嫌々ながら魔法少女になりました   作:紙吹雪

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黄金の琥珀とは一体……うごご。




魔法少女と欲望の王 1/3

 

 第三層の町は歯車が散見される今までにない特徴を持つ町だった。プレイヤーを乗せて空を飛んでいる機械もあるようで、これはこれで面白そうな感じだ。

 

「取り敢えず手分けしてここら辺のフィールドを一通り見回ってみよう」

 

「バラバラで?」

 

「来たばかりで情報が少ないからな。人外戦術って奴だ」

 

 なるほどな……しかし。

 

「それじゃ、一旦解散しよっか」

 

「ああ、わるいがちょっと私は二層に戻らせてもらう」

 

「え、なんで?」

 

 エリーが不思議そうに聞いてくる。お前の方が不思議存在だろうに。

 

「実は二層で連続クエみたいなのを見つけてな……今になって続きがどうも気になって、な」

 

「へー……私は別に良いよ!」

 

「私も別に構わないです!」

 

 うん、ギルマスのメイプルが良いんだったらと皆私が戻るのに納得してくれたようだ。

 

「その代わりクエスト内容が面白いのなら後で教えてね〜」

 

 そんなこと言いながら町の中心に向かって走り出すエリーに手を振る。他のメンバー達も散り散りに別れて行った。

 

 こうして私は皆と別れて一度二層の町に戻った。

 

 さて、手がかり見つけられるといいんだが。

 

 たしか、あの背の高い女性は……

 

 

『正義の為に戦った者は、悪などいない事実に気が付くと自らが悪と化し、

平和な世界を夢見た者は、今や欲望のままにすべてを貪る悪になり果て、

正義と均衡を守った者は、昔の憤怒に今もなお振り回されている』

 

 

 ……って言ってたな。多分、推測するにあの蛇が正義の為に戦った者だろ?

 

 そう仮定すると残りは欲望のまま全てを貪る奴と昔の憤怒に振り回されている奴か。うん、どっちもろくでもないってことは確かだろうな。まあ、気になるから探すけどさ。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 私が二層の町に戻ってまずこの前倒したあの女の人がいた裏路地に向かった。もしかしたら何か手掛かりがあるんじゃないだろうかと。しかし、特にめぼしい物は見つけられなかった。

 

「収穫なしか……」

 

 魔法陣は勿論あるわけがなく、何の変哲の無い行き止まりだった。どうやら当てが外れてしまったようだ。

 

 うーむ、やはり今の時点ではまだ未実装なのだろうか……いや、待てよ?

 

「……もう一ヶ所、あるな」

 

 私は再び階層を移動することにした。今度は一層に、だ。

 

 

 

 私は一層に着くとすぐにフィールドに出た。向かう場所はあの忌々しいユニーク装備を手に入れたダンジョン……その入り口があった場所だ。幸いにも覚えている。

 

 以前と比べてかなり速くなった為かスムーズに目的地に到着できた。

 

「……ある」

 

 私がダンジョンクリア後に一度だけここに訪れたことがあったが、その時ダンジョンは跡形もなかった筈なのにだ。つまり、ビンゴってことになるんじゃなかろうか。

 

「さて、入るか……ん?」

 

 一度入ったっきりだけど、最初にこのダンジョンに入った時とは明らかに内部が違う。

 

 曲がり角すらない一本道だし、なんか終点がもう見えるし……初回とは別物だと思っておいた方がいい。

 

 私が終点らしい開けた空間に出ると、そこには魔法陣が置かれていた。

 

 

 ——そして、何故か以前に倒した背の高い女性と私とそっくりな装備をした水色の髪の女の子がいた。

 

 

 ……いやいや、なんであんたこんなところに居るんだ!? と言うかそっちの知らない子は一体誰なんだよっ!

 

 いもしかして以前に背の高い女性が言ってた先輩か? 可愛らしい姿してるな……つーか装備が完全に私と同じじゃねーか! 日朝に帰れ!

