蒼都になったけどバンビちゃんが死ぬほど面倒臭い(※死ぬ) 作:黒兎可
例によってダイスが粗ぶっているので諸々ご容赦ください・・・
「頭最っ高に良いバンビちゃんは考えたの、どう勝負したらミニーと優劣を競えるかって! だったらあたし達じゃなくって、ブルーにジャッジさせたら良いじゃない! そしたら平等よね平等、やっぱりバンビちゃんってば天っ才! 大・天っ才! 国民性と言うか人種が出るのかしらね~!」
「贔屓無しだと秒速で負けるぞサイコビッチ」
「サイコビッチ!? 優性人種たるバンビエッタちゃんに何てこと言うのリルってば!?」
「人種云々関係なくバンビだから問題なんだろォが、バンビだから」
リルトットの罵倒にすわ「心外な!」と言わんばかりに目を大きく見開いて抗議するバンビエッタだが、この場にて誰一人としてフォローに回らない時点でお察しである。
例によってバンビーズがたむろしている集合部屋にて、バンビエッタが両腕を組んで得意げにのたまった。毒を吐いたリルトットはともかく、ジジは「バンビちゃんは今日も相変わらずだな~」と適当に笑っている。キャンディスは「今日は何?」と寝不足なのか面倒そうであり、ミニーニャはミニーニャで「でも私もお洗濯とかちょっと苦手だし……、破っちゃうから」とかブツブツ独り言をつぶやいている。
肝心のブルーはといえば、シンプルに困っているようだった。
(僕にジャッジしてもらうって言ったってさぁ……、いやそもそも何をジャッジしてもらうって話なんだけど、内容によってはこっちもバンビちゃんを庇えないっていうか)
こちらもフォローはなかった。
現実は非情である。まあ普段から頭バンビエッタちゃんだからね仕方ないね。
それはそうと眼前で揺れるバンビエッタの胸に視線が釘付けだったりするあたりは、ブルーも大概ブルーである。どうしてこう育っちまったかな、と彼を見て肩をすくめるリルトットは、当然のようにバンビエッタの文句をほぼ100%聞き流していた。
「はーっ、はーっ、…………まだ文句は言い足りないけど、まぁ良いわ。せっかく呼んでおいて、無駄に待たせるのも可哀想だもの」
「っ!? い、いや、まあそりゃそうなんだろォけど……」
そして「ゲストを呼んでるわ!」と言った手前か、その相手へ最低限の気遣いらしきものを発言したバンビエッタを思わず二度見したリルトットであった。
「紹介するわ!
頭ヘンなニケと、右の方のハゲロイドよ!」
「その呼び方止めてバンビちゃん!? ボク笑いすぎて腹筋おかしくなっちゃう!」
なお紹介文があまりにもあんまりなので「あぁいつものバンビで安心した」と投げやりな顔になるまでワンセットである。
彼女に言われた通りに連れてこられたのは、相変わらず髪型がトンがっているベレニケ(寝起きなのか遊〇王のような寝癖になっている)と、もう一人。「削がれたように」薄い耳の箇所にプロテクターを装着している、額に「第三の目」のようなものがある青年。こちらも寝起きなのか目をくしくし擦っているが、挙措がそれこそかつてのブルーよりも幼児めいて見える。“
彼らの登場、真っ先にベレニケの髪型を見て爆笑するキャンディスと「せめて顔くらい洗ってから連行しろよクソビッチ」と悪態をつくリルトット。ひとしきり笑い終えてから、続くロイド・ロイドを見て「陛下のお気に入りじゃん、元気してるー?」とニコニコ手を振るジジと、自分の世界から帰ってきていないミニーニャ。
「おはよううございます、ベレニケさんとRロイドさん」
「お、おはよう…………、ちょっと待ってくれ、髪型だけ霊子を収束して調整するから」
「……………………」
