一般高育生の日常   作:平田しか勝たん

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スタバの新作が甘すぎたので初投稿です。


龍園翔②

 さて、厨二病ロン毛が動き出してしまった。しかし、今は様子見した方がいいだろう。ホームルームはもうすぐ終わる。

 

 誰も動かなかったのを見てつまらなそうに鼻を鳴らしたロン毛は、放課後に詳しい話をするから、部活動などにも行かず教室に残ること、そして今日一日は他クラスの生徒と接触しないことを言った。

 部活については、今日のサッカー部はオフだから心配ない。おそらく、練習があったとしてもこういった形で一年はほとんど休むと思ったのだろう。

 ただ、清隆にはメールで昼食を一緒に食べれないことを伝える必要がある。清隆はたまに平田のグループと一緒に昼食を食べているようなので、大丈夫だろう。

 

 ホームルームが終わると真っ先に、園田が声をかけてきた。

 

「あの龍園ってやつヤバくね」

「やばいな。今のところ暴力をふるってきたりはしてないけど、その内あるかもしれない」

「まじかよ!?でも人殴ったらクラスポイント減らされるしさすがにやらないんじゃねえの?Aクラスになるつもりはあるみたいだし」

 

 どうやら園田は、Sシステムや龍園の発言については理解しているようだ。

 

「どうだろう。生活態度のチェックは、おそらく監視カメラで行っている。でも、こんなに広い敷地なら、監視カメラのない場所もあるはず。そこで殴られたら、被害者は自ら殴られたことを訴えるしかない。だが、それをすると、クラスポイントが減ることになる。そして…」

「訴えた側の肩身が狭くなるってことか…?」

「今の余裕のないCクラスなら、起こりえるかもしれない」

 

 現在、Cクラスの生徒たちはほとんどが余裕をなくしている。それはそうだろう。実質、100パーセントの確約がなくなったことにも等しいのだ。これからポイントがどれくらい増えるかもわからないし、第一自分たちより優秀なA、Bクラスにテスト点などで敵う見込みはない。差は開いていくだけだ。

 Dクラスでないことが唯一の救いか。

 

 そして俺の隣の真鍋は特に、憔悴している。

 

「ねぇ仁科くん、私退学になっちゃうかも…」

 

 小テストの結果、総合点ではクラスで三十番目程度だが、英語が最下位の石崎くんといい勝負。

 ただ、先生の発言通りなら、次の中間テストには攻略法がある。

 

「大丈夫だよ、志保ちゃん」

「な、なんでそんなこと言えるの!?英語はやばいし、他もぎりぎりだし…」

 

 少しヒステリックになっている真鍋の肩に手を置き、目を合わせる。

 

「五十点取れれば絶対に赤点にはならない。俺の点数知ってる?100点よ?俺が教えれば、絶対に大丈夫だから」

「……わかった」

 

 いつもより真剣な声音だったが、こわがられなかったようでよかった。顔色ももとに戻っている。

 

「てか仁科くん、どさくさに紛れて肩触ってるし、名前で呼んだでしょ」

「あれっ、バレた?」

 

 やべっ、無意識にやっちまってた。

 

「バレバレだよ。女の子なめすぎ」

「じゃあ、嫌だった?」

「嫌じゃないけど…」

 

 照れているのか、少し顔を赤くする真鍋。元気になったようでなにより。

 

「まあでも、名前呼びはまだまだかなー」

「はぁ?なんであんたが呼んでいいか決める立場なのよ」

「名前で呼んでほしくなったら言ってよ。気分次第で呼ぶから」

「私が呼んでほしい前提なの…?確かに呼んでほしいけどさ。仁科くんってもしかしてS?」

「友達にはよくそう言われる」

 

 すっかりいつもの調子に戻ったみたいだ。

 

 

 放課後になり、Cクラスの生徒は教室に残っていた。

 朝と同じように、ロン毛が教卓に立つ。

 

「まずはもう一度聞くが、俺が王になることに文句のあるやつがいるなら今かかってこい。もし今来ないなら、俺が王になることに賛同したことにするぞ」

「ちょっと話についていけてないんだけど、王になるってどういうことだ?」

 

