ノーステフ・ノーライフ   作:sayutan

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1巻
(くうはく)』の襲来


 ご無沙汰しております。シュウです。

 

 国王が亡くなって国王選定戦が始まってから、約一ヶ月が経った今日この頃、18年ここで生きててエルキアは一番の盛り上がりをいまだに見せております。ま、当国比ですが。

 

 酒場へ行けばトランプと吐瀉物で床が汚れ、商店街では選定戦の盟約に加えてここぞとばかりに売人と客で、はたまた業者同士で商品や値段交渉吹っ掛けて経済を回し、学校へ行けばテストで○○点取らないと権利を奪われるというゲームが一時期流行して、世紀末状態になるなど、今までのエルキアでも類を見ない混沌(カオス)っぷりを発揮しております。

 

 かくいう我々執事やメイドはあまりそのような野心はなく、穏やかに休息をとれると思いきや、国王が修めていた時代より混沌(カオス)と化したエルキア情勢によって発生した仕事に忙殺される日々が続きました。

 

 あ、執事長は例外でしたね。

 

『国王様のため、何としてでも王になって見せますぞぉ!!』

 

 と、野心と権欲にまみれた心にスパイス程度の忠誠心を胸に、なぜか甲冑騎士の姿で町に特攻していった執事長は、翌日身ぐるみはがされた状態で王城前に倒れていた。一番始めに見つけた私は見て見ぬふりをしたかったのですが、二番手ステフの発見により粗大ごみ回収を命じられたので、仕方なく回収にいくと、(燃えるごみでもいいよな?)と、思って風呂焚き用薪代わりにしようとしたのはいい思い出。(盟約により執事長はご存命ですよ?)

 

 ところで私は何をやっているのかというと...。

 

 

 

「2ペア、ですわ!」

 

「1ペア、くっ。負けました。」

 

「やりましたわぁ!!」

 

 ステフとポーカーの練習をしています。

 

「シュウ!わたくし、やっと勝てるようになってきましたわ!」

 

「それはおめでとうございます。これもお嬢様の頑張りの賜物でしょう。」

 

「ですわよね!さぁ、もう一戦勝負ですわ!」

 

「喜んで。」

 

結果

 

「1ペア...ですわ。」

 

「なんと、ノーペアにございます...。」

 

「また勝ちましたわぁ!!」

 

 そういって満面の笑みを浮かべるステフを見て、可愛いと思うのは私だけだろうか?いや、恐らく画面の前の紳士もきっと同意してくれるはずだ。

 

「どうしたんですの?ほら、もう一回!もう一回ですわ!」バンバン

 

(可愛い)

 

 おっといけない。愛玩動物を愛でる目で見てしまった。衝動に負けて頭撫でたくなったが、良く堪えた私の理性!

 

 じゃなくて、何故ポーカーをやっているのかという回想が必要ですね。それは数十分前の出来事になります。

 

 

 

 

 はい。過去のシュウです。

 

 いま、仕事に忙殺されかけています。頭おかしくなる量ですおかしくなってます助けて。

 

「シュウ?いるんですの?」コンコン

 

 あ、女神が来てくれたこれで勝つる。

 

「はい。ここに。」

 

「失礼しますわ。そして、ポーカーで勝負ですわよ!!」

 

 ...は?

 

「いま近くの酒場でぽーかーというゲームが選定戦として行われていますわ!」

 

「はあ、それで?」

 

「そこには今無敗の強敵がいるという噂ですの。それさえ倒してしまえば私が王になることは確実ですわ!」

 

「た、確かに理屈としては理にかなってますがどうしてお嬢様が?」

 

「どうしてって...どういうことですの....。」

 

 あ、地雷踏んじゃったっぽい。

 

「皆、みんな頑張ってますのに、私たちは忙しくなるばかり。かといって変なのが王になれば、私たちはもっと酷使されたり、用済みとして追い出されるかもしれないじゃないですの!そんなの絶対に許しませんわ!だから....。」

 

 

 

 あぁ、やはりステフはステフなんだな...。こういうとき自分でもやれそうなことをすぐやろうとするその純粋な優しさに私は...

