嫌々ながら魔法少女になりました   作:紙吹雪

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ぶっちゃけ今回の話はもっと後の方にする予定だったけど……
ちょっと訳あって今回に差し込みます。理由は後書きにて。



魔法少女と後輩

 

 話しかけてきたのはややくすんだ赤色の髪の男だった。背は私よりもずっと高く、第一印象は優しそうな男と言ったところだろうか。

 

 装備は赤色に金色の刺繍が入った高級そうなもので獲物は……薙刀か。カスミも刀を持ってたし、薙刀もあるかそりゃ。

 

 多分、この男は第二回イベント開始前に見た【炎帝の国】とやらのリーダーをしていたミィの近くにいた男だ。髪色といい装備と言い見覚えはある。あの時は顔まで確認できなかったが……はて?

 

「……私に何か用か?」

 

「あー……忘れられてる気がする。俺ですよ! ほら、先輩が卒業する時に風紀委員だった……!」

 

「ん……?」

 

 先輩……風紀委員……?

 

「もしかしてお前……飴谷か?」

 

「思い出してくれましたか……お久し振りです、先輩!」

 

 飴谷は私が高校生だった時の後輩だ。どいつもこいつも私を怖がる中で唯一まともに話せた相手だ。あの頃の私は同級生から見るとちょっと怖い奴だったからな……背が小さいとは言え悪い噂が絶えない奴だったし、実際悪いこともしてたからな。

 

 それにして、こいつデカくなったな……卒業前最後に飴谷を見た時よりも背が10cmくらい伸びたんじゃないだろうか? 優しいだけの甘ったるい男の子から優男になったな……って、それだとあんまり変わってないか。

 

「背、伸びたな」

 

「え? ああ……はい。その、先輩は……」

 

「……ああ、ご覧の通り全然伸びなかったよ。気を使わせて悪いな」

 

 私は苦笑しながらちょっと困り気味にしていたこいつを安心させる。たしかに今のはキラーパスだったかもしれん。

 

「それで、ええと……なんて呼べばいい?」

 

「ロウ、ですね。先輩はソラノでしょう?」

 

「ああ、私も有名になったもん……待てよ。お前、第一回イベントのリプレイ見たか?」

 

「……」

 

 ロウはそっと顔を晒した。その仕草だけで私は全てを察してしまった。はぁ……

 

「……知り合いに見られるのは、心に来る物があるな」

 

「す、すみません!」

 

「いや、謝らなくていい。お前は全く悪くねーよ」

 

 まさか、高校時代の後輩が魔法少女のコスプレをしているとは思うまいて……ふふふ。ああ、今日はもうログアウトしようかな。なんかしばらくベットに引き篭もりたい気分だ。

 

「ああ、お詫びに何か奢りましょうか? いい喫茶店を知ってるんですよ。一層にあるですが」

 

「む、いいのか?」

 

 高校時代はそんなこと一度もされたことなかったが……いや、あの頃は機会がなかっただけか。

 

「まあ、先輩になら構いませんよ。これでも先輩と同じ上位プレイヤーのランカーなので」

 

「そういや、お前は【炎帝の国】に入ってるんじゃないのか? この前あの演説してたミィって奴の側にいただろ?」

 

「あ、見ていらしたんですね。その通りです。良ければ先輩も入りませんか?」

 

「ああいや、生憎既に別のギルドに入ってしまっている。すまんな」

 

「そうですか……構いませんよ! 別に無理して引き入れたい訳でもないですし」

 

 こいつは相変わらずみたいだな。顔付きはまあ男らしくなったが内面はそこまで変わってないみたいだな。出会った当初が険悪だったことを考えると仲良しと言っても過言ではない。

 

 それから一層へと転移し、しばらく歩くと喫茶店に着いたのだが……

 

「ん、ここは……私がいつも行っている所だな」

 

「あー、そうですか……ここ、俺のお気に入りの店なんですが先輩もだったんですね」

 

「まあな」

 

 二層も含めて食事が楽しめる所だと一番気に入っている喫茶店だ。静かな雰囲気だし、飲み物も美味い。

 

 私とロウは席に着いた。こうしているとなんかデートに間違えられそうだが、実際には後輩に支払い任せる先輩の図なんだよな……やっぱり、代金は少しくらい私も出すべきだろうか?

