「あーっ!!暇だっ!!」
「....暇、すぎるぅ....」
そういって、ゲーム機を放り投げる仕草をするゲーマー兄妹。クラミーとフィーとのゲームから数日が経ち、東部連合からゲーム開始の書簡を、暇を潰しながら待ってるのだが....
「流石に飽きたな....遠慮無用組手で吹っ飛ばしのみ画面外撃墜縛り1000人もクリアしたし....どうするよ白?まだ縛ってみるか?」
「....面倒、時間が無駄なだけ....」
「だ~よな~。もう持ってきてるゲームはほとんど極めちゃってるしなぁ....どんな縛りゲーも作業にしかなんねぇ....」
ゲーマー兄妹は、今日も今日とて暇を潰すのに多大な労力を使っていた。そんな二人を見かねて、ステフが声をあげる。
「そんなに暇なら暴動の鎮圧を手伝ってくれませんの!?貴族ではドーラ家以外もう味方してくれないし、ドーラ家の中でも私以外猛反発ですのよ!?これ以上押さえることはできませんの!!」
怒号と共に目の下の隈から多忙さがうかがえる顔を向けるステフに、空はヘラッとした顔で答える。
「あーあー、聞こえなぁーい。政治なんてクソゲーがスタートコール鳴らしてるのなんて聞こえなぁーい。」
「この....っ!!」
「まぁまぁ、お嬢様どうどう。」
「私は馬じゃないですわ!馬車馬ですわ!!....って、それも違いますわぁっ!!」
そういってステフをなだめるシュウの目の下にも、ステフと同様に隈を作っていた。政治関係の仕事が火の車になった事もあり、夜通し仕事をすることが多くなったからだろう。そんなシュウは空に向き直って話しかける。
「それで、東部連合の件なのですが....」
「ん?なに?進展あったの?」
「えぇ。というか....「『もう進展していた』が、正しゅうございますが♪」
「のわっ!?ジブリール!?」
シュウのセリフを遮って、ジブリールが虚空からコンニチワ♪そのままノリノリで続ける。
「えぇ♪ジブリールめにございます♪それでこちらが、マスターが待ちに待った東部連合からの書簡になります♪」
「え!?来てたの!?」
「えぇ。どうやらゲームをさせまいと、エルキア王城の中で封殺されていたようでございますね♪まぁ、その方から丁重に頂きましたがぁ....えへへぇ♪久しぶりに興奮しましたぁ♪」
どうやらいつもよりノリノリのジブリール。その様子に、まさかと空が青ざめる。
「お、おいジブリール。まさか殺....」
「あ、いえ。その方には叱るかわりに目をじっと覗き込んであげたら、下半身を濡らして泣き喚いた挙げ句、洗いざらい話して頂きました。」
「あ?そうなの?た、大変だったな。(主に相手が)」
「マスターの心配には及びません。」
と、素面で言ってくるジブリールには、先程までのノリが見れない。
(ん?久しぶりに
空の予想ではノリの原因はそれだと思っていたのだが、どうやら違うようで....と、そこにシュウが
「で、その方の後始末を私に任せたのは、どこの誰ですかねぇ?」
と、その言葉に、ジブリールの表情にノリが戻る。
「いやぁ~♪あの方のうろたえる姿も良かったですけどぉ♪その時に居合わせてしまった貴方が、散々文句を言われて、しかも、苦い顔をしながら床掃除している姿を見たら、もう笑いが止まらのうございまして♪」
体をクネクネさせるシブリールに、空が納得する。
(あ、そう言うことね。)
そう、ジブリールはシュウの苦しむ姿を見て、テンションが上がっているだけなのであった。
「ジブリール!?覗いてたんなら手伝ってくれても....」
「....はいぃ?」ニタァ
「....。」(←土下座)
