ノーステフ・ノーライフ   作:sayutan

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最初の授業は実習で☆

「はぁーい☆先生のご到着だよぉ☆皆待ったぁ?ごめんねー教室がどこか忘れて迷っちゃった!キャハッ☆」

 

 と、陽気な声を出して教室の窓から乗り込んできたのは、先程開校式で校長として話をしていたアミラである。

 

「あ、あれ?あなた校長ではなかったんですの?」

 

 ごもっともなツッコミをすかさず入れるステフに、アミラがいつもの笑顔で応える。

 

「えー?そんな細かいことは気にしなーい気にしなーい☆身分とか役職とかよくわかんないカラ、適当でいいんだヨ!キャハッ☆」

 

 もはやウザさすら通り越すアミラの頭の足りなさに、呆れの表情を露骨に出すステフ。そんなことを気にも止めない様子でアミラはエンジンフルスロットルで続ける。

 

「さぁ!開校初日の授業内容はぁ....『どうやって男を上手く惚れさせるか!?』でーす☆」

 

「身も蓋もあったもんじゃないですわね...」

 

「穴があったら入りたいですお嬢様。」

 

 ステフは設定上男ではあるが、中身は完全に女性であるため、まだこの授業に耐性はあるだろうが、芯まで男のシュウは聞いてて恥ずかしいレベルの内容である。

 

「では、早速ご教授願えますか?」

 

 馬鹿馬鹿しい限りの内容ではあったが、涼しい顔でアミラを授業へ促すライラ。

 

「わっかりましたあ☆それではまず男性は女性のどこに魅了されるでしょーかっ!?はいそこの海棲種(セイレーン)さん!!」

 

 ズビシッ!という効果音が聞こえそうな位の勢いで指をさすアミラ。そしてさされた海棲種(セイレーン)が答える。

 

「顔!胸!股間です!」

 

「よく言えました女体の魅力三ヶ条!!大正解っ!!!」

 

(なんだこのやり取り?)

 

 海棲種(セイレーン)の阿吽の呼吸とも言えるほどの問答っぷりに真顔にならざるを得ない。

 

「もちろん脇やお腹、へそや髪型、太股など、様々な部分が魅力としてとらえられるけどぉ、大部分はその三つであってるよー☆」

 

「やったー♪」

 

「じゃあ次は男を惹き付ける為の仕草!!じゃぁ次はそこの海棲種(セイレーン)さん!!」

 

「はいっ!!えっと、話しかけるときはちょっと屈んで上目遣いで、腰をくねらせて体つきをアピールします!!」

 

「うーオールオッケー☆もっと言うなら胸の上に手を当てたり、おしりに当てたりしてそことなーく意識させたりするのも効果的かな☆もっと攻めたいなら男の手を握ってみるのもいいかもよ☆」

 

(いや、なにこのリアルな知識!?海棲種(セイレーン)ってこういうことに関してはかなり上手いのか!?)

 

 あまりに的確なアピール方法を提示するアミラに驚愕するシュウ。そんな驚きも知らずになおも続けるアミラ。

 

「じゃあ次は、男に話し掛ける時の話術ね!どんな口説きかたが良いかしら!?はいそこの海棲種(セイレーン)さん☆」

 

「はいっ!積極的に褒め倒します!!そして自分が男性より立場が下だということをアピールします!!」

 

「バッチリだよ☆でも立場が逆転しているときがコーフンする男もいるから、そこは臨機応変にネ☆」

 

(なんだろう、こいつらに口説かれたら堕とされる気しかしないんだが?)

 

 そんな海棲種(セイレーン)の問答に恐怖すら覚え始めているシュウの隣で、なにやら物音が聞こえる。

 

 

 

 

 

カリカリカリカリカリカリ........

 

 

 

 

 

(ステフめっちゃメモってるぅ!!?)

 

 さっきから何のツッコミも発しないと思ったら、ステフはどうやら海棲種(セイレーン)の知恵に興味をもって所持品にあったノートと鉛筆を取り出して、図解すら交えた詳細なメモを恐ろしい速度で作り上げていた。

 

(か、過去に何か思うことでもあったのだろうか....)

 

 と、若干引き気味のシュウをよそに、アミラが大手を振って授業を続けている。

 

(だがなんだろう、この違和感。口説き方はまぁいいとして、何か足りてないような....)

