嫌々ながら魔法少女になりました   作:紙吹雪

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フィジカル強い系魔法少女……スキッ(五郎丸)

後半は三人称です。
防振り原作が三人称なのになんで普段一人称で書いているのかと言うと単に苦手だからです。




魔法少女と救援

 

 カナデと別れてから、私はお世辞にも明るいとは言えない夜道を駆けて比較的時間をかけず中規模ギルドの拠点を発見した。明かりの無い夜道を走るのはちょっと怪盗みたいでわくわくした。

 

 物陰から見つけた拠点をこっそりと覗く。ふむ、精々二十人程度みたいだし最初の獲物はここのギルドにするか。当然夜襲を警戒して何人か辺りを哨戒しているが、この程度なら問題ないだろう。

 

 ……何だろうな、この高揚感は。今まで仕掛けられてばかりの人生だったからか、こちらから不意打ちを行うのは中々どうして初めてだ。

 

 よし、本気で蹂躙してやろう。今日は気分も良いし全力の機動をしたら邪魔に思えるローブは脱いでおく。魔法少女のコスプレは未だにちょっと恥ずかしいけど……まあ、イベントの時くらいは良いだろう。なんかクロムが私のファン達が中々私の姿を見れなくて発狂寸前で抑えるのが大変とかなんとか言ってた気がするし。

 

 それに、私は第一回イベントの時とはかなり成長したからな。あの時と同じだと思ってくれた方が寧ろ好都合だ。相手が油断してくれているのと警戒されているのでは雲泥の差があるからな。人数差の不利は慣れているが、少しでも負担が小さくなってくれるとありがたい。

 

 魔法職だからと言って近接戦闘が苦手と思ったか? なんてな。

 

 御託は良い。とっとと突っ込もう。

 

「【黄金狂】……」

 

 その前に、このスキルだけは使っておこうか。武器は黄金の籠手を装備しておく。そういや対人でアレを使うのは初めてだな。

 

「て、敵襲! あ、相手は……アアァ!?」

 

「おいどうした何があった!?」

 

「相手は愛しのソラノちゃんです!」

 

 やめろ! 背中がぞわぞわするんだよその言い方! 私は成人してるって言ってんだろうが! 「愛し」つてつけるなこの変態が! なんならそろそろ三十路だこのボケナスが!

 

「何!? 我等がエンジェルと戦う……ってコト!?」

 

「ワァ……!」

 

 だからなんだってんだよコイツらは……まあいい。もう轢き潰してやる!

 

「【黄金の道】!」

 

「な、なんだこの魔法陣は!?」

 

 この【黄金の道】。最大100%までSTRとAGIを伸ばせる上に短距離転移までできる超優秀スキルだが一つ問題がある。魔法陣から魔法陣へと転移できる訳だが、どれがどの魔法陣に繋がっているのかは私にも分からないのだ。だが、それならそれでやり方はある。

 

「さあ、行くぞ!」

 

 私は魔法陣に向かい突進する。何処に転移するか分からなかろうが、真っ直ぐ行ってぶっ飛ばすだけなら誰だって簡単だよな?

 

「ぐはぁ!」

 

「ごはぁ!」

 

「ごぼぉ!」

 

 そうやってひたすら目に映る相手をひたすら籠手で殴っていたらいつの間にか誰もいなくなっていた。殆ど一発で沈んだな……

 

 うーむ、もう全滅したのか……なんだか呆気ないな。不謹慎ながらもう少し耐えてくれても良かったのにと思ってしまう。

 

「っと、オーブオーブ」

 

 忘れずにオーブを回収して、次の獲物を探しに行く。出来れば【黄金の道】のステ上昇を保ったまま戦闘したいな。上昇量的に考えると勿体無いからな。ここは移動を素早く行おう。

 

「【超加速】!」

 

 おお、早い早い。流石はAGI上げてるプレイヤー御用達なスキルだ。下手打つと転びそうな速さだがなんとか制御して足を動かす。本当はこれよりも速くなる方法はあるんだが、あれは如何せん使い辛い。デメリットも重いし効果時間も短いしな。

 

 無心に足を動かし続けた甲斐あってか無事に次の獲物を発見できた。よし、この勢いのままやるか!

