蒼都になったけどバンビちゃんが死ぬほど面倒臭い(※死ぬ)   作:黒兎可

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運が良いのか悪いのか、ダイスがどうあがいてもスーパースターしか選択させてくれなかったのでアニメにならい? スーパースターと、それはそうとして久々のミニーニャ回
例によって変な描写や設定的なアレはダイス結果なのでご注意です(そしてまた長い)


#014.独裁と癇癪と嵐の前

 

 

 

 

 

「お邪魔するわぁ。ブルー、今暇ですぅ?」

「――――よっ、ほっ。……あれ、ミニーちゃん」

 

 聖章騎士(ヴェルトリッヒ)として正式に騎士団入りしたブルーこと蒼都。その際に供された私室は未だ私物がない。以前の生活においても服以外の私物らしい私物は、任務に必要なもの以外は持っていないのだが、おかげで未だに部屋の印象は真っ新に真っ白のままだ。そこでブルーは上着を脱ぎ、拳法の型とも素振りともつかない動きをしていた。腕には霊子兵装たる狼の顎が両腕に上下で形成され、その先端からは三つの鉄爪のようなものが伸びている。

 そんな彼を見てミニーニャ・マカロンが一番最初にしたのは、まず何よりも彼の部屋の戸を閉めて鍵をかけることだった。

 

「ミニーちゃん?」

「ええ、その、別にヘンなことはないけれどぉ、今のブルーをバンビちゃんに見せたら凄いことになっちゃいそうだから~、入って来れないようにぃ、ね?

 …………せめて上は何か着ないかしら、私もちょっとドキドキしてきちゃうの」

「タンクトップ着てるよね」

「そう言う問題じゃないけれどぉ~(困)」

 

 ミニーニャはそう言いながら少し拗ねたように唇をとがらせ、しかし顔はどこか赤くなりながらちらちらとブルーの方を見つつ、両手の指先をツンツンと突き合わせていたりした。高身長の彼女がそんなあざとい程の乙女チックな仕草をしても他の滅却師なら妙な威圧感を感じるものだが、生憎とブルーはそうでもない。

 お互い幼少期の幼児期から騎士団で育ったような関係なのだ。ミニーニャの方が年上で自分よりはるかに早く大人の姿になったからとはいえ、ブルーにとっての、当時の小さな女の子だった印象が消え去る訳ではない。

 

(それに何と言うか、原作よりも少しキャラが違う気がするし……。これもバタフライエフェクト的な何かかな。まあよく面倒事はスケープゴートされるけど…………。バンビちゃんに比べれば可愛いものだし)

 

 原作より軽減されているとはいえ彼女もそれなりにアレな部分はあるが、相対的にバンビエッタに比べればはるかにマシという結論が出る時点で、今日もブルーは平常運転だった。

 なお色々言いながら、ミニーニャは持って来たバケット(真っ白)の中から都合よく持っていた真っ白なフカフカタオルで、ブルーの顔や体を拭く。時折ちょっと目を大きくしたり、唾を飲んだりしているのを見なかったことにして、ブルーは彼女に何の用事かと問い直した。

 

「要件が特にあるわけじゃないですけどぉ……。一応独り暮らしだし、どんな感じになってるかと思いましてぇ~」

「どんな感じも何もないと言うか。でも、えっと、てっきりバンビちゃんに『あなたの部屋なんてないわよ!』って言われて没収されると思ってたから、色々用意してなかったってのはあった」

「それは確かに、私もびっくりですねぇ~?(謎)」

 

 ブルーとミニーニャの言う通り、バンビエッタは蒼都の幼少期に「あなたのものはあたしのものよ!」と言ってブルーの私物を取り上げて、少し遊んでは興味を無くして爆破を繰り返していたこともあったりするくらいには、彼の扱いが雑である(あまりに酷すぎたためキャンディスがそれは止めに入った)。その時の経験もあってか私物をあまり持つことのないブルーであったが、その時の経験もふまえて色々と予想していた流れである。

