「巫女様、ご報告がございます。」
「お?なんや、空はんの方で進展でもあったんか?」
東部連合の島々を巡りながら、
「いえ、それが…ライラ殿が巫女様に伝言をと…。」
「…ほぉ。」
わざわざライラを寄こして伝えに来たってことは、その飼い主であるシュウの入れ知恵によるものの可能性が高い。そう判断した巫女は、
(ま、あん子もへそ曲げとるし、聞かないわけにはいかんなぁ。)
カラカラと、心の中で笑って、いのの方へ向き直り、促す。
「続けぇ。」
「はい。ライラ様は『天守閣、次元の穴、許可』と何度も連呼しているようです。おそらく、ジブリール以外の
「ほう…。」
巫女に接触することを顕にした伝聞の意図を掴み、早速その場所へと向かう。
「…下がり。」
「御意。」
巫女に一礼入れて、静かにいのは去って行った。
「さて…放って置かれた分、構ってもらわんと、割に合わんよなぁ。」
そう独り言を呟いて、軽い歩調で目的の場所へ歩みを進めた。
高い、天守閣を遠目に眺めながら…
■■■
「どうだった?高度1万メートルからのスカイダイブは?」
「うーん、ダーリンに比べれば、『全く興奮しなかった』と言っていいわ。」
「何をどう比べたんだよ…。」
一仕事終えたライラに、感想を求めると、予想外の台詞を貰い困惑するシュウ。そんな彼にライラは怒った素振りを見せながら答えた。
「だって、アレにはダーリンの冷たい視線も、私を軽々しく扱う力加減も!何もないんだもの!」
「あってたまるか!?」
「とっても早く落ちたのに、海ったら私を絹でも扱うように優しく包み込むんだもの!!ああ!!ダーリンが海そのものだったら、海面を鉄板並みに固くして私を拒絶してくれるのに…♪」
「コイツ大地に叩き落としても良かったんじゃないかにゃー?」
「色々面倒になりそうだから却下にしたんだけどなぁ…。」
「そ…そんな…っ!!」
「なんでこの世の終わりみたいな顔してんだライラ!?」
「い、痛みこそ…私の人生だというのに…。」
「ワーツラソウダナー(棒)」
「あ、でもダーリンから限定ね☆」
「ソレサエナケレバナー(泣)」
相変わらずのライラの態度に、涙が出そうになる。もちろん呆れ涙だ。
(自分の失態でライラをこんな風にしちゃったのは反省すべき点だけど、ここまで依存するとはなぁ…。)
原作で空とライラが日常会話するシーンがもしあったら、それを参考にして以前の失態を緩和できたかもしれない…と、考えを巡らせたところで、今更どうにも出来ないと虚しさが走る。
(タラレバの話ししてても仕方ない。今はこの状況を利用し尽くすんだ!)
気を引き締めて、次の段階へ移行する。ライラがきちんと伝言を送ったのなら、そろそろ巫女さんの方も準備ができている頃だろう。
「よーし!アズにゃん!いっちょお願いします!」
「ほいにゃっと。」
アズリールが自分の目の前に時空の穴を開ける。そしてその先には…。
「あ、巫女さ…」
目と目が合う〜瞬間好〜きだと気づ〜い…
ギイィィィィン!!
□□□
「巫女さんの真正面に次元の穴作ったら盟約でカチコチになっちゃうでしょうが!!」
「にゃー!?文句あるなら自分で穴開けてやれにゃ!!」
「滅相もございませんアズリール様。」←土下座
「ふん、分かればいいにゃ。さ、次行くにゃよー…うぇへへ♪」
「ん?なんで涎垂らしてんのアズにゃ…えっ!?ジブリッ…!!」
目と目が合う〜瞬間〜…
ギイィィィィン!!
