流星のロックマン1.5 -Cassiopeia Duo-   作:はっぽーしゅ

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ふたりめのオリ主、ミナミくん登場です。ついでに電波人間カシオペア・レグナント陛下も登場です。オラッ、電波変換ッ!(cncn亭)


第2話:ボーイ・ミーツ・カシオペア(いわゆる未知との遭遇じゃ!)

 

 

 クラスメイトたちが時たま口にする『羨ましい親』とは、一体どんな大人の事なんだろう。

 コダマ小学校5年B組の教室、その最後尾に位置する窓際席で、北空ミナミは左手首の白い電波時計をそっと撫でた。

 今の時間は昼休み。活発な男子たちは校庭でドッジボールに精を出し、おしゃべり好きな女子たちは思い思いの相手と会話の花を咲かせている。

 動のグループと静のグループ。そのどちらにも、ミナミの居場所はない。

 

「でさ、結局ウチの誕プレなんだったと思う?」

「え、わかんない」

「バトルカード!いやもうマジでないわウチのパパ!」

「あはははは!マジ!?」

「マジマジ!しかも見てよコレ、めっちゃダサいからホラ!」

「うわ、ダッサ!なにこれ、モアイ?」

 

 楽しそうにはしゃぎ合う女の子たちの声。その声に混じって、カチャカチャ、ピピピ、といった無機質な操作音が、ミナミの小さな耳に飛び込んでくる。ミナミはもう一度腕時計を撫でてから、机に掛けたトートバッグに手を突っ込み、取り出したワイヤレスイヤホンでしっかりと両耳を塞いだ。

 彼女たちが…否、この世界に生きる大多数の人々が右か左の腕に装着している、多目的情報端末『トランサー』。モバイル機能に電子マネー、インターネット接続に電子パスポート、更には専用のデータカードを用いたウィルスバスティング機能まで搭載しているこの端末は、もはや人々の生活に無くてはならない、最重要の携行必需品になっている。

 

「……」

 

 そんなトランサーの操作音が、ミナミは大キライだった。その音を聞くと、何故か泣きたくなってくるから。

 どうして泣きたくなるのか、それはミナミにも分からない。トランサーなんて、欲しくないハズなのに。

 

「うちのお母さんもさぁ…」

「いやいやうちの親の方が…」

「うちのがもっとひどいよ…」

 

 耳栓代わりのイヤホンを突き抜けて、女の子たちのおしゃべりが聞こえてくる。敬うべき親を貶し、他所の親を羨ましがる声が。

 ひどい子たちだ、とミナミは思う。大切な親に対して、陰でそんな悪口を言うなんて。他人の親を羨む暇があるなら、自分の親のいいところをもっと沢山見つけて、もっと沢山愛するべきだ。

 窓の外に広がる退屈な景色を眺めながら、そう胸中で愚痴を吐くミナミ。そんなミナミに、件の女の子グループの中の一人がチラリと目を向けた。

 男子にしては少し長い、よく手入れされた黒い髪が、窓から吹き込む柔らかな微風に揺れている。色白の頬に頬杖をついて、女の子の様な可憐さを持つ美麗な相貌を、アンニュイに曇らせている。

 その画だけを見れば、儚く物憂げな美少年としてそれなりに人気が出そうではあるし、実際ミナミのルックスはかなり評判が良い。だが、今この時の女の子の視線は、彼の首から上では無く、左の手首に向いていた。

 

「…でもさ、ウチらまだいい方かな?ほら…」

「ちょっとアケミ、聞こえるって…」

「北空くんちはシャレにならないから…」

 

 ミナミの席と同じ列の最前席で、コソコソと囁き合う三人の女の子たち。気まずそうな、しかし少しの優越感も含まれた好奇の視線が、気づかないフリをしているミナミをチクリと苛立たせた。

 彼女たち5年B組の生徒たちは、皆知っているのだ。北空ミナミの母親は、子どもにトランサーを持たせないヒドイ親だという事を。

 

「……」

 

 トランサーとは、ただの便利な携帯端末などではない。トランサー本来の役割は、ヒトとヒトの心をより深く繋ぎ合わせ、そのキズナを目に見える形で補強する『ブラザーバンド』を結ばせる事にある。

 ブラザーとは、単なる友達や仲間を超えた、本当に信頼し合える相手の事だ。ブラザーバンドを結んだ相手とは、トランサーを通じていつでもお互いのパーソナルを閲覧できる様になる。普通の知人には見せられない、ありのままの自分を見せ合える関係という事だ。

