ステファニー・ドーラ
「では、あなたの毒牙の対象であるステファニーお嬢様に挨拶しておきましょうか。」
「....はい!」
や、やっとだな!!執事長の冗談なんて全く気にならないな!ここはもう適当に流してステフとの会話を脳内シミュレーションしておこう。
あぁ、どんな挨拶がいいかなぁ~。固っ苦しく誠実さをアピールしておこうか。それとも、フランクな方がいいかな?同い年なんだからもっと気軽に話しかけて距離を縮めようか。挨拶後の軽い会話も大事だよね!何の話をしようか。賢さアピールで政治のお話しする?あー暗い話になりそうだな止めとこ。やはり料理のはなし?いや、これはもっと後に披露して...。
「おや?毒牙にかける対象と肯定しましたな?すぐに国王様に報告しなくては。」
「まってください適当に流してすんませんでしたぁ!!」
もう、いや結構ステフの印象を悪くしそうな情報を暴露している状態で、これ以上の情報を撒き散らすわけにはいかないっ!!
「そう思うのなら、しっかり返事をした方がよろしいですよ。」
「はい...。」
コンコン
「はい。」
「お嬢様。執事長にございます。」
「あら。入ってきてよろしいですわよ。」
「では、失礼します。」
あぁ。ようやく来てしまったのか。このときが。長年(17年くらい)待ち望んだこの時が。なんと表せばよいのやら。美しい赤髪と吸い込まれるようなアクアマリンの瞳。あ、体のことをこれ以上考えると顔に出そうだからやめておこう。えーっと、部屋の描写でもいれ...
「女性の部屋をまじまじと見るのは失礼に値するかと。」
「おっしゃる通りで...。」
釘を刺されてしまった。いや、グッジョブだ執ジジイ。ただそれをステフに聞こえるように言うのはいかがなものかと思うがね?
「は、はぁ...。それで執事長。何のご用ですの?」
ほら、ステフ苦笑いしちゃってんじゃねぇか。執ジジイ長は俺の印象を悪くするのが仕事なのか?
「はい、ご用というのはこちら、新人執事の紹介兼挨拶に参りました。」
「は。ご紹介に預かりました。私、見習い執事のシュウと申します。」
「そしてお嬢様に振りかかる厄災をこの身で払いのける
「へ?」
「あら~おじいちゃん?どうしたのいきなりそんなこと口走りやがって~♪さあ、お部屋に戻って休憩しましょうね~♪」
「ほっほ。"休憩"とはまた、楽しみですなぁ。」
「いやっだぁ~おじさまったら~♪さっさと逝きやがりましょうか~♪」
キィィ...パタン
「おい執ジジイ長。テメェ本当に約束守る気無いのかアァン!!?」
「だから先程も盟約で縛っておけと言ったではないですか。」
「ようし、今から盟約に誓ってゲームして、その記憶に関することを言えないようにするから手を出せじゃんけんだ。」
「ほっほ。それは勘弁願いますな。」ダッ
「あっ。逃げんなっ...ちっ、あのクソ執ジジイ長めぇ...。」
「あのー...?」
「は。すみません。先ほどはお見苦しいものをお見せしました。申し訳ございません。」キィィ...パタン
「え、えぇ。大丈夫ですわよ。」
あ~。しっかり印象悪くなってるな~。全く、この事に関しては本当に仕事を全うするよな。給料でも出てんのか?
「ところでさっきの
「いえ。先程のは執事長の妄言にございますれば、お気になさることはないかと。加えて、確認として、私はただの執事にございますので。」
「そう...なんですのね。」
「私も貴方を守る
「それには少し同意しますわ。...ところであなたの家系はどちらに?」
「...申し訳ありませんが、私は貴族の出ではありません。」
「な...まさかあなた、この混乱に乗じて!!?」
「まあ、結果的にはそうなりましたが、それが目的なら執事長が私を受け入れはしないでしょう。」
「た、確かにそうですわね。」
「ですが、執事長同様、お嬢様も疑念を持つのは自然なことでしょう。なので、一つだけ。」
「私はお嬢様か思っておられるような人物かもしれません。」
「しかし、その判断はもう少しだけ後にお願いできますでしょうか。」
「これからの私の行動を経て、そのように思われるなら、どのような処罰もお受けしましょう。」
「なのでどうか、もうしばらくだけ、この執事をここにいさせてもらえないでしょうか...。」
「...わかりましたわ。」
「有り難きお言葉。」
ここだっ! シュウの とっておき!
「それでは先程のお話しを聞き入れていただけたお礼と感謝の気持ちを込めてこちらを...。」
「...これはなんですの?」
「まあ、なんと言いましょうか。それは開けてみてからのお楽しみということで。」
「怪しいですわね。」
「盟約により害意ある行為はできませんので、渡すことができた時点で安全は保証されているかと。」
「そ、それもそうですわね。」
「では、これにて失礼させていただきます。」
キィィ...パタン
「おや?以外とお早いお帰りでしたね。ソコまで早漏でしたかな?」
「早すぎますし何より初対面でそのような間柄になれるわけないでしょう。」
「いえ?あなたならヤりかねないとこの執事長、心配で心配で...。」
「執事長とは数時間しか共に過ごしていないとはいえ、そこまで信用ないのですかねぇ...。」
「それはあなたも同じでしょう?」
「そのようですねっ!」
ステフ視点
「一体何だったんですの?」
まるで嵐のように去っていった二人を思って首をかしげる。
(その一人、見習い執事とかいう「シュウ」は、おそらくこの混乱に乗じてこの王城に仕え、多額の給料を狙う…いわば甘い汁をすすりに来た人とばかり思っていましたけど...あの執事長との会話は、どこか打ち解けている雰囲気がありましたわ。おじいさまにはもう会われているでしょうから、大丈夫だとは思うのだけど。)
と、疑念をぐるぐると頭の中で巡らせながら、手に持っている小包を見つめる。
「これを開けてみれば何かわかるかもしれませんわね。」
さすがに先ほどの会話だけで決めつけるのはよくないと思い、あの男が渡してきた小包を恐る恐る開けてみた。
それは...