 

「……来たわね、貴女!」

 

「え、あ、おう」

 

 しかも喋ったぞ……明るい雰囲気がこれでもかと伝わってくるような声だ。なんか何も怖くなさそうだな。

 

「貴女にお願いがあるの。その魔法陣に乗って、転移先にいる先輩を倒して欲しいの!」

 

「お、おう。それは良いが……君は誰だ?」

 

 先輩とやらも気になるがまずこの女の子の正体が気になる。

 

「え、忘れたの!? 貴女、私を一度倒したじゃない!」

 

 ……やっぱりあのデカい蛇が彼女なのか。元がこれなのにあんな化け物になるのか。とんだビフォーアフターだな。

 

「まあ、私もその時の記憶はないんだけどねっ」

 

 お前も忘れてるのかよ。つーか倒されたのに復活していることに関しては突っ込んじゃいけないのか?

 

「……気を付けて。先輩はとても手強いわ」

 

「……そうか」

 

 以前戦ってそれなりに苦戦した奴から言われる「あいつは手強い」か……今回も苦労するんだろうな。

 

「君らは行かないのか?」

 

 取り敢えず、気になったことはどんどん質問しよう。折角答えてくれそうな雰囲気なんだし。

 

「ダメ。私達はその魔法陣に乗っても転移できないの。魔法少女同士だからかしら……」

 

「……えっと、君達は魔法少女なのか?」

 

 いやまあ、こっちの女の子は分かる。誰が見ても魔法少女に見えるような見た目だし。でも、背の高い女性……ああもう言い難いな。そっちの方は魔法少女感はしないが。

 

「その通り! 私は愛の魔法少女! 悪を倒す正義のヒーローよ!」

 

「私は正義の魔法少女。でも、今では……」

 

 あ、背の高い方がなんかネガティブモードになってる。泣いたら以前みたいに怖い見た目になるんじゃないだろうな? もしそうなら怖いし話題を変えるか。

 

「……えーと、お二人の名前は?」

 

「私は巷では『憎しみの女王』って呼ばれているみたいね」

 

 巷って何処だよ。そして仰々しい名前だな?

 

「私は……『絶望の騎士』と呼ばれているわ』

 

 だから誰が呼んでるんだよ。名前無駄に格好いいな?

 

「んで、先輩はたしか……なんだっけ?」

 

「……先輩は『貪欲の王』と呼ばれているらしいわ。この世のありとあらゆる欲望を飲み込んだから」

 

 貪欲の……王?

 

 男の魔法少女なのか???

 

「その、先輩って男なのか?」

 

「いや、先輩は一応女の子よっ! 男勝りではあったけど……」

 

「ええ。一緒に戦っていた時はとても頼りになる人だったわ」

 

 二人は顔を見合わせてそんな話をする。何故か私はその先輩とやらに親近感が湧いてしまった。私もよく生まれる性別間違えてんだろとか言われたな……

 

 まあいい、とっとと行くか。

 

「行ってくるよ」

 

「あ、待って待って!」

 

「ん?」

 

 私が魔法陣に乗ろうとすると、『憎しみの女王』が私を呼び止めた。いざ呼ぼうとすると見た目と名前が全然一致してないように思えるな。

 

「行く前に……貴女に加護を」

 

 『絶望の騎士』が私に手を向ける。すると青いベールが私を包んだ。

 

 これは、もしかして【加護】のスキルか? この前スキルを試した時に全く同じ現象が起きたのを覚えている。

 

「私からもっ!」

 

 『憎しみの女王』は私に向けて投げキッスをしてきた。いやいや、私は同性愛者じゃないし歳下趣味でもないぞ!?

 

 ……ん? なんか状態欄に『愛』ってのが追加されてる。何々……一度だけHPとMPを全て回復できる? 何これ凄い。発動する時はスキルを発動するみたいに『愛』と唱えれば良いのか。これもありがたいな。低い防御面が多少マシになっただろう。

 

「感謝しなさいよ!」

 

「ああ……ありがとう」

 

 『憎しみの女王』はウィンクしながら微笑んで私を見守っている。ピースサインについてはスルーしよう。しっかし、なんでこんな良い子が憎しみなんてネガティブなワードが名前に入ってるんだろうか……ああ、アレに変身するからか。それにしても妙だが……気にしてもなんだか無駄な気がする。

 

「……武運を祈るわ」

 