 しかし実際は何が起こったかと言えば、特に何か言うでもなく「ちゃんと掃除はしなさいよー!」くらいしか言わず彼の私室については、話が終わってしまった。バンビエッタの今までのあれこれを鑑みて、あまりにもまともな発言である。これにはリルトットを除いたバンビーズの面々一同目を見開いて二度見し、ブルー本人も一瞬何を言われたのか意味を理解できず硬直したりもした。

 

 そして、そんなバンビエッタとブルーを賭けた死闘を繰り広げていたミニーだったが、結果がどうなったかをブルーは(なんとなく怖くて)未だに聞けていない。一つ確かなのは、ほぼ一日おきに二人が交互に自分にべったり「仲良く」することくらいだ。

 

「それで、ブルーは何をしてたんですぅ?」

(あっ可愛い……)

 

 ブルーの隣に寄って人差し指を立てて頬に当てて頭を傾げ、少しだけ唇をつんとしたきょとんとした表情と言えば良いか。意図的にやっている天然なのかはともかく、ひたすらにあざとさを盛りに盛った仕草であったが、そんな彼女の動きに少し癒されつつブルーは爪を「体内に」仕舞った。

 

「この間、ジジさんと一緒にハッシュヴァルトさんと話す機会があってさ。その時、ジジさんが帰った後に完聖体(フォルシュテンディッヒ)の話とか聞いてた」

「完聖体のお話?」

「うん。何かヒントになればってことでさ。

 ミニーちゃんは最初から使えたみたいだから聞くのもアレかなって思って聞かなかったし、バンビちゃんは何か怖いっていうか、嫌がりそう」

「前に聞いた時にすごい顔されたことありますぅ」

「あっ、やっぱりそうなんだ……。それで、リルお姉ちゃんとキャンディお姉ちゃんたちは面倒がって話してくれないし、ジジさんは多分地雷だから」

「あっ、それは知らなかったですねぇ~」

 

 バンビエッタとジジは何かしら過去に地雷が潜んでいそうな話題になりそうで、残る三名も聞くのが難しい。となれば他の誰かに聞くのが適当という話になるのだろうが、そこであえてハッシュヴァルトに聞きに行くあたりが、ブルーのブルーたる所以である。……具体的に言うと「何であたし以外からそんなこと教えてもらおうとしてるの!」とキレたバンビエッタが何かやらかそうとしたときに、それが出来ない相手へと情報収集しに行ったというのが正しいというべきか。なまじ話したくないことだからこそ、それを重要イベントととらえて自分の絶対性が損なわれることに恐怖を感じそうだなー、という見立てである。

 

「それでぇ、能力の練習してたのかしら」

「練習と言うよりは、『切り分け』がどこなのかなって」

「はぁ……?」

 

 上手くは説明できそうにないんだけど、と言って話を濁した彼の脳裏には、先日ハッシュヴァルトから見せられた、ある意味特大の秘密が回想されていた。

 

『――身代わりの盾(フロイントシールド)

 

 そう言いながら、ハッシュヴァルトは帯剣した剣から取り外した「B」と弓を模して描かれた、古いバッジなのかコインなのかというものを掲げて、その手に「盾を顕現した」。滅却師の霊子兵装らしい意匠が施されたそれを見て、素直に驚くブルーへ、ハッシュヴァルトは判り辛いが少しだけ目を細めた。微笑ましく思っているのだろう、と一応そう判断したブルー。

 

『これは私の能力に直接紐づいた武器だが、決して私の聖文字(シュリフト)から派生したそれではない』

『えっ? えっと、滅却師の礼装ではある、んですよね』

半分は(ヽヽヽ)そうだ。そしてもう半分は異なる――――これは完現術(フルブリング)という技術をベースとした武器だからな』

 

 いわゆる原作知識を持っているブルーからすればそれは既知の情報であり、強いて言えば「ポテト(※ハッシュヴァルトのファン俗称)のそれって、そっち由来だったのがこの世界だと確定か……」というレベルの話でしかなかったが。しかし、あえてその話をブルー本人に直々にするという、その事実一つをもって大層驚いた。

