ノーステフ・ノーライフ   作:sayutan

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余韻は常に消えゆく

 あなたは迷ったことがあるだろうか?

 

 唐突な質問で済まないが、急を要するんだ。想像してみてくれ。

 

 今、あなたの目の前に五人の女性がいる。特徴を挙げるなら…そうだな、

 

 一人は包容力のある、ふわふわ雰囲気の女性

 

 一人は知的好奇心旺盛で、物静かなメガネ属性持ちの女性

 

 一人は姉御肌で頼りがいのある、お酒好きの女性

 

 一人は花より団子な、活気のある女性

 

 一人はちょっと背伸びしがちのレディ(笑)な女性

 

 それぞれに魅力があり、あなたはその五人から熱烈な愛情を示されている。

 

 なぜか?それはあなたが攻略したいキャラが決めきれず、とりあえず友達以上恋人未満の関係を持ち、彼女たち全員に猛烈にアピールを繰り返した末の出来事である。え?無理がある設定だって?

 

 

 

 

 ゲームじゃ当然の話だよなぁ???

 

 

 

 兎にも角にも、ラノベ小説みたくゲームの世界に入って冒険したり超能力授かったり現代文化持ち込んで『お前スゲー!』って言われたり都合よく友達が女性ばっかの学園生活送ったりだのしている中でっ!!!そーゆー関係になったあなたと五人の彼女たちなのですがっ!!あなたは選択を迫られましたっ!!

 

『どの人と結婚したいですか?』

 

 えーつまり何が言いたいのかというと、ゲーム内の友達以上恋人未満の関係が終わり、それぞれの個別ルートも粗方終わって、最終的に誰か一人を選ぶというような質問ですな!

 

 例えるならギャルゲーで全員のヒロイン攻略した上で一人だけ、アフターストーリーを見るなら誰ですか?的な質問だ。

 

 え?全員分あとから見れるでしょだって?そんな1人限定とかしたら製作会社に罵倒のシュプレヒコール鳴り響くって?

 

 

 

 

 

 

 そういう問題じゃないのっ!!初めては誰にするのかが大事なのっ!!

 

 おめーらファーストキッスを大事にしたいと思わんのか!?電車とかですれ違う赤の他人にファーストキッスあげたいですか!?あ、お母さんが最初ですっていう、家族が最初ってのは無しな!!

 

 もっと言うなら童貞をそこらの適当な女性にあげたいですか!?初エッチを特に感慨もない女性で済ませちゃっていいんですか!?

 

童貞にもっと誇りを持てやぁ!!童貞万歳!!童帝万歳!!初エッチは二次元の美少女にあげたぁぁいっ!!

 

 

 

…なんか虚しくなってきたな…。

 

 はい、脱線しすぎましたね。要は五人から一人、生涯を共にする伴侶を選んでほしいということだ。もっと具体性が欲しいなら上記の五人に当てはまるキャラクターを挙げてみて、その中から選んでほしい。

 

 

 

…決まったかな?

 

 

 

 ちなみに私は決めきれなかった。こんなことで悶々と悩んでいる私を見かねて、友達はこう言った。

 

『最初から誰か一人に絞って攻略してれば、迷う必要なかったのに』

 

…あぁ、その通りだよ。でもな、私には全員が魅力的に見えて仕方なかったんだよ…

 

 最初っからコイントスしたりサイコロ転がしたりYes/No枕で寝てみたりして決めようと思ったけど、できなかったんだよ畜生がっ!!

 

『なんだ?お前好みとかないのか?』

 

 友達は怪訝そうな目でこちらを見つめてくる。

 

 何でそんな顔すんだよ!!好みとかそういう問題じゃ....っ!!

