ノーステフ・ノーライフ   作:sayutan

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執事なる刺客

 別れとは、人と人とが離れた位置に移動する。もしくは死別と言われるように、どちらかが死に、片方の生存者が現実を生きるというような、精神的離別がある。多くの若者が感じるのは前者であり、年配の方が感じるのは後者であろう。出会いは偶然に起こるものでありながら、別れは理不尽に、必然として起こる。

 

 我々は様々な別れを経験して生きていかなければならない。それが、耐え難いものや、開放をもたらすものであっても…。

 

 

 

 い~ざ~さら~ぁ~ば~

 

 

 

「誰と誰が分かれるのでしょうか?」

 

「俺とジブリールさんですかねぇ?」

 

「まだ盟約による拘束が説かれてはいないはずですが?」

 

「もうそろそろ解除してもらえませんかね?」

 

「だめにございます❤」

 

 と、にっこりと笑顔を張り付けた天翼種(悪魔)ジブリールは言う。

 

 執事服(手作り)を身に着け、卒業式の歌を斉唱する、ここでも童貞馬鹿は、面倒なことになってしまったなぁと、小学生の頃の思考回路を呪っていた。

 

 

 

 

◆盟約内容◆

 

[1] ジブリール個体の所有物である本の損傷に値する行為を禁ずる。また、偶発的に損傷が発生しそうになった場合、それらの行為を即座に停止、改善を試みるものとする。

 

[2] ジブリール個体の所有物である図書館の自由な出入りを許可する。ただし、その際、ジブリール個体からの質問等の返事を必ず行うことを義務とする。返事の内容についての真偽は問わないものとする。

 

[3] この盟約内容の解除方法は、ジブリール個体による解除宣言にのみ行使される。再度盟約の付け直しは不可能なものとする。(ゲームによる再度行使は可)

 

 

 

 と、このような盟約によって縛られている。まあ、何度か八百長のゲームをして調整しまくったシロモンだから、拘束力はほぼないように見える。だが、図書館にあまり来ない日が続くと、来た時に質問攻めにあって一日が過ぎてしまうことなんてザラである。しかも、質問がある程度終わった時には、「ゴミ猿に期待した私がバカでしたね。」と、ほかにも似た感じの罵倒をされて終わる。結局、ストレス満点の状況で本を読まなならんのがつらい。いつ質問攻めが始まるかわからんし。ま、そんな面倒から逃れようといろいろ懇願しているのだが、すべてハネのけられて久しい。

 

 そんな風な関係になって早10年。只今17歳なんですが、ようやく執事になる試験に参加できるようになった。まあ、これがおそらくステフに近づく最後のチャンスになるかもしれない。もう17歳。もうすぐ空達がこの世界にやってくる可能性があるのだ。だから今回必ず受かって執事にならなければならない。ま、王族専属執事になるにあたって心機一転したいじゃん?だから面倒な盟約の鎖を引きちぎろうと思ったんだか…。

 

「な~んでジブちゃんは盟約解除してくれないのかにゃ~?もう、うちに興味はないはずにゃ。」

 

「なぜアズリール先輩(・・)の言葉遣いで聞いてくるのか甚だ疑問でありますが、解除する気は毛頭ありませんので、ご心配なく。」

 

「ちぇっ」

 

 そう軽い舌打ちをして図書館を出ていく。

 

 ちなみにこの図書館に通っていることは他の人類種(イマニティ)には隠し通している。なぜかって?おれが天翼種(フリューゲル)の間者だって思われちゃ、ここにいられなくなるからな。もしくは逆に利用されるかもしれんが、なーんの権利もってないから意味ないのよね。ただのお騒がせにしかならんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、王城に着きましたよっと。

 

 じゃ、ちゃちゃっと合格してきますか~。

 

 

 

 と、思ったのですが、今現在王城に入れません。

 

 さて、ここで問題です!なぜ王城にはいれないのでしょうかっ!次の選択肢からお選びください。

 

①そもそも試験会場がここではなかったから

 

②受験票を忘れてしまったから

 

③日付を間違えていたから

 

 

 

 

ヒント:現国王が東部連合とのゲームが8回目を迎えた

 

④王城前にできたクーデターによる群衆のせいで先に進めないから

 

 はい!正解は④です!簡単だったね!

