流星のロックマン1.5 -Cassiopeia Duo-   作:はっぽーしゅ

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陛下もミナミもいい子なんですよってお話です。







第5話:女王の挽回!?(ごめんなさいなのじゃ!)

 

 

 

「この痴れ者大明神が!ヨのかよわい背中をバッシバシ撃ちまくるとか、よほど夜空の星になりたいようじゃなァ!?オォン!?」

 

 グリーンの瞳に怒りの炎を燃やしながら、眼下のウェーブロードに立つ青い戦士をチンピラじみた形相で威嚇するカシオペア・レグナント。

 

『うわぁ……』

 

 品性のカケラもなくメンチを切る自称女王の姿に再度ドン引きしつつ、ミナミは件の戦士に意識を向けた。電波変換によって強化された超視力が、眼下の戦士の全貌を鮮明に捉えてゆく。

 

『え…こ、こども……?』

 

 此方に向かって勇ましく左腕を構える、小さく細いシルエット。身長はぱっと見、本来のミナミより少し低いくらいしかない。そんな小さな少年が、濃紺のボディスーツの上に青いアーマーを纏い、頭には青いヘッドギアを装着して、女型の怪人となった自分と対峙している。

 そんな、一見幼く頼りない大きさの戦士だが、ミナミには彼が自分と同じ小さな子どもとはまるで感じられなかった。

 眼だ。ヘッドギアと一体化した赤いバイザーに覆われた、未だあどけなさを残す大きな両眼。その眼に宿った凛々しく力強い意志の光が、彼の存在を一回りも二回りも大きく、タフに見せていた。子どもだなんてとんでもない、明らかに歴戦の戦士のオーラだ。

 特筆する点はまだある。その戦士が構える左腕、その先に生えた左手のカタチだ。彼の左手首からは、普通の人間の手とはまるで違う、青いケモノの生首が生えていた。

 

『イヌ……?』

 

 一見パペット人形の様にも見える、猟犬の如きケモノの頭が、鋭い形状の赤い瞳に攻撃的な色を宿らせ、ギロリとミナミを睨む。

 

『……っ!?』

 

 戦士の凛々しさとはまた違う、獰猛で荒々しい威圧感。ミナミの精神はヒュッと息を呑んだ。

 

「そこから降りろ!FM星人!」

 

 油断なく左手を構えた青い戦士が、声変わり前の高い声で勇ましく叫ぶ。やはり彼はミナミと同じ歳ごろの少年の様だ。

 

『え、えふえむ…?』

 

 少年が放った単語の意味が、ミナミにはまるでわからない。降りろというのは空から降りろという事だろうが、えふえむ、なに…?

 

「は?はむそーせーじ?」

 

 呆けた声でほげ〜っと返すカシオペア。ミナミの精神は思わずずっこけた。

 

「は、はぁ?」

 

 見ると、青い戦士もウェーブロードでずるっとずっこけていた。困り顔で此方を見上げる小さな戦士のちょっぴり気の抜けた姿に、ミナミは場違いながら少しだけ親近感を覚えた。

 うん、わかるよ、青い誰かさん。このカシオペアってヒト、ホントわけわかんなくてアホなんだ。

 呆れ返るミナミに構わず、カシオペアは優雅に腕を組んで戦士を見下ろした。

 

「なんじゃキサマ、最近流行りの腹ペコ系か?」

 

 胡乱な目を戦士に向けたカシオペアは、どこか小馬鹿にした様な態度で右手をヒラヒラさせた。

 

「あいにく物乞いなら間に合っておるわ。ほれ、シッシッ!」

 

 あっちいけ!と馬鹿馬鹿しげに手を振るカシオペア・レグナント。どうやら彼女には、己こそがこの場で一番馬鹿馬鹿しい存在であるという自覚が無いらしい。

 

「な、なんか…変なヤツだね…?」

『油断するなスバル、アイツのチカラはホンモノだ……しかしあそこまでアホなオンナだったか……?』

「え?」

『なんでもねぇよ』

 

 困惑した様子で何事か囁き合う戦士とケモノ。バクバクと口を動かす小さな頭と言葉を交わす様は、まるで腹話術師の一人芝居だ。

 

「ふん、ヨを無視してこそこそナイショばなしとは、なんたる不敬か。じゃが———」

 

 カシオペア・レグナントは、異形の左手を持つ戦士からくるりと背を向け、スッと身体を上空へと浮上させた。

 

「よろこべ小僧。今ヨは清く正しい慈善活動に忙しくてな、キサマに構っているヒマなど無いのじゃ。よってこの場は見逃してやる。どこぞへ去ねよ、ヨの寛大さに涙しながらな」

「なっ、待てっ!?」

 

 尊大に言い放ったレグナントは、ジャンプして追い縋ってくる戦士を華麗にスルーして、ふわりと両手を掲げた。オーケストラの指揮者の様な、優美で荘厳な『あの動き』だ。

 

『あっ…!?』

 

