嫌々ながら魔法少女になりました   作:紙吹雪

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ふふふ……前書きで書くことが思いつきません。




魔法少女とギルド勧誘

 

 第二回イベントから少し経ったある日。運営から新要素追加のお知らせが来た。

 

 ゲーム内の喫茶店で私は紅茶を飲みながら思案を巡らせていた。レモンと蜂蜜を淹れた甘めの紅茶が私のお気に入りだ。蜂蜜の風味は殆どなく、砂糖を入れたかのような味が私の心を和ませる。甘味はやはり良いものだと私は改めて強く認識した。

 

「【ギルドホーム】ねぇ……」

 

「ソラノはどうする?」

 

 私の隣で優雅に足を組んでコーヒーを飲みながら聞いてくるエリーは憎たらしい程に絵になるが、口調で色々と台無しになっている。飲み物も大人っぽいのを口にしている癖に、こいつは周囲の目を気にしているのか気にしていないのか分からないな。その割におしゃれについてはかなり詳しいし、色んな意味でちぐはぐな奴だな。

 

 新しい要素。それは、【ギルドホーム】の導入だ。フィールドに出現するようになった光虫とやらを狩るとドロップする【光虫の証】とやらと大量のゴールドでギルドホームを購入できるらしい。だが……

 

「正直、あまり興味はないな」

 

「ふーん?」

 

 誰かに誘われたら入ってもいいかな程度には考えているが、私はいきなり知らない集団に溶け込めるような人間ではない。せめて、知り合いがギルドを作ってくれるとありがたい。言うまでもないが、私が自分からギルドを作る予定はない。リーダーとか面倒だからな。

 

「……ま、ソラノがそのつもりなら私もそうしよっかな〜」

 

「別に一人ギルドに入っても構わないしなんならお前が作ったギルドなら入るかもしれないが……」

 

「えー、私ギルドを作るのはちょっと……」

 

 うーん、意外だな。私はてっきりエリーはギルドとか好きそうだから乗り気なのかと思っていたが、どうやら私の勘違いだったらしい。

 

「そう言うの、好きじゃないのか?」

 

「うーん、嫌いじゃないんだけど……前のゲームでちょっとね」

 

 前のゲームか。エリーは今こそ《NWO》一本しかやっていないようだが、昔は他にも違うジャンルのゲームもやっていた筈だ。

 

「その前のゲームとやらで何かあったのか?」

 

「うん。ギルド同士の抗争……って、そんな大したことじゃないんだけどね? レイドボス討伐イベの時に、三つのギルド間でレアドロの所有権の主張し合いが発生しちゃって。その時はギルド長同士で話し合いになったの。私がギルド長だったからあの時はもう苦労しちゃって」

 

 ……ギルド間の争いか。たしかにそれは面倒極まりないな。

 

「んで、その後どうなったんだ?」

 

「結局、私のところのギルドにドロップは渡ったんだけど……」

 

「ふーん、良かったじゃないか」

 

「……まあ、そうね」

 

 何やら含みを持たせて答えるエリーは何かを思案しているように明後日の方向に視線が向けられていた。何を考えていようと私には関係ないことだし、とっととレベル上げにでも行こうと席を立ち喫茶店を後にしようと入り口へ向かう。この店は紅茶が美味しかったしまた来よう。

 

「わー、待ってよソラノー!」

 

 私が席を立ったのを見てエリーがついて行こうと、残ったコーヒーを一気飲みしてから急いで此方に走って来る。忙しない奴だな。

 

「それじゃ、光虫は無視してレベル上げ優先で——」

 

「やあ、少しいいかな」

 

 私がそう言いかけた時、横から見知らぬ男が話しかけてきた。

 

 男にしては珍しく長い長髪で妙に胡散臭い笑顔を浮かべた奴で、どうにも関わりたくないような雰囲気が醸し出されているような気がしてならない男だ。初対面の人間相手に対してその評価は失礼なのだが……どうもな。

 

 どうも居た堪れなくなったので横に顔を向けると……「げぇっ!?」とでも言いた気な顔をしたエリーがいた。普段と違って、滅茶苦茶動揺しているようだ。もしかしなくてもエリーの知り合いだろうか。

 

「お、お前……!」

 

「其方のローブの女の子は初めましてかな。そっちの……このゲームだと何と呼べばいいかな?」

 

