ノーステフ・ノーライフ   作:sayutan

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強引な魅了は全てを惹き寄せるのか?

(う~ん?ここは...?何があったんだっけ?確かジブリールの5%天撃に吹き飛ばされて...)

 

 朦朧とする意識の中、混濁する記憶を繋ぎ合わせ目を覚ます。すると視線の先にあったのは...

 

「おぉ、なんて綺麗な街だ...」

 

 そんな言葉を零してしまうほどの幻想的な光で彩られた海底都市、『オーシェンド』。さすがは海棲(セイレー)...じゃなかった吸血種(ダンピール)。今は海棲種(セイレーン)に半強制的に従わされているとはいえ、同盟を組み始めたころはこんな風に街を改造して、吸血種(ダンピール)も暮らしやすいようにしてたのかもしれない...まぁ、これが例の事件の後に行われたというのなら、もう乾いた笑みしか浮かばないのだが...

 

「おや?お目覚めですかなシュウ殿?」

 

 と、そんなことを考えていると、耳元で白髪老人の(ふんどし)マッチョマン、初瀬いのが声をかけてきた。

 

「あっ、これはいの様、申し訳ございません。ここまで運んできてもらって。」

 

「いえいえ、お安い御用ですぞ。さすがにあの害鳥の砲撃に吹き飛ばされた後の状態で、この海の中を意識の無いまま泳いでいけというのは(こく)すぎますからな。」

 

「まったくその通りで...」

 

 そう、俺は今いのに担がれて、緑の豊かな髪を揺らしながら尾ひれを打っている海棲種(セイレーン)、アミラの先導で女王の間へと向かっている最中であった。

 

「しかし、空殿の不能が判明して、私は嘆かわしゅうございます。」

 

「はいぃ?」

 

 と、変な声を漏らしてしまったが...そうか。俺が寝ている間にアミラと空の会話があったのか。その二人の様子を見ていたいのは、アミラに欲情したにもかかわらず空はアミラの言葉がまるっきり嘘だとわかってたから、何も感じなかったわけで...それを不能と勘違いしてるのか。

 

「見てくだされ、あの緑色の美しい髪をなびかせ海を舞う海棲種(セイレーン)の姿を、体型といい服装といい、何から何までむさぼり...ゴホン...いただきたくなりませんかな?」

 

「言い直してそれですかいの様...そうですね...」

 

 どうやら海棲種(セイレーン)に天の快楽をもらい昇天することしか頭に無いいのの言葉に連れられ、改めてアミラの方へ視線を向けると...

 

 

 

 

 

(これは...ちょっとヤバそうですね...)

 

 

 

■■■

 

 

 

「到――――――――――ッ!着ううウウッ!!お待たセ~っ♪ここが女王様の間ダヨ~♪」

 

 程なくして女王の間へと到着した俺たちに、間髪入れずにアミラが扉を開く。その先にいたのは...

 

「ご紹介します――海棲種(セイレーン)の女王さま...ライラ・ローレライ陛下(へーか)でござ...です!」

 

 巨大な水晶の中で安らかな顔で眠っている、盟約によって吸血種(ダンピール)は吸血を、海棲種(セイレーン)は他種族の男性を搾取することを禁じられた現在、吸血種(ダンピール)海棲種(セイレーン)の共生を可能にする力を持ちながら、自分を惚れさせる王子を見つけるため、とある童話のお話になぞらえて眠りこけてしまったがために、とんでもない迷惑を吸血種(ダンピール)に与えちゃってる、真実の愛を求めて夢見る海棲種(セイレーン)の女王、ライラ・ローレライの前に来ている。

 

「な、なんて綺麗な方ですの...」

 

「これは...なんとまた...」

 

「む、すげーきれー、です。」

 

 それぞれライラに対する感嘆の息を零していく中、

 

 

 

 

 

「うーん...?そんな言うほど美人か、白?」

 

「...よく、わからない...」

 

 

 

 

 

「「はあああっ!!?」」

 

 

 

 

 

 空と白の発言に、思わず目を剥く一同。さすが海棲種(セイレーン)の女王というべきか、海棲種(セイレーン)の特性、『海にある限りすべてを惹き付ける魅力』の元となる『水精』の保有量がアミラなどの他の海棲種(セイレーン)と比べて別格の為、同性であるステフやジブリールまでも魅了するその力を前に、平然としている空と白を見て、驚かない方がおかしいだろう。

