ノーステフ・ノーライフ   作:sayutan

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恋は心を惑わせて

《ステフside》

 

 

 

「はぁ、またやってしまいましたわ...。」

 

 昨日のシュウに対する暴走を思い出して溜め息が出る。もうこれで何度目だろう?

 

「今日はどんな顔でシュウに会ったらいいのか見当もつきませんわ...。いっそのこと今日はシュウと会わなければ...」

 

 『いいのに。』と、言い切れずに口ごもってしまう。かける言葉や表情の見当はつかなくても、『会いたい』と思ってしまう。現に今、学園に向かって歩を進めている。シュウに会わせる顔がないと言うのなら、学園を休んで自室に引きこもっていれば良いのだ。でも、そうしなかったってことは...。

 

「あーーーっ、もうっ!!」

 

 予想した答えを掻き消すように、顔を大きく左右に振る。

 

「と、とりあえず、ライラさん攻略の為に学園に行くんですわ、そうですわ!!」

 

 と、建前の目的で学園に行くことを自分に言い聞かせ、納得させる。

 

「...こういう所で素直になれないから暴走するんじゃないですの...」

 

 さも平然と建前を立てたことに呆れながら、学園に向かっていると、見えてきたのは...

 

「へっ!?い、いのさん!?まだ土下座を!?」

 

 昨日ライラさんに過激なセクハラをしたかと思ったら性交渉を申し込む態度を土下座で示し続けているいのさんだった。

 

「おや?ステファニー殿でしたか。おはようございます。」

 

「え、えぇ。おはようございます?」

 

 土下座の姿勢を1ミリも変えないまま返事を返してくる。というか昨日そ騒動と全く同じ場所にいることに不思議に思って聞いてみる。

 

「えっと...その...まさかとは思いますけど、あのときからずっとその状態なんですの?」

 

「愚問ですな。男たるもの、一度懇願した身ならば、相手が応えてくれるまで何があろうと待ちますぞ。」

 

「アホじゃないですの!?」

 

 瞬時に突っ込みを入れてしまう。喉から出かかるどころですらなかった。

 

「なんですと!?この初瀬いのが経験に経験を重ねて導きだした最上の申し出の方法がアホの所業ですと!?」

 

「少なくとも私はひきますわよ!?」

 

「んなぁっ!?そ、そんなはずはありません!!す、ステファニー殿が私を意識していないからそう思われるのです!!意識していたら必ずや私の気持ちに答えたくなるはずです!!」

 

「例えそうであってもひききる自信がありますわ!?」

 

 ちなみに、これだけの勢いで会話しているのに、いのさんは微動だにしていない。

 

「そ、そんな...た、例えば、仮に私ではなく、シュウ殿がステファニー殿にこのようなことをしていたらどうでしょうか?」

 

「ふぇっ!?し、シュウがっ!!?」

 

 

 

『お嬢様っ!!どうか、どうかこの卑しき執事と一夜限りの情交を受け入れてくださいませんか...っ!!』

 

 

 

 あ、あわわわわわわわわわわ!!?

 

「そそそ、そんな...まだお付き合いもしてないのにそんなこと...」

 

「お付き合い?そんなもの不要でございますぞ!体の相性が良くなければ今後もし婚約なされたとしても上手くはいきませぬ!」

 

「そ、そうなんですの?」

 

「そうでございます。さすれば今!!私と情交を...っ!!」

 

「そ、そこまで言うのなら...って、何でいのさんと情を交わすみたいな流れになってるんですの!?」

 

「むぅ、さすがに騙しきれませんか。ところで気になっていたのですが、今、ステフ殿の近くにシュウ殿はいらっしゃらないのですか?少々無礼な態度でステファニー殿に対応しても声が聞き取れなかったので。」

 

「えっ!?そ、そういえばまだシュウは来ていませんわ。」

 

「そうですか...いや、常日頃シュウ殿はステファニー殿と共にいらしたので、ステファニー殿1人とは珍しいと思いましてな。」

 

「そう言われると...そうですわね...。」

 