 ミナミが気づいた時には、もう遅かった。ニヤリと笑ったレグナントが、サッと両手を振り下ろし、楽しげな声で高らかに叫んだのだ。

 

「プライドワインダー!それゆけーッ!」

 

 瞬間、レグナントにかしづいていた八本の黒剣『プライドワインダー』たちが、再び町中に散らばっていった。放たれた黒剣たちが、目にも止まらぬ速さでコダマタウン上空を飛び交い、生き残りの暴走車たちに狙いを定めていゆく。

 

『あのヤロウまたッ!?』

「ロック!!」

『おうッ!!』

 

 焦りを孕んだ戦士たちの声が下から聞こえてくる中、ミナミはカシオペアに必死に呼びかけた。町の破壊を止めさせる為に。

 

『カシオペア、カシオペアっ!』

 

 ミナミの声に合わせて、カシオペア・レグナントの胸元に光る赤い宝玉が、ビカビカと激しく点滅する。どうやらミナミの意志に呼応して、宝玉は光量を増すらしい。

 ミナミの声に気づいたレグナントは、胸元を見やってふにゃぁ〜っと頬を緩めた。その小動物を見る様な態度に、ミナミの精神はビキリと青筋をたてる。

 

「んん〜?ミナミどうしたぁ?かように切羽詰まった声でぇ、ヨの名前をチュンチュンチュンチュン繰り返してぇ?あっ、よもやヨの美貌と美技にぃ、早くもメロメ…」

『違うよ!このおバカッ!』

「おバカ!?」

 

 突然の罵倒にビシリと固まる女王。女王はヒクヒクと頬を引き攣らせながら、胸の玉をぐりぐりと指でつねった。

 

「これっ!言うに事欠いてバカとはなんじゃバカとは!?悪いコト言うのはこの口か!?ん!?」

 

 子どもを叱りつける様な口調のカシオペアに、ミナミは更に噛みついていく。

 

『口ならキミに盗られてるよ!いいから下を見て!』

「なっ、ヨに指図するか!?」

 

 普段静かな人間は、一度怒るとなかなか止まらない。その例に漏れずミナミはガミガミとカシオペアに食らいついていくが、彼女もまた譲らない。キッと形のいい眉を怒らせ、点滅する宝玉をぺチッ!と叩く。

 

「えぇい、弁えんか!このプリティ小童が!いかにヨのバディと言えど、女王たるヨに命令する事など断じて許さぬ!この騒ぎが収まったら、きっちり処すから覚悟しておれよ!?ヨが手ずからおしりぺんぺん百叩きの刑に処して———」

い・い・か・ら下ッ!!

「ぬほっ!?」

 

 ミナミの怒号と同期して、カシオペア・レグナントの身体がガクンッ!と前のめりになる。

 

「なん、じゃと…ッ!?」

 

 脚をピンと伸ばしたまま、強制的に腰を直角に曲げさせられた女王。齢幾歳も数えぬかよわい少年に、一瞬とはいえ肉体の支配権を奪われたその事実は、彼女に大きな衝撃与えた。

 

「よ、よもや…!?こ、このヨが…女王たるこのカシオペアが、あろうことか腰を折らされるか!?おのれミナミ、なんと恐ろしい子…ッ!」

 

 最敬礼の姿勢のまま、驚愕と屈辱にワナワナと震えるレグナント。だが一方で、彼女はミナミの精神が見せた意外な爆発力に心底関心してもいた。このミナミとやら、ただ見目麗しいだけの美少年というワケではないらしい。

 

「ク、クク、ククク…ミナミ、ミナミ、北空ミナミ、か。ヨと周波数がピッタリなだけでなく、かような強情さと反骨心まで持ち合わせておるとはな…むふっ、むふふっ!いやはや、なかなかどうして、面白い……!」

『ふぅ、ふぅ、え……?』

 

 声には出さず、口の中でぶつぶつと呟く女王に、依然怒りながらも怪訝な顔をするミナミの精神。

 カシオペアは、ニヤリと不敵な笑みを白いかんばせに浮かべながら、先ほどとは打って変わった静かな声色で口を開いた。

 

「…ふぅ、してミナミよ?下と言うたが、一体どこを見ろと言うのじゃ?ん?」

『え?あ、うん…』

 

 突然聞き分けが良くなった女王を訝しみながらも、ミナミは気を取り直して彼女の説得を再開した。

 

『…えっと、そう、アレ!道路を見て!』

 

 ピカピカと宝玉を瞬かせながら、ミナミはレグナントの右腕をすっと動かした。一度派手に動かしてコツでも掴んだのか、ミナミにもある程度レグナントの肉体に、自身の意志を反映できる様になってきていた。

 だが、そんな進歩を喜ぶヒマなど、今のミナミにはない。

 

『あの剣を止めないと!あんなやり方じゃ、中の人たちが死んじゃうよ!』

「なんじゃと?」

 

