〈試作・未完〉めざせサブマリナー! ~めざさぶ~   作:みん提督

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潜水艦モノでということで、色々資料を集めたりしながら、執筆してますが、何分素人なんで間違いもあるかと思います。
その時は雰囲気とノリで読んでください()


第1話 特別クラス

2022年4月5日。横須賀市学園船団の1隻、横須賀女子海洋学校にて。

 

 

その日、横須賀女子海洋学校では入学式が行われていた。実習艦隊の中でも最大にして最強を誇る、超大型直接教育艦『武蔵』のマストには校旗がはためき、春の訪れを告げる暖かな風にあおられていた。

『武蔵』の甲板には、難関試験に合格し、晴れて横須賀女子海洋学校の生徒となった、若き船乗りの卵たちが厳格な面持ちで整列していた。23回目の入学式は、滞りなく行われ、式の最後となる出航式典が行われようとしていた。

 

厳かな雰囲気の中、壇上に横須賀女子海洋学校の校長が上がり、新入生へ訓示を述べる。

「皆さん、入学おめでとうございます。校長の古庄薫です。皆さんは学科、実技の両方で優秀な成績を収め、ここ横須賀女子海洋学校に晴れて入学されました。これから3年間、共に学んでいく同級生たちと切磋琢磨し、困難を乗り越え、立派なブルーマーメイドになってください」

校長の訓示が終わると、クラス発表の後、すぐさま海洋実習が始まる。

クラス発表は3年間の学生生活だけでなく、後のブルーマーメイド正式配属にも影響する、重要なイベントだ。

生徒たちは編成表に自分や友人の名前を見つけ、一喜一憂する。

とある新入生たちもそうだった。

「わー、ユズちゃん伊吹じゃん。いいなー」

「そういう杏だって赤城じゃん。大型艦とかエリートじゃん」

「私武蔵だって。小さい艦がよかったな……」

「モモちゃん贅沢ー。武蔵なら将来安泰だよ?」

この3人の新入生たちも、編成表を眺めながらキャッキャしていた。

そんな中、1人が編成表の不思議なクラスに気付いた。

 

──特別クラス──31名。

 

「あれ……この、特別クラスってなに?」

もう1人が驚きながら言う。

「知らないの? 今年から新設される潜水艦クラスだよ」

「潜水艦? ブルマーに潜水艦っていないよね?」

不思議そうな様子の彼女。もう1人の新入生がその疑問に答える。

「ブルマーが新しく導入するんだよー。それの試験運用なんだってー」

「へー」

「興味なさそうだね」

3人は適当に流しながら話を続ける。すると、目線の端にやたらキョロキョロしている少女が見えた。

「あれ、あの子……」

「迷子かな?」

「まだ出航まで時間あるし、人助けしたげよかー」

迷子(?)の少女に近付くと、声をかける。

「ねぇ、キミ迷子?」

「よかったら案内するよー」

突然声をかけられて、少女は驚いた様子だった。

「あ………その………」

何か言っているようだが、声が小さくて3人にははっきりとは聞こえなかった。

「教育艦桟橋ならあっちだよ」

「航洋艦クラスは第2区画、直教艦は第3区画だよー」

2人の言葉に少女はしどろもどろになる。

「ていうか、キミどこのクラス?」

その言葉を聞くと、少女は少し困った顔をする。

恥ずかしそうに身を捩り、小さなサイドテールを揺らしながら、少女はようやく質問に答える。

「と、特別クラスです……」

その答えに3人は少なからず驚く。しかし、まだまだブルーマーメイド見習いとは言え、既に船乗りとしての鋭い勘が頭角を現し始めていた彼女らの驚きは少女が特別クラスに在籍することではなく、他のことに向けられていた。

「へぇ、キミが……か」

「特別クラスなら学校のバスが出るはず」

「向こうの第3区画の……第2桟橋だっけ? たぶんそこだよー」

「ご、ご丁寧にありがとうございます。本当にありがとうございます! 失礼します!」

小さくはない体に隠しきれない大きな艦長帽(・・・)を小脇に抱えた少女は足早に、しかし恭しく頭を下げながら、バス乗場まで駆けていく。

「あれが、艦長なのかな」

「なんか覇気のない人だね」

「ユズちゃんには言われたくないなー」

後ろ姿を見届けながら話す3人。一見すると控えめで、彼女の言うように覇気もなく、なんとなくパッとしない雰囲気の少女が艦長であることに少し不思議な感じがしていた。

しかし、ああいうのは航洋艦長にはよくいるタイプだ。と、その時は気にも留めなかった。

まさか少女が、横須賀の伝説と言われる晴風クラスの再来と言われるほどの騒動を巻き起こすとは、夢にも思っていなかった。

 

 

 

横須賀市学園船団を形成するもう一つの海洋学校、それが長浦男子海洋学校である。

ブルーマーメイドと対を成す、ホワイトドルフィンの隊員養成学校である長浦校は、横須賀校とほぼ同時期に開校した歴史ある学校で、全国に7校ある男子海洋学校の中でも生徒数、艦艇数共に最大規模を誇る学校だった。

長浦校を始めとした男子海洋学校は、女子海洋学校と同じ様に旧式艦を流用した水上教育艦隊を保有している。さらに男子校独自の装備として、潜水教育艦隊も保有している。

このため、男子海洋学校は女子海洋学校よりも規模は大きく、より多彩な艦艇による実習を行っている。

そんな長浦校でも、横須賀校実習艦隊の出航に続くべく、出航式典の真っ只中にあった。

長浦校所属の航空直接教育艦『笠置』の飛行船甲板に整然と並んだ新入生たちは、真新しい純白のセーラー服と、裾の短いピッシリとしたスラックスに身を包み、厳格な面持ちで、出航式典に臨んでいた。