 

『はぁ…だからお前は…』

 

 片手を額に当ててため息を吐き、半目開きの瞳を私に向けながらこう言った。

 

『初めの第一歩を踏み出せないんだよ。自分のエゴもないやつに、彼女たちが惚れてくれるとでも思ってんのか?漫画のふらふら系ハーレム主人公がなぜハーレムを維持できるのか知ってるか?それはな…』

 

 

 

『他人のエゴに染まってるからだよ。』

 

 

 

 

 

 

私は…男の夢(ハーレム)を…目指していたようだ…

 

 

 

□□□

 

 

 

「はぁ...はぁ...シュウ...一体どこにいるんですの...?」

 

 東部連合エルキア大使館の裏手に、走り回って探し続けたせいか肩で息をする少女、『ステファニー・ドーラ』。

 

 東部連合とのゲームが終了してから、二時間が経過。ほとんどの人類種(イマニティ)はとうの昔に帰宅しており、夕陽が海に消え去ろうとしていた。

 

 そんな中でも懸命に探し続けたが、先ほど行ったいづなとのゲームの影響もあってか、体力はとうに限界にきており、ステフはその場にしゃがみこんでしまう。

 

 そして...

 

「シュウ、もう会えないんですの?そんな...嫌ですわ。認めないですわっ!!シュウがいたから、ここまで来れたっていうのに...せっかくエルキアの...おじいさまの願いをかなえたっていうのに...あなたがいないんじゃ...」

 

 

 

「シュウがいなくなってしまったら、何の意味も無いじゃありませんのっ!!」

 

 

 

 いつの間にか涙を流し、地面に向かって慟哭する。やりきれない感情が、嗚咽となってしか出ていかない。

 

「こんなことになるくらいなら...いっそ...っ!!」

 

 こんな結末になるとわかっていたならと、どうしようもないことにもかかわらず後悔の念に押しつぶされそうになるステフの耳に、一人の男の声が響く。

 

 

 

「お嬢様?」

 

 

 

「っ!!?」

 

 勢いよく声の主の方へと顔を上げ、見つめる視線の先にいたのは...エルキア王城専属執事、シュウであった。

 

「ど、どうなさったのですか!?そんなに泣いて...ま、まさか、東部連合とのゲームに敗北なさったのですか!!?ごごご、ご安心ください!!今すぐ再戦を申し込んで...ってもう人類種(イマニティ)十六種族(イクシード)外!!?再戦する権利どころか獣人種(ワービースト)の家畜になってる!!?わ、わ、いいい今すぐここを離れましょう!!私と一緒にどこかへ...っ!!?」

 

「シュウっ!!」ダキッ!!

 

「What!?」

 

 感極まったのか、ステフは言葉を遮ってシュウのもとへ駆け、抱き着いた。

 

「よかったですわ!!本当に無事で...よかったですわぁぁぁぁん!!」

 

「へ!?いいい、一体何が...!?」

 

 (え?何?何が起こってるの!!?いきなりステフに抱きしめられてるんですけど!!?フォルメリア様から転移(シフト)してもらった途端これってなんのイベントですか!!?というか感触がヤバいっ!!一旦離れて...って力つよぉい!!?うおおおお!!耐えるんだ私の煩悩ぅぅぅぅ!!)

 

 シュウが己の煩悩に苦悶している中、二つの人影が近づいてくる。その人影はシュウたちを見つけるとすぐさま駆け寄ってきて言葉をかける。

 

「お!よかった、見つかったのか。探したんだぞーシュウ。今までどこに行ってたんだ?」

 

「あ、空様に白様。申し訳ございません。ご心配をおかけしました。」

 

「...ん、よかった...無事で何より...」

 

「え!?空に白っ!!?いつの間に...って、きゃあああああああああああああああっ!!!」ドンッ!!

 

「どわっぷ!!?」バターン!!

 

 今の状況を空達に見られて羞恥心に駆られたのか、思いっきり俺を突き飛ばして猛ダッシュで物陰に隠れていった。

 

「あー、シュウ、今すぐ...死んどく?」

 

「...リア充、死すべし、慈悲は...なぁ~いっ!!」

 

「いやいやいや!!私にも何が何だか!!?」

 

 大手を振って今の状況を理解できていないことを空達に伝えるも、どうやらリア充シーンが与えたショックは二人の逆鱗に触れてしまったらしく、聞く耳を持たない。

 

 (...え?めめめ、盟約で守られているとはいえこの空気はヤバいっ!!早く何とかしないと...そうだっ!!)