 

 授業を聞いているうちに、そんな違和感を覚えたシュウの耳に、アミラの声が響く。

 

「よーし!じゃあ次は実践してみよー☆あ、そのときにちゃんと念頭に置くべきことがあるんだけど、それが何か分かるかなぁ~?」

 

 と、耳に手を当てて生徒から聞き出す素振りを見せるアミラ先生。

 

 それに答えるようにほぼ全員の海棲種(セイレーン)が手を上げて叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

「「ヤって、搾り取る!!」」

 

 

 

 

 

 

(それだぁぁぁぁぁ!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

(こいつら口説いた後がヤって食べ尽くすだけだから、同棲するという観念がまったくないのか!!空の思想の混在で相手選びに慎重さが生まれたってだけで他は何も変わっちゃいねぇっ!?そりゃ口説くだけで済む訳だわ!!その後の事は一切考慮してないからこそ、肉体と性的なアッピルだけしか考えてなかったのか!!)

 

 と、その事実にステフの思考も行き着いてしまったのか、高速で動かしていた鉛筆がピタリと止まる。

 

「じゃあ、ちょうどよく男がいるので、そこの人類種(イマニティ)女王(じょーおー)さま!!さっきの事を実践しちゃって☆」

 

 そうしてアミラからご指名を頂いたのは、ステフとライラだった。

 

「ふぇっ!?」

 

「はい、わかりました。」

 

 突然の指名に驚くステフの前に、席を立って堂々と歩み寄るライラ。

 

「さぁ、お立ちになって?」

 

 そう言いながら差し出すライラの手を、水精の影響を受けたステフは反抗する気など起きるはずもなく、生唾を飲んで手を取り立ち上がる。そばにいる俺ですら魂が引き寄せられ、ライラから目をそらすことができずにいる。

 

「さぁ、実践といきましょうか。」

 

「は、はいですわ....」

 

 もはやライラが視線を向けるだけで頬に熱を感じるステフ。そこにトドメと言わんばかりに告げる。

 

 

 

 

 

 

「あなたとひとつになりたいの」

 

 

 

 

 

 姿勢を低くして上目遣いなのはもちろん、ボディタッチも抜け目なく、セーラー服の隙間から見える谷間や脇を見せつけつつ放った言葉、それらのあまりに暴力的な魅了に、同性であるにも関わらずステフは、

 

「は........はい............」

 

 と、返すのがやっとだった。

 

「すっごーい☆」

 

「さすが女王さまぁ♪」

 

 ステフの口説きに成功したのを見て、海棲種(セイレーン)たちは拍手喝采。たが、たとえ女王がどんなに下手な演技や言葉をかけたとしても、すべてを魅了する女王にとって、それは必然の現象であった。

 

「じゃー隣の男もついでにやっちゃおー☆」

 

 腰を抜かしたように席につくステフを見て、次の標的としてシュウを堕とすようライラを促すアミラ。

 

(げっ!!?そそそ、それはまずいっ!!?)

 

 ライラをボーっと見ていたためにアミラの言葉を理解するのに時間がかかったせいで、逃げる機会を失ってしまった。

 

「さぁ、あなたも」

 

 手を差しのべるライラの手を取って立ち上がる。だが内心焦りまくってるせいか表情が硬い。

 

「あら、熱でもあるのかしら?」

 

 と、ライラは俺の体調を心配してか、額に手を当てて、お互いの顔の距離をわざと近づける。

 

(やめろぉっ!!?頭がライラ色に染まるぅっ!!?)

 

 接近されただけでも快楽が溢れていたのに、肌に触れられるだけで脳内麻薬がこれでもかと言わんばかりに流れ、息があがる。この状況から逃げ出したいと心は思っても、体はむしろここに居たいと願うばかり。

 

「それなら....私と一緒に休みましょうか♪」

 

 と、もう一方の手を胸の方に当てて、上目遣いに加え、口をすぼめる。見事な包容力を見せるライラ...

 

(あっ、これは堕ちる...)

 

 もはやライラ以外の事を思考することも許されない程の水精の洗脳により、完全にライラ一色に染まりそうになるシュウ。

 

 

 

 

 

ライラを独り占めしたい。自分のものにしたい。

 

 

 

 

 

 もし、シュウが思考できていたのなら、こう思うだろう。

 

(他の男もこうなったに違いない)

 

 と、だが、そんな些細なことはもう頭に無く、もはや獣のようにライラを貪るために、力強く抱き締め捕獲しようと手を伸ばそうとした...

