ノーステフ・ノーライフ   作:sayutan

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魔法(チート)vs.原作知(チート)

「さて、この者にもう挑むのはおらぬか?」

 

 そう司祭が告げ、辺りを見渡す。だが、皆沈黙を保って司祭と、その前に佇むクラミー・ツェルを見ていた。

 

 あまりのバカ付きの強さに王になる資質があると信頼を置くものもいれば、完膚なきまでに叩きのめされたことに不信感を抱き、疑いの目で見つめるものもいた。

 

 だが、そんな彼らに挑むと宣言する者はいない。

 

 もはや権利がない。いや、権利があってもあの少女に勝てる未来が見えない。まさしく、そう思わせてくれる人物こそが、王の求めていた人物。

 

 すなわち、次期国王にふさわしい人類最強のギャンブラーなのだと、皆がその事実を認めようとした。

 

「では、今この時をもって、次期国王をこの者、クラミー・ツェルに....。」

 

 そのとき、

 

「戴冠させ「「異議あり!!」」

 

....予想外のよそ者が門を開けて飛び入りをかましてきた。

 

「異議あり!!ありありでーす!!」

 

「な、何なんですかあなたたちは!!」

 

「『何なんですかあなたたちは!!』と聞かれたら!!」

 

「....答えてあげよう、われらの名、をっ....!!」

 

「空!!」

 

「....白!!」

 

「ステ....「あら、やっと来たのね?三人とも。来ないのかと思って逆にヒヤヒヤしたわ。」

 

「....。」

 

「おや?ということは、来てほしくなかったということかな?」

 

「当然ね。だって、また面倒が増えるんだもの。あなたたちは面倒回避するために、この時を狙ってきたみたいだけどね。」

 

「はは。それはちょっと違うんだが。ま、そう思ってくれてていいよ。」

 

「あら?それはごめんなさい。それじゃ、さっさと済ませましょうか?」

 

「いやまあ、早く勝敗つけるのは嫌いでは無いんたが....。」

 

「ん?どうかしたの?」

 

「『他国の力使ってチートしてるやつ』と戦っても、楽しくないなと思ってな。」

 

「....。」

 

 ここで、クラミーの表情は無くなる。と、同時に観客には様々な表情がでていた。

 

「あいつ、他国の力っつったか?」

 

「つーことは俺ら負けて当然だったじゃねぇか!!」

 

「あいつ許すまじ!!」

 

「いやいや落ち着きなさいよ。他国の力があればこの国も持ち直せるかも...」

 

 と、後ろでガヤガヤと騒ぎ立て始めた観客を尻目に空は、白に合図を送る。

 

(いたか?)

 

 そして白は合図を送る。その合図に空は予想した通りだと、苦悶の表情を浮かべる白の頭を撫でて慰める。

 

 

 

 そう、白の出した合図の内容は....

 

 

 

『いない』....だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時を遡ること空たちが某悪役の登場常套句をのべ始めた頃。

 

 ご無沙汰してます。シュウです。

 

 いま、観客席にて舞台の様子を眺めている様子にございます。

 

 え?なんでここにいるのかって?それは空達の計画に(無理矢理)加担させられてるだけですどうしてこうなった....。

 

 まぁ、それはいいとして、私に与えられた任務は他国の種族、空が言うところの森精種(エルフ)を探し出し、空の言動に合わせて観衆に森精種(エルフ)の存在を知らしめること。

 

 原作ではこれによって、魔法を直接には受けない一見平等なゲームに持ち込む事が可能になる、重要な一手になります。

 

 そこで、私はここに先回りして森精種(エルフ)を探し出しておくという行動を起こしていたのですが....ここで問題が発生してしまった。

 

 その問題とは....

 

 

 

(森精種(エルフ)が見当たらねぇ!!?)

 

 

 

....である。いやアニメでは居たよねフィーさん!?原作では男の森精種(エルフ)で(クラミーの彼氏かこの野郎羨ましい!!)と思ったが、きちんといましたよね!!

 

 それがいないっ!!

 

 なんだ?俺がいることによって物語改変したって言うのか!?ある程度同じに進められていると思っていたけど、どこで間違えた!?

 

 このままでは空が王になれず、クラミーが王になって森精種(エルフ)傀儡(かいらい)政府状態になって?エルキア防戦状態にするのはいいもののジリ貧になって?結局人類種全員森精種(エルフ)の奴隷になって?美人の森精種(エルフ)に囲まれて使い倒されてしまう!!