 なお、続けて「皆には内緒だぞ?」とウィンクをしてしーっとジェスチャーしたお茶目っぷりもさらに衝撃を受ける原因だったりするが、ハッシュ本人にその自分の行動がどうとられるかと言う自覚はなかった。

 

『詳しく語るのは避けよう。「余計なことを知りすぎていると」、陛下からまた期待されかねない。その割に陛下はお前のことを、雑に扱われる。…………もっと状況改善を願い出ても受け入れないくせにな』

『えっと、それ言っちゃっていいんですか? ハッシュヴァルトさん……』

『この程度の愚痴は陛下もお許しになられる。お前がたまにする陛下の物真似も、以前、遠くから見て笑っておられた』

『えぇ……』

 

 羞恥とちょっとした寒気に襲われるブルー。あのユーハバッハがそういうので笑うのとか一体何を考えているのかと言う正体不明の恐怖に襲われていた、バンビエッタの下で鍛えた「生命の危機」に対する耐性でもって、表情が引きつる程度にリアクションはとどまった。

 そしてハッシュヴァルトは続ける。ブルーの能力も、その“Ⅰ-不滅-(ジ・イモータル)”に限らず、もう一つ異なる能力が入り混じっていると。

 

『以前の“Σ-鋼鉄-(シデロ)”でさえ、お前の能力には不可解な点があった。それを鑑みるに蒼都(ツァントゥ)、その身にも何かしら完現術なり、それに類するものが眠っていると考えるべきだろう』

『………………? つぁん……? あっ僕の本名か』

『………………………………』

 

 何も言わずにポンポンと、自分よりやや小さいくらいの身長の彼の頭を軽く撫でてから、哀れむような目をやめてハッシュヴァルトは説明を続けた。

 その最後の部分だけを、ブルーはミニーニャに伝える。

 

「聖文字の能力と、異なる能力、その二つが僕に存在して、現在は同時に使用してしまっている。だからその境目を見つけて、切り分けることで、また新しく見えてくるものもあるだろう、って感じだったかな」

「確かにブルーは、鋼鉄時代も何故か『死ななかった』ですねぇ~。よくよく考えてみると、鋼鉄になるだけじゃバンビちゃんの“E-爆裂-(ジ・エクスプロード)”の『霊子浸透による爆弾化』までは防げないし、その割には五体原形残っていたしぃ」

「そうだね。……昔はそれでよく、ミニーちゃんに盾にされたっけ」

「そ、それは! 私だってまだ“P-力-(ザ・パワー)”を使いこなせていませんでしたしぃ~!(泣)」

「昔って言うと、あの時にプレゼントした枕ってまだ使ってくれてるんだったね。それは、ちょっと嬉しかった。ありがとう」

「ひぅ……、ふ、不意打ちはちょっと反則ですぅ~」

「んー、そんなに格好良いこと言ってる訳でも、そこまでイケメンって訳でもないと思うんだけれどなぁ……」

 

 実際問題、原作と比べて目つきという特徴が無くなってしまっているので、モブのそこそこ顔立ちが整っているキャラ程度の印象しか残らなかったりする。

 前髪をいじるそんなブルーの隣に「距離を詰めて」座り、ミニーニャは「そう言う問題じゃないと私思うの」と、これまた人差し指を唇近くの顎にあてて、頭を少し傾げる仕草。可愛い。そしてあざとい。

 

「刷り込みかもしれないけどぉ、安心感みたいなものがあるの」

「安心感?」

「この人なら受け入れてくれるだろうしぃ、何かあっても一緒に頑張ってくれるんだろうな~、みたいな感じかしら。それに、『護ってくれる』んでしょぅ?」

「それはまあ、うん…………、うん……、空襲とか超絶即死レベルでもなければ………………」

「バンビちゃんやジジみたいなサド超えたことは言わないもの、私。

 でも、見栄を張らないけど頑張ってくれそうなところは~~、大好きっ」

 