 

「先輩、何頼みますか? 高い物でもまあお支払いしますよ」

 

「流石に後輩に支払わせておいてそんな無遠慮な真似はしないさ。そうだな……」

 

 私はいつも頼んでいるのと同じ紅茶を注文する。蜂蜜とレモン入りの甘めの紅茶だ。ゲーム内の喫茶店だからか注文してすぐに頼んだものが来る。

 

「……意外ですね。先輩、甘い物好きなんですか?」

 

「なんだよ、悪いか?」

 

「いえ……俺も甘い物は好きな方なので」

 

「ああ、そう言えば昔よく菓子パンとか食べてたな」

 

 学生時代にその光景をたまに見かけた。男なのに珍しいなぁと思ったものだ。でも、たしかこいつは料理も出来なかったか? 普段は自分で弁当を作っていたらしいし、意外と家庭的な奴だ。女っぽいとも言うが。

 

「最近だと、飴がお気に入りですね」

 

「……名前にも入ってるもんな」

 

「はは、偶に言われますよ。そうですね……水飴や牛乳飴、干し梅飴とかが特に気に入ってますね」

 

 ふーん……水飴は流石に分かるが他二つはよく知らんな。

 

「ふむ……私も今度食べてみようか」

 

「美味しいですよー。なんなら今度作りましょうか?」

 

「お、作れるのか……ってその前にリアルで会えるかどうかだな」

 

「あ、そうでしたね……」

 

 私は今は昔住んでいた場所からは離れちゃって今はアパートの一人暮らしだからな。いつか仕事の休みの日にでも会えたらいいが……やや厳しいか。

 

「しかし、お前もやっぱりこう言う店好きだな?」

 

「あ、言え……実はあんまりゲーム内の飲食に興味がなくて。俺の場合、現実で作った方が美味しいので」

 

 お、おう……流石料理上手だな。

 

「じゃあ、何故この店を知ってるんだ?」

 

「それは——」

 

 ロウが話し出したその時に、私は店の入り口から知り合いの姿を視認した。メイプルとサリーだ。二人以外にもおそらく双子であろう女の子もいる。もしかして、この二人をスカウトするのだろうか? 見たところ双子の装備は初期装備のようだけど……

 

「——あれ、ソラノさん?」

 

「ん、メイプルにサリーか。その子達は?」

 

「この子達はメイプルがスカウトしたいって子です。ソラノさんこそ、そこの人は? あっ、もしかして彼氏とデート中ですか?」

 

 む、サリーがそんなことを言うとは。うーん、どちらかと言うと揶揄われたことよりもここまで気安く会話できる仲になったことが嬉しいだろうか。

 

「まさか。こっちはリアルで元後輩のロウだ」

 

「よろしく……と言うか、先輩ってあのメイプルと知り合いだったんですか?」

 

「はは、まあな」

 

「もしかして所属しているギルドもメイプルと同じですか? あー……」

 

 ロウはちょっと憂鬱そうに目を抑えて天を仰いでいる。大袈裟な奴だな。

 

「えっと、初めまして! メイプルと言います!」

 

「あー、知ってる。君の戦いは一応第一回イベントの時にこの目で見た……と言うか酷い目に遭ったから」

 

 ああ、だからか。

 

「俺はロウと言う。ソラノ先輩、結構威圧的じゃなかったかい? 」

 

「おいおい……あまり変なこと言うなよ?」

 

「だって先輩ってよく悪い人に見られがちじゃないですか」

 

「それは……否定はしないが」

 

 たしかにサリーとは最初アレだったけどさぁ……ちゃんと誤解は解いたぞ。

 

「……お前はそう言うところ、全然変わってないんだな」

 

「先輩は……まだちょっとよく分からないですね。昔は——」

 

 流石に知り合いの前で昔の話をされるのは恥ずかしいんだが……

 

「ソラノさんの昔話かぁ……ちょっと気になるかな」

 

「私も気になるかも!」

 

「二人まで……こらこら、双子の子達が戸惑っているでしょうに」

 

 双子はおろおろしながらメイプルさんの方を不安気に見つめている。自分で連れて来たのなら最後まで面倒を見るべきだろう。

 

「ああっ、ごめんね二人とも!」

 

「……私がいたら話が進まなさそうだな。紅茶もご馳走になったし、私はこの辺で失礼する」

 

「あ、俺はもう少しここにいることにします。先輩はお先にどうぞ」

 