「いや、あんたに呼ばれたくないんだが……」

 

 どうやら他のゲームで知り合った奴のようだが、エリーが珍しく顔が引き攣っている。会社でもこんな顔をしているところは見たことがない。何者なんだこの男は……

 

「ああそうだ、先に自己紹介するね。俺はアルグ。一応君達には顔合わせと勧誘に来たんだ」

 

「え、あんたが勧誘……? 地獄への片道切符の押し売りか?」

 

「折角こっちが先に自己紹介したのに……そんなことを言うんだ?」

 

 その男……アルグはわざとらしそうにため息をついてから、如何にも悲しそうな演技めいた声で言う。

 

「エリィぃ……俺、涙が出そうだよ」

 

 ……なんか凄くねっとりした言い方で、私はどうもこの男が好きになれないなとこの時確信した。いや、待てよ?

 

「……名前知ってたのか?」

 

「いや、他のゲームではいつもこの名前だったからね。その反応だと、どうやら今回も同じみたいだね」

 

「……お前だっていつも同じだろうに」

 

 エリーは一刻も早くこの場から……と言うかアルグから逃げたそうにしている。まさかこいつがこうなるような相手とはな。うちの会社に来て欲しいかもしれん。

 

「ああそうだ。一つ聞きたいんだけど……」

 

「ああ、もしかして別ゲーで君がリーダーを務めていたギルドが他の二つと衝突してレアドロの所有権を求めて争った時のことかい? それなら俺の差し金だね。君がいたギルド以外の二つのギルドは俺が唆してレイドボスに参加させたから」

 

「てめぇこん畜生! 道理で両方共あまりレイドボスに参加しない筈のギルドだった訳だよ!」

 

「いやあ、あの時の君の顔は傑作だったなぁ……ふふふ」

 

 ……訂正。このアルグとか言う男とはエリーと同じく私も関わり合いになりたくない。趣味がねじれてやがる。私もとっととこの場を離れたくなったぞ。

 

「……たしか、用向きはギルド勧誘だったか」

 

「ああ、ようやくそこの話ができるね。俺は今は【集う聖剣】に所属している」

 

「え、てっきり小規模ギルドでも作ってるのかと思ってたけど……」

 

 これは後からエリーに聞いた話だが、このアルグとか言う男は以前は小規模ギルドを作っていたらしい。

 

「本当は以前のギルメンと一緒に遊べたらいいんだけど……ちょっと都合がつかなくてね。だから、今は取り敢えず大規模ギルドに所属することにしたんだ」

 

「ふーんあっそ。それじゃ、私はこれにて失礼……」

 

「返事くらいしてくれてもいいんじゃないかな?」

 

 この男、時々妙に常識的である。そこが余計に近寄りがたいと感じる要因かもしれない。

 

「……断るよ。大体なんで私を? あ、まさか惚れちゃった? ごめんねー美人でうふふ?」

 

 あ、エリーが嫌味たっぷりに反撃し出した。

 

「ははは、まさか。君なんて俺の妹と比べれば塵芥も同然さ」

 

「は?」

 

 なんだこいつ……?

 

「さて、エリーには断られたけど……君はどうだい、第一回イベント七位のソラノさん?」

 

「……悪いが断る」

 

 私の勘が言っている。私がこの男に関わるとロクなことにならない、と。対応や声色は丁寧なのにここまで胡散臭い感じがする人間は初めてだ。

 

「そうかい。それは残念だ」

 

 全く残念そうではない声色だが、想像よりかはあっさりアルグは勧誘を諦めてくれたようだ。

 

「気が向いたらいつでもおいで。まあ、一応ペインに七位殿を誘ってくれと頼まれたから君に話しかけたんだけどね」

 

 ああ、本人も乗り気じゃなかったのね……どうにもこの男の調査にはなれない。

 

「それじゃ、また今度。イベントとかで会ったらよろしくね」

 

 よろしくね、の部分がイマイチどう言う意味なのかは分からないがアルグは他所へと歩いて行った。

 

「……はー、疲れた」

 

「同感だな。何者なんだあいつは?」

 

「ああ、ええとね——」

 

 エリーからあの男について聞こうとした時、メールの通知音が聞こえた。差出人は……サリーか。

 

「ん、誰から?」

 

「サリーからだな。どれどれ……」

 

 

『【光虫の証】集めと金策、良ければ手伝ってもらえませんか?』

 