 

 という訳で仕方なく人混み掻き分けて門前を目指す。

 

 あ~確かに勝手に土地かけて負け続けられちゃ不満もたまるわな~。先の展開知ってなかったら俺もこの中にいたかもね。

 

「貴様、何用だ?」

 

こんなときでも用のある人間を見分けられるなんてすごいわー。あ、でも執事服ピッチリキメてクーデター起こす人類種(イマニティ)なんざいないか。

 

「執事試験を受けに来ました。」

 

「...え?正気か?今王政は国民に対し、非常に悪い体制をとっているんだぞ。」

 

「わかってはいますが、それはそれ、これはこれです。」

 

「そ、そうか。えぇい!!お前ら門から離れろっ!」

 

 と、門番が叫ぶと他の門番が協力して人を門から離し、やっと人一人通れるくらいに、狭く門を開けた。

 

「さ、早く行くんだな。」

 

「ありがとうございます。」

 

 

 

 門内に入ると門前とは違う喧騒に包まれていた。

 

 クーデターによる不満からか、仕事をボイコットする人員が出ているのは明白で、数少ない人員で何とか回している状態なのだろう。貴族らしい余裕の表情は見る影もなく、焦燥にかられている様子だ。

 

 使用人の一人がこちらに気付いて近づいてきた。

 

「何の御用でしょうか?」

 

「執事試験を受けに来ました。」

 

「え!?正気でございますか!?」

 

「もう、狂ってるってことにしてもらっていいので案内をお願いしても宜しいでしょうか!?」

 

「あ、はい。...それではこちらへ...。」

 

 

 

ー応接室にてー

 

「ほっほっ。いやはや何事かと思えば、いらして当然の方だったとは。勝手ながら狂人扱いした非礼、お詫び申しあげます。」

 

「いえ、冷静に考えて、私の行動はどちらかと言えば異常ですし、そこまでなさらずともよいですよ。」

 

「それもそうですな」

 

「開き直った!?」

 

 先程から話しているのは、執事長を勤めていらっしゃる落ち着いた雰囲気をまとわせた老年の方だ。

 

 見た目とは裏腹なお茶目な面が先ほどの会話からもわかるだろう。 

 

 適当な話を少しして「コホン」とひとつ咳払いした執事長は真面目な雰囲気をまとって

 

「では、形式的ではありますが、試験を始めましょうか。」

 

「...まさか一人だけの試験になるとは。」

 

 

 

 試験は常識と政界事情の知識をはかる筆記試験と要求される家事や接待の仕方がキチンとしているかの実技試験。最後に面談だ。

 

 筆記試験は勉強したから大丈夫として、問題は次なんだよな。家事はまだいいとして、接待に少し不安がある。

 

 貴族と違って要人やお偉いさんと頻繁に会う訳じゃないから、練習法がかなり特殊だったのよね。

 

 まずは母さんに貴族の役やらせたんだが…。

 

「シュウちゃん肩揉んでー♪」

 

「シュウちゃんの料理おいしそー♪」

 

「ありがとうねシュウちゃん♪」

 

 うん。ただの母さんだった。貴族とか向いてなかったみたい。

 

 という訳でジブリールに頼んでみたところ、

 

「図書館を利用させてあげてるのですから、それくらいの奉仕は寧ろ当然かと。」

 

 と、(図書館使わせてんだからそのくらい奉仕して同然だろアァン!?)という本音の一言で始まり、

 

「なぜだかあなたがやると下心というか、本心が透けて見えるので気色わるぅございます。」

 

人類種(イマニティ)はこんなものを消化しないといけないのですか。哀れなモノですね。」

 

「え、これを食べろというのでございますか!?猿の餌をどうしてっ!?」

 

「うぅ。口の中がねばついて気持ち悪いです。租借など面倒の極みですね」

 

「奉仕というのなら、あの17m()()の本を7冊取っていただけませんか❤」

 

 とまあ、言いたい放題やりたい放題。貴族は貴族でも悪いほうの貴族ですね。心滅多打ちにされたけど、ほんと役としてやっててよかったわ。こんな生活一週間も持たねぇよ。 

 

 と、不安に駆られながら実技の試験が始まると目の前にドサッと書類と羽ペン置かれた。

 

「この書類を整理して資料室のほうへ持ってってください。ああ、それと、洗濯係の手が足りないそうなのでそれが終わり次第向かってください。では90分後に」

 

 

 

 

キィィ..........バタン。

 

 

 

 

 普通に仕事任されたぁあああああ!!?

 

 

 

 

 

 とまあなんやかんやで90分おそらくジャストに来た執事長に仕事の報告をして面談に入ることになった。

 

「では面談を始めますが、…単刀直入に聞きましょう。どうしてこの状態のエルキア王城に、今就職なさるのですか?あなたの家系まで非難の対象になりかねませんよ。」

 

「ええ、それは重々承知しております。ですが、これは私の意志での行動にございます故、両親にも形だけではありますが承認は得ております。」

 

「ふむ、そうですか。ならよいのですが…。」

 

「どうかなさいましたか?」

 

「いえね、こういう王族に仕える仕事を人材不足という名目で雇ってよいのかどうか。少々疑問に思いましてな。」

 

「…確かに、誇りを持つあなた方にとっては、非常に遺憾なことでしょう。」

 

「いえいえそんなつもりは…。」

 

「ならば、私はこのクーデター中、もしくは人材不足の今だけの埋め合わせということで雇ってもらっても構いません。

 人員が元通りになってわたしのことが邪魔になったら即解雇してください。」

 

「…あなたを道具のように使い倒した挙句、必要なくなったら捨ててもよいと?」

 