 

 

 

「...どうしたんですの?」

 

「いえ。愚問でしたね。ならば私は、お嬢様の寛大なる心の船に同乗して、共に歩むことにしましょう。」

 

「え、えーと...つまり?」

 

「ポーカーをするのです。お嬢様。」

 

 

 

 はい。回想終わり。その後カードを切って渡したときに、「ぽーかーのルールってなんですの?」と真顔で聞かれたときの、私の驚きは皆さんにも伝わると思います。取り敢えず役を教えて実際にやってみよう。というのがいまの状況。では何回目かわからない勝負結果どうぞ。

 

「3カードですわ!」

 

「1ペア...お見事でございます。」

 

「シュウってポーカー弱いんですの?」

 

「いえ?お嬢様の実力がついている証拠かと。」

 

「そうなんですの!?じゃあもっとやるべきですわもう一回ですわ!」

 

 そういうステフにカードをもらって切って渡す。

 

 ...あぁ~そろそろお気付きになっただろうか。先程までの対戦を振り返って、何か思うところがあるだろう。うん。皆まで言うな。ちゃんと自分で言うから。そう...

 

 

 

素人同士のポーカー練習なんて何の役にも立たねぇよくそがぁ!!!

 

ついでに言うと強いポーカーの役なんて一度も成立してねぇよぉ!!!

 

うまいこといってる場合じゃねぇよおあぁぁぁ!!?

 

 

 

 うん。ごめんなさい。聴いてくれてありがたや。

 

 そう、わたくしシュウは今のステフぐらい弱いのです。

 

 あ、最初辺りは私が勝ってたよ?でもあれかな?実力の拮抗っていうの?結果が半々に収束してるっていうね。ステフは実力だ何だと言ってるけど、ただの慣れだからね?一般人とはいい勝負するんじゃないかな?馬鹿正直者同士なら。

 

 これじゃあクラミーには勝てんだろうなーと思いながら、札をオープン。

 

「2ペアですわ!」

 

「フルハウスですね。運が良かったです。」

 

「ぐぬぬ。も、もう一回ですわ!」

 

「えぇ。もちろんで...す...。」

 

「ど、どうしたんですの?」

 

 

 

 あぁ、盤上の世界に光が満ちる。

 

 と、かっこつけて言っておこう。まあ、なんだ。私はただここでステフとポーカーをしていたわけではない。

 

 仕事もポーカーもずっと窓の方を向いてやっていたのだ。お陰でステフに後光がかかってずっと半催眠状態だったけど。

 

 ステフがポーカーの練習を誘ってきたのは少々想定外だった。これを確認してから、誘おうと思っていたのだが。

 

 ま、練習とかこつけて時間稼ぎができたのは幸いだったか。...予想以上に弱かったことは意外だったが(互いに)。

 

 と、言うわけで待ちに待ったこのときがやって来た。

 

「そ、そんなに見つめられると...ちょっと照れますわ...。」

 

 空に三つの流星が舞い降りる。

 

 二つはこの国を救う希望の光

 

 一つは希望を導く神の威光

 

 あぁ、やっとこのときが来た。美しい流星を眺めてつい一言。

 

「綺麗な...」

 

「へあ!?」

 

「空だ...。」

 

「...。」

 

「あ、すみません。お嬢様。あと、10ゲームこなしましたら、その自称最強ポーカー野郎を負かしてさしあげましょう。」

 

「...。」プルプル

 

「お、お嬢様?」

 

「フン!!」バァン

 

「ロ、ロイヤルストレートフラッシュううう!!?」

 

 

 

 

 

 

 

「も、申し訳ありません。お嬢様。」

 

「フン!」プイッ

 

 あれから10連続ポーカー勝負したのだが、強い役で圧殺されるという現象が発生。個人的にはこのままクラミーを倒してもらってもいいんだが、正直そうはいってほしくない。

 