 

 今度は【ミミクリー】で全員薙ぎ払うことにした。この武器、結構お気に入りなんだよな。エフェクトが赤くなるのは格好良いし、使い勝手も良い。見た目がちょっと怖いのはマイナスだが、その程度なら受け入れられる。慣れると格好良いと思う。

 

 さあ、ありったけの力を込めて……行くぞっ!

 

 

「せいやぁぁぁぁ!!」

 

「「「ぐわあぁぁぁぁ!!?」」」

 

 うおっ、ほぼ不意打ちみたいな形で剣を思い切り振り払った所為かたった一振りで全員殺してしまったぞ。マジか……

 

 うん、やばいな【黄金の道】。【ミミクリー】が強いのもあるが実質STRとAGI二倍はやはり凄まじいな。ユイとマイがSTRが二倍になるスキルを持っているからちょっと感覚が麻痺してたかもしれない。二倍って、凄い。

 

 これからはもう少し使い所を見極めるか……一日三回だもんな。使用可能回数に気を払わないと。いざと言う時に使えないんじゃ笑い話にもならん。ちょっと反省しよう。

 

 でも、そんなスキルを使っただけあっていいペースだな。この調子でオーブ集めを継続しよう。

 

 そうだ、サリーの位置をマップで確認しよう。本来の目的はサリーの負担を減らすことだしな。

 

「ふむ……」

 

 うん、相変わらず動き回ってるみたいだ。若干速度が落ちた気もするな……やはり疲れが溜まって来ているかもしれないな。

 

 ……念の為、一応すぐに駆け付けられる程度の距離を保っておくか。いざと言う時に助けに来られないのは……間に合わなかったりするのは嫌だしな。私の心配が取り越し苦労なのが一番なんだが。

 

 よし、次は【鋭利な涙の剣】で行ってみるか。

 

 私はオーブを回収した後武器を持ち替えてから次の拠点を探しに行った。できれば今度はもう少し保ってくれると嬉しいのだが……!

 

 

 

 

「……ん?」

 

 思いがけ無く、強い光が私の瞼に降りかかる。手で遮りながら光の方向を向くと太陽が少しだけ顔を覗かせていた。VR空間とは言え朝日はとても眩しい。

 

 もうそんな時間か……夜が明けるのは早いな。

 

 あれからずっと見かけたギルドを片っ端から殲滅していた。手に入れたオーブは……ええと、全部で15個だ。これだけあれば十分だろう。一度帰るとするかな。

 

 そう言えばサリーの位置は……いけねっ、結構離れてるな。オーブの奪取にちょっと熱中し過ぎたかもしれない。でもまあギルドメンバー内では私が一番近くはあるが……

 

「……ん?」

 

 メッセージが来た。差出人は……サリーだと?

 

 少々嫌な予感を感じながら私はメッセージを開く。

 

 

『多分死ぬ。ごめん』

 

 

「【超加速】!」

 

 メッセージを読み終えた私は、考えるよりも先にサリーの居る場所へと駆け出していた。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 サリーの周囲には、何十人もの【集う聖剣】のメンバーが取り囲んでいる。その集団を指揮しているのはフレデリカだ。

 

 フレデリカは偵察部隊の報告で聞いたプレイヤーからオーブを横取りする為にやって来ていた。

 

 しかし何度も攻撃を加えてはいるのだがサリーは奮戦して未だに仕留められてはいない。が、サリーの顔には疲労の色が濃く見られている。そんな中【集う聖剣】の増援も来た為、悪足掻きを続けるのも時間の問題だろう。

 

「——ふふん、上手く騙してくれたもんだねぇ。実在しないスキルをあるように見せかけるなんて」

 

「くっ……」

 

 サリーはもはやこれまでと察して悔しそうな表情をしていた。

 

「でも、これだけの人数と戦う力は残ってないでしょ?」

 

 そう言いつつサリーに迫る【集う聖剣】のメンバー達。その数は増援を加えて数え切れない程の人数だった。

 

 

 

「——ったく、私が来たから良かったものの……無茶し過ぎだ、この馬鹿者め」

 

 

 

「ぐわっ!?」

 

 サリーを取り囲む集団に一人、侵入者が現れた。

 

 おお、見よ。ニチアサめいた魔法少女装備を着込んだ子供体型な少女を。彼女は跳躍してサリーの近くにまで一瞬で辿り着いた。何故か上がった悲鳴は踏み台にされた哀れなプレイヤーのものだ。

 

 

 第一回イベントにてたった一つのスキルでプレイヤー達を殲滅し、その特徴的な装備で一定数のファンをも確保している少女の名はソラノ!

