流星のロックマン1.5 -Cassiopeia Duo- 作:はっぽーしゅ
ところでカシオペアって聞いたら星座そのものより寝台列車が浮かんできますよね(道産子)
彼女が目覚めた時に最初に見たのは、視界を覆う真っ赤な炎だった。
覚醒しきらない意識のなか、轟々と燃える鈍色のナニカを眺める。彼女はぼんやりと、自分はついさっきまでアレの中にいたのだと感じ取った。
やがてそのナニカが燃え尽きると、彼女の視界は赤から一転、美しい青と黄の二色に染まった。
眼下に広がるのは、紺碧の海原と白い雲。青い煌めきを放つその惑星は、網細工の様に複雑に重なり合う黄色い光のラインに全体を覆われている。そしてその周囲には、どこか懐かしい気配を放つ三基の人工衛星が浮かんでいた。
「ここは…」
見知らぬ惑星を見下ろしながら、ぽつりと呟く彼女。波打つ緑色のエネルギーで全身を構成された彼女は、その細長い首をうーんと傾げた。
「ここは…どこじゃ…?」
一般的な生物で言えば『目』に当たるであろう部分が、不思議そうににょろりと歪む。彼女の顔は、黒く縁取られた白い仮面の様な顔だった。そして、その仮面を中心から上下に分つ様に、大きなジグザグを描く緑のラインが左右に伸びている。アルファベットのWにも見えるこのラインこそが、彼女の目。彼女がその感情を表情として出力する事ができる、彼女唯一の器官であった。
「ふぅむ…しかし、なんと美しい星じゃろうか。ヨの次くらいに美しい」
初めて見る神秘的な水の星に、うっとりと見入る彼女。さらりと飛び出た最後の言葉に、彼女の高慢な気質が見て取れる。
「ようし、決めたぞ。この惑星をヨの新しい別荘とする!」
そう言うやいなや、彼女は緑色の光球へと姿を変え、光の筋を引きながら矢の様に地表へと飛び込んでいった。
「ククク!あぁ、名も知らぬ美しき星よ。今日からオヌシはこの宇宙の女王、カシオペアのモノになるのじゃ!クククク!ところで」
くつくつ笑いながら地表を目指す彼女は、自信マンマンな心持ちのまま、はてと考えた。
「カシオペアとは、ヨの名前か?それに女王とは一体…むむむ…?」
自分で言った言葉に自分で悩み始める彼女。不思議な事に、彼女は自分の名前はおろか、出自や過去の思い出といった、己に纏わる全ての事が思い出せずにいた。
「うむ、まあよいか!」
だが、彼女に——カシオペアにとっては、そんな事は些末事に過ぎなかった。
「この胸から溢れて止まぬ、全く根拠のない自信とパッション!かようにバイタリティ溢れるスーパーレディなこのヨが、宇宙の女王でないワケがないのじゃ!あと美人じゃ!絶対に美人じゃ!」
白い絨毯の様な雲の上で、水平線の彼方まで伸び続ける電波の道、ウェーブロードに降り立ったカシオペアは、元の幽霊の様な姿に戻りつつ、腰に手を当ててアッハッハ!と豪快に笑った。
強靭無比な精神力と、山よりも高いプライドを誇るカシオペアには、記憶喪失などなんの足枷にもならないのだ。
「ふぅむ。大気の成分から察するに、この星は物質生命体の星であるに違いない。ならば!」
エネルギーで出来た緑色のロングヘアを風になびかせながら、カシオペアはぶ厚い雲を突き抜け、飛んでいく。
「バディをさがすぞ!電波変換じゃ!」
自身と波長の合う誰かを求め、直感を頼りに突き進むカシオペア。電波生命体である彼女は、物理的な肉体を持つ知的生命体と融合する事で、更なる力を発揮するのだ。
この星に知的生命体がいる事は、あの三基の人口衛星とウェーブロードを見れば一目瞭然。あとは、相性の良いパートナーをさがすのみ。
「おるかー、おるかー!?美少年か美少女おるかー!?」
あっちへビュビュン、こっちへビュビュン。ジグザグとめちゃくちゃな軌道を描きながら、思うがままに大空を翔けるカシオペア。人間の眼には見えない緑のイナズママークが、太平洋の上空に広がっていく。
「むむっ!」
と、そこでカシオペアの直感がビビッと反応した。青い水平線の遥か彼方から、やけに強力な電波の波長を感じる。
いくしかない。カシオペアは迷わずその一点を目的地に定め、光の矢となって飛んでいった。
彼女が目指すその場所は、大陸のすぐ隣りに浮かぶ小さな島国。この星の知的生命体たちが、ニホンと呼んでいる国だった。
こ な い で
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