 だから、人々はそう簡単にブラザーバンドを結んだりはしない。ブラザーバンドは単なる友情や親愛を超えた、真のキズナとも言うべきものだからだ。

 だからといって、ブラザーを持たない人間はトランサーが不要なのかと言うと、断じてそんな事はない。ブラザーバンドだけがヒトの繋がりではないからだ。

 旧世代に普及していた携帯電話やPETの様に、トランサーはコミュニケーションツールとしての役割も負っている。電話やメール、チャット機能を用いて、人々は友人知人と連絡を取り合い、親交を深めていく。

 そうして信頼関係を築いていったその先にブラザーという関係があるだけで、後は旧時代と何も変わらない。携帯電話を買ってもらえず寂しい想いをした大昔の高校生の様に、トランサーを持たない子どもはクラスメイトたちの輪から一歩はみ出してしまうのだ。

 そんな境遇のミナミを、クラスメイトたちは可哀想だと言う。そして、ミナミの母親はヒドイお母さんだと、それに比べたら自分たちの親はまだマシだと、そう言うのだ。

 

「かわいそうだよね、北空くん」

「アケミ、ちょっと話しかけてみてよ」

「はぇっ!?」

 

 だが、当のミナミはそれがヒドイ事だとは微塵も思っていなかった。

 母さんは寂しがりで、ボクが他所で友達を作るのはイヤだって言うんだ。ボクが友達に夢中になって、母さんをひとりぼっちにしちゃうのがコワイって言うんだ。なら、ボクがトランサーを持つ必要なんて、これっぽっちも無いじゃないか。

 

「……」

 

 ボクがひとりぼっちでいれば、母さんは幸せなんだ。なら、ボクは友達なんていらないし、トランサーもいらない。母さんの笑顔だけが、ボクの幸せなんだから。

 

「あ、あの〜?北空く〜ん?」

 

 三人組のうちの一人、春野アケミが、いつの間にかミナミの机の横に立っていた。

 

「うん?」

 

 ミナミは耳を塞いでいた白いイヤホンを外し、穏やかな微笑を貼り付けてアケミを見上げた。ボクに話しかけてこないでよ、という本音を隠して。

 

「ボクに用事?」

「え、えっとそれは、あの〜…」

 

 ミナミの小学生らしからぬアルカイックスマイルに、顔を赤くしてオドオドしてしまうアケミだが、無理もない。普段は何とも思っていない相手でも、とびきり美形の異性に優しく微笑みかけられれば、誰だってこうなってしまうだろう。

 おまけに、ミナミは愛する母の言いつけを守って、身だしなみに非常に気を使っていた。肌と髪の手入れはもちろん、いつも着ている大人びた白のボタンダウンシャツは、自分の手でしっかりとアイロンがけまでして、完璧に仕上げてある。同年代の子どもたちから見れば、美しく小綺麗なミナミはそれだけで魅力的なのだ。

 …その胸に隠した、拗らせに拗らせ続けた歪な本心を別にすれば、だが。

 

「大丈夫?顔が赤いけど」

「ほぁっ!?い、いや〜なんか、ホラ!教室暑くって!あはは!」

「そう?ふふ、春野さん暑がりなんだ」

 

 真っ赤な顔でアタフタするアケミに、ミナミは冷めた気持ちで微笑み続けた。

 ほら、焦ってる。元から話したい事なんか無いくせに、無理しないでいいよ。どうせひとりぼっちのボクが可哀想で、オトモダチにでもしてやろうって話かけにきてくれたんでしょう?気持ちは嬉しいけど、やめてほしいな、そういうの。ボクは独りでいたいんだから。

 

「ふふ…」

 

 光の宿らない昏い瞳で、ミナミはアケミに笑みを送り続けた。ミナミの瞳には、自分と友達になろうと必死になって言葉を探す春野アケミの健気な姿など、ヒトのカタチをした『モノ』にしか見えていない。

 

「ふふ、ふふふ…」

 

 そう思わなければ、ミナミの心は壊れてしまうのだ。ミナミ自身に自覚は無いが、ミナミの心の防衛本能がそうさせていた。

 寂しいなんて、人恋しいなんて、思っちゃいけない。感じちゃいけない。

 脳裏に浮かぶのは、幼い自分とか弱い母を毎日の様に殴り続けていた、父の拳。そして、その父がある日突然蒸発した時の、母の泣き顔。

 

『ミナミ、ミナミ?ミナミは母さんをひとりにしないよね?ずぅっといっしょにいてくれるよね?』

 