□□□
「うおいいいいい!!何やってんのアズにゃん!?」
「いやぁ…微動だにしないジブちゃんを四方八方から眺め回す…。最高の時間だったにゃあ…♪」
「そんなことやってたのかよ!?」
巫女様との視線正面衝突事故で思いついたのか、実行してさぞ満足の様子のアズリール。
「でも触れなかったのが残念だったにゃ…。」
(前回の件でジブリールも警戒してたんだろうなぁ…。アズリールの声が聞こえていたなら、確実に盟約を使ってやらかしに来ると踏んでの対抗策だろうし。)
アズリールの策略は半分阻止されたところで、いよいよ本題へ移る。
「それじゃアズにゃん、改めてお願いします。」
「ま、お前のおかげで良い思いもできたし、今回だけにゃ。」
(アズにゃんがデレただと!?)
「後でたっぷりジブちゃんとグヘヘ♪」
(あ、欲望ダダ漏れなだけだわコレ。)
当初から目的が変わってないアズリールは、次元の穴を少し開け、探りを入れてもう一つの穴をこちらへ向けて開けた。その先に佇むのは、こちらに背を向けている巫女であった。
「これでいいにゃ?」
「バッチリだ。」
意識が途切れない事を確認して、再び巫女の方へ向き直る。
なぜ盟約が発動しないのか。なぜならこれは接触でも会合でも無く…。
(一方的な
そう、最初にジブリールの様子を覗いていた時、盟約は発動していなかった。つまり、一定以上離れていれば、見ることだけは可能になるという訳であるっ!!
(まぁ、アズにゃんがいるからこそできることな訳で…。)
そもそもエルキア王城に入るには門番に、東部連合へは島国ということもあり、移動手段で阻まれる。
さらに、何かを相手に伝えようとした時点で盟約が発動するため、覗き見だけでは何も意味をなさないのは、前回のジブリールの件で証明された。
が、
(その伝える対象が巫女さんでないのなら、話は別になるっ!!)
というわけで、次元の穴から巫女様の背中をじっと見つめて、心の中で必死に語りかけ、念じる。
(神霊種様神霊種様神霊種様神霊種様神霊種様神霊種様神霊種様)
【うるさい!!そんなに呼ばんでも聞こえておるわ!!】
(やったー!!想いが通じたぞぉ!!)
久しぶりの帆楼の声に歓喜する。
【想いも何も、思念を通して話しておるのじゃから、当然じゃろうて。】
(その通りでございますハイ…。)
なんだろう、せっかくボケたのに、理解されず真正面から正論を受けるこの悲しさは…。
【全く…あの
(え?巫女さんと話す機会が増えたでしょ?)
【何を言うか!あやつは連邦構築の仕事で気に掛けることすらしなくなったのじゃぞ!】
(ワーミコサマヒドーイ!)
【馬鹿者!元はと言えば怒りに任せて暴走したおぬしが元凶ではないか!!】
(なにおう!?
【なっ!?我を馬鹿者と称するつもりか!?身の程を弁えぬか!!バーカ!】
(神様のくせに生意気だ!このバーカミサマ!)
【なんじゃとぉ!?】
(どぅーゆーあんだーすたぁん!?)
□□□
「…さっきからコイツは何で睨みつけてるんだにゃ?」
「ああっ!!ダーリン!!その食いしばった歯、シワを寄せた眉間、その態度すべてを私に頂戴っ!!」
「お前は少し黙ってろにゃっ!!」
「あがぼぼぼぼっ!!?」
思考を邪魔されたアズリールが、腹いせにライラの顔面を掴んで水瓶へ沈める。
「ふん。うちのアイアンクローをモロにくらって逝きそびれた奴は居ないにゃ。さっさと逝き死ぬがいいにゃ。」
「…。」
(うーん。痛いんだけど、それだけね。やっぱりダーリンじゃないとダメだわ。)
□□□
【も、もうよいであろう…、おぬし…。】
(あ、あぁ、なんか一生分の軽口言い合った気がするよ。)
【お互い口は割っておらぬのにな。】
(全くだ。)
【して、我に何を遣わせるつもりじゃ?今の状況を変えるのじゃろ?このままではろくに話が出来んからな。】
(話が早くて助かるよっと。)
【ここまで来るのに時間がかかったがの。】
(余計な口挟めるようになるとはな…んじゃ、これから言う事を、巫女さんを通して『
