意識をゲームに没入させ、シチュエーションが構成されると同時、視界が開けた先にあったのは、海の中に学校と呼ぶにふさわしい形状をした建築物があり、なんとも美しい光景が広がっていた。
「うむ、うまく俺のイメージと同じシチュエーションを構築してくれたようで何よりだっ!」
と、満足気にうなずく空に対し、
「あ、あの~、まず
プラムが一層やつれた顔をしながら、視界に映る奇妙なコマンド選択画面の知識の出所を探る....が、
「よし、
それを華麗に無視して空は自分の服装を確かめる。
「ふむ、いつものシャツにブレザーか...ま、悪くないかな?学生服にいい思い出なんて一つもないが...」
軽くトラウマに触れてしまったのか、空は暗くなる表情を振り払って、
「よ、よしっ!他のやつらはどうなってるかなっと!」
と、何気に女性用の制服を着ているプラムをスルーして、辺りを見渡す空の目に一番に飛び込んできたのは...
「むう、なかなか窮屈でございますな...」
空と同じブレザーを含めた男性用の学生服に身を纏っているいのであった。だが学生服はいのの持ち前の筋肉によってパッツパツに張ってしまっている。
「何でじいさんが最初に現れんだよ!?」
「い、イメージの反映が簡単だったので先に来てもらっただけですぅ...」
「はて?私のたくましい姿に惚れでもしましたかな?」
「んなわけあるかっ!?」
と、ツッコミを入れる空の回りに、次々とイメージが反映された者たちが現れる
「...どう、かな...?」
「うむ、よく似合ってるぞ白。」
少し遅れて現れたのは、もともと身に付けていたセーラー服より色鮮やかで、女王が持つ服装に対するイメージが混在したのか、少々露出度が高めのセーラー服を身に纏った白だった。
「ほう、なかなか似合うとるやないの。精々、精進するこっちゃな、いの。」
「お褒めに預り光栄にございます巫女様。」
いのが頭を下げる先にいるのは白と同じセーラー服を着ている巫女。
「ふむ、これもなかなか動きやすい服装でございますね♪」
「む、なんだかスースーするぞ、です。」
同じセーラー服を来たジブリールといづなが現れて、
「ふむ、なんだか懐か...おっと、執事服と似たような服ですね。」
「そ、その...なんで私だけ、いのさんやシュウと同じ男性服なんですの?」
男性用の学生服に身を包んだシュウとステフが現れる。
「それは女王がそもそも男が好きじゃないって可能性を考慮し、男装女性というカテゴリを保管する為だ。」
「...女王は生殖能力のある男性を求めてるって言いましたよねぇ...?」
「信じるに足る根拠はない」
バッサリとプラムの言動を切り捨てたと同時に、ゲームのオープニングが始まった...
◼️◼️◼️
...えー、ご無沙汰しております。シュウです。
今目の前で繰り広げられているのは、
「いや、ちょっ、放してっ!!」
「放しませぬっ!放しませぬぞ我が胸の高鳴り、我が股座の熱さを知って頂きたいっ!老いたる卑小な我が身なれど、命を賭して必ずや満足させてご覧に入れましょうぞっ!!」
「いやあぁぁぁぁぁっ!?」
セクハラの犯行現場である。いや、セクハラの度を軽く越えている気さえするが、いのがライラに対して土下座をしたかと思いきや、おもむろに情交とか言いながら性行為を求めてライラの腕を掴んでいる犯行現場を見せられて何を思えばいいのかもわからないほどの勢いに、苦笑いしかできないんだけども。
「いやっ、ちょ、放して、放してってばぁっ!!」
「お待ちくだされ女王よ!女王よぉぉぉおおッ!!」
おぉ....おぉ....ぉ....
