ノーステフ・ノーライフ   作:sayutan

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ギャルゲーの神様は中途半端がお嫌いなようです

 ゲーム開始時刻、飄々とゲームルールを述べていくいのに対し、細かな、しかし見逃してはならないルールの穴を軽快にふさいでいく空、『ゲームが始まる前から既にゲームは始まっている』その言葉を体現するかのような王のやり取りに関心を覚えつつも、人類種(イマニティ)の王がこのゲームに賭けた『種の駒』すなわち自身の威厳はおろか生命にかかわるものを平然とかけた王の挙動を一部たりとも見逃すまいという意思を宿した視線が、ゲーム会場を包む。

 

「では、ルールの説明および確認は以上、ということでよろしいですかな?」

 

「あぁ、特に問題ないぜ爺さん。んじゃ、始めようか?」

 

「では、同意したということで....盟約の宣言を願います。」

 

 その言葉に合わせて空、白、ジブリール、ステフ、いづなが手を挙げ、

 

「【盟約に誓って(アッシェンテ)】」

 

「【盟約に誓って(アッシェンテ)】、です。」

 

 その言葉を合図にゲームの起動を開始したのか、徐々に意識が薄れていく感覚を覚えながら、空はふと隣の席にいるいづなの表情をうかがってみた。

 

 その表情は人懐っこさなど微塵もない、これからのゲームに真摯に取り組むという姿勢を表したような表情、その表情を見て何か思うところがあったのか、つい口をこぼす。

 

「なぁ、いづなさ」

 

「....なんだ、です?」

 

「最後にゲームを"楽しい"って感じたの、いつ?」

 

 その言葉を聞いたいづなはハッとした表情を見せるが、なぜかニコッと笑ってこう答えた。

 

「それをおめぇらが教えてくれんだろ、です。」

 

 その言葉に空が何かを思うよりも早く。スクリーンは黒く染まり。そして。

 

 

 

ー空達の意識は、スクリーンの中に飲み込まれたー

 

 

 

■■■

 

 

 

「ようやく始まりましたか....」

 

 いやーうん。ようやくここまで来ましたね。

 

 先王の託した人類種(イマニティ)唯一の勝ち筋にして生存権を得る戦い。加えてそれを利用し尽くし、さらにはエルキアの安定をもたらすという空達の策略がこれを期に展開していく。

 

 そう考えると中々頑張ったなぁ俺。ほめてもいいのよん?

 

『果たしてそれは、ほめられるほどの事かしら?』

 

「へ?」

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

「フィー?大丈夫?」

 

(はい。ちゃーんとクラミーのおめめをバッチリ....っ!!?)

 

「えっ、どうしたのフィー!?」

 

(だ、大丈夫なのですよ....ただ、ここ周辺の精霊が大きく揺れたのですよ....)

 

「な、なんですって!?もしかして他の種族が魔法を....」

 

(わ、わからないのですよ....突然の事だったし、何より精霊が安定....というよりも、現象が起きる前の状態に戻ってしまってるのですよ。)

 

「くっ、証拠をもう消したって感じかしら....」

 

(クラミー、そちらに変化は無いのですか?)

 

「うーん。そうねぇ....あっ!!」

 

(えっ!何か分かったのですか!?)

 

「豊胸神が居ないのっ!!どこえ消えたの!?さっきまで12-55席に座ってたのにっ!!?」

 

(やったのですよぉ!!豊胸神(サタニスト)が死んだのですよぉ!!これからクラミーの胸は元の神乳....いえ!神胸板(水も垂直降下する胸)への復活なのですよぉぉ!!!)

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!神が死んだぁぁぁぁぁぁ!!?バストが....バストが縮んでる気がするぅぅぅ!!」

 

 そこには地にうなだれて号泣するクラミーと、天を仰いでこの幸福に酔いしれるフィーの姿があった....

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

(シュウ....起きなさいシュウ....)

 

(ん?どこかで聞いたことのある声だな....)

