嫌々ながら魔法少女になりました   作:紙吹雪

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バーの色ちゃんと持ち直してヨカッタ……アリガトウ……




魔法少女とイベント終了

 

 大富豪にようやく一区切りが付いた。ローカルルールとやらで7は手札を渡せたり9は使用済みのカードを回収できたりと私の知らないルールが出てきたが、なんとか三位までに漕ぎつけた。7が来たらひたすらエリーにカードを押し付ける作戦が上手く行ったな。決して普段の恨みではない。

 

 ちなみに一位はメイプル、二位がサリー、三位が私で四位がカスミ。最下位はエリーだった。

 

「むきー! なんでソラノは私にばっか押し付けるのよ! 他にも私の前の手番になったら八切りばっかして!」

 

「なんとなくだ」

 

「嘘つけ絶対日頃の鬱憤を晴らす為だゾ……ひゅぅん」

 

 ちょっと悪いことをした気がするが、まあエリーだしいいだろう。翌日には何事もなかったかのようにケロッとしている筈だ。

 

 ……サリーの様子を横目で伺う。彼女はメイプルに負けて少し悔しそうにしているが概ね満足していそうな顔をしている。ああ、メイプルはサリーの隣で一位を喜んでいる。うん、子供はこうでなくてはな。

 

 ふと、サリーが私の方へと視線を向け、偶然なのか目が合ってしまった。サリーはすぐに目を逸らしてしまったが、私には分かる。私が怖がらせているんだろう。

 

 ……二人っきりになろうとか言い出すと余計怖がりそうだが、そこはまあはんとか言葉を尽くして説得するしかないな。あまり得意ではないが、自分のやったことの結果なんだし受け入れる他ないだろうよ。

 

「ねぇねぇ、今度はこれやってみない? 私結構強いんだよ!」

 

 ふむ、これはオセロの盤か。このゲーム、そんなものもあるとは初耳だな。

 

 ええと……たしか二人のプレイヤーが交互に盤面へ石を打ちながら相手の石を自分の石で挟むことによって自分の石へと換えていき、最終的な盤上の石の個数を競うボードゲームだったな。やったことはないが、ルールくらいなら知っている。

 

 そしてこれはチャンスだ。この場にいる人間は計五人。オセロなら三人余るからサリーを連れ出しても比較的問題が生じない。

 

「やや、これはリバーシか……」

 

「あ、エリーさんはリバーシって呼ぶんだ」

 

「細かいルールは実はオセロとリバーシは異なるんだけどね〜」

 

 エリーはこう言うことには詳しいな。自分が興味を持つ事柄に関しては色々と調べたりしているのだろう。是非とも自分が普段からしている仕事についても興味を示して欲しいものだ。そうしてくれると職場の私の負担が減って実に楽になるのだからな。

 

「呼び方なんてどうでもいい。馴染みのある呼び方でいいだろ。それより、ちょっといいか?」

 

 私はここでメイプルに向けて話を切り出す。このタイミングを逃せばもう謝れる機会はそうそうないだろう。

 

「私はちょっとサリーと二人きりで話がしたいから、先に三人で始めていてくれないか?」

 

「え、サリーに?」

 

 当の本人のサリーを見るとやはり私の予想通り困惑よりも驚きの方が優っているようだ。

 

「うーん、サリーが良いなら私はいいけど」

 

 そう言ってメイプルはサリーの方に向き直る。サリーはやや逡巡した後に返答した。

 

「……分かりました」

 

「ありがとう。三人は私達のことは気にせず続けてくれ」

 

「よし、分かった! オセロなら近所のオセロゲーム大会で六位になった私の実力見せちゃおうかなぁ」

 

 そう言って自信満々そうにメイプルとオセロを始めるエリー。何故だろうか、私にはあいつが負けるような未来が来る気がしてならないのだが。ま、放っておこう。

 

「……洞窟の奥、行こうか」

 

「え、ええ……」

 

 ……怖がらせたことを謝りたいのに、二人きりになるのに半分脅しで押し倒している私は悪い大人なのかもしれないな。仕方なかったと言い訳はできるが、そんなことで胸に抱いた罪悪感が消えて無くなる訳でもない。やっぱり、きちんと謝罪するのが最も分かり易くて誰が見ても平等な解決法だろう。