 あれだ、原作知識持った転生者って物語通りに進めながら仲良くなるか、物語無視して好き勝手やるかのどっちかだと思うんだが、原作これだぞ?ノゲノラだぞ?空でさえ「一手でも間違ったら詰むんだよ。」的なこと言ってたし?多少の崩壊なんてものともしないだろうけど?ハチャメチャな数式見せられて解けって言われて「これ使ったら簡単にとけるよ!」って聞いたら飛びつくじゃんそれと一緒だよ。

 

 と、言うわけで原作通りに進めるため宿に向かってる馬車のなかで不貞腐れて強くなってるステフに、弱くなるように一言っておこう。どうせ、綺麗って言葉に過剰反応したんだろうテンプレだかんな!というわけで童貞こまし能力執事かぶり発動!

 

「さ、先程の綺麗というのはお嬢様のアクアマリン色の瞳が青空のように美しかったからで...その...」

 

「ふ...ふん...」ポッ

 

 ちょろい。あ、なんでこんな大胆なのかって?どうせ、空に惚れさせられるからな!今のうちにいい思いしといていいでしょ!?いまくらいは...さ。あれ?なんか胸がチクッとするぞ?なんでだろな?

 

 

 

「着きましたね。お嬢様。」

 

「えぇ!さっそくその人をこてんぱんに負かしてあげますわ!!」

 

「その調子ですお嬢様。では、私はここでお待ちしているので、終わられましたらお声かけを。」

 

「え?」

 

「ご武運を。」

 

「い、一緒に....来てくれないんですの?」

 

ぐはっ!!その上目づかいは効くぅっ!!だけどッ。

 

「申し訳ありません。二人でいると不正していると疑われる要因になり得ます。ポーカーは一対一の真剣勝負です。どうか自信をお持ちになってください。」

 

「...わかりましたわ。」トボトボ

 

 

 

 さて、間に合ってよかった。何故ならもう目の先に

 

 あの二人がいるから。

 

 

 

「そ、そこのあなたがポーカー連勝者ですの!?」

 

「えぇ。そうだけど。」

 

「私と盟約に誓ってポーカーで権利をかけた勝負をお願いしますわ!!」

 

 

 

 よかった。先に始まったようですね。そして、ここからですね。

 

「なあ、そこの...執事さん?宿ってどこかわかるか?泊まれるところならどこでもいいんだが。」

 

「それでしたら、ここが宿なので宿泊なさるのがよろしいかと。」

 

「あ、そなの?サンキュー♪行くぞ白。」

 

「....うん。」

 

 

 

「いやーうまく行けば王城に住めると思ったんだがな~♪」

 

「....そんな、ご都合...存在し、ない....」

 

「...。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (あれからどれくらい時間が経っただろう。もう、夜が更け始めたな...。星が綺麗だ。)

 

 (...あぁ、原作でもこのぐらいの時間になるのかな?じゃあ、始めるか。)

 

 宿前でずっと立っていたシュウは恭しく頭を垂れ、虚空に言葉をこぼしていく。それはステフに当てた謝罪であった。

 

「お嬢様。私の我が儘で、貴女を厄災に巻き込むことをご容赦ください。」

 

「貴女の力で王になってもらう道もあった。」

 

 ポーカーで強くなったときのように。

 

「貴女の手を引いて、連れ出すこともできた。」

 

 王城の外に連れ出して一緒に暮らすことも。

 

「私という存在に会わなければ、自分の道をしっかり歩めたでしょう。」

 

 ドーナツで私との関係を繋がなければ…。

 

「だからこその、私の我が儘です。」

 

 原作というシナリオに組み込んでしまった我が儘

 

「貴女を一時でも愛せてよかった。」

 

 もう、私に向ける笑顔など無いだろうから。

 

「だから、貴女が厄災にあってしまったその時は....

 

「俺に....

 

私も共に請け負いますから。」

 

惚れろっ!!!」

 

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