 痩せ細った、切り傷だらけの母の手首を思い出しながら、ミナミは思う。

 羨ましい親とは、どんな大人なんだろう。

 

 

 

 

 

 

 放課後になった。ミナミはいつもの様にクラスメイトたちに愛想笑いを振りまき、真っ直ぐに家路を進んでいく。途中、隣のクラス担任を務める育田先生に、今から面白い実験をやるから参加しないかと誘われたが、家庭教師を待たせてしまうから早く帰らないと、と断った。

 ……別にウソはついていない。北空家には学習用ナビの『ティーチャーマン』がいるのだから。

 

「ふぅ…」

 

 音楽を流す事なく、ただ耳を塞ぐ為だけにイヤホンを挿してミナミは歩く。ミナミの白い電波時計は、小型かつ高性能なスピーカーとディスプレイを搭載した高級品だ。オーディオもムービーも再生し放題である。

 ……トランサーが普及している現代においては、全くもって無意味な機能と言えるが、それ故に一部の富裕層やマニアには人気があった。金持ちとオタクはムダが好きなのだ。

 

「ま、まてー!まってくれー!」

 

 そうして耳を塞いでいたせいか、ミナミは少しだけ気づくのが遅れた。

 

「オレの、オレのバイクー!」

 

 猛スピードで車道を飛び出してきた無人の電動バイクが、乗り手を置き去りにして自分に突っ込んできていた事に。

 

「うわっ!?」

 

 ギリギリでバイクに気づいたミナミは、ほとんど反射で身体を左に投げた。なんとか躱しす事に成功し、アスファルトに強く打ちつけた肘と膝の痛みに顔を顰める。

 

「な、なんなの!?」

 

 慌てて顔をあげ、両耳のイヤホンを外すミナミ。ミナミを襲ったバイクは、歩道上でギュルッとアクセルターンを決め、再びミナミに突撃してきた。

 

「うわぁっ!?」

 

 ミナミは、母からもらった大事なトートバッグを歩道に放り捨てて、全速力で逃げ出した。背後からは、自分を轢き潰そうと猛追してくる電動バイクの、甲高いモーター音が聞こえてくる。

 

「とまれー!とまってくれよー!オレのバイクー!」

 

 バイクのオーナーらしき若い男が叫んでいるが、叫びたいのはミナミの方だ。

 

「こ、こないでよっ!?」

 

 ミナミは再び身体を投げた。車道側のガードレールに飛びつく様にして、すんでのところでバイクを躱す。バイクは横断歩道を通り過ぎ、その向こう建っている民家の塀に激突し、ガッシャンと派手な音をたてて転倒した。

 

「はあ、はあ…とまった…?」

 

 みっともなくガードレールにしがみついたまま、バチバチと火花を散らすバイクを注視するミナミ。横倒しになったバイクは、未だにウィンウィンと激しくモーターを唸らせているが、流石に自力で立ち上がる事は出来ない様だ。

 

「あぁ、オレの愛車が……」

 

 ようやく追いついてきたオーナーの若者が、ベコベコに凹んだバイクのフロントカウルにがっくりと項垂れる。きっと余程大事なモノだったのだろうが、そんな事よりまずは周りに謝りなよ、とミナミは唇を尖らせた。

 

「とにかくサテラポリスに…」

 

 市民の義務を果たそうと、赤いトランサーを開いてサテラポリスを呼ぼうとする若者。 

 だが、事件はまだまだ終わらない。

 

「……え?」

 

 周囲を見まわしながら、不安げな声を漏らすミナミ。先ほどのバイクとよく似たモーター音が、そこら中から聞こえてくる。

 

「まさか…!?」

 

 ミナミの予感は的中した。大小様々なクルマやバイクが、乗り手の意思を無視してそこかしこで暴走をはじめたのだ。

 大きなバスやトラックが、右に左に蛇行運転しながらガードレールを破壊する。乗用車は対向車と正面衝突を繰り返し、ドガン!ドガン!と恐ろしい破壊音を響かせた。

 

「キャー!」

「にげろ!」

「助けて、誰か助けて!」

 

 平和な午後のコダマタウンは、一瞬にして地獄と化した。人々の悲鳴が耳を裂き、ミナミの口からは声にならない嗚咽が漏れた。

 

「にげなきゃ…!」

 

 歳の割に長く伸びた脚をもつれさせながら、ミナミはしゃにむに走り出した。

 一刻も早くここから逃げないと、自分もあのバイクみたいにペシャンコになってしまう。せっかくあの忌まわしい父親の魔の手から逃れたのに、こんなところで死ぬなんてまっぴらごめんだ。