 『絶望の騎士』は胸の前で手を組んで目を閉じたままだ。もし、私が死んだら前みたいに恐ろしい姿になるのだろうか……

 

「……貴女は死なないって、私は信じてる」

 

「ああ、行ってくる」

 

 うん、絶対に死ねないな。もし死んだらまたこの子泣いちゃうな。見てよこの表情。裏切ったら貴女を殺したて私も死ぬみたいな顔してるよ。

 

 私は魔法陣の上に乗り、何処かに転移して行った。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 転移した先は黄金で壁も床も天井も黄金で出来ているかのような空間だった。幅は精々三メートルくらいの通路が右と左と前方に続いている。

 

 そして……前方に琥珀色模様がある黄金の宝石の中に二人が話していたのであろう『先輩』が眠っていた。この宝石は卵のような形をしていて女の子一人を閉じ込めている程度に大きい。

 

 逆立った白い髪に褐色の肌、着ている服は閉じ込めている宝石と同じ模様をしているスリットの入ったデザインで動きやすそうな印象を受ける。背丈は私と殆ど変わらないくらいの少女だ。

 

 いや、これデザインした奴と私の装備のデザインした奴絶対同一人物だろ。この少女の服と言い私の装備と言い太ももが強調され過ぎだろ。太ももが見たい言う強い意志をひしひしと感じるんだが……そう言えば学生時代に似た変態に会った気がするな。なんか太もも以外の部位に興味は一切ないのか断言してたっけ……

 

 いや、今はそんなことどうでもいいな。重要なことじゃねー。

 

 その少女と宝石に私は近づいた。近くで見ると凄い綺麗なんだよな。しかし、どうも嫌な予感はするな……

 

 私が一歩足を踏み入れたその時。私の感じた嫌な予感が確かであったことが分かった。

 

 

 ……少女が閉じ込められている黄金が突如蠢き出した。

 

「っ」

 

 動き出したそれは穴を作り出した。その穴はまるで醜悪な化け物の口のように見え、中からは少女……の、首だけが飛び出していた。少女の顔はつい先程までの穏やかな笑みの表情とは異なり、眼から得体の知れない黒い液体を溢しながら正気の枷が外れたとしか思えない気味の悪い笑顔を浮かべている。

 

 うん。

 

 これ考えた奴と言い、デザイナーが悪趣味だわ。

 

 綺麗な宝石から醜い化け物と言う変身を遂げたそいつは私に襲いかかる!

 

「だよな畜生!」

 

 この空間……ダンジョンにしては迷路っぽいなと思っていたらそう言うことか!?

 

 今回はダンジョン攻略でもボス討伐でもなく鬼ごっこか……いや、でもあいつはHPバーがある。倒すことは可能か。

 

 なら……弱音吐いてる暇はないよな?

 

 やったらぁ!

 






Q.なんで魔法少女二人このタイミングで出てきた?
A.素の憎しみちゃん出てきて欲しい幻聴が聞こえたから。

それにほら、あれだよ。倒したボスが味方として登場とかテンション上がるやん?

ちなみに私は某満月の女王さんを倒した後何事もなかったかのように復活してるのを見てビビり散らかしました。
そうだね!あいつ自身はデミゴッドじゃないもんね!と言うかあいつが抱いてるやつ貪欲ちゃんの卵にちょっと似てるね!


『憎しみの女王』
変身前は良い子なんだよ! 管理面だと変身前も糞とか言ってはいけない。
作者の中ではちょいアホの子なイメージがある。

『絶望の騎士』
美女なのに顔の半分が絶望に覆われてる騎士さん。人類の味方。
作者の中では微かにだがヤンデレの素質がある気がしている。

『貪欲の王』
作者の大好物(そしてプロムンの性癖の一つである)強い女系魔法少女。
脱走すると後方から良くお尻をチクチクされている。
変な意味に捉えた方は怒らないので後で『何でも変えて差し上げます』の収容室に来なさい。


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ぶっちゃけどのお方の登場を期待している?内容によって色々考慮します。

  • 白夜
  • 終末鳥
  • 赤い霧
  • 調律者
  • 蒼星様
  • 盲愛様
  • 黒い沈黙
  • ドンファン
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