嫌々ながら魔法少女になりました   作:紙吹雪

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くくくっ……メダル集めは詳細に描写すると作者の精神が燃え尽きてエンケファリンの服用が必要になるのでダイジェストでお送りするぜ!




魔法少女と邂逅

 

「ふんふ〜ん、ふふ〜ん……♪」

 

「……なんかご機嫌じゃんソラノ」

 

「まぁね」

 

 私の機嫌が良いのはちゃんとした理由がある。いつもご機嫌ではしゃいでいるエリーとは違うのだ。まあ、今のエリーは微妙そうな表情をしているけど。

 

 今、私の視点は普段よりもかなり高い。どのくらい高いかと言うとエリーと全く同じ高さである。何故なら、私は今【模倣】のスキルを使ってエリーの姿になっているからだ。

 

「身長が高いって良いなぁ……ふふ」

 

「あはは……想像以上にエンジョイしてるね。私は双子になった気分だよ」

 

「む……視線が高いのはいいが姿がエリーだったのを忘れてたな」

 

「やだー、失礼!」

 

 普段の行いの結果なんだがな。しかし、【模倣】はどうにも自発的に解除はできないようだ。解除される条件はダメージを受けることである訳で……つまるところ、わざわざダメージを受けてまで解除するのも勿体無いのだ。

 

 あと、いくつか実験もしていた。例えば、【模倣】で出来た装備なんかは全て名称に(偽)が付いていて、外すと消えてしまうようだ。本物の装備に付いているスキルはなくなっている。

 

 他にも一時的なステータスアップできるポーションを飲んでから【模倣】を使ったりしたらどうなるのかだとかはちょっと気になるが、まだ実践していない。いつか暇を見つけてやってみるか。

 

「しっかし、ウチと全く同じ姿の人がいてしかもその中身がソラノか……それにしても、改めて見るとウチって本当に美人ですなぁ」

 

「否定はせんが……中身で全て台無しにしてると思うぞ」

 

「ほう、それは中身がソラノなら完璧と言う意味で?」

 

「いや、そこまでは言っていないが……」

 

 返答に困るような発言は控えてくれないだろうか……私はあまり口が得意な方ではないのを知ってる癖に。

 

 ちなみに今はイベント六日目だ。あの悪趣味な化け物との死闘からは割とあっという間だった。

 

 あの化け物を退治したその日は殆ど何もない一日だった。二人共疲れてのもあり、その日は休憩時間の方が長かった気がする。肉体的な疲労はゲーム内で反映されるかは私は詳しく知らないが、あの日の精神的な疲労はこのゲームを始めてから一番だと断言できる。ああ、寝床を探すついでに偶然メダルを一枚発見できたのは収穫だったかな。

 

 次の日……イベント三日目は積極的に辿り着いた海辺を練り歩いて探索を行った。その甲斐あってか岩場に隠されたメダルを一枚、更にヤシの木のてっぺんでもう一枚のメダルをゲットすることに成功した。

 

 更に、歩き疲れたエリーが「ちょっと泳いでくる!」って突然海に潜り出してメダルを一枚取って来た。なんでも昔、海に潜って収集アイテムを見つけるゲームをやってからずっとやってみたかったからだそうだ。あいつが突如として奇行をするのは慣れている身だし、メダルはちゃんと手に入れていたので特に文句を撒き散らすのはやめておいた。

 

 その日の夜は海辺で波の音を子守唄代わりに眠った。その夜は夜空を天井にして自然の音に囲まれて寝る心地良さに私は初めて気がついた。今度、リアルでも休暇を使って海に行ってみようか。もしくは寝る時に自然音のBGMでも流すのも悪くないかもしれない。

 

 イベント四日目。この日は山岳エリアにてダンジョンを見つけた。そのダンジョンはモンスターは生息しておらず罠が大量に置かれているタイプだった為、そう言うダンジョンになれたエリーがウキウキで攻略してあっという間にダンジョンの奥底まで辿り着いて二枚のメダルを獲得した。

 

 その後、プレイヤーとかち合って戦闘が行われたが……エリーが張り切って一人で倒してしまった。まあ、私はエリーの姿をしていたからな。自前のスキルは使えるもののエリーの装備に備わっているスキルは使用できないから戦闘力としては割と微妙だ。その時はエリー一人でどうとでもなる相手だったから解除はしなかったが。