 

「....ふぁい....おはようございます。」

 

「はい♪おはようございます♪また会えて嬉しいわ♪」

 

「ふぇ!?あっ....へぁっ!?あれ?え?何でここに!?」

 

「あはは~。ごめんね?突然呼び出しちゃって。メリーちゃんがシュウをよべー、シュウをよべー、今すぐシュウをよべーって言って聞かないからさー。ついに根負けしちゃったって訳♪」

 

「えっ!?ボッチ神!?」

 

「またそれ蒸し返すの!?いい加減にしないと元の世界に戻しちゃうよ!?」

 

「あっ、シュウの魂は私の所有物のようなものなので、それをやってしまうと剥奪行為....つまり、盟約に反する行為になってしまいますよ?」

 

「そうだぞ。身の程を知るがいい!」

 

「身の程唯一神なんだけどね!?」

 

「俺の魂を剥奪したらフォルメリア様に唯一神テト、盟約違反ついにやらかすって全種族に炎上報道してやるから覚悟しろ!」

 

「何で神に対してこうも敬意がないのかなぁ....」

 

「ところで、俺になにか用が?」

 

「そうそう!そろそろ『  』が東部連合とのゲームに....」

 

 

 

「ち、ちょっと待ったぁ!!!」

 

 

 

「え?どうしたのですか?唯一神様?」

 

「なに?自分の友達の数でも報告したいんですかテト様?」

 

「シュウとゲームするときは完膚なきまでにいじめるからそのつもりでいてね♪....じゃなくて、ほら!これ見てよこれ!!」

 

 そう言ってテトが差し出してきたのは一冊のノート。そこには東部連合とのゲーム内容が事細かに記されていた。まさにそれは、原作のような書き方で書かれていたのは不思議ではあったが....

 

「あぁ、なるほど、今の『  』が行ってるゲームのネタバレをして欲しくないって事ですね?」

 

「そうだよっ!!まぁ、確かに『  』がこんなところで負けるとは思わないけど、僕は未来予知とかネタバレの類いはしない主義だからね!」

 

「それでは....申し訳ありませんが、席を少しだけ外してはもらえないでしょうか?」

 

「僕はシュウの運び屋じゃないんだけどなぁ....」

 

「お礼と言ってはなんですが、フォルメリア様が今度テト様とゲームをしてもよいと....」

 

「やったぁ!!覚悟しておいてよ!!今は彼らの観察で忙しいけど暇ができたらすぐにゲームしよう!!あっ、そのときに世界の10分の1が消し飛んだとしても十六種族(イクシード)は大丈夫だから安心してね!!じゃぁまたっ!!」

 

「「....」」

 

「案外テト様ってアホなんでしょうか?いつするかも、そもそもしても『よい』とまで言ってなかったのに....」

 

「唯一神様もかなりお暇だったのでしょうね....おいたわしや....」

 

 と、二人して暇神(テト)を哀れみつつ、この会話に反応していないところから、どうやらテトは会話を聞き取ることをしていないという確認がとれたところで....

 

「さて、シュウ。よくここまで来ましたね。」

 

「まぁ、空達に巻き込まれてる感じが否めないけども....」

 

「そう、あなたはまだ巻き込まれてる側よ。エルキアの再興のために『  』の成す事に巻き込まれてるだけ。あなたは巻き込む側にまだ立っていないわ。」

 

「あー、確かにそうかも。最近は空達にくっついていくのでやっとだったからなぁ。少しは進展あったかもだけど、仲良くなったかと言われればそうでもない気がする。」

 

「まぁ、今の状況をギャルゲーで例えるなら....」

 

「ギャルゲー!?」

 

「今はまだ、共通ルートよ。そしてエルキアの再興、回復の兆しが見えたとき、個別ルートに入るの。」

 

「....ギャルゲーマーにはわかりやすいから困る。」

 