 

 私とサリーは洞窟の奥の方に無言で歩いて行く。気不味い空気だが、なるべく気にしないようにしながら足を進めて行く。

 

 この辺りなら残ってオセロに興じている三人に話が聞こえないであろう位置にまで来た時に足を止める。

 

「……この辺りでいいか」

 

「そう、ですか……あの、何の用ですか?」

 

 サリーは平静を装っているけど、少しだけ緊張が見て取れた。無意識なのかどうかは知らないが手は不自然ではない程度に腰の鞘に収められた短剣に近い所に位置している。中々末恐ろしい子だ。もし仮に私がこの場で彼女を襲おうとすると返り討ちに合いそうだ。彼女がそんなことをしようと思わないように、誠意を尽くさなければならないな。

 

 私は一呼吸置いてから、サリーに向けて真っ直ぐ頭を下げる。

 

「昨日はすまない。私も頭に血が昇って必要以上に怒り過ぎた。怖がらせてしまって本当に申し訳ない」

 

「……えっ?」

 

 頭を下げているのでサリーの表情は窺えないが、困惑しているのだろうか?

 

「今もこのような形で無理矢理連れ出してすまない。昨日からなんとか二人きりで謝りたいと思っていたがその機会がなくてな……」

 

「あの、そんな、別に良いですよ!」

 

 私は一度頭を上げた。サリーは別に気にしてないような風に言っているが、それが本音だろうと社交辞令だろうと私はまだ謝らなければならない。

 

「……私、昔は不良でな。ついその時の癖が出てしまった。私の悪い癖だ」

 

「は、はい……でも、私が悪かったんですし」

 

「いや、あれはただの事故だ。まあ君がもし異性なら二度と表通り歩けないように顔面を整形してやるところだが……」

 

 私のその発言にサリーは怯えた表情になって一歩後退りした。不味い、発言を間違えた!

 

「いや、その、今のは失言だ! 本当にすまない……その、なんだ。昔は私も結構無茶して色々やらかしていてだな——」

 

 私が何とか信頼を取り戻そうと言い訳に奔走していると、サリーは突然クスクスと笑い出した。

 

「ふふ……最初、ソラノさんって怖い人だと思ってたんですけど……本当は、凄く優しい人なんですね」

 

「……私が優しい、か?」

 

 あまり、自覚はない。私はやるべきことをやっているつもりなのだが。

 

「だって、歳下の人にもこうやって率直に謝れるし、私のことをずっと気にして話しているし……」

 

「君に謝るのは当然の事だ。いい歳した大人が初対面の子供に怒るなんて、ダメな人間にも程があるだろう?」

 

「……やっぱり、ソラノさんはいい大人ですよ。私の方こそ、気を使わせてしまって申し訳ないです」

 

 サリーは逆に私に謝って来た。まさか、謝罪したら謝罪で返されるとはな……

 

「……そうか」

 

 でも、サリーからは私に対する畏怖みたいな感情はもう見当たらない。私が大人気ない態度を取ってしまったから怯えてしまっただけで、本来は勝ち気な子なのだろうか。

 

 取り敢えず、本来の目標を達成は出来たし……良しとしようか。

 

「……私の用は済んだ。戻ろうか」

 

「はい! あ、そう言えば最初に会った時ってエリーさんと瓜二つの姿でしたよね。あれってどう言うことなのか気になってたんですが……」

 

「ああ、それはだな……」

 

 そんな感じで雑談をしつて私とサリーは今来た道を戻って行った。行きの時とは違い、比較的和やかな空気で私は密かに喜びが湧き上がった。思えば、こうやって歳下の子と肩を並べて楽しく会話するのはあまり経験がないが……中々楽しいな。メイプルみたいな妹が欲しいと言ったが……サリーみたいな子も嬉しいな。

 

 なお、三人のところに戻った時にはエリーがメイプルにボロ負けして崩れ落ちていたことを追記しておく。何故だろうな、このやっぱりなと言いたくなるような不思議な気持ちは……

