嫌々ながら魔法少女になりました   作:紙吹雪

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テッテテテテテ、テテテテテ!

頭がパーン!




魔法少女と欲望の王 2/3

 

「アハハハッ!!」

 

「うおっ!?」

 

 少女の首は思わず身体が硬直しそうになりそうな気持ち悪い笑い声を響かせながら直進して来た。迫り来る化け物の大きく開かれた口を何とか避けて横道に入ることができたが、もしあれに食べられたらと考えると恐ろし過ぎるぞ!

 

 化け物の身体はデカイ。この通路の広さだとすれ違うことは許されないだろう。天井の高さも化け物の大きさにジャストフィットしてやがる。横から見たらまるで魚のような姿をしていることが分かった。

 

 もし、奴と逃げ場の無い袋小路で出会ったら……思わず身震いしてしまうな。速度自体はそこまでではないようだが、脅威であることには変わりない。

 

 あんなの喰われたら絶対に死ぬ。例え加護があったとしてもだ。ダメージが半分になっても私の貧弱な防御力じゃ耐えるのは無理だろう。

 

 防御極振りのメイプルなら平気なのかもしれんが……いや、そもそもあの子は最近どちらかと言うと食べる側になったんだよな。

 

 化け物は私を追って曲がってくると思われたが、そのまま直進すると化け物の前に黄金色に輝く魔法陣が現れた。化け物は魔法陣にそのまま突っ込むと化け物の身体はそのまま魔法陣の中にへと消えて行った。

 

「これは、一体……」

 

 これで終わりなんて筈もないし、何をすればいいのやら……

 

 

 

「アハハハッ!」

 

 

 

「っ!」

 

 あの少女の笑い声が遠くから響いた。正確な場所までは分からないが……あの魔法陣は転移の魔法陣らしいな。よく床に置かれているやつはシステム的な面が強いが、この化け物が使う魔法陣は中々格好良い……もとい、厄介だな。是非とも私も使いたい……じゃなくて、対策しなければ。

 

 とにかく、じっとしていたらいつかあいつに喰われる未来しか見えない。早めに行動を起こさなければならないな。

 

「まずは、この迷路から脱出したいところだが……」

 

 でも、出口が無い可能性だってあるんだよな……そもそもの目的もあの絶賛黒歴史生産中の先輩(仮)を倒すことなんだし。一応HPバーは確認できたし倒すこと自体は可能な筈だ。

 

 奴と戦うにしてもまずは戦略を練らなければならない。あの化け物と真正面から戦うのはあまりにも無謀だ。

 

 逃げながら考えるしかない……か。

 

 私は小走りで通路を駆け抜けながら先程の化け物について考える。

 

 そう言えば、奴は私のことは見えているようだったが追って来なかったな……もしかすると直進しかできないのかもしれない。油断は出来ないがもしそうだとしたら背後に回ることができれば攻撃のチャンスかもしれないな。狙ってみるとするか。

 

 幸いにも、奴の居場所は聞き耳を立てれば大体判断している。どうやら常にあの気分が害されそうな笑い声を上げているようだからな。ただ、奴には転移能力がある。遠くにいると思っていたら目の前にいた、なんてことにならないようにしなければならないな。

 

 ……いや、よく考えなくても防ぎようがないなその事態は?

 

 私がそう考えた矢先、私の目の前の壁に魔法陣が出現した。おま、早速かよ!

 

 だがしかし、私も馬鹿ではない。一応横道とかがある通路を選んではいる為奴をやり過ごすのはそこまで難しくはない。

 

 私は落ち着いて横道に入って化け物をやり過ごすことができた。最初見た時は近づいても何もして来なかったがもしかしたらあの首から上だけになった少女が何か攻撃してくるかもしれないし、一応離れておくか。

 

 先程と言い……やはりこいつは思っていた通り直進しかできないようだ。そして壁際まで行くと転移を行う。転移する場所は恐らくランダム……ずっと私の近くに転移するなら先程遠くから笑い声が聞こえる筈がない。今だって遠くから聞こえている。正直耳障りとまで思える声だが。それでも位置を何となくでも把握できるのはありがたい。転移中は聞こえなくなるから転移するタイミングも分かる。

 

 中々面倒な相手だがどうにかなるか? 迷路の出口があるなら見つけておきたいところだな。

 

 よし、また移動を始めようか。どうやらこの横道は奥行きこそあるものの行き止まりのようだし、早目に状況を打破しないとな——

 

 おっと、笑い声が途絶えた。転移したようだな。さて今度は何処に……ん?