「そこは相変わらずなんですのね....」
覆せない関係性を見てため息をつくステフを尻目に、空が書簡を開いていく。
「んで、これが例の書簡ね。どれどれ....なぁ、白?今日って何日だ?」
「....27....!?」
空と一緒に読んでいた白が声を上ずらせて言う。
「じゃあ今日じゃねぇか!!よーし全員急いで支度しろっ!!」
「わ、わかりま....」
「不肖ジブリール、いつでも準備は出来てございます。」
「....しろ....準備、ばん、たん....」
「その兄、空もいつでも準備オールクリアだっ!さぁみんな行くぞっ!!」
「えっ!?えっ!?も、もう準備できてるんですの!?」
「お嬢様は、式典でもその様なお姿なので大丈夫かと。」
「た、確かにそうですけど....化粧とか....」
「大丈夫です。お嬢様専用化粧セットはここにございますので、お持ちください。」
「あ、それなら安心....ってなんで持ってるんですの!?」
「書簡を先に拝見しておりましたので。」
「じ、準備万端ですわね....。シュウは行かないんですの?」
「えぇ、私は参加しないので、民衆の方々と共に参ります。」
「そ、そうなんですのね....。」
少し残念な表情のステフを見やり、ジブリールが翼を広げて、精霊回廊で空間の精霊を取り込み、
「ちょっ!?羽こっちに向けんな!!」
翼を広げた先にシュウが居るのは、おそらく故意だろうが。
「おやおや、失礼しました♪」ベシベシ!!
「ちょっ、やめろこのっ!!」グイグイ
「....何やってるんですの....」
「それではマスター、白様にドラちゃん。私に捕まってくださいませ。大使館まで
「あ、ジブリールそれ却下。」
「え?」
発動する気満々だったのか、ジブリールの周りの空間が少しだけ胎動して、ステフが持ってきていた仕事の書類が少し舞い散った。
「んじゃステフ、城の正面に馬車を用意させろ。ド正門から堂々と出るから。」
「なっ!?....ぼ、暴動中ですわよっ!?」
「だからこそ....さ。さぁ、みんないくぞー!」
「ち....ちょっと待って....」
そう高らかに声をあげて行進していく空達を尻目に、ステフは風圧によって飛び散った資料を片付けようと、手に取っていくと....
「....あれ?ページ数が足りないような....?」
ざらっと見てみると、書類の枚数が少ないような気がしたが....
「おーいステフ!何やってんだ早く行くぞ!!」
「あっ!?はい!今行きますわ!!」
取り敢えず書類を机の上に置いて、空の後を追うのであった。
◼️◼️◼️
ご無沙汰しております。シュウです。
えー、ただ今…
「んぅ?なんでシュウがここにいんだ、です?」
いづなたんの前にいます。
ん~、周りに資料がちらほら落ちていることから、多分ジブリールの跳躍が不発した分のエネルギーが変に作用して跳ばされたってことだろうか?
「ん~私にとっても不測の事態なんですよねぇ....」
「そうなのか、です?」
「はい。まぁ原因は予測がつくので問題ありませんけどね。」
「む、わかった、です。でも今は忙しい、です。観客席にでもいろや、です。」
そう言って目を閉じ、精神統一を始めるいづなたん。うーん。確かにここに跳ばされたとはいえ、何かできることがあるわけでも....ん?
「....ぅ」
「どうかなさいましたか?いづな様。表情が優れていませんが....」
「....いいからあっち行ってろや、です。」
まぁ、ゲームの賭けの内容だけに心の負荷は大きいだろうなぁ....でも、人類種に変な同情されたくもなさそうだし....