 

「白様っ!!ちょーっとお体に触りますよっ!!」

 

 シュウは体勢を整えると、咄嗟に白の脇あたりに手を入れて掴み上げる。

 

(...って軽ぅ!!?なんだか発泡スチロール持ってる気分なんだけど大丈夫なのかこの体!!?)

 

 あまりの白の軽さに驚愕したシュウであったが、空と白も別の意味で驚愕していた。

 

「...ふぇっ!!?」

 

「あーっ!!俺の白にまで手を出そうってのか!!?許ざんっ!!」

 

「...『俺の』...」ポッ

 

(はいはい惚気惚気...だが、惚気るにはまだ早いっ!!)

 

「受け取れぇ!!」

 

 シュウは空の胸板に白をシューーーーーーッ!!

 

「うおっ!!?」

 

「...ッ!!」

 

 予想外の出来事に硬直する二人であったが、先に状況を理解した白が行動を起こす。

 

 

ガッシーーーン!!!

 

 

 

「お、おい白?何で兄ちゃんの胴体に腕と足を回してるのかな?」

 

「ふふ...『俺の白』...ふふ...♡」

 

 それを聞いた空の顔が動揺の色を見せる。

 

「えっ!?あっ、それはだな、二人で一人の『  』( くうはく )って意味で...ってあれ?なんで俺あんな事...」

 

「~♪」

 

(説明しよう!!普段遠慮がちな白の為に空から白を奪うように見せかけ、鈍感空野郎の白に対する本音を吐き出させつつ、空の胸に飛び込ませるという白にとっては願ったり叶ったりの作戦なのだっ!!危害を加えようとしているわけではなく、完全に善意の行為だったからなせた事だな!!フハハハハ!!...ふ~、これで一安心...)

 

「おやおやおやぁ?てっきり地獄にでも迷い込んだのかと思いましたが、しぶとく生きていたとは...さすがにございますねぇ♪」

 

(...うわ、悪魔が来た。)

 

 一息つこうとしたシュウの眼前に、転移(シフト)してきたのか、ふわりと優雅に降り立ったジブリール。

 

「地獄にいたほうがよかったかな?」

 

「いえ?たとえそうであったとしても、地獄まで迎えに行きますのでご心配なく。」

 

(へ?それって俺とどこまでも一緒にいるっていう告白...)

 

「私の質問を残して消えるなど神が許しても私が許しませんので。たとえどこかへ逃げようとも地の果てまで追いかけ、死んだどしてもありとあらゆる手段を尽くして復活させるのでご心配なく♪」

 

「ウワーソレハウレシーナー」(白目)

 

(うん。なんかもう、ジブリールからは一生逃げられないんじゃないかと思えてきたよ...)

 

 若干の諦めを抱きつつ、夕陽に視線を向けようとしたシュウの耳に、小さな足音が聞こえてくる。

 

「シュウ、ここに居やがったか、です!!」

 

「あ、いづな様。ご心配をおかけしたようで、申し訳ございません。」

 

「無事ならいいんだ、です。あ、それとシュウ、ありがとう、です!!おかげですげー楽しいゲームができた、です!!感謝してやる、です!!」

 

「光栄の至りにございます。」

 

(...いづなが笑ってるってことは無事に空達が勝利したってことなのかな?...そうなんだろうな。うん。みんな楽しめてるんだったらきっとな。)

 

 それぞれの表情を見て、どうやら原作通りに行っているのだと確信し、ようやく休息が得られると思ったのっだが...どうやらそれは、もう少し先のようで...

 

 

 

「ほぉ?いつまで経っても来やせんから、何かあったんか~思てわざわざ足運んできたっちゅうに、遊んでたんかあんたら?ほんまのんきなもんやねぇ~♪」

 

 

 

 …と、シュウが脳内で状況を整理していたところに突如、アニメで聞きなれた人物の最後の一人の声が聞こえた。

 

(ん?この声はまさか...)

 

 カラカラと鈴の音を鳴らし、下駄を石畳に軽快に打ち付けながらシュウたちの前に颯爽と現れたのは、

 

「ほんまにようやってくれたのう、ハゲ猿。ただでは死なんぞ?」

 

 獣人種(ワービースト)の長、巫女であった。

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