 

 ……目の前に、黄金に輝く魔法陣が見せつけるかのように出現していた。

 

「不味っ——」

 

 私が急いで魔法陣の横側に抜け出そうとしたが、その前に化け物が逃げ道を塞いでしまった。

 

「……嘘だろ」

 

 くそっ、念の為にと離れていたのが仇になったか!

 

「アハハハッ!!」

 

「ええい、耳に悪いんだよしばらく黙れこのっ! 【アルカナビート】!」

 

 反省を後にして素早く攻撃に移る。魔法陣による叩きつけによってHP自体は減ったものの化け物の速度は一切変わらない。不味いな……ここはもう、立ち向かうしかないか。

 

「【フレアアクセル】!」

 

 まずは壁側まで後進する。不幸中の幸いと言うべきか、行き当たりまでそこそこ距離がある。これなら、多分だが間に合う。

 

 ……目にもの見せてやる!

 

「正義よりも碧き者よ、 愛よりも紅き者よ!

 運命の飲み込まれし その名の下に……」

 

 

 詠唱を始める。噛まないように慎重に、かつなるべく早く。実は使えるようになった最初期は噛んでいたが今は大丈夫だ。自分を信じろ。

 

 

「我、ここで光に誓う!」

 

 

 化け物が少女の狂笑と共に私に迫る。ずるずるゆっくりと、だが私にとってはその速さですら焦るほどだ。

 

 

「我が眼前に立ちはだかる 憎悪すべき存在達に

 我とそなたの力をもって、 偉大な愛の力をみせしめん事を!」

 

 

 もはや私に少女の首が届きそうな位置にまで接近された。接近されたが……

 

 

 時間切れだ。

 

 

「【アルカナスレイブ】!!」

 

 

 光の奔流が化け物を覆い尽くした——!!

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 ……光が収まった後に残っていたのは、最初に見た黄金の宝石とその中で眠る少女だ。

 

 それに、何故か壁と天井が消え去ってだだっ広い空間に私は居た。

 

 倒せた、のだろうか。うん、やっぱり【アルカナスレイブ】強いわ。燃費は悪いけどそれに見合う威力だ。

 

 しかし、この後はどうすれば良いのだろうか……戻る魔法陣は見つからないし、このままだともう強制的にログアウトするくらいしかこの空間から脱出する方法がない。

 

 私が悩んでいると、再び黄金の宝石が動きだした。

 

「まさかまた……!?」

 

 またあの化け物と戦いたくない……と言うか目撃したくないのにと思わず愚痴を溢しそうになったが、その不安が杞憂で終わったことを悟った。

 

 宝石が砕け光が迸る。咄嗟に手で遮ってしまう程の眩い輝きが収まると、そこに居たのは勝気そうな笑みを浮かべた少女だった。どうやらマトモに目覚めたようだ。

 

 背は私と同じくらいだろうか。結構小さいな……

 

「お前か、暴走した私を鎮めてくれたのは。感謝する」

 

「……おう、中々疲れたぞ」

 

 肉体的にではなく、どちらかと言うと精神的に。少女は想像よりも大人びた……いや、この場合は私っぽいと言った方が近いか? 結構荒々しい喋り方だ。何だか気の合いそうな奴だな。さっきの頭だけの姿を思い出すと気持ち悪いけど。

 

「これは礼だ、受け取れ」

 

 少女の前に金色の菱形の立方体が出現した。これが報酬なのか? 取り敢えず触れてみる。

 

『スキル【黄金狂】を取得しました』

『スキル【貪欲】を取得しました』

 

 ふむ、新しいスキルか。取り敢えず確認してみよう。

 

 

【黄金狂】

INTとSTRの数値を置き換える。二分間DEXが半分になる。

使用可能回数は一日三回。

 