ん、なら。
「....なら、これはいかがですか?」
「なんだ?これは、です?」クンクン
「これは果汁や砂糖などを固めて作った飴玉というものです。大丈夫です。害になるものは入ってませんから。」
「....ん、嘘は言ってねぇ、です....もらってやってもいいぞ、です。」
言葉に若干の棘があるものの、甘い匂いと初めての食べ物に好奇心を抑えられないのか、尻尾をブンブン振り、口を開けて待っていた。
「では。」コロン
「ん。甘ぇ、です♪」
「それはよかった。」
「....。」
「....。」
「シュウ。」
「はい、なんでございましょうか?」
「....シュウは、このゲームに勝ったら、いづなたちをどうするつもりだ....です?」
「....どうもこうも、私はゲームに参加しないので、私にそんな権利はありませんよ。」
「そうか、です。」
「....いづな様はゲームは好きですか?」
「ゲームはあんまり好きじゃねぇ、です。ずっとこんな、勝って当たり前のゲームしてきて、今はそのカラクリがバレてゲームに負けて、皆ひどい目に合うんじゃねぇかと不安で仕方ねぇ、です....」
....はぁ、原作でステフが言ってた通り、いづなは幼いながらも本当に利発だと思う。先の事もしっかり考えられるというかなんというか....
「....では、一つゲームをしませんか?」
「ん?なんでだ、です?」
「まぁまぁ、ちょったしたおせっかいですよ。で、まだ時間はありますから....やりませんか?」
「....む、合点....です。」
「これからやるゲームはトランプゲームの一種、『スピード』っていうゲームなんだけど、知ってるかな?」
「知らねぇ、です。」
「そうなのですか?なら、場には二つのカードを....」
「....」ジーッ
執事説明中…
「どうです?わかりましたか?」
「む、わかったぞ、です!」
「では早速やってみましょう....では、スター…」
シュババババババババッバババ!!
「!!?」
「早くカードだせや、です。」
「は、はい....」スッ
シュババババババ!!!
「遅ぇ、です。やる気あんのか、です?」
「....フフフ」
「?」
「やってやろうじゃねぇk
結果・シュウ完敗
「....シュウ、弱すぎだろ、です。」
「あ、あの速さは卑怯ですってぇ....」
「....ふふ♪」
まぁ、こんなもんかねぇ....
「....さて、そろそろ時間ですね。」
「あっ、もうこんな時間か、です。」
「....ゲーム、どうでしたか?」
「シュウが弱すぎてつまんねぇ、です。」
「そうでしたか?それは申し訳ありませんでした。ですが、私は楽しんでゲームをできましたよ。」
「負けたのにか、です?」
「ええ、私は私なりにいづな様に勝てるように工夫したり、いづな様の手さばきに驚きながらも、見とれてしまったりと、ゲームの結果よりも過程が楽しかったものですから。」
「過程....です?」
「そうです。ゲームに勝ち負けはつくもの、ですが、やはり楽しいのは過程なのではないでしょうか?」
「....」
「まぁ、私では説得力に欠けるでしょうから、そこは空様達に任せますよ。」
「でも空達とのゲームは....負けちゃいけねぇん....です。楽しくなんて....」
「絶対に負けられない勝負....ですか。」
「そうです。負けちゃいけねぇん....です。」
....空達は負けないことを絶対のルールとし、勝つために様々な思考を巡らすことを楽しんでいるが、こういう負けないって縛りは結構つらいもんがあるよなぁ....
「....では私と約束をしませんか?」
「いきなりなんだ、です?」
「例えいづな様が負けてしまったとしても、決して不幸にはさせませんので、勝敗の結果など考えずにゲームを楽しんでもらえませんか?」
「....そんな約束守れんのか、です?」
「えぇ。私は執事ですよ。しかも王様の側近にいる従者です。土下座でもゲームでもしてやりますよ!」
「ゲームよわっちぃだろ、です。」
「でもやらないとわからないものですよ?私の弱さに同情を得られるやもしれませんし?」
「....なんでそこまでいづなの為にするん、です?」
「なんで....それはですね....」
「不安でいっぱいのいづな様より、笑顔のいづな様の方がいいに決まってるからですよ。」
「....訳わかんねぇ、です。」
「まぁ、勝敗なんて気にしなくていいって言いたかっただけですよ。では....」
「....」
「約束、忘れんじゃねぇぞ、です。」