 遠い目をし始めたブルーにくすくす微笑み、ミニーニャはバゲットから何か取り出した。サンドイッチである。ボイル野菜にベーコンとハム、トマトなBLT風の、それなりに厚みがある豪華さだ。具材の内容が豪華というよりも、しっかりと作り込んでいるという意味での豪華さは、どこか家庭料理らしさを思わせる。

 

「昼食には少し早いけどぉ、食べましょぅ」

「えっ? あ、うん。……うわ、普通に手作りだ」

「キャンディちゃんに教わったの~。上手に出来てると思うわ? 特にソース」

「手作りソース……! あ、でもそういえばキャンディお姉ちゃん、一番そういうの上手だったっけ…………。リルお姉ちゃんもそつなく熟すけど、レシピ見ながら」

 

 伊達に何人もの相手と色恋を重ねていない、キャンディスの意外と女子力の高い一幕はさておき。あーん♡ したり、あーんし返したりと、バンビエッタが居れば目からハイライトを失い歯ぎしり不可避の光景を繰り広げながら、二人は談笑しつつ昼食。“見えざる帝国”においても数少ないレベルでの、あまりにも平和な風景であった。

 

 

 

「――――ふんむ。吾輩こと“S-英雄-(スーパァスタァ)”に頼るとは、中々人を見る目があるぞブルー・ビジネスシティ! ハッハッハ!」

「いや、僕とミニーちゃんが廊下で話してたらなんかぬっと生えてきて無理やり修練場まで連れてこられたんだけど!? ミニーちゃんも何か言って……、あっ居ない、またスケープゴートにされた……」

「何、照れることはない! ジェイムズ、鍛錬のゴングを鳴らせ!」「ハァイ、ミスター!」

 

 

 

 そして、カーン! というジェイムズが鳴らしたゴングの音と共に、ブルーの上半身と下半身はサヨナラバイバイした。昼食後、誰かに相談できないものかと二人して話しながら移動していたところ、唐突に出現した“S-英雄-(ザ・スーパースター)”マスク・ド・マスキュリンと遭遇したのが運の尽き。あれよあれよという間に修練場に連れて来られて、いつのまにか彼が相談に乗る(という体で殴り合いをする)流れに。

 ちなみに蒼都の場合、以前の鋼鉄化の場合はマスキュリンの一撃で沈むことはなく、というよりそもそも全身金属になるので粉砕すらされずに耐久していたのだが、聖文字覚醒後は金属化がオートではなく再生特化の能力となっているため、今の一撃で腹部が粉砕され何処かへと下半身も飛び去ってしまった。どさり、と落ちるブルーの上半身だが、この状態でも案外ブルーは余裕そうである。血を吐くこともなく、だらーっと五体を投げ出し、遠い目をして乾いた笑いが漏れていた。

 

「これでもバンビちゃんよりマシだからなぁ……、追撃して頭潰してこないし」

 

 強く生きろ。

 

 そんな形で相談する間もなくブルーを一撃で倒してしまったマスキュリンは「そういえば『何を』相談したかったかと言うのを全く聞いていなかったな……、“S-英雄-(スーパァスタァ)”一生の不覚!」などと宣い、途中でブルーを身代わりにしてしれっと逃げ出していたミニーニャの追跡に走り、この場から消え去った。カートゥーンアニメのようなデフォルメされた超人っぷりに「これが理想のスーパースターでいいのかなぁジェイムズ君……」などとぼそっと呟く蒼都。

 そんな彼の下半身を、小さな背丈で引きずってくるジェイムズ。服装は聖兵のものであるが、いかんせん体格にそのデザインが合っていないため、服に着られているように見える。とはいえ年齢は決して幼児でもなく、小さいオッサンと呼称される程度には年齢不詳なスキンヘッドの男がジェイムズであった。

 