うん、なんだろう、『哀れ』という言葉しか思い付かない。というより同情を寄せるのすら間違っているような気さえするな...。
「ま、まぁ、まだフラれてはいないんだよな、アレ?」
と、あまりの惨劇に絶句していた一同であったが、確かめるためにプラムに質問をする空。
「えぇ、まぁ、女王様が逃げ出したって感じですのでぇ、ゲームシステム的にはフラれていないんですけどぉ...アレを告白と言うには無理がありすぎるかとぉ...」
そんなプラムの言葉にいの以外の全員がうなずいて同意を示す。
「じゃあ取り敢えずふつーにプレイするか。コマンド選択....『下校』っと。」
「「え?」」
目を丸くする一同(白以外)に、空は首をかしげて、
「え?だって学校だぞ?めんどくせぇじゃん。明日から頑張るよ。」
「....こくこく」
「....あんたら、なんでこの舞台指定したん?」
巫女の素朴な疑問に応える前に、空と白は一瞬にして姿を消した。
「....と、取りあえず行ってみますか?学校とやらに。」
そうシュウが促すと同意したのか、とぼとぼと校門の方へ歩みを進めるのであった。
◼️◼️◼️
「はぁーい☆校長のアミラだよーっ!みんな元気かなー?キャハッ☆」
唐突にマイクを通じた大声に耳をふさいで何とか耐える。
「今から開校式?ってのを始めまーす☆皆さん、校長であるこのアミラの話をよぉーく聞いてね☆」
と、なんだかノリッノリのアミラ校長の話が始まった。
「えー、ぜんりゃく?おつとめ?なにこれ?どーゆー意味なのかな?アミラわかんないなー☆」
どうやらアミラ自身が書いたわけではないらしい校長の言葉を読み上げきれないまま、全く要領を得ない話が始まるや、
「鳥頭ならぬ魚頭がこれほどまでとは、聞いて呆れますね♪『下校』させていただきましょう♪」
「なんや長ったらしいわぁ....あても帰らせてもらおか。『下校』」
「ねみぃ、です。家帰って寝る、です。『下校』、です。」
あまりの頭の悪さが露呈する話に耳を貸すのが馬鹿馬鹿しくなったのか、即座に下校コマンドを選択して帰っていくジブリール、巫女、いづな。
「まぁ、気持ちはわからなくもないですけどぉ....初日くらい我慢できないもんですかねぇ?」
あまりの即決にがっくりと肩を落とすプラム。
「ま、まぁそう落ち込まずに。空様方のペースがあるでしょうから、気にしすぎない方がいいかと。」
「そ、そうですわ。まだゲームは始まったばかりですもの。」
そんなシュウとステフの言葉に何かしら思うところがあったのか、顔を上げるプラム。
「お二方だけですねぇ。ちゃんとプレイしてくださるのはぁ....なんだか救われた気分ですよはいぃ....」
わざわざ術式編纂に30人もの
「はぁーい!!今日の校長の言葉は終わりっ!!ついでに開校式もおーわりっ!!皆教室に行って沢山喋って過ごしてね☆」
そんな空気をよそに今まで大音量で喋りまくってたアミラの話が終わり、いよいよ学園生活の幕が開けた。
【一日目】
「ようやく終わりましたわね....耳が痛いですわ....」
開校式のあった体育館を抜け教室に向かう。アミラの大発声に鼓膜をやられたのか、耳を押さえながら愚痴をこぼすステフ。
「さて、まずは何をするのでしょうか?普通なら授業が行われるはずですが、
ふとした疑問をプラムに向け聞くシュウ。
「えぇ、
若干白目で応えるプラムの様子からしてマトモな授業でないことはわかる。
(まぁ、大抵のギャルゲーに授業なんてまどろっこしいのないし、当然と言えば当然か。)
と、元の世界のギャルゲーのシナリオを思い出すシュウ。
「まぁ、授業を受けることで何かしらのイベントが得られるかもしれませんし、受ける価値はあると思いますわ。」
「それでは受けてみましょうか。コマンド選択....『授業』っと....」
「それなら私も....」
「あ、ボクは他の皆さんの様子を見てきますねぇ....では攻略頑張ってくださいぃ。」
そうしてコマンドを選択すると、一瞬にして景色が教室へと移り変わり、いくつか並んだ机の中央2列のど真ん中の席にステフとシュウは座っていた。
「わぁ、なんだか懐かしいですわー♪アカデミーに行ってた頃を思い出しますわね。」
と、学生時代を思い出して懐かしむステフ。
「おや?周りの席には
と、シュウは辺りを見渡してみると、ステフとシュウ以外の生徒らしき人物はすべて
「まさか、男!?」
「そうよね、間違いないわよね!?」
「うっそ!?男がこんな近くにっ!?」
まじまじと見つめてくる視線に、どこか違和感を感じたシュウは、ステフに声をかける
「お、お嬢様、なんだか辺りの様子がおかしくないですか?」
そんなシュウの言葉にステフは同意するように頷いて、
「そ、そうですわね。なんだかすごく見られている感じがして落ち着かないですわね...」
「もしかして男性が私達だけなのが原因かも知れませんね。お嬢様も攻略のためか設定上男性とされていますし、
「そ、それもそうですわね...」
(あれ?もしかしてこの学校って俺ら以外全員女性?なにその女学園?ゲームで男が女装して入学するタイプのギャルゲーならそれなりにあるが、ここまでの女子率を誇る男女共学って中々無いだろうな...って、待てよ?もし全員水精持ちなのだとしたらヤバいぞっ!!?)