寝ぼけた目をしながら両手に霊子を集めて髪を撫でつけ、疑似的なワックスのようにして調整するベレニケと、かくん、かくん、と首だけが前後に揺れて首肯しているのか寝ぼけているのか判断がつかないロイド・ロイド。なんなら額の第三の目すら半眼で眠たそうだ。
非番だろコイツ等と口にするのを止め、リルトットはバンビエッタに足を組み直して確認する。
「で、何だよコイツら呼んで来た理由って。ベレニケの方はまだ判らなくもねェけど」
「随分偉そうにふんぞり返ってるけど、寛大なバンビちゃんはそれも許してあげるわ! あたしは寛大だから許してあげるわ!」
(全然許せてなさそうだけど、リルお姉ちゃんが気にせず毒吐けるってだけ少しはマシになったのかなぁ、バンビちゃん…………)
「ブルー、あなたヘンなこと考えてないその顔!?」
「い、いや!? ぜ、全然考えてない、考えてない。バンビお姉ちゃん、今日もキレーだなーって」
「そう? ………………………………う、うん、まぁ良いわ。
頭ヘンなニケはともかく、ハゲロイドはアレよ! アレ! コイツにブルーをコピーさせるの!」
「コピー?」
「どうしてわざわざー?」
ちょっと赤くなったのを誤魔化す様にテンションを上げたバンビエッタにキャンディスとジジからツッコミが入る。もっともリルトットは「あー、なるほど」と納得したようだった。
「ブルーって、何かこう、一部の
「あーそれねー」
「ふぇ? 今、私の名前呼んだぁ?」
上の空だったミニーニャにバンビエッタが適当に話の流れを言うと、続けて今回ロイド・ロイドを呼び出した(連行した)理由について語る。
「で、傾向から言うと多分、頭ヘンなのが使う能力もあんまり通用しないと思うんだ。ニケの能力でブルーの思考誘導とかしようとしても、上手く行かないんじゃないかなって、バンビちゃん思う」
「だからその頭ヘンという呼び方をいい加減直してもらいたいのだが……?」
「で、思った訳! だったらブルー本人じゃなくって、ブルーをコピーさえ出来れば、そっちに頭ヘンなニケの『異議がある!』も使えるでしょって!」
説明は大分雑だったが、おおむねこれには納得がいった面々である。
Rのロイド・ロイド、その聖文字“
その効果がブルー本人に直接作用するものではないため、おそらくは有効だろうと言うバンビエッタの(意外と冴えた)判断だった。
(記憶のコピーとかもあるみたいだけど、大丈夫かな……、一応聞いてみるかな?)
なおそんな蒼都の確認には「変身中の記憶は変身中だけ持続する」と本人が返答したので、このあたりのリスクについては「転生者的に」軽く見積もっているというのはある。
「まァ理屈はわからなくもねーけどなァ……、お前大丈夫かよ、陛下の所で修業見てもらってんだろ? 非番っぽいけど抜け出してきて。絶対バンビとか騎士団長に話通したりしてねェだろ」
「許可は別にいらないとも。それに…………、ブルー個人には興味がある。あの陛下が騎士内定を『わざわざ』先送りにしたと、騎士団長が言っていた」
「はァ?」「何それ何それ?」「どういうことぉ?」「先送り……」
「ブルー、あなた知ってる?」「騎士団入りした当時の事は記憶があんまり…………」
ロイド・ロイドの発言により若干混乱を来したが、ともかく。ベレニケは「手早く終わらせて早い所二度寝をしたいんだ…………」と疲れた様子のまま欠伸を噛み殺しているのもあって、早々にロイド・ロイドによる蒼都のコピーが始まった。
そして始まって早々、ロイド・ロイドは後悔した。
「クリソツ! クリソツじゃんかっ!」
「おー、本当にブルーみてェだな」
「見分けつかないわね」
「えぇー? でもバンビちゃーん、ブルーの方が
「それ見た目からじゃわからないってぇ私、思うの」
「僕よりちょっと前髪が短いかな。…………? あれ、えっと、ロイドさん?」