 思い返してみれば、シュウとはいつも一緒だった気がする。私が事務作業をするときも、シュウは私の身の回りのことに気を配っていたり、逆にシュウが仕事をしているときは私から話しかけに行ったりと、空たちがこの世界にくるまではかなりの頻度で会っていたということを自覚する。昨日だって、逃げ出したりしなかったら自室に帰るまで一緒だっただろう。

 

「まぁ、シュウ殿も男ですから、海棲種(セイレーン)のどなたかに惚れて今頃...」

 

「そ、そんなはず...あ、ありませんわ!!」

 

「はっはっは!少々からかいすぎたようですな。」 

 

 年の功と言うべきか、いのさんは余裕を持って話している。私なんて、少しからかわれたら焦って言葉に詰まるというのに。

 

「まぁ、私はこの学園への通り道にこうして鎮座することで、ライラ殿にほぼ毎日思いを伝える所存でございますれば、必ずや情交を果たして見せましょうぞ。」

 

「そ、そうなんですの...頑張って下さいな...。」

 

 ライラさんにとってこれほどはた迷惑な公開セクハラは他に無いだろうと思いつつ、いのさんのもとを去ろうとしたとき、

 

「む!?これはライラ殿の匂いっ!!どうか、どうかこの卑しき獣と情交を...っ!!」

 

 遂にスメハラまで手を伸ばしていることに、いっそ牢屋に勾留した方が世のためだと思いながら、ライラさんの方へ視線を向ける。

 

「えっ...どうして...ですの?」

 

 その視線の先にあった光景を、私は信じたくなかった。なぜなら...

 

 

 

「ふふっ♪シュウは料理が得意なの?」

 

「ええ。このシュウ、料理の腕には自信がありますよ。今度ライラに味わわせてあげましょう。」

 

「へぇ...なら舌を肥やして待っているわね♪」

 

「へっ!?で、できれば肥やさずに待っていただけると助かるかなぁ...なんて...。」

 

「あら?さっきまで胸張るほど自信満々だったのに、どうしてそこまで動揺するのかしら?もしかして、本当は口だけの料理人?上手いのは口じゃなくて腕じゃないとダメでしょう?」

 

「ぐっ、そこまで言うなら、ライラの肥えた舌すら唸らせる絶品を振る舞ってやるから、覚悟しておくことだな!」

 

「ふふっ♪それは楽しみね♪」

 

「あー、言ってしまった...。」

 

「何?後悔してるの?」

 

「いや、男に二言はゴニョニョニョニョ...」

 

「あははっ♪」

 

 

 

 楽しそうに会話を交わしながら登校してくる、ライラさんと...シュウの姿があったから。

 

「な、何でシュウが...ライラさんと一緒にいるんですの...?」

 

「なっ、今ライラ殿の隣にはシュウ殿がいらっしゃるのは本当なのですか!?」

 

 いのさんの聴力と嗅覚をもってすれば、その確認は容易だろう。だが、それをもってしても信じられない気持ちは私にも理解できる。

 

 あれだろうか、ライラさん攻略の為に、まずは自分から攻略されに行って、新密度を高めようという、まさに逆手の手段を考じたのだろうか?

 

 ...いや、そんなことはどうでもいい。この際、この短い期間でここまで親密な仲になった方法を知る気は無い。それよりも私の心を支配した感情は...。

 

(嫉妬...ですわね...。)

 

 自分がかつてから望んでいたシュウとの関係を、今ライラさんが目の前で実現している...。名前で呼び会うなんて、どんな嬉しいだろうか、そう思いながら奥歯を噛み締める。

 

(でも...私だって...っ!!)

 

 胸の内のモヤモヤを掻き消さんばかりにシュウの方へ駆け出す。

 

「シュウ!おはようございますわ!」

 

「え?あっ!お嬢様!おはようございます。」

 

「あら、おはよう。あなたは確か...ステファニーだったかしら?昨日は急用があったみたいだけど、大丈夫だった?」

 

「えっ!?え、えぇ、大丈夫でしたわ。」

 

「そう。まぁ、あの後すぐに授業はおろか学園が校長の意向で休みになったから、授業の進行具合については心配しないで大丈夫よ。」

 

「そうなんですの!?」

 

 アミラさんがあの呉服屋にいたから不思議に思ってたけど、そういうことだったんですのね...。

 

「それにしても...あの時シュウが突然いなくなって寂しかったわ...。」

 

「あー、ごめんなライラ。お嬢様の心配性が重くなると聞く耳を持たなくなるからさ、勘弁してくれ。」

 

 ん?

