流星のロックマン1.5 -Cassiopeia Duo- 作:はっぽーしゅ
何ヶ月ぶりの更新なのだよ
暴走車に囚われた人々の救出に尽力するロックマンに全力突撃をかましてきた、はた迷惑で喧しい緑の稲妻。
やたら雄々しい叫びを轟かせながら猛スピードで突っ込んできた恐怖の緑に、スバルとウォーロックは思わず大声をあげてしまう。
「…え?」
だが、身構えた大激突は意外にも回避された。
「待っとれ生きとれェーッ!」
閃光と化した謎の電波人間は、紙一重でロックマンの至近を通り過ぎ、今まさにロックマンが飛び込もうとしていた暴走車へと、矢の様に飛び込んでいったのだ。
「レスキューこそソルジャーッ!」
勇ましい叫び声と共に人命救助に加わった電波人間の女。スバルとウォーロックは思わず足を止めて目を見合わてしまうが、その間にもライムグリーンの光は次々と道路中のクルマたちに飛び込み、取り残された人々を救い出している。
『剣の気配も消えてやがる…スバル!』
「うん!」
すぐに気を取り直したロックマンは、再びライトグリーンの流星へと姿を変えて彼女に続いた。
あの電波人間が何を企んでいるのかは未だ分からないが、今優先すべきはそこではない。
隣人の生命と心を守る為の変身。それが自分たちの電波変換なのだから。
「これで———」
超高速で町中を飛び交い、次へ、次へ、また次へ。ライトグリーンの流星とライムグリーンの稲妻が、コダマタウンに眩い緑の星座図を描く。
「———ラストッ!」
二人の電波人間が魅せた全力により、コダマタウンの道路中に取り残された哀れな人々は、誰一人残す事なく安全地帯へ助け出されたのだった。
「はぁ、はぁ……」
『ま、上出来じゃねぇか?』
「だといいけど…はぁ…ふぅ…」
タウン中央の上空に架かるウェーブロードで片膝をつくロックマン。荒く息を吐いて肩を揺らすスバルと、ぶっきらぼうに労うウォーロック。
そんな二人のすぐそばに、黒い女が舞い降りる。
「やるではないか。青い小僧に手のイヌよ」
いつの間にか町から消えていた八本の剣を再び侍らせた件の電波人間が、グリーンの瞳に不遜な光を込めてロックマンを見下ろしていた。
「っ!?」
『テメェ!』
すぐさま立ち上がって左腕を構えるロックマン。
女はヒラヒラと右手を振って、くつくつと可笑しそうに笑った。
「ククク!そう勇むな。ただの労いじゃ」
ロックマンより少し高い位置にその身を浮かばせた黒い女が、胸の下で腕を組んで尊大に二人を見下ろす。針の様に尖ったハイヒールがキラリと光り、スバルの未成熟な精神に攻撃的な恐怖を与える。スバルはゴクリと喉を鳴らし、ツバとともにその恐怖を飲み込んだ。
そんなスバルの畏怖心を知ってか知らずか、女は更に見下す様に顎をしゃくり上げ、組んだ腕に力をこめて自分の胸をグッと持ち上げた。
「その小さき身体で、よくぞヨにも並ぶ成果をあげた。宇宙を統べる女王として、ヨ直々に褒美の言葉を賜わそう。よくぞやったな!よいこよいこじゃ!」
「……」
『……』
好き勝手にベラベラと喋る女に白けた眼を向けるスバルとウォーロック。女は鼻高々で気づいてもいない。
「ククク、喜びのあまり声も出せんか。よいよい、許すぞ。ヨの言の葉は天上の歌、誰もが聴き惚れ酔いしれるものじゃ。いやはや、ヨってほんと罪深じゃのぅ。はぁ〜罪深ぁ〜」
女は宙に浮いたまま虚空に座り、長い脚を見せつける様にして大袈裟に組みかえた。周囲にかしづく剣のうちの二本が刀身から緑の光を発し、大きな光の団扇となって女を扇ぐ。何でもない島国にある何でもない町の上空は、あっという間に女王の玉座になった。
『…おい、女!』
突然ウォーロックが、威嚇する様に鋭い声をあげた。バクバクと動き出した左腕の相棒の唐突な言動に、スバルは首を傾げてしまう。
『オレの名はウォーロック!こっちのガキは星河スバルだ!オレたちは二人でロックマンと名乗っている!さぁ、テメェの名を言ってみな!』
「ロック?いきなりなにを」
『黙ってろ、気になることがあんだよ…おら、名乗れ!』
「…ほう?」
二振りの団扇に扇がれながら優雅に寛ぐ女王は、ロックマンにゆるりと流し目を向けて口元を歪めた。
「作法も知らぬどこぞのイヌっころかと思うておったが、なるほど躾はしてある様じゃな?先に名乗るのは大事な事じゃ。ちゃんと出来ててえらいぞウォーロック。じゃが」
ピン、と長い人差し指を立てる女。