■■■
「【『
「【『我の目的は、貴殿らの遊戯妨害に非ず。今一度、覚悟を持ちて、真の目的を達成せんとす。どうか我に、僅かばかりの慈悲を願い致す。』…以上。】」
「…はぁ…巫女さんがなんで『巫女』と名乗ってるのかはよーくわかった。んで、この行動の意味もよーく理解した。」
全く違う声色の巫女から伝言を聞き、事の次第を理解した空が頭を掻く。
そう、巫女が何かしらの存在…つまり、内包する
それを理解した空は、困った表情で続けた。
「だが、ここまでして盟約を覆しに来る程の、シュウのこの世界に来た目的って一体何なんだ?」
「…え?にぃ、まだ気づいてない…の?」
「そ、そんな憐れむような目で兄ちゃんを見るな妹よぉっ!!なんだ…この世界にゲーム以外の目的で来るやつなんているのか!?」
「んー、こりゃ"無感"確定やね。」
「ふっ、残念だったな!その巫女さんの一言で、俺にはすべて理解したぞっ!!」
「にぃ…。」
「『無感』は『鈍感』の上位互換!!つまり、シュウの目的は恋愛成就に関連するもの他ならないっ!!ならばそう、この作品の中でハーレムを作ることこそが目的だったんだっ!!」
「…にぃ、おめでとう…。」
「やった、やったぞ!!これで『超鈍感』に成長…」
「『無感』の称号やで、ありがたく受け取っとき。」
「なんでだぁ!?」
女性陣に呆気なく無感の
そんな空を据え置き、白は巫女へ話しかける。
「…巫女さん。」
「どうしたん?」
「巫女さんの中の
「そうや。さっきまでどっちが馬鹿やとか、そんなくっだらない事で言い争うくらいにはな。」
その状況を思い返しているのか、まるで我が子を見守る母のような、柔らかな笑みを巫女は浮かべていた。
「巫女さんも、
「ふふっ、つい最近までは嫌われとったけど、シュウはんを介してようやく口聞いてくれたんよ。ほんっと、笑えるやろ?」
今度は自嘲気味に、だが永らくの願いを叶えた後のような、そんな表情を見せる巫女。
「…わかった。」
そんな巫女を見て、納得がいったのか、片手を挙げて、宣誓をする。
「…『
「いいも何も、あてはそれを聞いて何も出来やせんよ。それをするのはシュウはんだけや。」
「…そうだね。」
「…あんたも頑張り。きっと、何か見えてくるもんがあるやろ。」
「…うん。そうする。」
白は何かを決意したように、胸に拳を当てて、果てを見るように空を見た。
■■■
「よし、後は伝えてくれるのを待つだけ…って、何してんのアズにゃん?」
「やかましいから黙らせてるだけにゃ。」
次元の穴からアズリールの方へ視線を向けると、何故かライラにアイアンクローをかましていたアズリールの姿があった。
「うーん。ダーリンじゃないと何も感じないわ。ごめんなさいね。」
「にゃにい!?」
その言葉を聞いてショックだったのか、その手をライラから外すアズリール。
「うわー、メッチャ痛そう…。」
アズリールは本気で掴んでいたのか、顔面に指の跡が痛々しく残ってる…にも関わらず、ライラは笑顔と両手をこちらに向けて言う。
「さぁダーリン!貴方の"
「…ふっふっふ。甘かったようだなアズにゃん。私の本気のアイアンクローを見せて差し上げよう!」
「なんにゃとぉ!!」
人類種である私に負けたのがよっぽど悔しいのか、歯をギリギリ鳴らすアズリールを置いて、アイアンクローの手本を見せようと、ライラに近づこうとした時…。
ガシッ
「…。」
突如後頭部をガッチリ掴まれ、進行を阻害された。
「にゃっ!?その手は…!!」
「
アズリールはその手の主に見覚えがある様子。ライラは目をハートにしてヨダレを垂らしつつ待っているが、どうやら
(…こっからだな。)
その手の主を想定、これからの事を想像し、すべてを終結させる為に、己の心に手を当て、鎖を巻き、鍵を掛ける…真似をする。
(さ、目指すエンディングの為、頑張りますかっ!!)
そのままその手に引っ張られ、景色の転移を体験する。
そして、その先に居た人物を確認して、心の中で宣言する。
(