 バクバク暴れる肺に鞭打って走り続けるミナミ。だが、暴走車軍団はそんなミナミを逃しはしなかった。

 学校から家までの、ちょうど中間辺りの交差点。そこまで逃げてきたミナミの前に、小さく細いシルエットの大群が押し寄せてきていた。

 

「そんな、自転車まで!?」

 

 アシストモーターとナビゲーションを搭載した電動自転車。色とりどりの暴走自転車たちが、ギュルギュルとペダルを高速回転させながら、古代のファランクスの様に突撃してくる。

 あまりに非現実的かつ恐ろしいその光景に、遂にミナミは尻餅をついてしまった。そして、暴走自転車たちはそんなミナミに、容赦なく迫ってくる

 

「うわあぁぁぁぁッ!?」

 

 恐怖のあまり、悲鳴をあげる事しか出来ないミナミ。唐突に訪れた死への恐怖に、幼いミナミの精神は耐えきれなかった。

 このままでは、ミナミは自転車の大群にその幼いカラダをズタズタに轢き潰され、見るも無惨な姿へと変わってしまうだろう。

 

『……た………ぞ…………』

 

 だが、天は。

 

『…けた……けたぞ……!』

 

 否、『星』は、ミナミを見捨てていなかった。

 

『みつけた!みつけたぞ!ヨのバディ!』

 

 恐怖に慄き、全身を震わせながら泣き叫ぶミナミ。

 

『よぅし!ちょうどいいカンジにトラブっているようじゃし、早速ヨのチカラを見せてくれよう!そぅれ、デンパァァァァ———!』

 

 その小さな身体に、眼に見えない緑の閃光が、イナズマの様に飛び込んでゆく。

 

『———ヘンッカンッッ!!』

 

 その瞬間、『北空ミナミ』はこの地上から姿を消し、代わりに、新たな黒いシルエットが姿を現した。

 黒い影が、突っ込んでくる自転車群に向けて、素早く優雅に右手を振るう。すると、影の周囲にいつの間にか浮かんでいた八本の黒い剣が、意思を持つかの様に自転車たちに殺到し、その切先から緑のレーザーを雨あられと降らせ、自転車たちを一瞬で消し炭に変えた。

 

「ふぅむ、ふむ、ふむ」

 

 役目を終えた剣たちが、かしづく様に影のもとに舞い戻る。影の身体を支える様にぐるりと並ぶ黒い剣は、腰から生えた黒い翼か、もしくは、高貴な者が身に纏うロングドレスのスカートの様にも見える。

 

「なかなかよい"乗り心地"じゃ。うむ、流石はヨが見初めた美少年!周波数もバッチグーじゃし、なによりもう、マジで顔がよい!むほ〜、めっちゃよい!」

 

 緑のメッシュが入った長い黒髪をなびかせながら、影はスポーツショップのショーウィンドウに反射した自分の姿にうっとりと見入った。

 ギザギザしたW状の、ティアラの様な黒いヘッドギア。その下の白くほっそりしたかんばせは、パッチリしたグリーンの眼と小さな唇で美しく飾られている。

 

「むふ〜、むふふ〜。ふつくしい。ふつくし過ぎて、ふつくしい」

 

 緑と白のラインが入った、黒いボディスーツ。ピッチリしたそれに包まれた肢体は、一流のファッションモデルの様に細長く、しなやかだ。しかし、それでいて胸や腰まわりにはふくよかなふくらみがあり、女性的な妖艶さをこれでもかと主張している。

 そんな艶やかな姿だが、ただ美しいだけではない。胸元にはヘビの眼の様な赤い宝玉が光り、そこを中心に胸元から両肩の先まで、剣の様に鋭い意匠のプロテクターが装着されている。肝心の胸そのものが守られておらず、ふくよかで形の良い二つのふくらみが無防備に主張してしまっているが、影は全く気にしなかった。否、むしろ喜んだ。めっちゃよい、と。

 

「むっふっふ、それにしてもよいカラダじゃ。動きやすくやわらかい。いやはや、やはりカラダの相性は大切じゃのう、むほほっ!粘った甲斐があったわ!」

 

 喜色満面でむふふと笑いながら、感触を確かめる様に足踏みをする影。黒いブーツ状の装甲がキラリと光り、針の様に鋭く尖ったハイヒールが、コツコツとアスファルトを鳴らした。

