悪の組織の新米幹部 死にかけの魔法少女を拾いました!   作:黒月天星

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閑話 ある魔法少女の一日 その二

 

 ◇◆◇◆◇◆

 

 急な質問だが、魔法少女は普段何をしているのだろうか?

 

 勿論悪心に対抗するための貴重な人材である事は間違いない。場合によっては警察等に協力して治安維持活動や災害救助も手広くやる。

 

 しかし、あくまでメインは悪心の対処であり、悪心も年がら年中そこら中に湧いて出るまでではない。では出現するまでは魔法少女は何をやっているのか? 決まっている。

 

 

 ()()()()()()()()

 

 

 魔法少女特別養成機関。

 

 日本全国から検査で魔法少女の適性が発見された者を集め、育成し、無事テストに合格した者を各地へと送り出す機関。

 

 しかしその実態は、やや特殊なだけの小中高一貫の学園形式である。つまり、

 

 ポコンっ!

 

「えへへ……アズキちゃ~むにゃっ!?」

「ほぉ……良~い夢を見ていたようだなぁ望月? それこそ私の退屈な授業なんかよりも数段……な?」

「ご、ごめんなさ~いっ!?」

 

 普通に授業はあるし、居眠りなどしたら怒られる。

 

 望月小麦もまた同じ。教科書で軽く頭をはたかれて夢の世界から引っ張り出され、教師の怒りの四つ角が浮かんだ笑みに一瞬で眠気は四散。平謝りしながら教科書を真面目に読むのであった。

 

 なお……教科書が逆さまだったため余計に教師に怒られたのは余談である。

 

 

 

 

 昼休み、カフェテラスにて。

 

「はははははっ! それで、そんな大量の課題を出されちまったのか!」

「もぉ~。笑い事じゃないよぉっ!?」

 

 もぐもぐとサンドイッチを頬張りながら猛烈な勢いでペンを走らせるコムギを見て、ミカンはスプーンを握る手を止めて大笑いする。ちなみに今日の食事はカレーライス(お子様向け甘口)である。

 

「ふぅ。慌ただしい。せめて食べ終わってからにしなさい。書くのも、馬鹿笑いするのもね」

「馬鹿笑いってなんだよぉ火野。わぁったよ食べるよ」

「でも火野さん。これだけの課題休んでる暇は」

「大丈夫。ざっと見た所、一見多そうに見えて問題文が長いのが大半。落ち着いて読み込めばそれほど時間はかからない。それよりも、慌てて食べてじっくり味わえない方が食事への冒涜じゃなくて?」

「……はい。分かりました」

 

 ミカンが素直に、コムギが迫力に圧されて冷や汗をかきながら落ち着いて食事を再開するのを見て、火野もゆっくりと自分の分(上級者向け激辛麻婆豆腐)をれんげで掬う。

 

 コムギがこの火野とミカンのチームに編入してからしばらく、こうしてクラスが違う相手なれど、出来るだけ一緒に食事をとるのが通例になっていた。

 

 そして、そろそろ各自食べ終わりそうという所で、

 

「しっかしさぁコムギ。なんで先生に朝の事言わなかったんだ? 朝っぱらから悪心が出てたんで一戦交えてましたと言えば、多少大目に見てもらえただろうに」

「そうね。実際私達はそう申請したので午前の授業は免除されているわ。どうしてそうしなかったの?」

 

 それは当然の疑問だった。

 

 魔法少女として活動する場合、きちんとした申請をすれば様々な支援を機関から受けられる。特に突発的な悪心への対処の場合、一体ごとに授業の免除や賞与、その他諸々も考慮される案件だ。しかし、

 

「いえ。授業はちゃんと受けます。時々居眠りしそうに……今回みたいにしちゃったとしても、ちゃんと受けます。……アズキちゃんが戻ってきた時、それまでの授業内容を教えてあげられるように」

「コムギ。それは……火野?」

 

 コムギの言葉にミカンが何か言いたそうな顔をするが、火野が手でそれを制止する。

 

 ミカンと火野。この二人にとってもアズキは知らない相手ではなかった。

 

 永星アズキ。先日の第一次悪心大量発生において行方不明となった魔法少女にして、目の前の望月コムギのチームメンバーにして、無二の親友。

 

 かつてチーム合同である悪心と戦った時は、やる奴だと二人して舌を巻いたほどの腕利き。一見クールかつ合理主義で、人に対して表面上はまだしも深い部分では壁を張って馴れ合おうとしない孤高の人。

 

 しかし少し付き合ってみて二人には分かったのだ。少なくとも気を許した相手、例えばコムギのような相手に対してはデレデレというかドロドロというか……まあ()()()()()()()()()()()()だと。

 

 それが行方不明になったと聞かされた時には、最初は何かの間違いだと笑い、真実だと知った時にはそれなりに落ち込んだ。そして次に思ったのはコムギの事。無二の親友が消えた事でどれほど悲しんでいるかという事だった。

 

 そして実際当初は見ていられないほどにコムギは落ち込み、半分自暴自棄に近いほど思い詰めていた。

 

 最近は心境の変化があったのか立ち直ってきたが、もしやまた自棄になったのかと思う二人だったが、続くコムギの様子を見て思い直した。それは、

 

「アズキちゃんは必ず戻ってきます。約束したから! だからいつ帰ってきても良いように準備をしておくんです!」

 

 その目には一切の陰りはなかった。ほんの僅かでもあり得ない幻想に縋るような気配すらなく、その言葉通りアズキは必ず戻ってくると確信に近い何かがあった。

 

(火野……これって)

(ええ。これは、もしかしたら)

 

 アズキは生きている。少なくともそう思わせる何かをコムギは掴んでいる。

 

 視線だけでそう意見を交わし合った二人は、敢えて話を遮る事もなくコムギの言葉にうんうんと頷いた。

 

 

 

 

 放課後。図書室にて。

 

「ふぃ~。や~っと終わったよぉ」

 

 授業が終わり持ち帰るとどうしても怠けてしまうからと集中出来る図書室で課題と格闘する事しばらく。どうにかこうにか片づけて、コムギはグッと背伸びして固まった身体を解す。

 

 見れば大分外は薄暗く、自分以外に居るのはごく僅か。

 

 用は済んだと早々に荷物をまとめ、コムギは静かに図書室を出る。

 

 さて。今更だがこの機関の生徒は皆寮生活だ。それも小中高でそれぞれ分けるのではなく、ある程度ランダムで所属する寮が定められその中でエスカレーター式に上がっていく。結果寮は第二の家同然となり、同寮生の団結力は強くなり、仲良くなる者も多い。なので、

 

「……こっちに来るのは久しぶりだなぁ」

 

 自寮以外の寮に行くのは割と珍しい事であった。

 

 コムギが足を向けたのは、自分の“ヒマワリ”寮ではなく“スズラン”寮。かつて彼女の相方であるアズキが所属していた寮にして、

 

 

「チサちゃん。しばらく会えてなかったけど……元気にしてるかな」

 

 

 アズキの妹である()()()()()()()()()()()()である。

 




 コムギサイドも時々描写されていきます。ただ……早く何とかしないとコムギからぽろっとアズキ生存がバレそうな勢い。まあ直接言いはしないけど、なんとなく様子から察する人は居ますよね。
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