嫌々ながら魔法少女になりました   作:紙吹雪

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前回のあらすじ
初めての羞恥プレイ。


魔法少女と試し撃ち

 

 入ってきた大盾を背負ったプレイヤーと目が合った。

 

 

 

 

 

 見ら、れた?

 

 

 

 

 

「……ミィタァナアアァァァァ!!」

 

 私は目の前の悪人を成敗しようと即座に杖を構える。この場でスキルの試し撃ちしてやらぁ!

 

「ちょ、ごめんごめん悪かったよ! この通りだ!」

 

 大盾を背負った男は頭を下げた。が、そんなもんじゃ許せはしない。

 

「クーロームー?」

 

「ちょ、今回は不可抗力だろ!?」

 

 兎にも角にも私の今の姿を盗み見た奴を始末なきゃならない。それだけは分かる。そうしなくちゃ気が済まない!

 

「イズ、どいて。そいつ殺せない!」

 

「落ち着いてソラノ。今垢BANの用意をしてるから……」

 

「それならまあ……」

 

「マジで待ってくれ! あとそれで納得するのかよ!」

 

「うふふ、冗談よ。ソラノもそうでしょう?」

 

「え……? あ、ああ。そうだな」

 

「絶対本気だったろ……」

 

 本気だったが?

 

 

 

 ちょっとだけ落ち着いた私はイズのくれたローブを被ってお店の椅子に座っている。大盾を背負った男クロムはイズと向かい合って話している。

 

「全く、間の悪いわねクロム」

 

「悪かったな……それでその、さっき俺が見た光景について……」

 

「蒸し返すな握り潰すぞ」

 

 私はギロリと視線をクロムに向ける。

 

「怖っ!?」

 

 あー……ゴミのような気持ちってこんな感じなのだろうか……もうやだログアウトしてゆっくり寝たい……

 

「ああぁぁぁ……」

 

「ソラノ、机に突っ伏してると跡が……って、ゲームだから付かないか」

 

「ん? そう言えばイズが呼び捨てで呼ぶのは珍しいような……」

 

「ええ、詳しくは言わないけどソラノって私より歳上みたいだから」

 

「マジで!?」

 

 クロムは驚いた様子で私の方を見た。まあ、その手の対応にはもう慣れてる。最初はイズもそんな反応だったな。

 

「まあな。お前も私を呼ぶ時はちゃん付けはやめろよ……はぁ、男の人に見られた……もうおしまいだぁ……」

 

「す、すまん……すぐ忘れるから」

 

 はぁ……見られたものは仕方ない、か。溢れたミルクは戻せないのと同じで見た記憶を消す事はできない。出来るだけ口止めはしておくか。

 

「忘れろとか無茶は言わん。だから絶対にさっきの事は他人に告げるなよ。掲示板なんかに書き込むのもダメだからな? もしそんな事したら首を刎ねてやるからな」

 

「も、勿論だ」

 

 ……まあ、悪い奴じゃあなさそうだし口止めしていれば秘密を漏らす事は無いだろう。

 

「クロムー、それだけだとまだ足りないんじゃないかしら。責任取って何かしてあげたら?」

 

「お、おう。そうだな……今日は暇だし何か手伝って欲しい事があれば聞くぜ」

 

「え? うーん、そうだなぁ……」

 

 クロムのその言葉に私は考える。別に秘密にしてくれるなら他に何も望む事はないんだけどなぁ……

 

 何か手助けがいるような事……今日はこれからスキルの試し撃ちをする予定だったから、それを手伝って貰うかな。下手に断っても事が丸く収まらない。折角手伝ってくれるって言ってくれてるんだから利用しないと勿体無いし。

 

「ねえ。一つ聞くんだけど」

 

「ん、なんだ?」

 

「新しく取得したスキルの的になるのと的を引き付けるの、どっちが好みかな?」

 

「……ぜ、是非とも後者で頼む。いや、後者にしてくれ」

 