 

「まぁまぁ、シュウが無事でよかった♪」

 

「俺もこうしてライラ登校できて嬉しいよ。」

 

 んん?

 

「やぁん♪シュウったらぁ♪」

 

「かわいいなぁライラは♪」

 

 な、なんなんですの?こののろけ具合...?というか、私完全に蚊帳の外じゃありませんの!?

 

「ちょ、ちょっと...」

 

「あ、そうだ。今日日直任されてるから職員室に行かないと。急ぎましょう!」

 

「そうなのか。それじゃ行くとするか...。」

 

「それではごきげんよう♪ステファニーさん♪」

 

「それでは失礼いたしますね。お嬢様。」

 

「あっ...ちょっ......っ!!?」

 

 別れの挨拶を残し、玄関口まで駆けていく二人を呼び止めようとした...が...

 

(なんで...手まで繋いで......っ!!)

 

 まるで満開に咲く花のように笑い合う二人を見て、制止の手を下げてしまう。

 

「どうして......。」

 

 どうしてあの二人は、いつの間にあそこまで仲良くなれたんだろう。どちらかが告白でもしたのだろうか。一目惚れとか?そんな感じに。シュウが告白した側ならライラさんの能力で強制的に可能でしょうけど、それにしてもライラさんのあの満面の笑みは...。

 

「考えるだけ無駄なのかもしれませんわね...。」

 

 そう、いずれにしても勇気を出し遅れた、あんな関係になることを望んでいたのに、臆病になった私が悪いんだから...。後悔するしか...無いんですのね。もはや、『お嬢様』と『執事』の関係のみでしか繋がることのできない現状を、直視するのは今の私には難しいですわね...。

 

「くぅ......っ!!」

 

 ふと気づけば、頬に涙が伝っ......

 

「なんたることだ...私の土下座を差し置いて、シュウ殿と交際を...!!?あり得ません、あり得ませんぞぉ!!?この初瀬いの、例え何があろうとも土下座を貫き、何年...いや、何千年も待ち続け、ライラ殿を貫き、私こそが相応しい男だと証明して見せましょうぞ!!」

 

「...いや、その証明が果たされることは、未来永劫ないと思いますわ...。」

 

 土下座の姿勢で咆哮するいのさんの姿に、私はそう答える事しかできなかった...。

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

《白side》

 

 

 

 真っ暗な部屋の中、静かに寝息が木霊するこの空間。いつものように、にぃの腕の中でくるまって眠っていると、カーテンをしっかり閉めていなかったのか、外の街灯の光が目元に当たる。

 

「んぅ...ん。にぃ、朝だよ?起きて?」

 

「んぁ~?朝だぁ?んなもんゲーマーな俺らにとって関係ないだろ...もうちょっと...。」

 

「むぅ...。」

 

 そうして私の身体を引き寄せて二度寝に入ろうとするにぃ。正直、この心地よさをずっと味わっていたいけど、そうはいかない。ゲームの勝利を確実にするために、起きてもらわないといけない。ちょっと意地悪だけど、こうするしか...ない...っ!