「うんしょ、うんしょ……、ふぃ! これで大丈夫? ブルー」

「あー、ありがとう」

「いいってことですよ! ブルーはボクのお友達ですもの! ウ〇ヴァリン!」

「確かに能力的にはちょっと似てると言われて違和感はなかったけどね。ジェイムズから見せられたアメコミでちょっと教わったし。……でも、マ〇ベルよりD〇の方が好きなんだよね?」

「いえいえ! キャラクターはスーパ〇マンの方がシャザ〇より好きですが、ストーリーはデ〇ドプールの方がシンプルで超人的でザッツオールライトですよ!」

「拗らせてるなぁ…………」

 

 そんなアメコミ談義はさておき。ジェイムズによって胴体にくっつけるようおかれた下半身は程なく接続され、もう特に傷ついた状態ですらなく元通りである。陥没したはずの腹部はまだ若干「銀色が抜けない」が、それとて数分もあれば元に戻るだろう。

 ほぇ~、と幼児の様な声を上げながらそんなブルーの再生能力を観察するジェイムズ。

 

「これはボクの“S-英雄-(スーパァスタァ)”には適用できないタイプの能力ですね……。モ〇ビウス的な感じです」

「治り方だけでいうと、それこそ俺チャン的なアレな気もするけど。それこそ本家ウ〇ヴァリン程の回復力には見えないし」

「いえいえ、ブルーのことですからきっと大丈夫です! あんな『死の女神』みたいなのに可愛がられていているんですから!」

「その慰めは何一つ慰めになってないよジェイムズ……、って、『ボクの“S-英雄-(スーパァスタァ)”』?」

「アババッ!? な、何でもないんですよ!」

 

 警戒心が緩んでいたせいか何か致命的なことを口走ってしまったジェイムズである。慌てて誤魔化そうとするが、ことこれに関してはブルー個人のみにおいて問題はなかった。

 

 原作知識からして、彼はマスキュリンとジェイムズ両者の関係を正しく理解している――――すなわち、真に“S-英雄-(ザ・スーパースター)”の聖文字を持っているのが、ジェイムズの方であるということを。

 ジェイムズが思い描いた理想のヒーロー、それを作り出すことこそ“S-英雄-(ザ・スーパースター)”の能力。故にマスキュリンは、ジェイムズが居る場においてはほぼ無敵の超人たりえる。実際問題、バンビエッタの“E-爆撃-(ジ・エクスプロード)”の雨霰すら正面から受けて、本当に身体へ傷一つなく立ち上がれるのは彼くらいなものだ(ジェラルドですら多少は焦げる)。もれなくバンビからは自分を殺しうる相手=抹殺対象の一人的な扱いを受けたり受けなかったりだが、暖簾に腕押しなのはブルーの内心だけの秘密である。

 

 そして、そんなマスキュリンに首根っこを掴まれて、ミニーニャがスカートを押さえながら「ひーとーさーらーいーぃぃぃッ!」と涙声を上げていた。「ふんっ!」と投げ捨てられた彼女は、ブルーたちとは反対方向の壁に軽く激突。ぶつかって痛いくらいの威力に調整されているあたり、その妙な器用さは流石に“S-英雄-(ザ・スーパースター)”というべきだろうか。

 

「何で私をまた連れて来たんですぅ~! せっかくブルーが庇ってくれたから逃げたのにぃッ!」

(ミニーちゃんってば過去の改ざんなんてしようとしちゃって……。実際言ってくれれば庇わない訳でもないけど、どうしてあの子はあの子で何も言わず僕を生贄に捧げて逃げ出すんだろう)

「その肝心のブルーも既に話せない状態となっては、いささか“S-英雄-(スーパァスタァ)”としては片手落ちである。相談をしに来たというのなら、さぁ話すと良い! ただし答えるのは拳になるがな!