 必死なミナミの訴えを聞き、カシオペアは素直に意識を眼下の町へと向けた。

 町には未だ暴走を続けるクルマたちが多数おり、そんな暴走車たちを、彼女が放ったワインダーたちが手当たり次第に破壊している。そして、そんなクルマたちがひしめく道路を、謎の緑色の閃光が猛スピードで飛び回っていた。

 

「……んん?」

 

 見知らぬ緑の光はさておき、そんな町の様相を目にしたカシオペアは、はて?と首を傾げた。

 

「いやいや、あんなんじゃ死なんじゃろ普通?確かに多少派手にひっくり返ったり、跳ね飛んだりはしとる様じゃが…」

『は…はぁッ!?』

 

 すっとぼけた発言にミナミは再び声を荒げたが、カシオペアは本当に訳が分からないといった様子だった。

 

「いかに物理的な肉体を持つ生命体であろうと、あの程度の衝撃にも耐えられん様な脆弱な種が、かような文明を築ける筈もないじゃろうて。フツーに大丈夫じゃろ、ジョーシキ的に考えて…なぁ?」

『な……』

 

 ミナミの精神は、あんぐりと口を開けて固まってしまった。開いた口が塞がらないとは正にこの事だ。

 

『な、何言ってるのさ!?』

「ふおっ!?」

 

 思わぬ怒声が飛んできて、思わず素っ頓狂な声をあげるカシオペア。ミナミは畳み掛ける様に捲し立てた。

 

『ボクたち人間は、ちょっと殴られたり蹴られたりするだけで、カンタンにキズつくんだよ!?わかる!?ただヒトに殴られるだけで、すっごく痛いんだよ!?骨が欠けたり、折れたりする事だってあるんだよ!?それを、それをあんな……!』

「ファッ!?な、なんじゃとォ!?」

 

 イヤに実感の篭った、酷く悲痛なミナミの声に、カシオペアは心底から驚愕し、慄いた。

 

「う、ウソじゃウソじゃ!そんなのウソじゃ!だってヨが、ヨが知ってる数多の星々では…!」

 

 気づけば、カシオペア・レグナントは半泣き状態だった。グリーンの瞳に大粒の涙を溜めて、縋る様に胸元の宝玉に泣きついている。

 そんな泣きべそ女王に、ミナミは鋭く怒声を返した。

 

『他所の星なんて知らないよっ!』

「ヌッ!?」

 

 怒りと悲しみがないまぜになった幼い悲鳴に、カシオペアは強く胸をうたれた。

 北空ミナミは、同年代の誰よりも『痛み』を知る少年なのだ。人々の痛みと苦しみを想像し、彼もまた涙混じりの声になっていた。

 

『お願い、やめてよカシオペア…もう、やめて…うぅ……』

「ぬあっ!?な、泣くなミナミ!泣くでない!」

 

 グスグスと鼻を啜りだした幼子の精神に、女王は激しく狼狽した。

 自分好みの美少年が、あろうことか自身のせいで涙を流している。そんな悲劇は、当然彼女的には大大大NGなのだ。

 

「よ、よぅし!ならば挽回、挽回じゃ!ミナミ、ヨは今からめちゃ挽回するぞ!ただの挽回ではない、めちゃ挽回じゃ!よーく見ておれ、ヨの勇姿!」

『グス、グスっ…え……?』

 

 焦りに焦った声で姿勢を正したカシオペア・レグナントが、ダラダラと顔中を汗まみれにしながら言い放った。

 意味がわからず首を傾げるミナミの精神に構わず、レグナントは自身の周波数を爆発的に引き上げ、ライムグリーンに輝く光のイナズマへと姿を変えた。

 

『う、うわっ!?なにこれ!?』

「ゆくぞミナミよ!そぉぉぉぉれエントリィィィィィィィィィィィィィィィィッッ!!」

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?』

 

 眩い不可視の電光と化したレグナントが、文字通り光の速さで急降下していく。彼女が操る黒剣が今もクルマたちを破壊している、地獄のストリートへと。

 

「うおぉぉぉぉ!ヨ、参上ォォォォォッ!」

『うわぁぁぁぁぶつかるぅぅぅぅぅぅ!?』

 

 そんな死ぬほど喧しい閃光が向かう先には、一足先に救助活動に勤しんでいた、もう一人の閃光が。

 

「えっ、何!?何!?なんか来る!?」

『おいやべぇぞスバル!よけろ、よけろ!』

「いやよけろったって!?」

 

 超高速で飛び交う光の戦士の元に、それ以上のスピードで突っ込んでくる恐怖の緑。

 戦士がそれを知覚した時には、既に遅し。強烈なグリーンのイナズマは、彼らのすぐ近くまで迫っていた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!?』

「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

『いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?』

 

 大混乱のコダマタウンに、四つの大絶叫がコダマした。

 

 

 






こ の 始 末 。

基本この作品は(少なくともコメディ中は)こんな感じで進みます。可能な限りIQを下げてお楽しみください。

余談ですが、更新報告&雑談用にTwitterを開設しました。作者情報ページにリンクを載せましたので、気が向いたら是非どうぞ♨︎

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