「よろしい……じゃあ、行くか」

 

 今はせめてスキルが役に立つものである事を願おうか……説明だと凄く有能だったけど実際に使ってみると使い難いなんて事もあるし。当たり前だけどいざ使うって時に初めて使うスキルがあるのはあまり良くないだろうし。

 

「2人共、いってらっしゃ〜い」

 

「ああ、行ってくる……はぁ……」

 

「反省してるからそう落ち込まないでくれよ……」

 

 無茶言うなよ……

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「さて、と。この辺りでいいかな」

 

 私は周囲に誰もいないのを確認するとローブを脱いだ。正直、ローブを着てるとちょっと動きにくい。

 

 この辺りのエリアならそこまで強いモンスターは出ないし丁度良い。若干数が多いのが懸念点だけど、今日は盾役がいるから問題ないだろう。

 

「それで、俺は何をしたら良いんだ?」

 

「敵を引き付けておいてくれ。その隙に私がスキルを試すから」

 

 私達を視認したモンスターが続々と集まってくる。数は5体くらいか。これなら試し台に丁度良いだろう。

 

「了解。まあ言ってしまえばいつもとやる事は大して変わらない、なっ!」

 

 クロムは私とモンスター達の間に立ち塞がる。

 

 襲い掛かるモンスターの攻撃を彼は大盾でを受け止めて弾き返した。なるほど、イズがクロムは前線プレイヤーの1人だって言ってたのは間違いじゃないらしい。見ていて安定する戦い方だ。

 

「よし、それで良い。先ずは……【星弾】!」

 

 私が杖を振るうと星型の弾が出現してモンスターに無事命中した。

 

「おお、それが試したいスキルか?」

 

「その一つだよ」

 

 命中したモンスターは倒したようだ。経験値が入っている。

 

「結構高威力みたいだな……」

 

 たしかに威力が高いな。ほぼ一撃みたいだったし。私のINTが高いからだろうか。なんとなく察してはいたが、このスキルは魔法扱いらしい。

 

「はいはい、次々!」

 

「はーい……」

 

 モンスターは最初よりも数が増え、既に倒したのも足せば10体くらいになっていた。モンスター達は次々とクロムに群がって行くが、彼は難なく捌いていく。連れて来て正解ではあったな。

 

「よし、次は……【アルカナビート】! おおっ?」

 

 近接攻撃らしいのでモンスターに近付いてそのスキルを使ったら、杖が勝手に浮き上がりモンスターへと向かった。そのままぶつかるのかと思ったが、その直前に杖とモンスターとの間に魔法陣が現れ、モンスターはその魔法陣にぶつかったかのように吹っ飛んだ。

 

 後で思い出した事だが、その魔法陣は大蛇が最後に使っていたのと同じデザインだった。

 

「なるほど……」

 

 杖は私の手に戻ってきた。威力自体は【星弾】よりも高いけど連発するには若干タイムラグがあるかな。それに近距離攻撃だし。

 

「ほーん、魔法少……魔法使いなのに近距離攻撃スキルがあるのはいざという時有り難いんじゃないか?」

 

「……ちょっとダメージ受けてくれない?」

 

「ひっでぇな!?」

 

「ほら、早く早く」

 

「ええ……?」

 

 クロムは渋々モンスターの攻撃をわざと受けてくれた。役に立ってくれて何よりだ。

 

「ジッとしてて……いや、やっぱ動いてくれてもいいよ。【星弾】!」

 

「うおっ!? って、ダメージがない? それどころか……」

 

 今度は星弾を3つ程出してみた。撃ち出した1つはクロムに当たったけど通り抜けて地面に着弾した。反応的に回復したっぽい。味方を無視して相手を攻撃できるのは誤射の危険がなくて思ってたよりも便利だな……

 

「その、星のやつってパーティメンバーに当たると回復するのか?」

 

「ああ。HPとMP、ランダムでどちらかが回復するらしい」

 