 

 見た目にそぐわず、27歳独身!

 

 

「まさかソラノが助けに来るなんて……」

 

 フレデリカはぶつぶつと呟いているがまだ自分達が優位だと言う確信は捨てていなかった。

 

 ソラノは地面に膝を付くサリーの頭をワシャワシャと力強く撫で回した。

 

「……サリーはもうちょっと周りを頼れ。私はお前の目から見たらそんなに頼りないか?」

 

 ソラノはぶっきらぼうな表情のままで、まるで怒っていそうな顔をしていた。

 

 ソラノの見た目は下手すれば中学生だと勘違いされそうな背丈に幼い女の子が大好きな番組に出演していそうな服装だが、彼女の性格は同じギルドに所属しているサリーはよく理解していたし強さも知っていた。

 

 だから、サリーにはソラノが自分を心から心配していることが分かった。

 

「そんなこと、ないです」

 

「だろ? 今は休んでろ。後は私が何とかする」

 

 ニカッと勝ち気に笑いながらそう言うソラノの左手には黄金色の籠手が嵌められていた。ソラノの手のサイズからしても巨大なそれは、存在感を放ってその場にいるプレイヤー達の視線を集めた。

 

「あの、その籠手は……」

 

「格好良いだろ?」

 

「……はは」

 

 サリーは思った。この人も、割とメイプルみたいなところがあるんだなと。

 

「それじゃあ……君を連れ帰るのは我等がギルドマスターに任せるとするか」

 

 何故か上を見ながらそう話すソラノにサリーは不思議に思ったが、その謎はすぐに解けることになる……

 

 

「サリー!」

 

 

 何故なら、自分の親友が空から現れたからだ。

 

 ……本当に何故空から!?

 

「メイプル!?」

 

「げぇ、メイプル!? 魔法攻撃!」

 

 フレデリカが驚いて指示を出すが、メイプルのテイムモンスターであるシロップの【城壁】によって遮られた。地面を盛り上げて壁を作り出すスキルである。

 

 なお、ソラノは素で避けていた。

 

「メイプル。サリー頼む。ここは私に任せて先に拠点に戻っていろ」

 

「分かった! でも、平気?」

 

「何……ほら、アレだ」

 

 ソラノは何かを思い出した表情になって続ける。

 

「『別に倒してしまっても構わんのだろう?』だ」

 

「いや、それフラグ」

 

「うん、じゃ任せるね! サリー、私にしっかり捕まって!」

 

「あ、うん……」

 

 サリーは少し不安になったが、ソラノを信じてメイプルと共に飛び去った。

 

 なお、メイプルは全身に機械を身に付けていた。

 

 一先ず、メイプルをこのメンバーでは仕留めるのは難しいと判断したフレデリカはメイプルとサリーを見逃して今はソラノを狙うことにする。メイプルの機械武装は一旦忘れることにした。何アレ怖い。

 

「で、ソラノちゃん。君は……」

 

「ちゃん付けするなポニーテール引きちぎるぞ」

 

「え、こわ……」

 

 ファンシーな見た目に反して荒々しい物言いをする少女。フレデリカは思えば情報収集で出会った時にはあまりソラノについては調べていないなと思い返していた。まさか、こんな子だったとは……

 

「あー……そう言やオーブ、メイプルに渡しそびれたなぁ」

 

 そう言いつつ、ソラノはわざとらしそうに集めたオーブをその場の全員に見えるように見せつけた。その数はかなり多くフレデリカとしても見逃せなかった。

 

 しかし……あのクソでかい籠手は何だろうか?