「ま、容赦なく言えばそうですね。」

 

「我々の仕事をそのような覚悟の人間に任せるつもりはありませんよ。」

 

「いえ、別の覚悟ならもう決めております。解雇された後で、もう一度正式に就職しに来ますから。」

 

「…今この試験が正式でないと?」

 

「そうならよいのですが、このような非常時で、互いにぬぐえない思惑がありながらの試験です。あなただって、こんな感覚を抱いたまま働かせるのは気が進まないはず。それは私も同様です。

 だからこそ、今はその気持ちを抑えて、目前の状況を耐え抜き、今度は互いに真剣に向き合って仕事ができるようにしたいと願っているだけです。」

 

 

 

…はっはっはっ

 

 

 

「あなたがノブレス・オブリージュを語るのは少々おかしなことですね。」

 

「そうですか?」

 

「そうですよ。どこの貴族の出でもない。一般人であるあなたがそれを語らうのだから。」

 

 まぁ、一般人というより転生者ですが。

 

「…ではあと一つだけ。もしあなたがこのような状況ではなく、ごく普通の面談の時、君は何を語ってくれますかな?」

 

「…誠心誠意、仕事に向きあ…

 

「ほっほっ。そんなことでは、次互いに向き合って働くのは難しいでしょうなぁ。」

 

「…。」

 

「ほれ。恥ずかしがらずに言ってみなされ。我らは人間。そんな飾りの意志では、どこも雇ってはくれませんよ。」

 

…え?マジ?本音!?アカン。本音言ったら絶対切れられてバイバイキンだよ!!くっせぇセリフ並べたてといて今更ニヤケ顔タラタラな下心しかねぇはっずかしいこと言わないかんの!?このジジィに!!

…やべぇ。一回出直したほうがいいんじゃ…。

 

「ほほ。心配せずとも秘密は守りますよ。なんなら、盟約で縛ってもらったって構いません。」

 

「いえ、そこまでしなくても。あなたはそんなことしないでしょう?」

 

「わかりませんぞ?明日にはもう屋敷中に響き渡っているかも…。」

 

「物騒なこと言わないでください。」

 

「ほら、言ったほうがすっきりしますよ?」

 

 嫌だあぁ!!こんな本音タラタラな職場嫌だよァ!!

 

 ああでもどうしよ。この人暗に(次はないぞ)って顔してるもん。今余計なことして地雷踏んだらそれこそゲームオーバーだわ。それだけは何としても避けなければっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()を・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

燃やせええええええええええええええええええええっ!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我はステファニー・ドーラを救う者也っ!!」

 

「彼女にかかる理不尽な厄災をハネのけ、彼女の幸せが成就するのを見守る騎士となりて、この身をささげると誓ったっ!!ああそうともそうだろうとも。そんじょそこらのペーペーの男が彼女を守れると?そんなくっだらない思考はお前の単なるエゴだとっ!!だが吠えよう、エゴだというその批判こそエゴだと!!何度でも足掻こう、一般のバカ野郎でも自分が守りたいと思える人は守り切って見せれると!!どんな結末が待っていようとも。それがたとえ、彼女が自分を異性として感じることはなく。別の男が現れ、彼とともに歩もうと彼女が決めることがあっても。私は意識してしまった。決意してしまったのだ!!そのお方に従事することができるならと何度となく願い、ついに、神の気まぐれでかなえられる舞台に立った。ならば、もう迷うことはない。私がなすことは彼女を幸せにすることなのだとっっっ!!!!」

 

..........。

 

 

「あああああああああかっこつけていったけどやっぱ恥ずかしぃわぁ!!!こんなんやっぱ嫌だわぁ!!!!!」

 

「というか叶わぬ恋と分かっているのに何でどうでもいいこと口走ってんだぁ!!?玉の輿?夢のまた夢だよぉ!!!」

 

 

 

...あーーーーーーー言っちゃったぁ...。

 

「....」

 

 なんだよジジィ面食らってんじゃねぇか。いいよ。さっさと追い出せよ。というか追い出してくださいお願いします布団にくるまって泣いてやるからさぁ!(泣)

 

「ふふ。ほっほっほっ。どうやら、貴方は私と同類のようですね。」

 

「は!?もしや貴方もステファニー殿を狙って!?」

 

「いえ、そうではなくて。私は国王様のお人柄に尊敬の念を抱き、忠義を尽くそうと決めたのです。まぁ、貴族である私がこのようなことを述べても、説得力は無いでしょうが。」

 

「いえ、今ここに残って忠義を全うしているではありませんか。それが、何よりの根拠になるかと。」

 

「ほほっ。そういってもらえると、私も鼻が高いですな。」

 

 

 

「良いでしょう。貴方をこの王城の執事として認めましょう。また、見習いであるあなたですが、今は悠長にしてはいられません。なので、しっかり働いてもらいます。よろしいですね?」

 

「はいっ!!勿論です!!」

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