壇上には長浦男子海洋学校校長の本多創哉が上がり、新入生に訓示を述べていた。

「……さて、入学式も間も無く終わり、今年度最初の海洋実習が始まる。既に出航した横須賀の生徒たちに遅れを取ることが無いように、実習期間中は気を引き締めて、実習に励んでほしい」

緊張感に溢れる会場。ブルーマーメイドと対を成し、海の安全を守るホワイトドルフィンの次世代を担う少年たちは、気合い充分、やる気満々だった。

式典もまもなく終わる頃、校長自らが今回の実習に参加する艦の名前を読み上げ、それぞれの艦長を指名する。

「直接教育艦艦長は先に挙げた通り。続いて潜水直接教育艦艦長を指名する。伊405艦長、赤城友哉。伊15艦長、安住鴻一郎。伊19艦長、葛城亮吾。伊33艦長、竹沢伸。以上4名を新たな潜水艦長として任命する」

整列していた新入生たちの中から控えめな喜びの声と、感情そのままに大声で叫ぶような喜びの声がそれぞれ一つずつ聞こえてくる。

「やった……艦長だ! しかも特型だ!」

1人は伊405艦長に任命された赤城友哉。式典の最中だと遠慮して控えめに声を上げる。周囲の生徒は口々に労いの言葉をかける。

「よかったな」

「よう、首席生徒どの。似合ってるぜそのスカーフ」

そして、今1人は大歓喜のあまり雄叫びを上げていた。

「ぃやったぞぉぉぉぉぉぉぉ!! 俺は! ついに! 艦長だぁぁぁ!!」

彼は伊15艦長に任命された安住鴻一郎。文武両道で人に慕われる性格の彼が艦長に任命されたのはある意味必然だった。

「おめでとぉぉぉぉ!」

「お前、とうとうやったな!」

「バンザァァァァイ!」

周囲の生徒たちは、彼のことを自分のように喜び、胴上げまで始めた。

立ち姿は威厳溢れる海の男でも、その中身は普通の男子高校生そのものだった。式典の最中でも喜びを抑えることは出来ない。しかし、そこはまだ大人の目の届く場所だったのを失念していた。

「静粛に! 艦長になってはしゃぐのはわかる。だが、まだ式典の最中だ」

本多の低く、重く響く声が会場を震わす。はしゃいでいた生徒たちはすぐさまその興奮を納め、列に戻る。

ざわざわしていた会場が落ち着き、波風の音が甲板に響く。

本多は咳払いし、式典を続行する。

「……さて、例年通りならこのまま実習を開始する所だが、今年は少し事情が異なる」

生徒たちはこの言葉にどよめく。実習前に何か説教でも始まるのか、何か事件でもあったのか。と、にわかに生徒たちは騒ぎ始める。

しかし、一部の生徒はこの事情(・・)というものを知っていた。

「今年は12隻の潜水直接教育艦に加えてもう1隻、特別クラスが実習に参加する」

本多の発言に、生徒たちは大きく騒ぎ始める。そもそもこのことは、大きくは喧伝されていなかったし、生徒たちは知らなくて当然だった。

(まぁ、そうだよな。急に1クラス増えると言われれば、そりゃびびるよな)

そう独白しながら、本多は頭を掻く。

「では、改めて紹介しよう。……壇上に上がりたまえ」

それを待っていたように、横須賀校指定セーラー服と、長浦校指定スラックスのアンバランスな格好の少女(・・)が壇上へゆっくりと上がる。

「え……あれ、横須賀の制服じゃね?」

「マジか、女子? 男子校に?」

「ちょっとテンション上がってきた」

「キモ」

生徒たちは口々に呟く。壇上に上がる少女は小さなサイドテールを風で揺らしている。今にも艦長帽の威厳に押し潰されそうな小さくはない体は緊張のせいか、震えていた。

「では、改めて紹介しよう。横須賀女子海洋学校より出向してきた、特別クラス委員長・潜水艦長の遠藤早耶果だ。わが校の1年生クラスとして、これから3年間の実習を共に受けてもらう。遠藤くん、何か一言を」

一口に最低限のことを説明する本多。小さなサイドテールの少女改め、潜水艦長の遠藤は、多数の生徒から向けられる視線に圧倒され、思わず息を呑んでいた。緊張と注目される恥ずかしさで硬直した体は、思うように動かない。本多の言葉も何処か遠くから聞こえてくる気がした。

「遠藤くん!」

2回目の呼びかけでようやく復帰する。覚めた精神は不味い状況だと警笛をならしている。

「は、は、はい!」

声まで震える。緊張とか、恥ずかしさよりも申し訳なさが上回る。

ようやく、練習してきた挙手の敬礼をする。そして、さんざん練習したはずのスピーチは緊張でキレイさっぱり吹き飛び、頭は真っ白になる。

しかし、絞り出した声で、短く挨拶をする。

 

「特別クラス委員長・せ、潜水艦長の遠藤早耶果です。よろしく、お願いいたします!」

 

簡潔で、何の飾り気もない挨拶だった。

こうして、横須賀女子海洋学校特別クラス委員長・潜水艦長遠藤早耶果の学生生活は、思わしくはないスタートを切ることとなった。

 

 

途方もなく広大、かつ無謀な航海への出航を知らせる汽笛が、重い音を立てて水平線の彼方へ木霊した瞬間だった。

 

 




新シリーズ、「めざせサブマリナー!」こと、"めざさぶ"いかがでしたか?
なるべく週一投稿するつもりですが、不定期になることが多いと思います。

次回は特別クラスの癖の強いクラスメイトたちと、愉快な同級生たちが登場します。
お楽しみに。
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