ノーステフ・ノーライフ   作:sayutan

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親愛の証

「シュウ....渡したいものがありますの....。」

 

 そういって髪飾りの中から鍵を取り出し、続ける。

 

「これは、おじいさまが私に託した鍵ですわ。どこの鍵かはわからないけど、心から人類種(イマニティ)を任せられる人物に渡して欲しいって言ってましたわ。」

 

「....それを、私に?」

 

「えぇ。そうですわ。」

 

 よーし。『心理学』ロールだ。コロコロ~....うん。誰でもわかる。ステフの目は本気だ。嘘などいうはずもない。

 

「....ですが私には、この国をどうこうする力は持ち合わせてはいませんよ?空様達が、よほど適任かと思えるのですが....。」

 

「....確かにあの兄弟なら、エルキアを変えてくれるほどの力を持っていると思いますわ。」

 

「でも、人としての心は、王の器はおろか一般人にも満たない酷さの人間に、おじいさまの遺志を託したくはありませんわ!!」

 

「....左様でございますか....。」

 

 そう言ってステフの手から鍵をー()()()()()()ーステフの手に握らせた。

 

「え?」

 

「お嬢様は少し勘違いをしておられます。それを正す為、暫しお待ちを。」

 

 そう言って立ち上がり、大きく息を吸い、明後日の方向に叫ぶ。

 

「おぉーい!ジブリール!来てくれたら俺を一発殴る権利をや....」

 

「はぁーい♪お待たせしましたぁ♪これより猿の粉砕ショーを開催しまぁす♪ようやく腹をくくった猿の首がくくられる間もなく死散する光景をとくとご覧くださいませぇ~♪」

 

 突然シュウの目の前に現れ拳を振るうと同時に、あまりの拳速に大気が押されて発生した真空状態の圧倒的破壊空間は、まさに歯車的砂嵐の小宇宙!

 

 そしてステフは恐怖した!種族間にたたずむ壁はあまりにも大きく、自分達はなす術もなく蹂躙される運命(さだめ)なのだということを!

 

 

 

 だが、現実を直視できたのは不幸中の幸いだろう。

 

 

 

「....やらないから、そのガチで楽しんでる顔をやめてくれないかな?」

 

....チッ で、要件はなんでございましょう?」

 

「うん。ここまで純粋に殺意のこもった舌打ちは初めてだな....じゃなくて、空様の様子は?」

 

「それでしたら、実際に見てもらった方が早いかと。ドラちゃんも是非。」

 

「では参りましょうか。」

 

「....私は、ソラのことを信用する気はないですわ....。」

 

「えぇ。でも、それを確かめていただくためにも、私と共に来てはいただけませんか?」

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

「だから俺は、『人類』を信じない。」

 

「だがその『可能性』を信じる。」

 

「ならさ、"まずは信じなきゃ"はじまらないんだよ。先王も、さ」

 

 

 

 図書館の入り口のドアの前で、隠れて聞いていたステフの目が熱くなる。

 

 おじいさまを信じて、必死に資料をひっくり返して、眠気が来ようが隣で疑われようが、可能性を否定せずに探し続ける空の姿は、とても....

 

「どうですか?お嬢様。」

 

 シュウはステフに温かく語りかけ、説得に持ち込んだ。

 

「確かに空様は、人としては少々足りないところもあるかもしれません。」

 

「でも空様なりに、自分の信じるものを背負って必死に考えて生きています。」

 

「お嬢様の仰られたことを信じ、先王様の遺志を可能性を信じて動く空様は....私は決して、人としての器がないようには思えませんが....いかがでしょうか?」

 

 その言葉を聞いて、何か納得したような仕草をとった後、シュウのことをじっと見て、ステフ。

 

「....シュウはこの事を、知ってたんですの?」

 

「そうです。そうするよう仕向けたのは私ですから。」

 

「じゃあ、やっぱりシュウの方が....」

 

 そこまでできるならと、シュウに託した方がいいと言わせる前に、シュウは遮って話す。

 

「ですが、その意図を汲んで空様が動いてなさるのは紛れもない事実です。」

 

