(短編版)内閣総理大臣秋津悠斗   作:松コンテンツ製作委員会

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第六章•独立篇

 

十五

 

 与党と野党という概念はこの短期間で変質した。

 物部政権では保守党と公民党が与党であったが、秋津政権には国政民衆党、令和奇兵隊が連立に加わる。野党四党という枠組みも過去のものだ。

 今日、対する野党席には統一会派を組む護憲民衆党となにわ維新の会が座る。質問に立つは護憲民衆党最高顧問の船橋喜彦だ。護憲にもなにわにも党首はいるが、秋津悠斗のような眩しすぎる光に太刀打ちするためには首相を務めた重みのある代議士に白羽の矢が立てられたのだろう。

 そして、悠斗の因縁の相手でもある。

【 国会中継 】 

【 国家基本政策委員会~党首討論~ 】

「立花経済産業大臣を罷免なさるべきではないでしょうか」

「人を愛すること、それのなにがいけないというのでしょうか」

 悠斗は自分自身のことも言っていた。

「そこまで言うなら明らかにしましょう。これは反対派からの紙爆弾です、ならば、官僚の反対派をどうなさるおつもりか」

「桜俊一元財務事務次官を内閣官房副長官兼内閣人事局長に据えて、霞が関とのパイプ役をお願いします

「内務省の設置は断固反対しますが、歳入庁設置に関しては認めましょう! 元は民衆党の政策なのでね」

 船橋は強面の顔を崩さずに丁々発止の論戦を繰り広げていく。

「しかし、悠斗君は青臭い」

 船橋は一蹴した。激高した青年首相が老練な野党代議士を顎を引いて睨みつける。

「まあ、最後まで聞きなさいよ秋津君」

 船橋はどじょう宰相にふさわしい笑みを浮かべていた。

「アメリカに関すること、私に預けていただけませんかな?」

「船橋先生……」

「内務省設置を延期していただけるのであれば、日米地位協定の見直し、規制緩和に関して私からもオーバー前大統領に直談判することをお約束いたします」

 与野党の対立に一筋の光が見えた。

「秋津君、これが政治の本質です。対立するふたつの意見をすり合わせ、妥協点を探っていくことです。忘れないでくださいね」   

 

十六

 

 年次改革要望書の見直しを迫るべくアメリカの前大統領バラック・オーバーに対し日本の前首相船橋喜彦からのチャンネルが開かれたことに、オーバー政権で副大統領を務めた現職大統領のジョージ・デヴァインは激怒した。

 物部と蜜月の関係にあったロナルド・J・ジョーカー大統領も、物部派出身の秋津首相と対話のテーブルにつく用意があるというではないか。

民主党に対しては船橋派が、共和党に対しては物部派が説得に当たる。米国共和党政権はこれを好機ととらえ、デヴァイン政権への攻勢を強めている。

「大統領閣下。申し上げにくいのですがロシアとの代理戦争であるウクライナ事変でいわゆるデヴァイン離れが加速しています」

 このままではジョーカーが再登板しかねない。

 デヴァインは憮然とした表情になった。

「国家安全保障会議を終わる。君だけ残ってくれ」

 デヴァインがCIA長官に耳打ちする。

「……大統領閣下のプランは大胆ですが、不可能ではありません」

 

十七

 

エンジンを派手に唸らせ、首相官邸敷地に黒塗りのワンボックスカーが派手に乗りつける。官邸警備隊がわらわらと群がるが、手が出せなかった。

 黒ずくめの男たちが威圧感を持って横並びとなり、令状を提示した。

「東京地検特捜部です。先程秋津総理は内乱罪、公職選挙法違反で在宅起訴されました。これより首相公邸を家宅捜索します」

 皿や食器がヒステリックな音で割れる

 宝物が、思い出が、壊されていく。桜夫人は泣いた。

段ボールに入れていく本はゴミのように扱われる。

「助けてお父様、旦那様!」

「動くな! ファーストレディが死ぬぞ!」

 特殊部隊が拳銃を突きつける!  

 じりじりと桜副長官が後ずさった。

 と、銃が弾き飛ばされた。

 刀剣を構える和服姿が切っ先ではじいたのだ。

「サ、サムライ!?」

 それはあながち間違いではなかった。虚を衝かれとっさに動けなかった特殊部隊。

 斯波高義副総理が一太刀振るえば、部隊長のヘルメットが中身の肉塊ごと落とされる。研ぎ澄まされた日本刀の切れ味で何ら抵抗なく滑らかに瞬殺されたのだ。

 残された首から下が、力なく崩れ落ちる。

 その義挙に藤原はこぶしを握り締めた。武家の末裔は伊達ではない。

「今だ! 発砲を許可する!」

 警視庁官邸警備隊が銃を構え、銃声とともに米軍特殊部隊を血祭りにあげた。

「藤原長官、経済財政諮問会議議員竹内蔵之介を外患誘致罪で逮捕します」

「任せる。総理、緊急事態です。こちらへ」

 藤原の先導で屋上ヘリポートにたどり着く。

「東城先輩!?」

 輸送ヘリのコックピットには東城洋介一等海佐と東城美咲外務副大臣が座っていた。

「全員乗った、出してくれ!」

洋介はパイロットの肩を叩き、離陸を促す。

「待って、悠斗さん、お姉様、私も連れて行って!」

 凪子が後部扉に縋るが、秋津悠斗は冷酷無慈悲な魔神となり彼女を見下す。

「どけ」

それだけでよかった。

回転翼の突風が凪子に尻餅をつかせた。

「尖閣諸島沖に人民解放軍空母艦隊が迫ってきています」

「米国デヴァイン政権は、ドローンを使って日米会談の前に小規模な紛争を起こす構えです!」

 米中のドローンどうしが叩き合って双方の軍拡の口実にすると国枝と柏木は言う。沖縄在日米軍の駐留の口実にするのだと言う。

「火事場泥棒め、東城統合幕僚長に連絡を取ってください」

 洋介の父の地位だ。

「了解しました、それにしても、総理の在宅起訴が心配ですが」

 藤原が耳打ちしたが、

「その心配はありませんわ」 

 通信に割り込んだのは矢本シオリ法務大臣だった

「秋津総理の起訴については、私が直接処理します。」

 

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