 ここでまさかの、園田が声を上げた。意外に恐いもの知らずな一面があるのかも知らない。クラスのほとんどが、彼にビビり散らかしているのだ。

 

「お前、名前を教えろ」

「園田正志」

「園田か。そうだな。最初に声を上げた勇気に免じて親切に教えてやろう。まず、俺はこのCクラスをAクラスにする。これは確定事項だ。これはお前らのためとかではなく、俺の快楽のためだ。クラス間闘争で勝利する快楽を得る。そのために、俺がお前らを使い、試験を勝ち抜いていく。そういう意図での王だ」

 

 なるほどな。やはりAクラス特典に興味のあるタイプではない。ただ、今の一言で分かったことがもう一つある。こいつのカリスマ性だ。

 

「安心しろ。俺の指示に従えば、お前らを必ずAクラスに連れて行ってやる。だがそのためには俺の命令に従うことは絶対で、裏切りは許さない。反抗心のあるやつは、俺を屈服させてみろ」

 

 四月中はただの目つきの悪い不良扱いだったこいつも、Sシステムを早くも見抜いていたことが説得力となり、今の言葉でカリスマ性を見せつけ、クラスをまとめ始めている。中には反抗的な態度を出しているやつもチラホラいるが、ボディーガードである石崎とアルベルトのすごみにひるんでしまっている。

 

「今のところは、いねえようだがな」

 

 なぜだろうか、今俺をチラッと見たような…

 

「それじゃあ、今から最初の指示をお前らに出す。主に三つだ。一つ目は、授業態度の改善。特にクラスポイントを減らしていた自覚のあるやつはな。二つ目は、クラスに関することの口外の禁止。クラスに関することはすべてだ。三つめは、ポイントの徴収をする。毎月一日に二万ポイント、俺の端末に送れ」

「それはさすがにないだろ!ただでさえポイントが少ないんだぞ!」

 

 男子生徒、確か時任が非難の声を上げる。

 

 その瞬間、アルベルトが思いっきり黒板をたたく音が教室に響いた。

 女子たちからところどころで悲鳴が上がる。

 時任も腰を抜かしそうだ。

 

「その少ないポイントも、誰のおかげで残ったと思ってやがる。俺がポイントの変動に関する質問をしなかったら、お前らの授業態度はもっとひどくなっていただろうな。Dクラスをバカにできたもんじゃねえ」

 

 みんなが納得したわけではなさそうだが、誰も反論しない。

 

「以上だ、帰っていいぞ。…ああ、そうだ。金田と椎名、あと仁科はついて来い。今後について話がある」

 

 いきなりお呼び出しか。さっきの目線もそうだが、もしかしたら俺の過去がばれてる可能性がある。

 

「ごめんな真鍋。今日もちょっと無理そうだ」

「大丈夫なの?」

 

 俺のことを心配している顔をしている。

 

「そんなすぐに暴力に訴えてくることもないだろ」

「そうかな…」

 

 納得させられるような言葉が思い浮かばなかったので、髪形を崩さない程度に真鍋の頭をなでてから、教室を出た。

 

 

「仁科くんとは一度お話をしてみたかったんです。読書が趣味と言っていましたよね」

 

 目的地へ向かう道すがら、椎名さんが話しかけてきた。こんな状況で会話しようとするなんて、見た目に反して肝が太い女子なんだな。

 いや、ただマイペースなだけか。

 

「そうだよ。椎名さんも読書が好きだよね。よくミステリーを読んでる」

「はい、そうなんです!仁科くんもミステリーをお読みになられるのですか?」

「そうだね…アガサクリスティーは大体読んだかな。原文だから、もしかしたら日本語訳とちょっと違うかもしれないけど」

「原文ですか!?私も頑張って読もうとはしてるのですが、なかなか難しくて。やっぱりアガサクリスティといえば、オリエンタル急行殺人事件が私は好きですね。何と言ってもあの犯人の…」

 

「もうすぐ着く。それぐらいにしろ」

 

 その言葉で、椎名さんの顔が一気に不機嫌になる。ほっぺたを膨らませている様子がとてもかわいくて和むが、そんな状況ではない。

 呼ばれたメンツを見るに、学力が高いことから、次のテストの対策のために呼ばれたのだとは思う。

 