「でしょ♪それで共通ルートは、あなたがこの世界に来て、どんなことに巻き込まれていくのか、どのようにヒロイン達と出会うか、どんな関係性が生まれたのか、そして、その巻き込みが一息つくまでが共通ルート。はっきり言えば、どんなヒロインが居るかを知るためのルートね」

 

「そして、個別ルートは、それから攻略キャラを決めて、物事に挑んでいく。その過程で新たな関係性が生まれたり、信頼を深めたりしていく。そう、もうすぐあなたには分岐点が到来するわ。」

 

「だが、原作にはそんなシーンは無いような....」

 

「それはそうよ。だって原作の目的はゲームの世界で神に挑むって目的でやってるもの。女の子に愛されるのは副次結果であって主目的ではないわ。だから個別ルートは強調されず、共通ルートを進んでるように見えるの。強いて言えば『  』がテトルートを目指してるって感じかしらね。」

 

「強いて言い過ぎのような気がしないでもない。」

 

「でも、あなたは違う。目的は『ステフを幸せにすること』決して『  』のゲームに巻き込まれていくのが目的では無いことを覚えておいてね?今の状況に慣れてしまっては、当初の目的が消えてしまうわ。あなたがそれでいいなら良いけど、私はそうなったら場合によっては魂を手放すかもしれないわね。」

 

「....要するに、こっから先はメリハリをつけろって事か?」

 

「そうね。でも....」

 

 

 

 

「何もステファニーを愛しなさいとは言ってないわ。」

 

 

 

 

「へ?」

 

 意外な意見を言われ、呆気にとられるシュウに素っ気なく続ける。

 

「いや、もちろん元の世界に居たときの気持ちがずっと残っているのなら全然いいんだけど、共通ルートは彼女達の事をリアルに知るための期間。読んで知るのとは比べ物にならないほどの魅力を感じてきたはずよ。」

 

「....まぁ、想像と違ってた面も多くあったよ。」

 

「だから、もしステフちゃんを選ばなくっても構わないわ。人の心は移ろうこともあるのは事実だし、それを否定する気もないわ。でも、私の気紛れとあなたの想いが今の状況を型どった。その結果を、私は最後まで見届けてみたいわ。」

 

「ま、その意見に同意するよ。」

 

「ふふ♪嬉しいわね。でも、口だけならなんとでも言えるわ。これからの行動で示すのが信頼を勝ち取るのよ。さぁ、選びなさい。」

 

 

 

「あなたは誰といっしょにいたいのかしら....?」

 

 

 

■■■

 

 

 

 

「しかし、楽しそうにやりおるのぉ。今までのやつらはそんな余裕持ち合わせてはおりゃせんやったのに....」

 

 ゲームの様子が映し出されている液晶テレビを見ながら、からからと笑い声を放つ彼女に、どこからか声が木霊する。

 

【問 なぜ貴公は笑う?】

 

 その問いに驚く様子もなく、さも当然のように空虚に向かって彼女は返す。

 

「ん~?そりゃおもろい事が起きとるからや♪」

 

【国の危機に値する事項であるのに何故か?】

 

「そうやねぇ....」

 

 呟きを、目の前の液晶テレビに向かってではなく、見上げた天井にこぼす。

 

「あての目指した定石の....果てを垣間見たんよ....」

 

【....汝の希求する事項を、か?】

 

「いんや、正確には諦めてたんやけど....そやなぁ....」

 

 視線を液晶テレビに戻して、まるで言い聞かせるように、少しからからと笑いながら狐の獣人種ワービーストは言った。

 

「あやつらが勝ち上がってきたら、きっと果てが見つかるやもしれへんなぁ....」

 

 その視線の先に映っていたのは、実に楽しそうに、無邪気な笑顔で遊ぶ、いづなの姿があった

 

「ほな、そろそろ行こか。」

 

 

 

■■■

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

「やりやがったぜ!!!我らが王は!!!」

 

「信じてたぞー!!!」

 

「今日は祝杯だぁ!!!」

 

 

 

 東部連合とのゲームに勝利し、意識を現に戻した空達を迎えたのは多くの人類種の歓声であった。

 