 

「ねぇ、シュウだってあの方が綺麗だと思いますわよね!?」

 

 自分の目がおかしくないことを確かめようとするステフの言葉に、

 

 

 

 

 

 

「.....................。」

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あれ?シュウ?い、一体どうしたんですの?」

 

 俺はステフの言葉に答えられずにいた。いや、応えることすら叶わないほど、息をする事さえ忘れ、あらゆる感覚全てを視力に総動員し、ライラの姿を余すことなく脳に焼き付けていた。

 

(これは...ま、まずいっ!!)

 

 そうかろうじて思考し、唇を噛んで正気を取り戻そうと試みるも、顎に全く力が入らず見事失敗に終わる。そもそもその思考すら一瞬でかき消されてしまうほどの勢いで濁流してくるライラの外見以上の情報を処理することで、脳は精一杯のようだった。

 

(くっ、アミラを見たときに妙に色っぽく感じると思ったら、やっぱりあの時アミラの『水精』に当てられてたか...)

 

 アミラを見たときに気づいてはいた。もしかしたら俺は空や白とは違って『水精』の影響を受けるんじゃないか?と。そこでライラを見る前に手で視界を塞いでみたのだが...

 

(胸から押しあがる『見たいっ!!』って感情にどうしても逆らえなかったなぁ...)

 

 あくまで体内に宿している精霊が強引に引き寄せられているため、もはや視界を塞いだところで本能レベルの所でトリガーはとっくに引かれており、全くと言っていいほど意味をなさなかった。

 

(しっかし、この感情は...赤ん坊のステフを見た時や、王城で初めて対面したときと同じ感情...)

 

 初恋の感情と同レベルの勢いで魅了してくるライラに、頭の中で激しく葛藤を繰り返していると...

 

 

 

 

 

 

 

「シュウ!!いつまで見とれてるんですのっ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 ステフが肩を掴み、恐ろしい勢いで前後に揺らしながら、見た目放心している俺の意識を取り戻そうとしていた。

 

「はっ!?お、お嬢様、ど、どうかしたので!?」

 

「どうもこうもありませんわっ!!そ、その、ライラさんに魅了されるのは...まだ、分かるんですけど...な、長すぎませんの!?もうゲームが始まりますわよ!?」

 

 と、どこか不機嫌な様子で迫ってくるステフ。

 

「すすす、すみませんお嬢様っ!!お嬢様とライラさんが頭の中で葛藤しておりまして...」

 

「ふ、ふぇっ!?くくく、比べられる程だなんて...そんな...」

 

 そんな俺の言葉に、みるみるうちに顔が赤くなっていくステフ。

 

(よ、よしっ!何とか機嫌を取り戻せたっ!!よくやった俺の二枚舌ァッ!!!...いや、本音だったけども。)

 

 結果論でうまくいったものの、下手に何か言ってたら今まで頑張って立てたフラグが全折れしかねなかった未来を、一瞬だけ想像して身震いする。

 

「って、今から自身の全権をかけたゲームが始まりますの!!お、おかしいですわよね!?私達助ける側だっていうのに...っ!!」

 

 どうやら女王を起こすゲームに挑戦権があること事態に不満があるステフ。まぁ、おかしいのは空たちも承知の上でわざとやっているんだが...と、ステフの手を握ってシュウが告げる

 

「確かにおかしいと私も思います。が、それは空様もわかっておられるはず。きっと何かしら考えがあるのでしょう。だから...大丈夫です。」

 

「は...はいですわ...」

 

 と、握られた手に意識を持ってかれたせいか、勢いがしゅるしゅると抜けていくステフを見て、

 

「では、ゲームを起動しますねぇ~?では空様、シチュエーションを思い描いてください。そして...宣言をお願いいたしますぅ~。」

 

 『ゲーム』というその言葉に、ステフも気を取り戻したのか、皆と同じようにライラの方へ視線を向ける。

 

(これは...今まで以上に大変なゲームになりそうだ...っ!!)

 

 視線をライラに向けたせいで、またも魅了されそうになるのを振り切り、ステフの手を今までより強く握って宣言する。

 

 

 

 

 

 

「「「【盟約に誓って(アッシェンテ)】!!」」」

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