 

 それで……なんと、相手が待っていた二枚のメダルを奪うことに成功しその日は終了。メダルを持っている他プレイヤーは少ないだろうと思っていたからまさかメダルを二枚も奪えるとは思いもよらなかった。初日が嘘のような順調さだった。それはもうちょっと怖いくらいに。

 

 イベント五日目。この日がなかなか大変だった。

 

 流石に失速したのかと全然メダルを見つけられず、途方に暮れていた。まあそんなに上手く行かないよねと半ば諦め気味に歩いていたらなんとメダルを身に付けたモンスターを発見して二人で追いかけ回った。多分、真面目にフルマラソンくらいの距離を走った。三時間くらい。疲れた。

 

 最終的に痺れを切らしたエリーが投げ槍で仕留めてそのモンスターが持っていたメダルを手に入れた。二枚も手に入れたので走った甲斐があったと言うものだ。その日の夜は疲れからかかなりぐっすり眠れた気がする。

 

 そして、現在……イベント六日目。どうも踏破されているダンジョンなんかが増えていて探索によるメダル入手が困難となっていた。

 

「で、真面目にどうするんだ? このままだと目標まで厳しいぞ」

 

「うーん、片っ端からプレイヤーキルしていくくらいしか……」

 

 なんとまあシンプルで分かりやすい方針か。でも私にとっては好みの策だ。いや、策と言えるかも怪しいレベルだが。

 

「じゃ、サーチアンドデストロイって奴か?」

 

「おう、それそれ。よぉし、あと三枚頑張って集めるぞー!」

 

「おー」

 

 さて、これからは戦闘が頻繁に行われる訳だが……今の私はエリーの姿だ。折角視線が高くなったのでそのまま戦ってみよう。たまには近接戦闘を経験しとくのも悪くない。と言うかそもそも私にはこっちのが向いている。運動神経には多少の自信もあるし。

 

 槍の使い方については一切分からないド素人の私だが、寝る前にエリーが(若干しつこめなくらいに)レクチャーしてくれたのである程度は扱える。まあ初心者に毛が生えた程度の技術だがタイマンならば問題ないだろう。体格差にも既に慣れた。今では違和感なく動ける。最初はすぐにつまづきそうになったけど。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「ぐわー!」

 

「はい、お疲れさんっと……お?」

 

 夕方くらいの頃合い。プレイヤーキルでメダルを集めると決めてからは約五時間くらい経過したところだ。

 

 倒したプレイヤーの数はもはや数えるのが億劫になったので何人倒したのかは覚えてないが、ようやくメダルを一枚落としたプレイヤーが出てきた。

 

「これでやっと一枚、か」

 

「うん……やっぱり運が良くないと拾えないんだねぇ」

 

 今回のイベント、私達は運が良かったってことか。たしかにこれだけ倒してもメダルをドロップしないのを鑑みるとそう考えるのが妥当か。私はあまり運には自信がないのだがな。悪運が強いとはよく言われるが。

 

「それじゃあ、この調子でもう一踏ん張りと行くか」

 

「うーん、それもそうなんだけどさぁ……なんと言うかこう、効率がよろしくないよね」

 

 それはそう。

 

「何か案があるのか?」

 

「いや?」

 

 おい……まあいいけど。

 

「はあ、このまま夜通し続けるしかないのか?」

 

「今のところはね……しかし、ウチ達と同じようにプレイヤーキルでメダルを手に入れようとしている奴もかなりいるみたい」

 

「たしかにな。そのお陰で沢山遭遇と戦闘をこなせている訳だが」

 

 私達は一見装備まで全く同じ双子にしか見えない。それで第一回イベントで活躍してないエリーの姿だからか油断してかかってくる相手が多かった。

 

 ……エリーの姿に見惚れていた奴も一定数いたが。装備も似合ってるし、マジでこいつ美人なんだよ。中身が相当アレなだけで。アイドルとかモデル顔負けなスタイルだし。

 

「取り敢えず、今日は徹夜するくらいの覚悟でやろう」

 