「――――――――――――ベレニケさん、お手洗いに連れて行ってくれない?」
早々に、ロイド・ロイドが変身したブルーは顔色を悪くし、主にバンビエッタを見た瞬間に口元と鳩尾を抑えてうずくまった。
これにはベレニケも眠気が消し飛び「だ、大丈夫か!? 傷は浅い、心の傷はきっと浅いぞ!」と叫び肩を貸して早々に一時退散。廊下でダボダボと「大量の液体が零れる音」を鳴らし、アスキンの声が「致命傷じゃねぇの!?」と悲鳴を上げたりしていた。急展開にフリーズしているバンビエッタと、何かを察したらしい他のバンビーズが彼女から一歩距離を取り。
「えっ? どういうこと? ブルー、何か知ってる?」
「と、特には……、んむ?」
「ほら、食っとけブルー」「あんまり今まで話してこなかったけどさ、何か困ったことあったら相談のるからさ、ブルー?」「バンビちゃんはバンビちゃんだよね~、大丈夫だよブルー」「後で膝枕しましょうかぁ、ブルー?」
「ちょっと、何いきなりブルー囲って後宮の主に使える女みたいなことやってるわけ!? リルも何でそんな、滅多にしないようなことしてるの!」
バンビーズの残りの面々が、各々に各々らしい方法でブルーをねぎらっている時点で、察しがついていないことが確定している頭バンビエッタである。当然のようにブルー本人は、ロイド・ロイドが吐いた理由について心当たりがあった。
(僕がなんだかんだバンビちゃんと付き合えてるっていうのは、「転生者」だっていう前提があるからだから、それをしてゲロ出ちゃうくらいトラウマになってたってことは……、前世の分の記憶コピーは出来てないってことで大丈夫かな?)
密かに安心しながら、ブルーはリルトットの差し出した棒スナック菓子をかじりつつ、何だか見たこともないくらいに哀れんだ目のキャンディスに頭を撫でられていた。
閑話休題。
「とりあえず吐き気止めを飲ませて、アイマスクをすることで決着したよ……。アスキン・ナックルヴァールの面倒見の良さに救われたね、こっちのブルーも」
「う、うん…………」※ロイド・ロイドの蒼都
「ちょっと、何をバンビちゃんを見るだけで視神経から浸食してくる新手のホラーのモンスターみたいな扱いしてるわけ!? 異議ありよ、異議あり!」
辛うじて落ち着きを辛うじて取り戻したロイド・ロイドに文句をつけるバンビエッタと、そんな彼女に白けた目を向ける後方のバンビーズはおいておいて。
とりあえず当初の目的通りに、ベレニケの“
なお「前世」について説明できないブルーだけは「多分変な形で出力されるんだろうなぁ……」と思っているが、当然そんなことは共有されない。
「えっと、大丈夫? ロイドさん」
「だ、大丈夫、だよ……? うん、ブルー、大丈夫」
(僕の顔と声と姿形で何だか凄い怯えてるな…………)
そしてまたいつもの事と軽く見て、バンビエッタを止めなかったことを反省した。
「じゃあ、最初に聞くけど…………、あなた誰が一番好きなのよ。あたし達含めて」
「いや、いきなり爆弾放り込んでるじゃんか!?」「私より直球勝負ぅ……」
キャンディスの思わずのツッコミに、本物のブルーは遠い目で苦笑い。一方のロイド・ロイドのブルーの方は、こちらもまた似たような遠目を(アイマスク越しに)して、引きつりながら返答した。
「誰がって、いうより、今の状況? 皆といるって、僕、割と、嫌いじゃない、よ? へ、へへ、寂しく、ない、もの」
『……………………』
そして一発目からかなり重い返答が返ってきた。ついでに言うと「誰が好き」という質問に建前を取っ払って回答させてこの返答である。バンビエッタはこの世の終わりを目の当たりにしたような顔をしてブルーを見て、そして彼の苦笑いに我を取り戻して、頭を振って気を取り直した。