 

 

 

 

 

 が、

 

 

 

 

 

 

 それは叶わない、いや、()()()()()()()()と判断したのだ。

 

 

 

 

 

 

 なぜか?それは...

 

 

 

 

 

 

「.........。」

 

 

 

 

 

 

 

 鬼気迫る...いや、文字通りの“鬼気”を放っている存在が、隣に居たからである。

 

 そのあまりの気配にシュウは当然として、アミラを含む海棲種、果てはライラまでもがその元凶に注意を向けさせられた。

 

 

 

『視線を向け、刮目せよ、警戒せよ...さもなくば、己にあるのは“死”のみである』

 

 

 

 と、本能がそう告げなければならない程の怒気。唖然とする一同の中でただ一人、シュウはそれに身覚えがあった。ただ、以前よりも遥かに強力、かつ冷酷になっていることが、粟立つ肌が幻視できる程であることから容易に理解できた。

 

「お、お嬢さ...ま?」

 

 体はまるで氷付けにされたように(ひる)んで動かない。辛うじて視線だけステフの方へと向ける...と、

 

 

 

 

ガシッ!!

 

 

 

 

「!!?」

 

 刹那、ライラへと向けていた腕が、いや、ライラに向かって端から見れば襲いかかろうとして前屈みになっていた姿勢が紳士らしい直立姿勢になり、右腕には、まるで恋人同士であることを主張するかのように、ステフが腕を絡めて隣に立っていた...()()()()()()()()()()()()()

 

 そしてステフが右腕を上げ、ライラを指差すような仕草をとる。

 

「へっ!?な、何をするつもり!?」

 

 明らかに動揺し、余裕の全く無い表情で警戒するライラ。だが、その言葉にステフは耳を貸さずに素早く視界に映るUIのコマンドを打っていき、

 

「それでは、少々私達二人は話し合わねばならないことが出来ましたので、ここで早退させてもらいます。アミラ先生、何卒ご配慮の方をよろしくお願いします。」

 

 と、“社交辞令の笑顔”をベッタリ貼り付けた状態で謝罪を述べた後、ステフとシュウは教室から姿を消したのであった...

 

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

 

 私は、何でも手に入れられる。

 

 男はもちろん、女だって惚れさせて手にできた。

 

 海の中に在るものならば、願うだけで手に入る。手に自然と収まるのだ。

 

 想えば想ったものが自ら寄ってくる。どんなに遠い場所にあっても、どんなに困難な道だとしても、私の為に自分の身を捧げに来る。

 

 母なる海を掌握する。それが私。

 

 

 

 

...だけど、今回は違った。

 

 

 

 

 いつものように、いつものように...ただ人類種(イマニティ)の男を惚れさせ、特に欲しくもなかった愛を、代わり映えの無い愛を、私の水精の強さを証明するだけの愛を貰おうとしたのに...

 

 

 

 

奪われた

 

 

 

 

 こんなことは初めて。私が愛の摂取をすることは、誰もが受け入れ、了承するのが海の常だというのに、それを邪魔された。しかも、隣に居た男の格好した女の人類種(イマニティ)に!

 

「...私が手に入れられない愛なんて無いってことを、証明してあげるわ!!」

 

 それは眠りについた理由とは矛盾しているようだけど、それよりも私のプライドが許さなかった。

 

 未知の愛を欲しがるより、既知の愛全てを欲しがったのだ。

 

「さぁ、あの男を女から引き剥がして、徹底的に惚れさせて、私の邪魔をしたことをあの女に後悔させてあげるんだからっ!!」

 

 これより、ライラの行進(攻略)が始まる...

 

 

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

 

 

 一方その頃...

 

「なぁ、何で学園のシチュになってんだろな?」

 

 

 

「...にぃが決めたこと、でしょ...!?」

「マスターの意思では無かったのでございますか!?」

「空が決めたことじゃなかったのか、です!?」

「あんたが決めたことやあらへんのん!?」

「空様が決めたことでしょぉ!?」

 

 

 

 空と白の寮の宿舎で、皆を集めてゲームしている最中に、空がつい溢した台詞に、全員突っ込まずにはいられなかった。

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