その瞬間、女にかしづく黒い剣たちのうちの四本が、瞬間移動もかくやといった猛スピードでロックマンの周囲に殺到し、あっという間に彼らの周囲を取り囲んだ。
「なっ———」
「ヨに対してテメェとはなんじゃテメェとは?おい。ヨは女王ぞ?ん?マジで不敬なんじゃけど?」
『……』
突然向けられた鋭い切先と殺意に気圧され、スバルの喉からは震えた声が漏れたが、歴戦の闘士であるウォーロックは動じない。変わらず女を睨み続ける相棒の鋭い赤眼に、スバルは尊敬にも似た頼もしさを覚えた。
「ふん、まあよいわ。ケモノに作法などはなから縁なきモノよな。先の働きもある。許してやるぞウォーロック。ほれほれどうじゃ嬉しかろう。キャンとひと鳴き鳴いてみよ。ほれ、キャンと」
『フゥー…フゥー……!!』
「(あ、すごい怒ってる)」
額にビキビキと極太の血管を浮かばせる青いケモノの頭。短気で粗暴な性格がトレードマークな相棒が見せた意外な我慢強さに、スバルはこっそり感心した。
(でもやっぱりヘンだよ。こんなのロックらしくない)
未だに秘密主義が抜けきらないウォーロックの企みを訝しみながら、スバルは改めて自分たちを見下ろす黒い電波人間を睨み上げた。
「あーダル。言っとくけどアレじゃから。ヨのシマだったらマジで串刺し案件じゃから」
尊大に言ってのけた女はすっと立ち上がり、再び胸の下で腕を組んで虚空に仁王立ちした。
「我が名は」
———その時だった。
「カシオぽげゃっ!?」
「あ」
『あ』
ガクン!と前につんのめり、ロックマンのとなりにべちゃりと倒れ伏す女。
女の黒い後頭部は、背後から押し寄せてきたモエローダーの群勢に思い切りしばき倒されたのだ。
上空のウェーブロードにいつの間にか集結していた大量のモエローダーたちが次々と殺到し、女の背中をバシバシと轢き倒していく。
「あばばばばばばばばば!?」
「だ、だいじょぶ!?」
「だいじょばぬッ!!」
情けない悲鳴をあげる女の細い背中を轢いたモエローダーたちは、その勢いのままにぽんぽんと飛び跳ねて周囲のウェーブロードへと飛び移り、女とロックマンたちを取り囲んでいく。
「ロック!」
『ったく話の途中だってのによ!』
素早く体勢を整えるロックマンの足元で、ぷすぷすとケムリをあげる黒焦げの女。
『ちっ。おいバカ女、生きてるか?』
みっともなく大の字に倒れ伏した女に、吐きつける様に声をかけるウォーロック。
女はぴくりと耳を痙攣させたかと思うと、ガバリと勢いよく立ち上がり。激しく頭を振って全身の焦げを振り落とした後、血を吐く様に絶叫した。
「バカとはなんじゃ!!!!!」
『そっちかよ』
「だいじょぶそうだね」
多分に呆れを込めたジト目で女を見やるスバルとウォーロック。この短時間で、彼らはすっかりこの電波人間の扱い方を把握していた。
「えぇい、ゆ゛る゛さ゛ん゛!こんくそったれのアチアチどもが!よくもこのカシオペアの背中を荒々しくウェルダンにしてくれおったな!最早容赦も戯れも不要!チリひとつ残さず消し飛ばしてくれるわ!おいロックマン!」
「えっ!?」
突然名前を呼ばれて驚くスバルに、女は右手にライムグリーンに輝く光の鞭を出現させながら完全にキレた声で怒鳴りつけた。
「キサマはそっちの半分をやれ!ヨはこっちのヤツらに誅を下す!」
「え、は、はい!」
「励めよッ!」
反射的に返事をしてしまったスバルに目もくれず、女は『おんどりゃあぁぁ!!』と絶叫しながら上空のウェーブロードへと猛スピードで飛翔していった。
『くそっ、ふざけた女だ』
「ほんとにね…でもウィルスはやっつけないと!」
『あぁ!ムカつくけどな!』
腑には落ちないが、それはそれ。ロックマンは過去に類を見ない電波ウィルスの大群を駆除する為、とっておきの切り札を宙に放った。
「スターブレイク!」
天馬の紋章が描かれた特別なカードが宙を舞い、それをウォーロックが荒々しく捕食する。
瞬間、ロックマンの全身は眩い光に包まれ、青白いアーマーと翼を備えた、神々しい姿へと進化を遂げた。
「ロックマン、アイスペガサス!」
ミナミくんの霊圧が消えた…(次回は出てきます)
諸事情で初っ端からエタりかけてましたが、またちょこちょこ更新してきます。不定期更新ですが、気が向いた時にでも覗きに来てください。更新報告はTwitterでやってますが、基本しょーもない呟きばっかりなのでフォローはオススメしません(セルフネガキャン)