 幼気なブルーをあのような目に遭わせて平然と逃げ去るその性根、この吾輩が叩き直してくれようッ!」

「言ってること滅茶苦茶じゃないですぅ~~~~!? もうっ、――――“神の独裁(ヤショリニアン)”!」

 

 実際ブルーを一撃でボロ雑巾にしたマスキュリンの発言の意味不明さにキレ返すミニーニャ。実力差を埋めるためにか完聖体まで使用している。そんな彼女たちを見ながら「ジェイムズ君的にあの発言っていいのかな、あんまりヒーローっぽくないけど……」と思いながら横目で彼を見るが。ジェイムズはむしろブルーの方を見て、「相談事ならむしろボクの方が乗りますよ、ヘェイ!」と両手を叩いて楽しそうにしていた。

 まあ、実際問題妥当な人選ではあるだろうが、それにしたって、それにしたってである。

 

 ブルーとジェイムズが話し合っているのすら聞こえない程に、現在のミニーニャとマスキュリンは拳の応酬をしていた。

 

「ほぅ……、この吾輩の正義の拳を受けてなお立ち向かえるか、あの悪魔の様な女が率いる悪徳の巣窟といえど、善なる心は残っているということか!」

「バンビちゃんだけが頭一つ抜けてヤバいだけって私、思うの……って、全員クズって言ってますねぇ! しかも私の(ヽヽ)ブルーの前で!

 許しませぇん――――『一〇倍掌握(テン・カウント)』!」

「ぬぅん!?」

 

 ミニーニャの背部に展開された光の羽根から、ハート型の光が彼女の目の前に集まる。その数は彼女の宣言通りに十。それらをまとめて右手で握りつぶすと、一瞬その右腕が膨れ上がり、目にも止まらないスピードで振りかぶりマスキュリンを殴り飛ばした。

 地面に叩きつけられ、そのまま陥没。白目を剥いてぴくぴくと震えるマスキュリンだったが、その「マスキュリンの口から」、手のひらサイズのジェイムズが新たに「湧いて来て」、「がんばえミスター! 負けるなミスター!」と応援を始める。情景がちょっと悪夢めいていた。

 えぇ? と表情が引きつったミニーニャだったが、そんな小さいジェイムズを「フン!」と叫んで「噛みつぶし」、完全復活したマスキュリン相手に、更に引いた視線を送る。

 

「今のジェイムズさん……? えぇ……? あっちでブルーとお話してますけど、えぇ? ちょっと今の何…………?」

「“S-英雄-(スーパァスタァ)”にはギャラリーが必要である。護るべき罪なき対象であればなおのこと! 故にこの吾輩“S-英雄-(ザ・スーパースター)”は、必要に応じてジェイムズを複製することが出来るのである!」

「正義のヒーローの定義を辞書で調べなおすべきって思うの…………、ギャラリーを自分の回復アイテムとか道具って思ってませぇん?」

「……………………………………」

「あれぇ? ひょっとして図星――――」

「――――輝け、我が“神の威光(ハンニボッヘ)”!」

「誤魔化し方、雑じゃありませぇ~~~~ん!?」

 

 言いながら光の柱を立てず、しかし一気に完聖体のような姿となるマスキュリン。原作における第二形態を経由せず、第一形態たる普段の白装束の上から光の装飾を身にまとった姿は、レスラー然とした服をしていないことも相まってなるほど、確かによりアメコミのヒーローっぽさが際立っている。

 

「さぁ受けるが良い! 我が必殺の――――スター・ロケット・ファルコン・キイィックッ!」

「流石に直撃したら大変なことになっちゃいそうですしぃ……、『三〇倍掌握(サーティ・カウント)』」

 

 両手を広げてハートを三十集め、それを掌握するミニーニャ。そんな彼女目掛けて、空中に飛び上がり完全にライ〇ーキックなポーズを決めて強襲するマスキュリン。

 果たして軍配は…………、マスキュリンに上がった。

 

「きゃあッ!」

「…………む? 我が必殺の空中回転飛び蹴りを喰らって『全身が砕けない』とは、思った以上にやると見える」

 