「うー、ブラック企業……仕方ない、ウチも覚悟決めますか! ゲーム内だからお肌が荒れる訳でもないし」

 

 スキンケアはキッチリやってるのか……

 

「もう完全に日が暮れたか……」

 

 最近は暗闇に眼が慣れたからか比較的夜でも活動しやすくなった。初日と比べれば雲泥の差だ。

 

「よし、それじゃ次の相手を探そう」

 

「ああ……早速来たようだぞ」

 

 前方から走ってくるプレイヤーがいる。青いマフラーを掛けた女の子のプレイヤーだ。それなりのスピードで走ってるな……AGIだけなら向こうが上かも。かなりの軽装で、二振りの短剣を構えながら完全に私達を見据えている。戦う気は満々みたいだ。

 

 しかし……向こうにも私達の姿は見えている筈なのに人数差を全く気にしていないかの如く走り姿と言うか。怯んでいる様子が見当たらない。そこがどうも普通のプレイヤーとは私には思えなかった。もしかすると強敵なのかも。

 

「ふぅん……返り討ちにしてくれよう!」

 

「待て、少しは警戒を——」

 

 だが、私の注意は届かずエリーは青マフラーの子に向かって槍を構える。人の話を聞かない悪癖だけは治らんな全く……

 

「【疾風突き】!」

 

 槍の攻撃範囲内に入った瞬間、エリーの鋭い突きが青マフラーの子を襲う。が……

 

「何ィ!?」

 

 エリーの繰り出した槍を青マフラーの子は紙一重で躱した。しかもただ攻撃を避けたのではなく、走るのを辞めずに身体を僅かに屈ませて躱したのだ。それも全速力で走ったままで。凄まじい反射神経だな……

 

「【ダブルスラッシュ】!」

 

「くっ、なんの!」

 

 しかし、流石はエリーと言うべきか……青マフラーの子の攻撃を向こうの方がAGIは上だろうに即座に対処している。槍だから近距離戦闘には不向きだろうによくやるよ。青マフラーの子もちょっと驚いているようだ。

 

 さて、私も動かないとな。

 

「せいっ!」

 

 私が槍を横薙ぎに振るうと青マフラーの子は背中に眼が付いているのか上体を逸らして見事に躱した。ま、マジか……!? 完全に背後を取ったのにこれにも反応するのかよ!

 

 さて、突然だがここで問題だ。

 

 両手が使用出来ない状態の時に相手から斬りかかられた場合、どう反応すればよいでしょうか?

 

 

 ——正解は、キックだ。

 

 私は元と比べて長くなった足で垂直に蹴り上げた。

 

「オラァ!」

 

「ッ!」

 

 流石に蹴られるとは予想はしてなかったのか、青マフラーの子は面食らった様子でその場から離脱する。それでも反応して避けたのはとんでもねぇ。こいつ何者なんだよ……

 

「エリー……強敵っぽいね?」

 

「うん、みたいだね」

 

 しかも、相手はまたまだやる気みたいだ……いや、寧ろ笑っている。どいつもこいつも戦闘狂かよ!

 

「一応聞くけど引く気はないの、お嬢さん?」

 

「ええ……ないです」

 

 青マフラーの子は短剣を構えながら迎え撃つ姿勢だ。多対一だろうに闘争本能が高くていらっしゃるよ。

 

「ふふ……最近はPvP成分が足りてなかったからなぁ」

 

 エリーも負けじとその見た目だけは麗しい顔に天使のような微笑を浮かべながら構えを取る。そこ、張り合わなくていいから。あと、その成分ってのはなんなんだ。

 

「くくっ……来いよ青マフラー、短剣なんか捨ててかかってこい!」

 

 また、激戦の予感がするな……やれやれ、残業は勘弁願いたいのだがな。

 





<どいつもこいつも戦闘狂かよ!

※このセリフを覚えておいてください。


Next. < 貴様、見たなッ!?




ぶっちゃけどのお方の登場を期待している?内容によって色々考慮します。

  • 白夜
  • 終末鳥
  • 赤い霧
  • 調律者
  • 蒼星様
  • 盲愛様
  • 黒い沈黙
  • ドンファン
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