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「ガオガオ! みんなお疲れドラ! 第二回イベント終了だよ! 獲得したメダルが10枚を達成した人は——」

 

「あー、終わったー!」

 

「終わったな」

 

「終わっちゃったねー」

 

 どうやらイベント終了時刻になったようだ。結構長かく感じた気もすれば短かったような気がする時間だったな七日目は……

 

 オセロは結局一勝もできなかった。メイプルが思っていたより強かったのは意外だったけど、エリーにも負けたのは結構悔しいな……今度こっそり練習するか。たまにはボードゲームで遊ぶのも悪くなかったし。

 

「——滅茶苦茶楽しかった!!」

 

 メイプルはこの第二回イベントを満喫できたようで、良い笑顔で運営の人間が聞けば思わずはらりと涙を流してしまいそうなことを言っている。

 

 思えばこの七日間、大変なこともあったし辛い時もあったが……楽しくなかったのかと聞かれたら、そんなことはないな。私自身、普段はやらないことを体験できて意外とはしゃいでいた時もあったと思う。27にもなってはしゃぐのはどうなのかとかはさておき、良い経験になったとは思う。

 

 

 

 私はイベント開始前の元いた場所へと戻り、メダルの交換を行おうとした。どんなスキルがあるのかは分からないが、プラスになるのは間違いないだろうから期待しておこう。

 

「ソラノはどんなスキル取る?」

 

「そうだな……支援系統のスキルも悪くないかもな」

 

 回復以外にできることを増やせると後衛としての仕事がやりやすくなるし前衛も助かるだろうからな。これは今回のイベントでエリーがモンスターを無傷で倒して終わり、ってなるのが多かった為生じた感想だ。まあ、それらしいスキルがあるかどうかは不明だからそのようなスキルを取得できればラッキーくらいの気持ちで行こう。

 

 そんなこんなで私とエリーはスキルを交換し終えた。

 

「で、結局どんなスキル取ったの?」

 

「ああ、一つは【魔力増強】だな」

 

 【魔力増強】はMPを使ったスキルの威力を1.5倍にする実に分かりやすいスキルだ。なんだかんだ火力は【アルカナスレイブ】に頼っている点があったからな。これで多少は改善できるだろう。

 

「んで、もう一つは?」

 

「ちょっと迷ったが……【ハートオブアスピレイション】って奴にした」

 

「え、マジ?」

 

 エリーがちょっと疑問系で聞いてきたのも分かるように、このスキルはちょっと使い辛いかもしれない。

 

 このスキルは発動時にHPが半分になる代わりに、半径五十メートル以内のパーティメンバー全員のSTRとAGIを一分間30 %上昇させるスキルで、これは私自身も含むようだ。恩恵はかなりデカイがデメリットが若干重め……私は自己回復が比較的容易だから取ったけど、普通ならちょっと取得が躊躇われるスキルだろうな。

 

「うーん、まあいいけど……そのスキル使ってからうっかり被弾して死なないよう気を付けてね?」

 

「ああ。エリーはどのスキル選んだんだ?」

 

「私? 適当に【フォートレス】にしたよ」

 

 ああ……たしかVITを1.5倍にするスキルだったかな。

 

「エリー、イベント中も殆どダメージ受けてないのに防御力上げるのか?」

 

「まあ、【堅牢】貰ったからね。折角だしある程度の防御力は確保しておこうかなって」

 

 中途半端に固くなっても正直メイプルの下位互換になる気もしたが……まあそこは経験豊富なエリーのことだしどうにかするだろう。

 

 

 なお、後日メイプルからのフレンドメールでシロップ……メイプルのテイムモンスターに乗って空を飛んで毒の雨を降らしたらしいことを知った。何故そんなことしたのかは分からないが、ちょっと見てみたい光景ではある。

 





無事仲直り!
これでしばらく暗い展開なんて来ませんね!
私だって防振りでジメジメとした話を書きたくないですからね!

メダル取得スキルは悩んだ末に割と適当に。心臓くん好き。列車嫌い。あと樹液と指輪も。




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ぶっちゃけどのお方の登場を期待している?内容によって色々考慮します。

  • 白夜
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