 

【貪欲】

ダメージを与える度に追加ダメージを与えてHPが回復するようになる。(この効果は相手にも適用される)

このスキルの使用後、30秒間他のスキルの使用不可。

持続時間は一時間。使用可能回数は一日一回。

 

 

 お、おお……前者が私の好みのスキルすぎる。私が魔法使いで始めたおいてなんだけど前衛になりたかったのだ。これで武器があればいつでも前衛をできるな。

 

 後者はデメリットが中々キツいが面白いスキルだな。たしか第二回イベントのメダルスキルに【追刃】ってのがあったが、それの相互互換みたいなスキルだな。でも、使用後他のスキルがしばらく使えないのはキツイな……まあ、それ抜きにしてもそこまで悪くはないスキルではあると思う。追加のダメージと回復量がどれくらいなのか分からないが。

 

 スキルの内容を確認した私は一先ず礼を言う。ぶっちゃけ、早く【黄金狂】を試したい。

 

「ありがとな」

 

「良いってことよ! ああ、そうだそうだ。この魔法陣に乗ればいつでも帰れるぞ」

 

 少女の背後にはたしかに魔法陣が置かれている。これで終わりか……得るものはあったし、満足かな。あの転移できる魔法陣出し方教えて欲しかったけど。

 

 私が魔法陣の方は歩こうとすると、少女に呼び止められた。

 

「あ、ちょっと待ってくれ!」

 

「ん? なんだ?」

 

「……実は、私はこの状態で動くのが久し振りなんだよ」

 

 ……それがどうしたんだ?

 

「だから、少しリハビリに付き合ってくれないか? 無理にとは言わないが」

 

「……ほう、面白い」

 

 丁度今手に入れたスキルを試したかったのだ。それに、付き合ってやったら何かくれるかもしれないし。今日はまだ時間もあるから付き合ってやろうじゃないか。

 

「良いだろう」

 

 私がその要望を承諾すると、少女はニヒルな笑みを浮かべた。

 

「ふ、いい返事だ」

 

「……お前とは中々気が合いそうだな」

 

「奇遇だな、私もだ」

 

 こう言う奴とリアルで出会いたかったな……思えばライバルみたいな相手、昔も今も私には居ないな。

 

 エリーはまあ今の仕事始めてからの腐れ縁だし、メイプル達は仲間だし……

 

 心が踊る感覚とは今みたいな状態なのだろうか。ふふふ……まるでちょっと昔に戻ったみたいだ。

 

「【黄金狂】!」

 

 MPも尽きてることだし、私は早速手に入れたスキルを使う。MP回復ポーションを使ってもいいが折角だしな。武器は……取り敢えず『鋭利な涙の剣』を使おう。これくらいの刃物ならなんとか扱えると思う。

 

 懐かしい……中学上がって高校卒業するまで、思えば喧嘩三昧だったな……別に好きでやっていた訳じゃない。周りの奴らから生徒や身内を守る為にずっと喧嘩の日々だった。

 

 でも、ただ腕試しの為に喧嘩したことは一度たりとも無かったな。

 

「準備はできたか? それでは……行くぞ!」

 

 

「……来いっ!」

 

 

 私の精神テンションは今、あの頃と同じ……学生時代に戻っているっ!

 

 さあ、喧嘩の時間だ!

 






元のだと先に通常時→貪欲の王なので順番が逆なんですが、たまにはね?
通常時の見た目とかセリフが好き(本音)。

【貪欲】にスキル使用不可タイムがあるのは例のやべーやつが簡単に発動できないようにする為の対策です。
【絶望】の『パーティメンバーが死亡した場合のみ発動できる』も同様ですね。


(そういやクエスト受注の形取ってないなぉ……まあいいか、クエストじゃない扱いってことで何とかしよう)

Next. < さぁ、真っ向勝負だ。防いでみろ!

ぶっちゃけどのお方の登場を期待している?内容によって色々考慮します。

  • 白夜
  • 終末鳥
  • 赤い霧
  • 調律者
  • 蒼星様
  • 盲愛様
  • 黒い沈黙
  • ドンファン
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