 バトルロイヤルはパーティで行うものじゃないって聞いたし、その仕様は今度のイベントでは役に立たないかな。【愛と憎しみの名の下に】効果については今はいいや。パーティメンバーへの回復効果がなくなってもイベントでは全く困らないだろうし、わざと攻撃を外したりダメージを受けたりクロムに「死んでくれ」と頼むのは流石に気が引ける。

 

「っと、いつの間にかすげー集まってきてるな……」

 

 クロムの言葉に辺りを見渡せば、たしかに大量のモンスターが私達に向かって殺到していた。15くらいは居そうだ。この数を一気に相手をするのは骨が折れそうだ。地道に【星弾】でクロムのHPを回復させながらちまちま倒して行ってもいいがそれだとちょっとつまらない。

 

「この数をまともに相手したら一瞬で溶けるな……いや、あの子なら大丈夫か?」

 

「あの子って?」

 

「ちょっと前にフレンド登録した女の子だよ。初期装備だったのに道端でモンスターに集られながら寝てたのに無傷だった子だよ」

 

「ふーん……」

 

 寝落ちでもしたんだろうか。って、クロムでも無理なのを初期装備でやれるのはどう言う事なんだ。あんたトッププレイヤーの1人だろうに。ま、今はそんな事はどうだっていいか。別に重要な事じゃないし。

 

 ふむ……ここはアレを試してみるか。試してみたかったんだよねぇ【アルカナスレイブ】。なんか凄そうだったしちょっぴり楽しみだな。

 

 ……今更だがゆりえの奴が「あんまりレアなスキルやアイテムを他人に見せるな」って言ってたのを思い出しちゃったな。そう言った情報を他人に公開するのは愚行極まりないとか何とか。流石に多少の誇張は入ってるだろうけど一応頭には入れておいた。

 

 うーん……まあクロムなら多分大丈夫か。イズも何も言わなかったし。もし変な事したらしばき回そう。それで万事解決だ。

 

「よし。クロム、私が今から強力なスキル放つからそれまでの間敵を引き付けておいてくれ」

 

「っ、分かった! なるべく早くしてくれると助かる!」

 

「分かった。あと、クロムごと当てるからそのつもりで」

 

「えっ」

 

 さぁて、どんな感じなのだろうかなっと。ふふふ……

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

265名前:名無しの槍使い

なあ、話が変わるんだが今日フィールドでクロム見かけたんよ

しかも隣にメイプルちゃんとはまた違う美少女がいたんだが

 

 

266名前:名無しの魔法使い

クロムてめぇ、裏切り者がぁ!

それはそうとその美少女の情報教えろください

 

 

267名前:名無しの大盾使い

げっ、見られてたのか

 

 

268名前:名無しの大剣使い

おい、ついこの前メイプルちゃんを優しく見守っていこうって言ってた奴が……

 

 

269名前:名無しの大盾使い

いや、誤解だって!

その人とはちょっと色々な事情があってだな

 

 

270名前:名無しの弓使い

詳細kwsk

 

 

271名前:名無しの槍使い

>270

装備はローブ着てたから分からなかった

あの下に何装備してたのかは分からない

歩く速度はクロムとほぼ同じだったからAGIは多分同程度

俺は用事あって見かけた後すぐにログアウトしたからそれ以上のことは分からん

 

 

272名前:名無しの大盾使い

あー、えっと、なんだ

その美少女の事は本人から口止めされててな

 

下手に情報書き込むと俺の首が刎ねられるんだ

 

 

273名前:名無しの大剣使い

その子はハートの女王か何か?

 

 

 





イズさん、年齢いくつやねん……

-追記-
中年とは40〜64くらいの年齢の方を指すらしいですね。調べてちょっとびっくり。


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ぶっちゃけどのお方の登場を期待している?内容によって色々考慮します。

  • 白夜
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  • 調律者
  • 蒼星様
  • 盲愛様
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