と、そんなことを考えている間に辺りのざわめきは徐々にヒートアップしていき、遂に
「あっ、あのっ!お名前は何て言うんですか!?」
「へ?わ、私ですの!?す、ステファニー・ドーラですわ!」
「で、お隣の方は!?」
「はぁ、シュウと申します。」
「きゃーーーーーっ☆」
二人の名前を聞くや否や、黄色い声を上げて喜びだす
「じゃあじゃあ、お昼休みに一緒に食事しませんか?ステフさまっ♡」
「へ!?」
突然の申し出にたじろぐステフ。
「じゃあ私はシュウさまと一緒するぅ♡」
「えっ!?」
同様に食事に誘われてたじろぐシュウ。
「ちょちょ、ちょっと待ちなさいなっ!?いきなりなんなんですのあなた方っ!?」
あまりの勢いに圧されそうになるも、何とか断りを入れて落ち着こうとするステフだが、
「え?だって....」
「魅力的な男を見かけたら声をかけるのが普通だよねぇ?」
「そうだよぉ?私達間違ってないよねぇ?」
(何そのフランス人男性の魅力的な女性を見かけたら口説かなきゃ失礼ってほどの行動力!?)
「こここ、これってどういうことなんですのぉ!?」
とても自分じゃ対応できないと踏んだのか、シュウに助けを求めるかたちで話しかけてくるステフ。
「あー、おそらく
「な、なんてことですの....」
シュウの考察を聞いてがっくりと肩を落とすステフ。
「いえ、むしろ空様の意識が混ざってくれたからこそ、今の状況ができたんです。もし元の
「はぁ....」
やるせない気持ちで頭が一杯になってしまい、文字通り頭を抱えるステフとシュウ。
「あれ?頭が痛いの?保健室行きましょうか?」
(頭が痛いのはそっちの方だよっ!?)
「熱があるかもしれないわ。冷やす道具を今すぐ持ってきて!」
(頭を冷やすべきはあなた方のほうですわっ!?)
と、言葉にせずに心の中でツッコミを入れる二人の前に、一人の人影が現れる。
たったその一言で先程までの狂騒は止み、その声の主へ注意が集まる....いや、正確にいうなら、強制的に集められたと言うべきだろう。
「初日から騒いでいては品が損なわれます。少し慎みなさい。」
彼女が発する一言一言に、まるで麻薬でも仕込まれているように、皆の目は陶酔したようにうっとりとしている。
ステフすらもその影響下に置かれ、考え事などすべて吹き飛んでその女性を見つめていた。
「さぁ、皆席について!もうすぐ先生が来るはずだから、静かに待ちましょう!」
手を軽く叩いて皆を言葉で誘導していく。それに逆らう
「よろしい♪」
そう言って満足した笑顔を見せるのは、海にいるだけで海に愛されつくし、皆を惹き付けさせる存在、