「それに先王様との約束事は、お嬢様のみでなく私にもあるんですよ。」

 

 その言葉にハッとして、ステフ。

 

「それはどんな約束ですの?」

 

「次期王に相応しい存在を王にする。という約束ですよ。」

 

「....。」

 

「その約束達成のためにも、是非空様達を信じてもらえませんか?」

 

 その言葉を聞いて、今までのシュウの行動に納得がいったのか、どこか満足げに、そしていたずらな笑みを浮かべて、空の方へを足を向けていった。

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

「うわー....。こんなん国内に立てられちゃエルキアも立つ瀬がねぇな....。」

 

「ほ、本当に来て大丈夫なんですの!?」

 

「大丈夫さ。朝もらった手紙とアポもとっといたからな。ほれ、見てみろ。」

 

「....御初に御目にかかります。現エルキア国王空殿、白殿。並びにその他従者様。」

 

 そう言って深々と頭を下げ、続ける。

 

「私は東部連合・在エルキア次席大使「初瀬いの」です。」

 

「ほいほい。自己紹介どうも。んじゃ、さっさと案内してくれる?」

 

「えぇ。ではこちらに....。」

 

 

 

 

 

「えっ!?ゆ、床が動いてますわぁ!?」

 

「それで?今日の行事は大使の「初瀬いづな」との面会と、その他話し合い、ってことでいいんだよな?」

 

 急上昇するエレベーターに、なんの感慨もない空がステフを無視していのに問う。

 

「えぇ。手紙の通りの事柄をこなすだけの、形式的なものでございますので、どうかご安心を....ですが、空殿はそれだけのつもりはなさそうですが。」

 

「あれ?バレちゃった?ま、きちんと話すから後でな♪」

 

「というか入る前に心を読んでしまえば、我々の目的など解るでしょうし、そこで済ませてしまってもよろしかったのに、マスター達にここまで徒労をさせる犬風情の心は、第六感の無い私には解りかねます♪」

 

「はっはっは。御呼びしたお客陣を中へ招かずに、文字通り門前払いを希望とは、まして、言葉を交わさず一方的にことを進めるのがいかに愚かなことか、この鳥頭には理解が及ばぬようですな。」

 

「おやぁ?十の盟約以前にその言葉を言える覚悟がないのなら、今すぐ取り消した方が賢明だと思われますよ。狼害(ろうがい)。」

 

「はは。この鳥の頭には脳が入ってないようですな。この世界の理を無視して過去にすがり付くとは、何とも情けない羞恥。羽をむしられて丸焼になった方が、世のためではないですかな?」

 

「口だけは達者なようでございますね♪」

 

「いやはや、そちらこそ。」

 

フフフフ....

ハッハッハ....

 

「なあ。何でこの二人ここまで仲悪いの?」

 

「それは、十六種族(イクシード)の血の気の多さでは一二を争う種族ですから、一方が煽ったら途端にこうなるのは必然ですわ。」

 

「そうなんだ....つか、よくこんなんとタイマンはれたな、シュウ。」

 

 

 

「....。」ガタガタガタ

 

 

 

「....あれ?どしたのシュウ?」

 

「....あ!す、すいません空様。ななな、何でしょうか!」ガタガタガタ

 

「....シュウ、だいじょうぶ....?」ポンポン

 

 そこには床にうずくまってガタガタ震えてるシュウと、安心させるためか頭を撫でている白の姿があった。

 

「ど、どうしたんですの!?」

 

「あ、いえ、ちょーっと高いところが苦手というか、高いところにいくと息があがって目眩を起こすだけなので大丈夫ですハイ!!」

 

空元気(からげんき)もいいとこじゃねぇか!!というか、ジブリールの空間転移のときは....」

 

「あ、そのときの記憶無いんです。」

 

「重症じゃねぇか!?おい、じいさんちょっと下に....」

 

 

 

チン!