 案内されたのはカラオケの個室。まさか、防音だから密会にいいと思っているのだろうか。確かにカラオケに来ても歌わないでずっとお菓子食ってるときもあるけど、まこういう使い方をするとは。

 

「分かっていると思うが、お前らを呼んだのは小テストの結果を受けてだ。学力が高いお前らには、中間テストへ向けた勉強会の指南役をしてもらう」

「勉強会を開くのですね」

 

 金田が復唱するようにつぶやく。このマッシュルームは、ロン毛の支配に肯定的な印象を受ける。

 

「断ってもいいでしょうか」

 

 だが、そこで椎名が水を差した。

 

「私の時間を見知らぬクラスメイトにとられたくありません。さらに言えば、このテストには必勝法があるようなことを先生はおっしゃっていました。わざわざ勉強会など開かなくてもいいのではないですか」

「前半はともかく、後半はお前の言う通りだ、椎名。このテストには必勝法がある。だが、このままの学力だとその先のテストは乗り越えられない可能性が高い」

「つまり、この先ずっと勉強会をしろということですか。もちろん、今回勉強会を行うことで、もし必勝法を得たとしてもそれがバレずに済む確率が上がるということは分かっています」

「そうなるな」

「であればお断りします」

 

 にべもない。アルベルトの壁ドンを聞いてこの対応は、さすがとしか言いようがない。そして、特筆すべきは椎名の能力の高さ。ただ、Aクラスへの意欲が薄いのか。

 これ以上はさすがにまずそうだ。

 

「俺が椎名の分の勉強会もやることにするよ。もともと高校一年生の範囲の勉強は一度済ませてあるから、自分の勉強時間はほとんどいらない。その代わり、椎名は必勝法を探してくれ」

「ククク…椎名をかばうのか」

「そういうわけじゃない。彼女の観察眼や推理力を買っている。さっきの椎名の発言を聞けば、それらの力が高いことが俺にも分かった。こういうところは、適材適所だろう」

「なるほどなァ。さすがすけこまし野郎は言うことが違う。だがいいのか、そいつらが赤点取ったらお前の責任だぜ」

「それは困るな。教科によっては、助っ人もありにしてくれ。理系科目は少し苦手でな」

「いいだろう、失敗したらわかってるな?」

「ああ」

 

 その後、勉強会の頻度や時間を決めて、解散となった。

 

「さっきはありがとうございます。またお話ししましょうね」

「さっきのことに関しては、気にしないでほしい。困ったときはお互い様だから。また時間のある時にミステリーの話しような」

「はい!」

 

 金田と椎名さんが帰った。

 しかし、俺だけ帰してもらえない。

 

「椎名に任せるなんてほざいていたが、仁科、お前は必勝法を思いついてるんだろう、教えてみろ」

 

 バレてたか…

 椎名さんにそれとなく遠回しに伝えたかったけど。

 

「そんなに大したことじゃない」

「いいから言え」

「三つだな。点数をポイントで買うこと。カンニングする権利をポイントで買うこと。そして、過去問を使うこと」

「おもしれえ!だがその中だと、」

「おそらく過去問だと思う。一つ目と二つ目は何も今回の試験に限った話じゃない。今回のテストでしか使えないってことは、毎年同じ問題しか出てないとかだろう」

「だとしたら先輩からもらう…小テストももらった方がいいな。あれもおそらくヒントだ」

 

 頭の回転が速い。俺もそこまでは気づかなかった。なるほど、小テストが毎年同じなことを確認して、中間テストも毎回同じなことの確信にいたるってことか。

 

「明日サッカー部内で値段を聞いてこい。変に値切ろうとしなくていい。ただ、二年生と三年生両方に聞いて、もし五万ポイント以下なら即買いしろ。ポイントは後で渡す」

 

 決断までも速い…

 

 もしかしてこの男なら、龍園なら、アイツに届きうるかもしれない。

 

「わかった。値段がわかり次第すぐに連絡する」

 

 まだ仮のだが、了解したよ王サマ。




龍園のアニメのビジュが好きなので、黒シャツです。
主人公は、男子に対する話し方と女子に対する話し方を変えるタイプです。龍園にはある期待を抱いているので、今のところは従うつもりでいます。
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