2回目である その3
プリンス家。
今日からセブルスはアメリカの魔法学校・イルヴァーモーニー魔法魔術学校に入学した。
「セブ、小さかったあなたがこんなに立派になって学校に入学する。なんて嬉しいこと」
祖母は瞳を潤ませて、セブルスを見つめる。
「セブ、お前は勤勉な子だ。儂が何も言わずとも勉強するだろうから余計なことは言わん。しかし、学校では知識以外にかけがえのないものを得られるだろう。あまり肩ひじ張らず楽しんできなさい」
良い子になろうと頑張り過ぎている気のあるセブルスに心配している祖父はらしくないアドバイスをする。祖父は研究家気質で厳しさが前面に出てしまう性格だが、1回目のセブルスのハードな人生には思うところがあるのだ。
「はい、友達が出来たら嬉しいと思います」
「うむ」
今や、セブルスはプリンス家の直系として貴族の加護がある。ホグワーツとは全く違うイルヴァーモーニー魔法魔術学校にて新しい学校生活を送ることになったのだった。
ブラック家。
シリウスの見送りにブラック一家はプラットフォームに来ていた。流石にここで口喧嘩はしないが、シリウスとヴァルブルガの間はギスギスしている。レギュラスはこの母と兄のやり取りには欠片も関心を払わず、セブルスを捜していた。そして、赤髪の少女リリーを見つけて睨みつける。
「ん、どうした、レギュ。可愛い娘でもいたか?」
「はあ?」
からかうようなシリウスの軽口にレギュラスは彼をねめつけた。びくっとシリウスは身体を震わせる。
「シ、シリウス。レギュラスをからかわないの」
慌ててヴァルブルガがシリウスを窘める。レギュラスは兄への関心を失い、じっとリリーを見据える。リリーの傍にセブルス先輩がいる可能性が高いからだ。しかし、リリーに対する苛立ちから話しかけて、セブルスの情報を得るという発想は湧かなかった。一歩間違えると殺気を放ちそうである。
「レギュ、落ち着きなさい」
オリオンがレギュラスの視線からリリーを庇う様に立ち位置を変えた。レギュラスもブラック家のプライドからゆっくりと深呼吸して心を鎮める。やたらかんしゃくを起こす兄と母を反面教師にしているのだ。とはいえ、まだ子供。父オリオンが気遣うのも当然か。
「ええ、大丈夫です。父様」
そして、レギュラスはゆるりと兄を見据えた。未だ、先輩は見つかっていない。父にのみある程度情報を話しているというのに。
「兄様。くどいようですが、セブルス・スネイプという人物に間違っても危害を加えないように。その方に何かしでかしたら―――僕の全力で報復に動きます」
「ひっ、分かった、分かったよ。そのセブルス・スネイプってそもそも誰なんだよ」
「僕の大切な先輩ですよ」
レギュラスは夢見るような大切な宝物を愛でるような柔らかな笑みを浮かべた。その表情を見てシリウスは顔を引きつらせた。
ホグワーツの大食堂にて、フランク・ロングボトムは毎年恒例の組み分け儀式を今年ばかりは注目していた。
フランクは可もなく不可もない成績をキープし、努めて目立たないように振る舞っている。グリフィンドールの中ではモブ中のモブだ。いっそ、グリフィンドールに組み分けされないことも考えたが、ロングボトム家では逆に目立つとやめた。
そして、1回目以上の情報収集に努めている。貴族にとって情報は力だ。
1回目同様、ブラックがグリフィンドールに組み分けされた。皆、驚いていたがフランクは気にしない。予定どおりだ。ポッターがグリフィンドールに決まった。
そして―――あの子、セブルス・スネイプがいない。
フランクはマローダーズが標的にしていたセブルス・スネイプのことも知っていた。これまで全て1回目と同じ流れだったというのに、初めて異なった事象である。
フランクは考え込む。これが一体、何であるのか、を。