 

 

 

「さ、着きましたぞ。どうぞこちらに。」スタスタ

 

「はぁーん....これはいいことを知れました。これだけは獣人種(ワービースト)に感謝するとしましょうか♥️」ピューン

 

「....いくか。」

 

「....えぇ。」

 

 

 

 

 

 

「それでは早速ご挨拶を。こちらが東部連合・在エルキア大使、初瀬いづなにございま....」

 

 

 

キング・クリムゾン!!!

 

 

 

 その言葉と同時に、王様兄妹はいづなに一瞬にして近づき、撫で回していた。その動きたるや、獣人種(ワービースト)のいのはおろか、天翼種(フリューゲル)のジブリールの目で追えないほどの速さであった。

 

「....なんなんですのあの兄妹....。」

 

「さすがは、マスター達にございますね。」

 

「ジブリールはそういうところも関心があるんですのね....。」

 

「もちろんですが....おや?あの猿もいないようですが?」

 

「え!?シュウ!?どこに行ったんですの!?」

 

 そこには、先程まで一緒にいた執事の姿は、消えていたのだった。

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

 ご無沙汰しております。シュウです。

 

 いや~。さっきはエレベーターの存在を知っていることを誤魔化すために、高所恐怖症のフリをしましたが、どうやら怪しまれずに済んだようですね(白目)。

 

 さて、物語も二巻の終盤にまで差し掛かり、あの兄妹ならもうチェックメイトまで持ってってくれるので、この件はもう安心できますね。はぁー長かった。ここを突破すれば気ままに動き出すだろうし、エルキアが滅ぶ心配もほぼなくなるし、ステフと一緒にいれる時間も増えるってもんだぜ!

 

 

 

 

ジュー....

 

 

 

「お、いい頃合いだな....おーい!そこのリス族の獣人種(ワービースト)さん!盛り付け宜しく!」

 

「はぁーい!!任せるっすよー....って何やらせるんすか!?というかなんでここにいるっすかぁ!!?」

 

「えー。ノリ良くやってくれないと、いづな様の機嫌が斜めになるよー。」

 

「そ、そうっすか!?早くしないと....って!騙されないっすよ!そんな命令聞いてねぇっす!」

 

「ノリツッコミは上物だな。コンビ組む?」

 

「エヘヘ~そこまで言われちゃ仕方な~....くないっすよぉ!!?というかなんでうちらの食材使って料理できてるんすか!?」

 

 そう。今料理をやってます。あれ?デジャヴ?....気にしなーい。

 

 まあ、空達と一緒にキンクリして調理場まで直行したんだよ。過程は知らん。気づいたらここにいたもん!

 

 あれだ。いづなたんを撫で回すのが空達の愛情表現なのだとしたら、料理で餌付けするのが俺のやり方だ!幼女には優しくするのは当然だろ?

 

 見たところ冷蔵庫には魚が大量に保管されていましたし?これは天使いづなの為に料理するしかないじゃない!

 

「なぜ料理できているのかって?それは完全な善意から行っているからだよ!!」

 

「善意だけならなんでもできる訳ねぇっすよ!?」

 

(いや森精種(エルフ)のおっぱいを善意というか、完全におっぱい単体としか見ていなくて揉めた地精種(ドワーフ)はいるんだがな....)

 

 そう獣人種(ワービースト)が言ったと同時に料理の腕が止まる。どうやら、悪意ある行動と見なされてしまったようだ。

 

「ちぇー。さっきまでできていたのが善意しかない行為であることの証明なのに....。」

 

「いや、他人の倉庫から勝手に食材とって料理するのは流石に権利違反だと思うっすけどねぇ....。」

 

「それは獣人種(ワービースト)のきまりでしょ?」

 

人類種(イマニティ)はこんなことされても怒らないっすか!?」

 

「....いや、怒るな。」

 

「怒るんかい!なら尚更ダメっす!!さっさと出ていくっす!!」

 

「へーい....。」

 

 そうして部屋を後にしようとしたとき、扉が開き、フェネックのような耳と、愛らしい瞳がこちらを覗き込んで....

 

 

 

「旨そうな匂いしてやがる、です。はやく食わせろや、です!」

 

 

 

 けも耳幼女がよだれを垂らして、今か今かと料理を待っていた....。

 

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