 その場で足踏みを続けながら、影はグーパーと楽しそうに両手を動かす。細くしなやかな長い指。手首に巻かれた緑色の円いリング。全てが影の趣味にピッタリハマった、見事な出来映えだった。

 

「むふ、むふふ、むふふふふ!合格、合格じゃ!名も知らぬ美しきおのこよ!今日よりヨとオヌシは一心同体、ふたりでひとりの電波人間というわけじゃ!クククク!とぉうっ!」

 

 元の北空ミナミの肉体から、あまりにかけ離れたその全身。影はその場から勢いよく跳躍し、その身体の『周波数』を変化させた。

 

「しゅたっ!」

 

 町の上空に張り巡らされた電波の道『ウェーブロード』に降り立った影。普通、生身の肉体を持つ者には、このウェーブロードを知覚する事は出来ず、触れる事も出来ない。

 だが、今の影はただの人間ではない、『電波人間』なのだ。

 

「ひかえおろう!有象無象のウィルスどもよ!」

 

 黄色いウェーブロード上で、勢いよく右手を振るう影。彼女の視線の先では、先程消し炭にした自転車軍団の残骸から、巨大な一輪のタイヤを生やした赤いダルマの様なバケモノたちが、風船から空気が漏れ出す様な勢いで次々と飛び出していた。

 そんな電波のバケモノ『電波ウィルス』たちに、影は長いヒールをカッ!と踏み鳴らし、威厳と愛嬌が入り混じった特徴的な美声で高々と名乗りをあげた。

 

「ヨを誰と心得る!ヨは宇宙の女王、カシオペア!否、"カシオペア・レグナント"であるぞ!」

 

 赤い車輪のウィルスたちが、続々とウェーブロードに集まってくる。上下左右の光の道に集結したウィルスたちに、あっという間に影は取り囲まれた。

 だが、彼女の顔に焦りはない。それどころか、不敵な笑みすら浮かべている。

 

「ほう、ヨの渾身の名乗りを、よもやスルーとはな。というかキサマら、何様の分際でヨを見下ろしとるんじゃ?おい、ヨは女王ぞ?ん?マジで不敬なんじゃけど」

 

 そして、少々怒ってもいる様だった。カシオペアと名乗ったこの女性、女王の名に恥じぬプライドの持ち主らしい。

 

 ———そう、先程北空ミナミ少年に取り憑いた緑の閃光は、宇宙から飛来した電波生命体『カシオペア』。カシオペアはミナミの肉体と融合し、実体と電波双方の特性を併せ持った電波世界の超人、電波人間へと『電波変換』したのだ。

 

「ククク、そんな不敬なうつけ者どもには」

 

 こめかみをピクつかせながら、くつくつと笑う『カシオペア・レグナント』。レグナントは嗜虐的な笑みを浮かべながら、ゆったりと右手をあげた。すると、その動きに合わせる様に、彼女の周りにかしづいていた黒い剣たちが、ふわりとその身を四方に持ち上げ、緑のエネルギーを湛える鋭い切先をウィルスたちに向けた。

 この瞬間、ウィルスたちの運命は決した。

 

「おしおきじゃ!それゆけー!」

 

 無邪気な声で下される、女王の判決。刹那、ウィルスたちは高速で宙を舞う八本の剣と、その切先から放たれる緑色のレーザーに蹂躙され、瞬く間にウェーブロード上から姿を消した。跡形ひとつ残らない、文字通りの全滅、消滅である。

 

「クク、ククククッ!アーッハッハッハッハッ!最強、最強!カシオペア・レグナント、さいきょぉーう!アーッハッハッハッハッ!」

 

 キュッと締まった腰に両手を当てて、豪快に笑うカシオペア・レグナント。その時、彼女の胸元に輝く赤い宝玉が、チカチカと不規則に点滅しはじめた。

 

『う、うーん…あれ、ボクは…ここはいったい……』

 

 点滅に合わせて、どこか儚げな雰囲気を醸す少年の声が、ぽそぽそと宝玉から発される。胸元から聞こえてきた自分好みの幼い美声に、カシオペア・レグナントは妖艶な笑みを浮かべた。

 

「ようやく起きたか、我がバディよ」

『え、誰…バディって…え…?』

 

 その声は、電波人間カシオペア・レグナントの肉体、その本来の持ち主である小学五年生の少年、北空ミナミの声だった。

 

 




ようやくWオリ主が揃いました。
少年側が少々暗いですが、うるさいヤツとくらいヤツを合体させればちょうどよくなるって寸法です。
尚くらいヤツに肉体の自由は無い模様。
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