 今日は少し懐かしい気分に浸れたな……おっと、そうだ。

 

「おう……そっちのお二人さん」

 

「「は、はい!」」

 

 なんだか緊張してるようだけど……話の流れからして私が歳上だと察してくれてると良いんだが。

 

「私はソラノ。一応ジョブはヒーラーになるかな。メイプルやサリーと同じギルドだから、もしギルドに入ることになったらよろしく頼む」

 

「は、はい」

 

「分かりました」

 

 私は席を立ち、この場の知り合いに別れの挨拶を済ませてから店を出る。たまにはこんなのんびりと過ごすのも悪くないかもしれないな。

 

 私がそんなことを思っていると、横から誰かに話しかけられた。茶髪で地味な眼鏡を掛けた女性だ。でも、顔は何処かで見たような……気の所為か。

 

「……そこの人。少し聞きたいことがあるのだが」

 

「ん、なんだ?」

 

「貴女は……ロウとはどんな関係なの?」

 

 この女はあいつの知り合いなのか。いや、待てよ……?

 

 その時、私に電流走る。

 

 ロウがゲーム内の飲食が興味なかったのにお勧め喫茶店を知っていたこと。それはつまり、この女性と付き合っているのではないか? それでデートスポットを探している内にここに辿り着いたのではないだろうか?

 

「あいつは私の学生時代の後輩だ。あ、私はちゃんと成人済みだからな?」

 

「本当にただの後輩?」

 

「ああ」

 

「……ならいいけど」

 

 その女性はそれだけ聞くと、何処かに歩き去って行った。やっぱり、あいつの彼女じゃないか? 今度会った時にでも聞いてみようか……フレンド登録し損ねたのがちょっと残念だな。フレンドならメールで聞けたのに……まあいいか。

 

 

 後に、先程出会った双子……ユイとマイが正式に【楓の木】に加入した。どうも二人はSTR極振りらしい。中々面白そうな子だし、これからが楽しみだな。

 





魔法少女共のスキルが考えても考えても纏まらねぇ!
ペイルダメージどうやって再現しよう!?
腐食ってどう言う扱いになるんだ!?
黄金狂って武器にしてもいいのか!?
そして例のアイツはどうやって用いればいいんだ!?

色々と構想の練りが必要不可欠なので次回の更新は一回お休みします。
それまでお待ちください。待った!(光1回復 2〜3刺突)

飴谷(あめや) / ロウ
【炎帝の国】所属の男性プレイヤー。26歳。
ソラノこと真崎心音の高校時代の後輩。
他人を思いやる心を持つ、どっかの誰かと違ってとっても良い人。
誰なのか見当もつかないね……笑い過ぎて涙が出そうだよ
ソラノが完全に周囲からやべー奴扱いされていた中、彼女の性格を知っていた数少ない一人。
学生時代は心音と学校を守る為の方法について議論したりして色々と揉めていたらしい。
やり方が優しすぎるとソラノが言えばロウがそっちは過激だろうと言い返す。だいたいそんな感じ。
ヤンキーモノ漫画か何か?
色々あったがお互いにお互いのやり方を理解はしていたとか。
ミィとはゲーム内で初めて出会った。
優しいけど我が弱いわけではないロウとリーダーとしてのカリスマたっぷり(笑)のミィとはウマが合わない……と、周囲からは思われてるが。
実は以前からミィの素をロウは偶然目撃していた。当然口止めするミィだったが、ミィの普段のギャップにやられたロウはその場の勢いで告白。
最初は脅されているのかと警戒したミィだったが、ロウから放たれる心からの褒め言葉に恥ずかしくなって赤面しその場から逃走。
それから他の【炎帝の国】メンバーがいる時でもロウと目を合わせられなくなったミィ。
他人の目がないタイミングで積極的にミィに話しかけに行くロウ。
二人のゴールインは果たして遠いのか近いのか——!
なお、二人の関係は【炎帝の国】幹部の間では有名である。
元ネタの二人よりも甘々だけどまだ付き合ってすらないね

あ、ソラノの初恋はこの人じゃないよ?


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ぶっちゃけどのお方の登場を期待している?内容によって色々考慮します。

  • 白夜
  • 終末鳥
  • 赤い霧
  • 調律者
  • 蒼星様
  • 盲愛様
  • 黒い沈黙
  • ドンファン
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