 超高速キックを正面から、「腕も脚も」ムキムキに膨れ上がらせて受け止めたミニーニャだったが、その威力は殺しきれなかった。受け止めはしたがその彼女が立っていた地面にはひびが入り、しかしそれでも勢いに負けて後方へと弾き飛ばされたミニーニャ。

 今の一撃で解除されたのか、背中の羽根も姿を消している。そのまま後方へ目にもとまらぬスピードで投げ飛ばされ――――――――。

 

「――――っと! い、い、威力凄いな流石に」

「……っ!? ぶ、ブルー!」

 

 そして、そんな彼女を蒼都が受け止めた。彼女から見える状態は、お姫様抱っこである。お姫様抱っこでミニーニャを抱えるブルーに、何か小さなころの胸に秘めていたサムシングがきゅんと来ているような風に何といえない雰囲気で頬を赤らめているが、一方のブルーはそれどころではなかった。

 

 現在の彼は、その下半身が「銀色に変化」しているのみならず。その足を含めた周囲一帯、ジェイムズが立っている地面を含めた周囲まで含めて、まるで氷漬けになったかのように銀色に染め、なんなら彼の足元自体も「地面に溶接されたように」なっていた。

 

 そんなブルーを見て、「ほう……」と何故か満足げのマスキュリンと、こちらもまた満足げなジェイムズ。

 

「よくは判らないが、悩みは解決できたということだな! 流石“S-英雄-(ザ・スーパースター)”! 流石吾輩!」

「あ、あはは…………。実質的には間違ってなさそうなのが何とも言えないなぁ」

「ブルー?」

「あ、何でもないよ、ミニーちゃん。

 ……それはそうと、ジェイムズ。相談に乗ってくれてありがとうね。お陰で色々『判った』」

「ハァイ! お役に立てて良かったです! じゃあまた、参考になるコミックの準備でもしてますね!」

 

 フッハッハッハ! と大笑いしながらジェイムズを肩に乗せて、飛廉脚……にしてはスピードが意味不明なレベルの移動速度で姿を消したマスキュリン。そんな彼らを「嵐のような人たちだ……」と何とも言えない目で見送るブルーを見て、ミニーニャは人差し指で自分の唇をなぞってから。

 

「せっかくだし、このままバンビちゃんたちのところまで運んでくれませんかぁ、ブルー?」

「えっ? 別にいいけど、何それ……、バンビちゃんに見せつけるつもりなの? 結局あの後、二人の対決結果がどうなったかとか色々知らないから、命知らずな発言にしか聞こえないんだけど」

「バンビちゃんも手を抜いてくれてたみたいだけどぉ、一応は引き分けに終わったもの。暴力だと決着がつかないから、後日話し合いしましょうね~ってことでぇ、それまでは日替わりでブルーとくっついていいってことで」

「そういう話、全然聞いてないんだけどなぁ……」

「まあバンビちゃんですしぃ? 私もメリットが大きいしぃ、特には反対しないというか、意外とそういう約束は律義に守るのよねぇバンビちゃん。

 あと、そういう風に私のリクエストも許してくれるくらい、ちょっと変わったってことかしら」

 

 バンビちゃんも成長してるのかしらねぇ、とか何とか言いながら、首に手を回して抱き着く形で、すっとブルーの頬に口づけたりして微笑むミニーニャ。

 そんな彼女の胸が自分の胸板にくっついて柔らかいなぁとか、そんなことを考えているが故にブルーはしばらくそのまま彼女の好きにさせていた。

 

 

 

 なおそんな状態で帰った結果、当然いつもの全員たむろしている一室にてバンビがブチ切れたのは当然な余談である。一時的な共有は許しても目の前でイチャつかれるのは耐えられないからね仕方ないね。

 

 

 

 

 




※ジェイムズとの会話の詳細を入れる隙間がなかったので、そのあたりは多分次回

拙作「メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)」と合流ルートに行く?(する場合はたぶんこちらで色々先行公開)

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