絶望「シクシク……」
憎しみ「ちょっと男子ー、絶望ちゃん泣いちゃったじゃない!」
ポチ「サイテー!」
「【アルカナビート】! 【星弾】!」
青いベールを纏う剣に対して攻撃を仕掛ける。これだけやってまだ壊れないとかどれだけ強い加護なんだか……!
「くっ……【フレアアクセル】!」
攻撃できる隙はあるものの、三本の剣の脅威は依然として健在。多少の被弾はもう無視して攻撃するしかないか。そうは言うがたった三回掠っただけで死にかねない火力なのが恐ろしいが。見た目は細めな剣なのに、下手したらカスミの刀よりも威力があるかもしれない。
だが、やってやれないことはない。私はAGI任せの強引な機動で剣の攻撃を掻い潜る。やはり、サリー並みの回避力に追い付くにはまだまだ修行が足りないようだ。どうしてもステータス頼りになってしまうな。
しかし、攻撃の避け方は分かって来た。これなら行ける!
「これでっ! 【星弾】!」
何度目かの攻撃で、やっと剣のHPを0に出来た。しかし、剣は光の粒子にはならずに残っていた。そして——
「……再び、果てしない絶望が私の中を満たすのね……」
彼女の様子が一変した。閉じられていた目が開かれて露わになった真っ黒な眼窩からは黒い涙が流れ出す。その姿はもはや人間としての面影がほぼ残っていない怪物のような姿だった。
「積み重なった絶望が、耐えられずに目と心臓を通って流れ出てくるのね……」
辺りに彼女の泣き声が静かに響く。悲しみではなく絶望で流れる涙か……
私が彼女の変貌に気を取られていると、三本の剣が一斉に私の方に切先を向ける。そして剣の内の一本が一直線で私を突き刺そうとしてくる。そのスピードは今までよりもずっと速い……!
「だが、避けられない程ではない!」
私は身を捩って剣を回避する。私が避けた後も直進した剣は剣の主人であろう彼女に突き刺さった。彼女は苦悶の声を微かに上げる。
……なるほどな。そう言うことかっ!
多分、この剣に命中したらヤバいダメージを受けるのだろう。しかし、逆に避けるなり何なりできればチャンスになるみたいだ。
「二本目は……っ!」
私はすぐ近くにまで迫っていた二本目の剣を半ば反射的に回避する。二本目の行く宛よりも三本目に集中しようしたが、二本目を避けて即座に三本目が私を襲う。
「こんにゃろっ!」
回避は難しいと判断した私は杖で無理矢理剣を弾き返す。STRゼロな所為か手に凄い痺れを感じるが、剣の攻撃は無事に受け流せた。やはり、素の私だとこの程度か……
私は彼女の方を見やる。
二本目、三本目の剣も彼女に刺さっていた。剣に貫かれた姿が痛々しい……
「……いっそ私を殺して……永遠に剣を握れないよう……」
……何故だか、私はその姿を見て同情みたいな感情を抱いた。薄っぺらい同情かもしれないが、それでも私は彼女の今の姿を見ていられなかった。
彼女はきっと長い間ずっと耐えていたのだろう。早く終わらせてやりたいと、私は思う。
……彼女はただ泣いているだけで動かない。剣も突き刺さったままだ。どうやら今はチャンスのようだ。
杖を構えて詠唱を始める。
「正義よりも碧き者よ、 愛よりも紅き者よ
運命の飲み込まれし その名の下に
我、ここで光に誓う
我が眼前に立ちはだかる 憎悪すべき存在達に
我とそなたの力をもって、 偉大な愛の力をみせしめん事を」
本来ならオーバーキルだろう。
だけど。
せめて、一思いに。もし彼女に次があるのなら、きっと良いことだらけになりますように。
「……【アルカナスレイブ】ッ!!」
圧倒的な光の奔流が私の視界を覆い尽くした。
【アルカナスレイブ】のビームが収まった後、残っていたのは地面に突き刺さった一振りの剣のみだった。拾ってみるとどうやらドロップアイテム扱いのようだ。
『スキル【加護】を取得しました』
『スキル【絶望】を取得しました』
『レベルが30に上がりました』
なるほど、スキルも報酬の一つか。それにしても結構レベル上がったな私……さて、スキルと武器の確認をするか。
【加護】
一名に貫通攻撃以外の全ての攻撃によって受けるダメージを半減させる加護を与える。
効果は一日の間持続する。
使用可能回数は一日一回。
【絶望】
パーティメンバーが死亡した場合にのみ発動できる。パーティメンバー全体がAGIが30%上昇して与えるダメージが30%増加する。しかし、発動者だけは受けるダメージも30%増加する。パーティメンバーが更に死亡した場合はそれぞれ追加で5%ずつ上昇する。(最大100%)
効果は一日の間持続する。
使用可能回数は一日一回。
ふむ……【絶望】の方は何と言うかかなり限定的だが、【加護】の方は使いやすそうだ。メイプルは元々ダメージを殆ど受けないしエリーにでも付けるのがいいかな。もしくはクロム辺りか。サリーには不必要かな。