 

....うん。悪くないな。

 

 じゃねぇよ!!そうなったらまだご褒美だけど、醜悪で臭悪な中年森精種(エルフ)の奴隷になってみろ!!毎日が地獄だわ!!

 

 ....お、落ち着こう。冷静になって考えよう。エルフが魔法を使えるなら、しかもアニメ準拠でフィーなのだとしたら....

 

 

 

 姿の改変なんてお手のものだろう。

 

 

 

 『六重術者(ヘキサ・キャスター)』のフィーなら姿改変に一つ、あと五つもクラミーのゲーム支援に魔法を回せる可能性がある。

 

 そんな余裕を持っているやつとゲーム?ご冗談。勝ち目なんてない。いくらなんでも今の『  』(くうはく)では勝ち目がないに等しい状態だ。

 

 どうする?このまま見つけきれずに終わっちまうのか!?どうするどうするどうするどうするどうするどうするっ!!!

 

「『他国の力使って魔法してるやつ』と戦っても、楽しくないなと思ってな。」

 

 もう間に合わないのか!?白が俯いて泣きそうになるのをこらえている。

 

 く、くそっここで終わってしまうわけに....は....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(シュウ。信じてますわ。)

 

 

 

 ....お嬢様が、ステフが、そんな目で私を、いや俺を見た。

 

....はあ、何て顔をしていたんでしょうか私は。そんな思い詰めた顔をなさらないでくださいよ。お嬢様。

 

 そう思ってシュウはステフにとっておきの作り笑いを披露して、自分を奮い立たせた。

 

 何て情けない姿さらしてんだと、俺が守ると決めた人が、森精種(エルフ)の中年親父の奴隷になるかもしれない未来を『うん....悪くないな。』だと!!?ふざけんな!!

 

 そういままでの自分を責め立てて、心に決意という名の火ともし、目をあげる。

 

 そこには....。

 

 

 

(おいおい。布石はもう打ったぞ?お前の提案したゲームでお前が先に降りるなんての、ぜってぇ許さねえぞ?)

 

 

 

 と、今も白の頭を撫でて慰め、余裕の表情を崩さずに、クラミーと会話して時間稼ぎしている空の背中が、そう、語りかけていた。

 

(....やはりあなた方は無類のゲーマーですね。)

 

 そう思って立ち上がり観衆を後ろから見渡す。どこかにいるはずだ、森精種(エルフ)が!

 

 

 

 ....いた!!恐らくアイツだ!!観衆席一番前の左端に位置する席にいる、皆他国の力を話題に話してるのに一人だけ、誰とも喋らずクラミーの方を見続けてるアイツだっ!!

 

 さあ、ヤマ張ってしまったが確証を得る時間がねぇ。覚悟を決めていこうぜ!!

 

 

 

 さぁ、説得(ゲーム)を始めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(クラミー。動揺してはいけないのですよ。私の方は大丈夫なのですよ。)

 

(えぇ。わかってるわフィー。でも、こいつらに尻尾捕まれてる可能性は高いわ。お互い慎重にね。)

 

(わかってるのですよ。いざとなったら魔法の支援を....)

 

「もし。そこの森精種(エルフ)殿。隣失礼しますよ。」

 

(!!?クラミー!!一旦魔法を解くのですよ!!)

 

(え!?なんで!?)

 

(訳は後!それとこっちを見てはいけないのですよ!!)

 

(えっ!?ちょっと、フィー!!....ブツッ)

 

 そうしてクラミーとの通信魔法を解いて、話し掛けてきた男の方を見る。そこにいたのは執事服を着た青年だった。

 

「おや?お話はもうよろしいので?」

 

「なんのことだかわからんな。私はおしゃべりが苦手でね。さっきから誰とも話してはおらんが?」

 

 そう、人類種(イマニティ)の中年男性に外見の認識を偽装する魔法を使ったフィーは答える。対する執事は、

 

「いえいえ、お話の相手はあのクラミーという女性とですよ。ま、いま魔法を解いたようですが。」

 

(こ、こちらの魔法がバレているのですか!!?そ、そんなはず....も、もしかしてこの人はあの三人と手を組んだ他国の間者なのですか!?)

 

「....貴様。どこのものだ。」

 

「申し訳ありませんが私はどこの者の間者でもありません。」

 

「そ、そうか。」

 

「ですがあの二人は獣人種(ワービースト)の間者だと吐いておりました。」

 

「な!!?」

 

(ほ、本当なのですか!?)