 

 気になるフレデリカであったが、数で攻めれば関係ないかとそのまま押し切ることにした。

 

「へ〜……サリーちゃんを逃しちゃったのは痛いと思ったけど、もしかしたら更に拾い物をしたかもしれないね」

 

「……」

 

「それじゃ、遠慮なく……魔法攻撃!」

 

 

 フレデリカは知らない。ソラノが……彼女が第一回イベントと比べると、メイプルに次いで様変わりした者であることに。

 

 

「……【黄金の道】」

 

 

「え、何!?」

 

 そこらかしこに出現した魔法陣。獲物を見つめる狩人のような狂気じみた目をするソラノを見て、フレデリカは一瞬「自分達が狩られるのでは」と言う錯覚を覚えた。

 

「……行くぞ!」

 

 そこから阿鼻叫喚の地獄だった。

 

 魔法陣から魔法陣へとソラノが現れて嵌めた籠手でぶん殴られて吹っ飛ばされて行く【集う聖剣】のメンバー達。

 

 ソラノに攻撃を当てようにも段々と素早くなって行く為に攻撃がすり抜けて行く。

 

「た、【多重障壁】!」

 

 フレデリカは自力で何とか耐えたが、メンバーの大半はまともに喰らっていた。

 

 魔法陣が全て消える頃には、その場に残っている人数はほぼ半分になっていた。

 

「やっと終わったか……なら、今度はこっちの番……」

 

 そう思ったフレデリカだが、ソラノの様子を見て顔色を変えた。

 

 

「ふふ、ふはは……はーはっはっはァ!!」

 

 

 歓喜の声を上げながら満面の表情で笑うソラノの姿は、何処か狂気を帯びていた。

 

「耐えた! 耐えてくれたぁ! はは、いいじゃねぇか……脆い奴らばかりじゃないようだな。ならばこそ、壊し甲斐のあるってもんだ!」

 

 ソラノは黄金の籠手を仕舞い、どこか不気味な赤い大剣を取り出して構えた。

 

「さあ……第二ラウンドだ!」

 

「(……不味い不味いっ!?)」

 

 フレデリカは悟った。目の前の存在は、下手をしたらペインに迫る程に厄介なプレイヤーだと。

 

「全員撤退——」

 

「逃すわけないだろ?」

 

 急いで撤退指示を出そうとしたが、どうやら遅きに失したようだった。

 

 

 赤い大剣が振るわれる度に赤いダメージエフェクトが飛び交う。

 

 中には何とか反撃しようとした者もいるが、攻撃を無視して突進されて散る。

 

 それが繰り返されれば何とか倒せるかと思われたが、何故か何度攻撃してもソラノが倒れる気配は全く見られなかった。

 

 ソラノはスキルすら一切使わずに次々と敵を仕留めて行く。赤いダメージエフェクトと死亡エフェクトが周辺を覆い尽くす。

 

「(……急いで連絡をっ!)」

 

 もはやこの場は完全敗北しかないと確信したフレデリカはドレッドにメールを送った。今なら【楓の木】の拠点にメイプルはいないと。せめて、拠点にあるオーブだけでも奪って一矢報いて欲しいと。

 

 メールを送り終えたフレデリカが辺りを見渡すと……

 

 

 

 

 誰もいなくなっていた。ソラノを除いて。

 

 僅かに見えるのは何故か赤いダメージエフェクトの残滓。

 

 それらはまるで、赤い霧だ。

 

「……本当に全滅した」

 

「有言実行するのは慣れているものでな」

 

 事なげなくそう言うソラノ。フレデリカは今までこいつはどんな人生送ってたんだよと思った。

 

「さて、お前で最後だ。何か言い残すことはあるか?」

 

 赤い大剣を振り上げながら、ソラノはフレデリカにそう呼びかける。

 

「ふふ……拠点、大丈夫?」

 

「何が言いたい?」

 

「今、【楓の木】の拠点にドレッドが向かったよ。メイプルがいないんじゃ拠点のオーブを奪われちゃっても知らないよ?」

 

「お前馬鹿か?」

 

「えっ」

 

 まさかノータイムでディスられると思っていなかったフレデリカは思わず困惑した。何故自分は何の前振りもなく唐突に馬鹿って言われたのだろうか。

 

 ソラノは大剣を振り下ろしながらフレデリカに言い放った。

 

 

「忘れたのか? 拠点は平気だよ。お前もよく知ってるだろう私の『友人』がいるからな」

 






サリーはやっぱりヒロイン。

フラグ建築士なら拙作には代わりが【炎帝の国】にいるので……

次回の更新は一度お休みします。
そろそろ遊戯王の方の更新も再開する予定なので、もしかしたら更新頻度が変更するかもしれません。
二期の分くらいまで書き切りたい(願望)。


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ぶっちゃけどのお方の登場を期待している?内容によって色々考慮します。

  • 白夜
  • 終末鳥
  • 赤い霧
  • 調律者
  • 蒼星様
  • 盲愛様
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