そして武器。
『鋭利な涙の剣』
【AGI+20】
【涙で研ぎ澄まされた剣】
【破壊不可】
【涙で研ぎ澄まされた剣】
この武器による攻撃が命中する、常に相手の最大HPの{STR/(VIT/10 +1)}%分のダメージを与える(小数点以下は切り上げ)。
剣に付いているスキルがどの位強いのかが分かりにくいな……今度試してみるか。【模倣】のお陰で近接武器も使えなくもないし、折角手に入れたんだから使いたいものだ。
それにしても、戦闘前の彼女の口振りからしてあと二人と戦うことになりそうだ。たしか、欲望に呑まれた者と憤怒に囚われた者だったか。今回の戦いを鑑みるに、どちらにしろ一筋縄には行かなさそうだな……
気付けば床に魔法陣が出現していた。帰ったら……そうだな。偶にはコーヒーを飲んでもいいかもしれないな。角砂糖は三つくらいでいいだろうか。
◆ ◆ ◆
私がギルドに帰ると、メイプルとイズが何やら話し込んでいた。
「あ、ソラノさん!」
「ん、どうしたんだ二人共?」
メイプルはイズに何の用なんだ? 結構前に白い大盾を作ってもらってたし、装備もユニーク装備らしいから新しく装備を作ってもらう必要性は無さそうだが……
「ソラノ、それはね……」
イズが言うには、メイプルが新しいスキルを入手したからその影響で欲しい装備があるのだとか。はて、作りたい装備ができるスキルとは。一体何のスキルを得たんだか。
「うふふ……あのスキルに合う装備かぁ」
わぁ……なんかイズが凄い興奮しながら工房に歩いて行った。珍しい……いや、実際は物作りしている最中はいつもああ言う感じなのかもしれないか。まあ、楽しそうで何よりだ。あいつもあいつなりにこのゲームを楽しんでいるらしい。
……スキル、気になるし聞いてみるか。
「で、どんなスキルなんだ?」
私はメイプルに聞いてみた。もしかすると秘密ですとか言われると思ったが、とても素直なメイプルは素直に答えてくれた。
ふむ、【身捧ぐ慈愛】? 範囲内の味方に常に【カバー】が働く……つまり、庇うスキル? ほう、それはつまり範囲内の味方全員がメイプルと同じ防御力を得るってことか。それは……
「……私の出番がまた減りそうだな」
「あ、でもスキルの発動にはHPを使いますから……」
それならまあ出番が全く無い訳じゃないか。ま、いざとなったら【模倣】使って暴れたら良いか。丁度面白い武器手に入れたんだし。
「はは……まあ、私も私なりにやれることはやるよ。丁度、面白い装備を手に入れてな——」
私はメイプルに今日の出来事について気分良く話し出した……彼女はいい話し相手だな。前にも思ったが、メイプルみたいな妹がいれば私ももっと良い人間に慣れたのかもしれないな。
後日、装備が完成したので他のギルドメンバーにお披露目した時に知ったのだが【身捧ぐ慈愛】には青眼金髪に加えて天使の輪と羽根を追加するスキルだったらしい。何と言うか……綺麗だな、うん。可愛らしいし問題ないだろう。
……は? 装備無しでもVIT1000は超えてる?
……そのスキルあったら【加護】も【絶望】も使う機会が無いんじゃ?
うーむ……私の存在意義よ。クロム程じゃないが、今のままではちょっとダメだな。
短くてすまねぇ……すまねぇ……!
話毎に文字数合わなくてすまねぇ……すまねぇ……!
Q.剣を浮かせるスキルは無いの?
A.せやかて工藤、それは【崩剣】のシンと被ってるんや。
3/25 【涙で研ぎ澄まされた剣】のスキル内容について改善。ご意見感謝です。
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ぶっちゃけどのお方の登場を期待している?内容によって色々考慮します。
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白夜
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終末鳥
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赤い霧
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調律者
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蒼星様
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黒い沈黙
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ドンファン