 

「にぃ...白のお腹に元気なにぃのにぃが、当たってる...よ?」

 

「はああああああああっ!!?すまんっ!白っ!!マジすんませんでし...って、あれ?全く元気じゃない?」

 

 勢いよく飛び起きて土下座の姿勢を取ろうとしたにぃは、すぐにぃのにぃに変化がないことに気づく。

 

「ん。にぃのにぃは、ずっと小さかったよ?」

 

「あのー、白さん?冗談に加えて悲しい事実加えてくるのやめてくれません?兄ちゃんガチで泣きそうなんだけど?」

 

「そんなことより...。」

 

「そんなことよりぃぃぃ!!?」

 

「今日、動くかもしれないから、ちゃんと見に行かないと...。」

 

「あ、そうだった。そのために起こしてくれたのか?」

 

「いや、起きたのは偶然...だけど、登校でほぼ確実にすれ違うから、用心の為。」

 

「まぁ、それもそうなんだが、二日目にしてじぃさんの土下座が功を奏するとは思えないけどな...っと!」

 

 そういってにぃは勢いよくベッドから起き上がった。

 

...そう、初瀬いのを連れてきたのはもちろん意味がある。それはチート魔法を使ってライラに告白してもらうこと。もちろんそれによってゲームクリアすることは無いとにぃは確信しているけど、それによる副産物...三種族の制覇を目的として動く。だから、チートが失敗する瞬間にできるだけ立ち会っておかなければならない。プラムと一緒にいるときに...。

 

「さって、期待薄だけど行ってみますか!」

 

 そう、にぃが宣言すると同時に、床の方から声が聞こえてくる。

 

「んぅ?こんな朝から騒がしいぞ...です。」

 

「んぁ?あんたら、さっきまで遊んどったんのに、もうどこかへ行くんか?」

 

「あぁ、巫女さん達はどうする?学園行くか?」

 

「いや、あては遠慮させてもらうわ。来るとしても昼頃になるやろねぇ...。」

 

「いづなも、まだねみぃ...です。」

 

「そっかそっか。じゃあプラムは?」

 

 と、当の昔に起きていたのであろう。台所の方で食事を済ませているプラムの方へにぃが問いかける。

 

「あ、はいぃ。それじゃぁ着いていきますねぇ...。」

 

 食事をとったにも関わらず、弱々しい素振りを見せながら近づいてくる。

 

「よし、んじゃ、ジブリールはどう?くるか?」

 

 天井の方に向かってにぃが軽く問いかけると、空間に穴が開いて、ひょこっとジブリールが顔を出してくる。

 

「はい。大丈夫にございます♪睡眠を必要としない私達天翼種(フリューゲル)は、いつでも完璧な状態でマスターのご要望にお答えしましょう♪」

 

「そういや、ジブリールって俺らが寝ている間何やってんの?」

 

「マスターの観察日記と、質問集の追記でしょうか。今日も疑問が多く集まったので満足にございます♪」

 

「少しはシュウに手加減してやれよ...?」

 

 それから服装を学生服に着替えて、『登校』のアイコンを選択し、自室を後にした。

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

「なに...あれ?」

 

 『登校』を選択して、一瞬にして校門付近にワープした白達の目の前に、一瞬では理解できない光景があった。

 

「え?なんで...なんでまだ土下座してんだよじぃさん!?」

 

「いや突っ込むところそこじゃないでしょぉ!?」

 

「いや...いやいやいや!!断じて認めんぞ!?今玄関付近にお手て繋いで登校するとかいう非モテ野郎への間接的テロ行為が目の前で起こってるなんて断じて認めんぞ!!」

 

「にぃ...現実を見て...っ!!」

 

「なんだ!?どうやって登校初日からあんな仲になれるんだよ!?あー、俺も登校しときゃその辺のご教授受けれたってのか!?...そうだ!おいステフ!昨日授業一緒に受けてただろ!?なにか知って...」

 

 そう叫びながらステフの顔を回り込んで見てみるにぃ。白も離れないように着いていってみると...。

 

「え?あぁ、空...来てたんですのね...。」

 

「えっ、あ、あぁ、うん。おはようステフ...その...なんだ。元気出せよ...。」

 

 目尻に涙を少し浮かべて苦笑いで返すステフに動揺するにぃ。どうやらにぃはそれに気をとられてステフに水を差すのを止めたようだ。

 

「ステフ、大丈夫?」

 

「えぇ。大丈夫ですわ。それに...私が遅かっただけですもの...ね。」

 

「ステフ...。」

 

 ステフの後悔と、どこか吹っ切れたような...諦めたような...乾いた笑みを見て、心がざわつく。

 

(シュウが...ステフを置いていった?せっかくのシチュエーションなのに?)

