態だったから」

 

 復活してからしばらくの間、ピナは頻繁に突いてきたり噛み付いてきたりと俺に対して警戒心を抱き続けていたよな、確かに。

 現在はすっかり打ち解けて、飼い主ではない俺に対してもこうして抱きかかえられても抵抗しなくなったし。

 慌てて弁解する俺に、シリカは微かに肩を震わせた。多分まだ仲が悪かったころを思い出して笑っているのだろう。

 

「たったの4ヶ月……でも、この4ヶ月で随分遠くまで来た気がします。攻略組なんて、あのころのあたしには想像もしてませんでした。全部……全部、ミストさんが傍にいてくれたからですよ」

「そう……かな」

「そうですよ。でなかったら、あたしは今ここに居ません。今も中層に留まってました」

 

 確かにシリカは原作では攻略組に居ない。あの後もずっと中層のプレイヤーのままだったはずだ。

 けど俺やキリトと出会って、何かが変わった。いや……変わったんじゃない。傍にいたいと思って一歩を踏み出したんだ。

 

「……ミストさん、わざと惚ける真似はもうやめてくださいね?」

「えっと……努力する。もしそんな素振り見たら、遠慮なく突っ込みいれてくれあだっ」

『きゅっ!』

 

 言った傍からピナに顎を突かれた。「言われるまでもなくやってやる!」と言っているのだろうか。突然突かれて思わずピナを放してしまった。

 

「あたしがしなくてもピナがしてくれるみたいですね」

「ピナの突っ込みは手厳しいからな……今まで散々食らってきた俺が保障する」

「ふふっ……そうですね」

 

 肩を微かに震わせ、笑いながら同意するシリカに俺も釣られて笑みを浮かべた。

 ようやく振り返ったシリカは怒っている様子もなく、穏やかな笑みを俺に向けてくる。

 

「結構な回り道しちゃいましたね」

「その原因はほぼ全部俺なんだよな。ごめん」

「もういいですよ、たくさん謝ってもらえましたから。それで、ですね」

 

 言って、何か躊躇うようにモジモジするシリカに首を傾げた。

 

「その……あたしたち、お付き合いして、いいんですよね」

「えっと……ああ。シリカさえ良ければ」

「あ、あたしは構いませんよっ! 今は凄く嬉しいです! そ……それで、その……お願い、聞いてもらえませんか」

「俺が出来る事だったらいいけど……え。シ、シリカ!?」

 

 快諾した直後に取ったシリカの行動に俺は戸惑う。

 目を閉じて顔を上げ、何かを待っているように見えるこれは……ま、まさかアレか? アレなのか!?

 い、いや……確かに恋人同士ならそういうことをしても当然なんだろう。けど、けどだからっていざ俺にお鉢が回ってくるとなると恥ずかしいというか、でもシリカにこんな事をさせたなら彼氏としてしっかり責任を取らなければというかああもう自分でも何を言ってるんだ俺は! おまわりさんこっちでーすっ! いや自分で自分を捕まえさせてどうする!

 

「(ええい、ヘタレ過ぎるだろう俺!)」

 

 頭を左右に振ってヘタレを追い出す。

 ガチガチに緊張するのを自覚しながらも、俺はシリカの小さな肩に手を置き、そっと顔を近づけて――

 

「ん……」

「っ……」

 

 時間にしてみれば5秒にも満たないような口付けを交わした。そしてゆっくり顔を離すと、自然と目が合う。

 

「……ごめん。今の俺にはこれが精一杯だ」

「い、いえ……あたしもこれ以上はちょっと……」

 

 どうやらお互いにかなり恥ずかしいようで、見るまでもなく顔が真っ赤になっている。

 これは……あれだな、彼氏としてヘタレな性格はどうにかして改善していかないといけない。でないとシリカに呆れられる。

 

「その……不束者ですけど、改めてこれからもよろしくお願いします、ミストさん」

「い、いや。こっちこそ……それと、さ」

「? はい?」

「ミストじゃなくて……霞だ。白峰霞。俺のリアルネーム」

「霞……さん。あたしは、あたしのリアルネームは綾野珪子です」

「珪子……な、なんだかいざ女の子の名前を呼び捨てで言うと恥ずかしいな」

「そうですね。あたしもなんだかくすぐったいって言うか……」

 

 結局お互いのリアルネームを明かしたものの、本名だし2人きりの時だけで呼び合おう、という取り決めになった。

 今日、この日から俺たちは改めて恋人として付き合うことになる。どうすればいいのかなんてお互い知らない事だらけだが、どうにかやって行けるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――だが、この時俺は大きな間違いを犯してしまった。

 

 こんなにも苦しい思いをするならば、俺はシリカと付き合うべきではなかったのだと――――

 

 ――――この時はまだ、微塵にも考えていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 8話をお送りしました。さりげなくミストのリアルネーム出したり、実ははがない主人公タイプだったり……え? そんなことより最後のあれは何なのかって? それは今後の展開に関わるので。
 ただ言えるのは、そろそろ日常テイストは終わりで次回からはシリアステイストを押し出していきますと言う事です。
 あと、完全に話変わりますけどそろそろタグに何か追加したほうがいいですかね? 何を追加すればいいかまったく分からないですけど。
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