「パン...ですの?」
(パン..のようだけど違いますわね…。普通のパンは丸い形をした簡単なものですけど、真ん中に丸い穴のあいていて、上の部分が赤に近い桃色の個体がまとってますの...。)
ステフはそれを取り出して全体を眺めるようにみて、鼻に近づけてにおいをかいでみる。
「甘い匂い...」
その臭いに脳が反応し、顎の奥から唾液が分泌され、食欲がわく。
甘いものに興味のあるステフはこの感覚に幸せを感じ、それを凝視する。
「こ...これは、食べても大丈夫なん...ですよね?」
周りに誰もいないのに同意を求めてキョロキョロ見回して、そろそろと口に近づけ、まるでネズミがかじるようにほんの少しだけ口にいれた。
(...!!)
ゆっくり、ゆっくりと噛みしめ...それが安全なものだとわかった瞬間、次々と口に運んですぐにそれは手から消えてしまった。
「ほう...」
と、幸せのため息をつく。大量の砂糖を摂取したことによって肌が少しゾワッとした感覚あったが、そんなの気にならないほどの多幸感に浸っていた。
そして一言。
「おいしいですわぁ~♥️」
「...あぁ、よかったぁ~。」
「何をお渡しになったので?」
「ちょっとしたお菓子ヲボフッ!?」バタン!!
「え?あ、執事長!?あ、あの見習い執事の...シュウはどこにいるんですの!?」
「あ、シュウ殿でしたらあちらで横になっておられますよ。」
「へ?横に...って!?シュウゥゥゥゥゥゥゥ!!?」
「超...エキサイ...ティン」ガクッ
「ごごご、ごめんなさい!まさか部屋の前で立ち話していたなんて気づかなくって...」
「ほっほ。確かに害意の無い行為は本当にキャンセルされないのですな」
「し、執事長!追い討ちをかけな...って、何でさっきの会話聴いてるんですの!?」
「いえ、よいのですお嬢様。全ては外開きの扉が悪いのでございま...す...。」
「ほ、本当に大丈夫ですの?」
「えぇ。軽く(意識が)とんだだけですので...。」
「それで...まあ、予想はつきますが何用で?」
「そ、そうですわ!!あのお菓子は何なんですの!?」
「あぁ、あれはドーナツと呼ばれるお菓子になります。」
「ど、どーなつ...ですの?」
「そうでございます。まあ、母から教わったものなので、受け売りではありますが。」
「そうなんですの?そ、それはいいとして私に作り方を教えて欲しいですわ!」
「えぇ。お嬢様の望みとならば。」
「ただ、材料に持ち合わせがありませんので、形だけのものになりそうですが。」
「構いませんわ!さ、台所へ行きましょう!」
「は。承知しました。」
「...ほう。なかなかやりますなシュウ殿。甘味でお嬢様とお近づきになるとは。」
「執事長がついて来るけると会話面で厄介なことになりそうなので、お仕事に戻られてはいかがでしょうか?」
「いえいえ、お嬢様がこの色魔に教われないよう見張るという仕事がまだ残っておりますので。」
「口がお上手ですねっ!!」
「光栄の至り。」
少女料理中…
「か、完成ですわ!!」
「さすがお嬢様。」
「早速味見ですわね!...あなたのドーナツと比べると、あまり美味しくないですわ...。」
「申し訳ありません。基本的材料は揃っていたのですが、甘味が物足りなかったのが痛いところでした。」
「そうですのね...。でも、ここ(王城)にもあんなに甘いものは無いですわ。何でしたの?」
「あれはチーゴの実を基本とした材料で作っております。」
「え!?でもそれってエルヴンガルド周辺にしか実ってないはずですわ!?」
「よくご存じで。まあ、たまたま商店に並んでたのを見つけて、実験がてら作ったものにございます。」
「わ、私は実験台にされたんですの!?」
「まさか。私もキチンと味見しましたよ。人に与える食べ物を味見しないはずがないでしょう?」
「そ、それもそうですわね。」
「ま、それをしない人もいるとかいないとか...」
「た、大変ですわね。」
「...ところで、なぜいきなりドーナツを作りたいと?」
「...今の情勢をご存知でしょう?おじいさまは愚王とののしられ、クーデターが起き、仲がいいと思っていた人もここから離れていきましたわ。」
「いろんな人が離れて行って、挙句の果てに非難する側に回って…わかってはいるんですの。こうなるのが当然だって。」
「でも、苦しくって悔しくって。そんな気持ちでいっぱいでしたの。」
「そんな時に食べたあなたのドーナツは、そんなつらさを打ち消すような、励ましてくれるような優しい気持ちが伝わったような気がしたんですの。スッと心が軽くなって…軽く舞い上がっていたのかもしれませんわね。」
「…わたくしめには、その気持ちを完全に理解することはかないません。が、この料理の間、あなたが笑っておられるのを見て安心しました。少しの間だけでも、あなたを幸せにできたのなら幸いです。」
「…ありがとうございm
「このこましめg
「お、お嬢様!国王様がお倒れになりましたっ!!」
「「「え!!?」」」