 

 シュウの気持ちとステフの気持ち、両方の気持ちを理解しているはずだったのに、まさかの事態に困惑する。その事で思考を埋めていると...。

 

「なぁ、白。なんかおかしくないか?」

 

「え?」

 

 にぃが何かに気づいたようで、小声で耳打ちしてくる。

 

「もし、シュウがライラの水精に当てられて惚れたとしてだ。もし告白を済ませているのなら、普通の『告白』コマンドにしろ、状況は変わるがチートコマンドにしろ、今はもうこのゲームはクリアしているはずだよな?」

 

「...あっ。」

 

 そう。にぃの言う通りであるもし、シュウが告白をしていたとしたら、ライラがそれを受け入れてゲームエンドのはずである。そうなっていないってことは...

 

「...シュウはまだ、『告白』していない?」

 

「あぁ、それと後一つ。もし、シュウが告白をしてなかったにしろ、ライラがシュウを恋の相手と見なしたら、ゲームに関係なくライラは目覚めてEXエンドに持ち込めるはずなんだ。それなのに、ゲームは終わっていない。」

 

「なら、今のあの二人の関係は...。」

 

「あぁ、少なくとも恋仲になりきってはいないだろうな...」

 

 にぃの予想を聞いて、少し安心する。もちろんこの安心は、白のためじゃなく、ステフに対するものだけど。

 

 でも、なんだろう。端から見れば恋仲以外に見えないあの二人は、一体どんな歪な形で繋がっているのだろうか...それとも、私達の考えすぎで、本当に純愛の延長線上なのだろうか?

 

「ま、今色々言っても仕方ねぇ!とりあえずあいつらにくっついて様子見だっ!!」

 

「...おー。」

 

 まぁ、初瀬いのよりは告白シーンを見る確率は高そうだし、ステフの事も気になるからね。

 

「つー訳でほら、行くぞステフ!俺ら昨日学園サボったから案内してくれよ?」

 

「あっ、はい!わかりましたわ!」

 

 にぃがステフを気遣ってか、すこし明るめで声をかける。こういう優しさは自然にできるのに、なんでにぃは鈍感なのか...。

 

「あ、じぃさんはどうするよ?」

 

「私は、私の意志を貫きますぞぉっ!!」

 

「そうか、では海棲種(セイレーン)の学園へ、レッツゴー!」

 

「はぁ...今日は学園に行ってくれるんですねぇ...良かったですぅ...。」

 

 

 

◼️◼️◼️

 

 

 

「.........。」

 

グッ...グッ...。

 

「...あれ?ジブリール、どうしたの?」

 

 にぃ達と学園に向かって歩いていると、ジブリールだけが着いてきていないことに気づいて振りかえる。すると...

 

「.........。」

 

グッ...グッ...。

 

 何やら手を握っては開いてを繰り返している。時には自分の右手に左手を重ねたりして...。

 

(...もしかして。)

 

ダッ!!

 

「うおっ!?どうしたんだ白!?」

 

 思い至った答えを抱いて、にぃの手を繋いだまま、ジブリールに駆け寄る。

 

「...ジブリール...行こ?」

 

「え?」

 

 そう声をかけると同時に、ジブリールの視線上にはっきりと映るように、にぃと繋いでない方の右手を差し出す。

 

「あっ...申し訳ありません。白様。少し、考え事をしていました。」

 

「ううん。大丈夫だから、ね?」

 

「...はい。では、お言葉に甘えて。」

 

 ジブリールは少々戸惑いながら白の手を取る。最初はまるで腫れ物を扱う感じで力がこもってなかったけれど、白が力を込めて握ると、ジブリールは優しく、それでいてしっかりと手を握ってくれた。

 

「~♪」

 

「お?なんだか白、ご機嫌だな?」

 

「白様がお喜びいただけて何よりにございます♪」

 

 と、言葉にしたジブリールに心の中でそっと呟く。

 

(その手をいつか、さっき想像してた人と繋げるといいね、ジブリール♪)

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