 

「ふむ、ギルドを作るのを手伝ってくれってとのことだ」

 

「へー、サリーちゃんはギルド作るんだ」

 

「らしいな。私は手伝っても良いかなと思っているが」

 

「勿論私も良いよ!」

 

 今、私達暇だし。することがなかったから丁度良いくらいだ。早速私は了解の旨の返信を送り、一旦街の中で集合することになった。

 

「あ、いたいた。サリーちゃん!」

 

「こんにちわ、エリーさん。それにソラノさん」

 

「ああ、元気そうでなによりだな。ん、一人なのか?」

 

 待ち合わせの場所にサリーは居たけど、メイプルはいなかった。かなり仲が良さそうに見えたから友人なのかと思ったが、今日は居ないようだ。別行動でもしているのだろうか?

 

「ああ、メイプルは……リアルでちょっと失敗したからしばらくゲームはしないって」

 

「あ、もしかしてゲーム内の時間加速が初めてだったからかな? あんなに長い間ログインしてると慣れない内はゲームの癖とかリアルで出ちゃうもんね。ソラノもこの前私のこと現実でエリーって呼んで」

 

「それ以上喋ると麻酔なしで今すぐ抜歯するぞ」

 

「こわっ!?」

 

 全く……油断するとすぐこいつは。

 

「それじゃサリー、フィールド行こうか」

 

「はい。あ、そう言えばお二人はギルドにはまだ入ってないんですか?」

 

「ああ……ついさっきアルグって奴に誘われたが」

 

「……アルグ?」

 

 サリーはその名前を知っているのか? サリーはゲーム好きって言ってたし、もしかして他のゲームであいつと会ってるのだろうか?

 

「知ってるのか?」

 

「ええ、まあ……何と言うか掴みどころがない人だったなぁって」

 

「それに関しては同感だな」

 

 なんでも、一度PvPで戦ったことがあるらしい。その時はなんとか勝ったが、勝負の後ギルドに入らないかと誘われたらしい。あいつ、やっぱりちょっと気持ち悪いな……なんかこう、下心が一切ないのが逆にちょっと。

 

「はいはい、あんな奴の話なんて放ってとっとと行こうよフィールドに!」

 

「お、おう……」

 

 必要以上にアルグのことを悪く言ってしまった気がするが……たとえあの男に今の会話が聞かれていても対した反応を示さないような気がした。

 

 なんだろうな……このある種の予感めいた感覚は。

 

 

 






アルグ 1/2
銀色の長髪に青い目、いつも胡散臭そうな微笑み(ソラノ曰く)を浮かべている。
第一回イベントはリアルの都合で不参加。
決して作者が順位考えるの面倒臭い訳ではない。いいね?
高級そうな青い装備に装備に合わせた青い髪飾りが特徴。気まぐれな性格。
界隈では有名なゲーマーで、様々なゲームをやっている。所属は【集う聖剣】。
普段は少人数ギルドのギルド長をしているが、偶には大規模ギルドも悪くないかと【集う聖剣】に入った。
残業楽団作ると作者の負担が甚大なので致し方無し
その為顔が異様に広く、《NWO》の殆どの上位プレイヤーとは顔見知りである程。
例外はソラノやメイプルなど。エリーは勿論、サリーやクロムにイズとカスミ、それから集う聖剣や炎帝の国のメンバーとも7、8割が知り合いである。
他のゲームだと色んなギルド(もしくはそれに類する何か)を影で操ってギルド間に戦いや喜劇を起こしてはそれを観戦して嘲笑うことを楽しみにしている。
良い奴でもなく運営からは悪趣味なだけの変人として扱われているらしい。薬にも毒にもならねぇなコイツ。
戦闘能力もかなりのもので、並のプレイヤーなら何もできないまま瞬殺される。
リアルでは楽団のリーダーを務めている。メンバーは自身を含めて皆個性的だぞ!

超絶美人で天使そのものな世界一可愛い妹(本人談)がいる。
最近その妹に悪い虫がついたと聞き、リアルで楽団のメンバー達と共に色々と奔走しているらしい。
シスコン成分が混ざってマイルドになったな青キチさんよぉ……

3/20 ブラコンとシスコンを間違えていました。お詫びにセルマが生ハムになります。

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ぶっちゃけどのお方の登場を期待している?内容によって色々考慮します。

  • 白夜
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