 

 驚くフィーに執事は考える暇を与えないように次々と捲し立ててくる。

 

「あの少女の持っている機械。あれは獣人種(ワービースト)が開発した生物にかかる魔法を察知する魔法検知器。それに加え機凱種(エクスマキナ)の模倣機能すら搭載したものとか。さらにそこまでしたんならと地精種(ドワーフ)に頼んであの形の機械を作ったとか。ま、分解して地精語があったので、そうではないかと想像したまてですが。」

 

(な!?そんなものを隠して!!?)

 

 あまりの衝撃に思考が溢れ、あらゆる事態を想定し始める。だが、その前に最大の謎を解かないといけない。

 

「....なぜそれを私にいうのかね?」

 

 そう、このこちら側になぜメリットしかない情報を渡してきたのかが不可解だった。私たちに負けてほしいなら、なにも言わない方が得策だが、なぜ?まさか全部嘘のハッタリ?でも言う目的がわからない。

 

 そこまで考えたところで執事。

 

「私は強い方の間者に勝ってほしいのです。これは先王の我が儘であり私の我が儘だ。どうせ勝つなら....ね。そもそも私は王城に潜入したスパイです。どちらが勝とうが知ったことではない。だが、一方的にあちらが勝ってしまうのは少々面白くないと判断したまでです。さあ、どうしますか?あの少女がこちらにアレを向けますよ?」

 

 それを聞いてあの少女の方を見ると、ゆっくりと観客席を見回そうと....いや、こちらを振り向こうとしていた。

 

(くっ....!今は信憑性を確かめている余裕はないのですよ!!いまアイツらに私の存在がバレるのは痛いですけど....)

 

(あの地精種(モグラ)どもの作った機械に、私の魔法を晒すのなんて、反吐(ヘド)が出るのですよっ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

(どうだ....?)

 

 台詞を言い終えたシュウは、沈黙した中年を見て祈る。

 

(どうか、間に合ってくれっ!!)

 

 そう信じ、白がこちらに向きそうになったとき....

 

 

 

 金髪で長耳の、ふわりとした雰囲気を身に纏った森精種(エルフ)が、姿を表した。

 

 

 

(....いた!!)

 

 白は森精種(エルフ)を見つけた瞬間、空の腰辺りの服を引っ張る。それが、『いた』の合図である。

 

(やっときたか!!)

 

 空は今まで適当に話を伸ばしていた、そのヘラヘラした顔を獰猛な笑みに変え、用意していた台詞を吐く。

 

「だからさぁ、例えばそこの森精種(エルフ)と結託して勝とうとしてるやつに、この国は渡せないよなぁ!?」

 

 と、台詞と同時に指差したその先には、姿を表した森精種(エルフ)がいた。

 

(な、なんで偽装魔法が解けてるの!!?)

 

 表情は無表情を保つも、内心は全く穏やかではなかった。

 

(くっ....!!いまは原因を考えている余裕はないっ!!)

 

「....へぇ。適当な森精種(エルフ)と結託して、私を他国の間者に仕立て上げようって訳?」

 

「ほー。とっさについた言い訳にしては良くできてんじゃん。」

 

「じゃ、あの森精種(エルフ)、追い出してもいいよな?」

 

「えぇ。もちろん。さ、とっとと出ていきなさい!」

 

(ごめん。フィー....)

 

(気にしなくていいのですよ!むしろ最善手なのですよ!)

 

 一瞬の表情変化で意思疎通をはかった後、フィーは立ち去っていった。

 

「んじゃ、ゲーム開始といきますか?」

 

「えぇそうね。でも、せっかくの最終戦よ。なんなら、国王になるにふさわしいゲームの方がいいんじゃない?」

 

「ふーん。十の盟約その五『ゲーム内容は、挑まれた方が決定権を有する』か....。いいぜ。受けてやる。」

 

「ま、ここでポーカー勝負について言及しなかった俺ってば、優し♥️」パシャ

 

「....。」

 

「んー。おたく映り悪いね。少し笑ったら?」

 

「それは私の『巨乳になるまでの成長記録』の一枚目に取って置いていいわよ。」

 

「ここでボケんのかよ!?気ィ抜けちまうだろが!!」

 

「じゃ、ゲームに使う物持ってくるわ。夜になる前には戻るからそれまで待ってなさい。」

 

 そうやって、最後に会話の主導権を握ったクラミーは言い放って、足早に去っていった。

 

 

 

 少しの沈黙の後、はぁーっ....と一息ついて。

 

「くっそー。会話の誘導は俺の役割なのにーっ!!」

 

「....よかった....」

 

「あ、危なかったですわ....。」

 

「こ、これでよかったのでしょうか....。」

 

 それぞれの思いを吐いたのであった。

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