「はぁ、さっきまで俺らのことを寸分の狂いもなく疑ってたくせによ....笑えるぜ。」

 

「手首、ポリキャップかよぉ....!!」

 

「マスターの癪に障るのであれば、今すぐ声帯を切り裂いて黙らせましょうか♡」

 

「そ、そこまでしなくてもいいですわよっ!!」

 

 歓声に対する言葉をそれぞれに述べた後、空はいのに向いて

 

「んじゃ、後始末は任せとくわじーさん。あとで迎えに行くからよろ~♪」

 

「....承知いたしました。」

 

「空、空!シュウはどこだ、です?お礼言ってやる、です!」

 

「んあ?シュウか....観客席のどっかにいるんじゃねーの?」

 

「合点、です!!」シュタタッ

 

「あれだけのゲームをやったのにも関わらず元気ですわね....」

 

「さ、俺たちも一足先にエルキアに戻って風呂でも....」

 

 

 

「空!!大変よ!!シュウが消えたの!!」

 

 

 

「はぁ?消えたぁ!!?」

 

 

 

■■■

 

 

 

ギャルゲー。それは電算システムが作り出した究極のゲーム。

 

ギャルゲー。それは絵師が描く魅惑の人物が織りなすゲーム。

 

ギャルゲー。それは作曲家が奏でる幻想の音色が木霊するゲーム。

 

ギャルゲー。それは脚本家が放つ人生の1ページを刻んだゲーム。

 

ギャルゲー。それは人の理想を、人が創り上げた最高のゲームジャンルなのである。

 

 我々はキャラクターに魅せられ、心躍らせ、時間を費やす。そこに、我々では経験できなくとも、知ることのできる恋愛談を、真摯として刮目する。

 

 

 

....ここに、一つの物語がある。

 

「まったく、私の質問を15489個残してどこかに行くとは....見つけたら質問で埋め殺して差し上げましょう♡」

 

 空を舞い、空間を転移して、10年という付き合いを重ねた質問の回答者を探す天翼種(フリューゲル)、『ジブリール』

 

「このままじゃ....私の胸が....しぼんで....しぼんで....あぁ....」

 

 コンプレックスの塊を、胸という形で出現させた豊胸神を肩を落としながら探す人類種(イマニティ)、『クラミ―・ツェル』

 

「いづなが悪かったん....です?いづなが楽しんだのがいけなかったん....です?」

 

 人生で最高のゲームをした後に、そのヒントを与えてくれた人を、席番号12-54に座って待つ獣人種(ワービースト)、『いづな』

 

「おいじぃさん!!てめぇなにかしたのか!?」

 

「な、何もしておりませぬ!!私にも何が何だか!!」

 

「にぃ!!落ち着いて!!まずは情報を....っ!!」

 

 

 

「シュウーーーーー!!シュウーーーーー!!どこにいるんですのぉ!!?」

 

 観客席、倉庫、装置の裏、会場の外を必死に走り、自身の支えとなってくれた人を探す人類種(イマニティ)、『ステファニー・ドーラ』

 

 

 

 この物語の『共通ルート』の残り一ページが今、一人の男の手によって開かれる

 

「俺は....っ!!」

 

 

 

■■■

 

 

 

「どう?もう終わったかな?」

 

 虚空からさも当然のように現れる唯一神に、もう慣れたものだと口を開く。

 

「はい、もう終わりましたよ♪」

 

「そうかい!じゃあ今すぐゲームしよう!!どう?異世界からテーブルゲームや古代の心理戦ゲームまで色々と....!!」

 

「んー、ちょーっと用事を思い出したので行ってきますねぇ~♪」ピョーン

 

「あっ!?ちょっと!?敵前逃亡は卑怯だってばぁ!!?約束と違うじゃないかぁ!!?」

 

 

 

 

「さて、これからどうなることやら....私も恋愛厨(カミサマ)として、見守らせていただきますよ~♪」

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