「ん、んんん! じゃあ、手始めにキャンディのことはどう思ってるの?」
「え、えぇっ?」
と、なぜかバンビエッタの隣で少し上ずったキャンディスであったが、もっとも返答を聞いて困惑することになる。
「お、おっぱい大きいなって、思ってる」
「………………えっ、それだけ?」
「いや、バンビの方が動揺してるじゃん。……いやそっか、ちゃんと『そういう目で』見てたんだあたしのこと……、な、何か変な気分」
「まぁ、ねー? ミニーちゃん」
「あながち否定は出来ないかしらぁ……」
「…………そういやバンビもミニーニャも、乳でけェか」
変な空気になっているバンビーズと、そんな彼女たちを尻目に膝をついて頭を抱える本物ブルーへ、こちらも「どうした一体!? 大丈夫かい!」と気遣うベレニケ。どうやらコピーされた分だろう記憶から彼女たちに対するそれぞれの印象へ、当たりがついたらしい。それ故に返答内容が酷いことになると察しがついたが故の苦悩ではあるが、当然それは誰にも通じない。せいぜい性癖暴露をされて恥じらってる程度にしか受け取られなかった。
「じゃ、じゃあ……あたしは?」
なおブルー本人の返答予想もまた、全員に平等に降り注ぐことになるわけである。
「ば、バンビちゃんは、か、可愛いと思う、よ? おっぱい、大きくて」
「えっ」
「あはは〜、バンビちゃん残念♪」
「キャンディがアレだったんだから、まーそんなモンだろ」
「ブルーそれしかないのぉ?」
「アレだけ嬲り殺されて出てくるのがその感想とか……………………………」(※可哀想なものを見るような目)
意外と今回は復帰の早かったバンビエッタが「納得がいかなーい!」と、うがー! と叫ぶ。
「そんなに言うならジジ、ジジについてはどう思ってるのよ!」
「あっ、バンビちゃんそれルールで禁止ー!」
「意外と凄い苦労してる人だと思うから、結構気遣ってもらってるっていうか。だから僕もそのあたりは気遣うよね。あと、地味に家事炊事洗濯も最低限できるし」
途端、流暢になるコピーブルー。突然の饒舌を前に「い、いやぁ………………」と、バンビたちも見たことがないほどに照れ始めるジジである。バンビエッタとミニーニャの表情が死んだのは言うに及ばず、キャンディスもまた「えっこの好感度の差は何……?」と困惑気味だ。
「何でそんな饒舌になってるの…………。じゃ、じゃあリルよリル! なんか下手するとあたしたちより仲良いし!」
「リルお姉ちゃん…………、可愛くて頼りになって、おっぱい小さい」
「あなたのはんだんきじゅん、おっぱいしかないわけ!?」
バンビエッタ・バスターバイン、魂の絶叫である。もともと色目を使ってこないことを前提にサンドバッグにしていた彼女からすれば、その返答は色々と予想外だったらしい。もっともそれでも爆撃しないだけ多少はマシになったと見るべきか、後々のブルーが大変なことになると考えるべきか、ギリギリ「幼児らしい」感想と言う範疇にとどまっていると鑑みるべきか。
「バンビちゃーん、動揺しすぎて赤ちゃんみたいな発音になってるの可愛いーぃ♡」
「これ、あんまり手をかけなかったあたし達のせいじゃないよね……?」
「色目使われるよりはマシだけど、言い方ちょっとイラッと来ンなァ」
「リルお姉ちゃんはライバルにならなそうでホッとしたの」
「呼び方昔に戻ってんよ、ミニーニャ。どこもかしこも酷ェもんだ」
呆れたように言うリルトットは、絶賛ベレニケに励まされている本物のブルーに白けた目を向け、そして少し腕を組んで何かを考え込むようなポーズに。
何やら色々ショックを受けていたバンビエッタは、ソワソワしているミニーニャを見て「何か気づいたら最後になっちゃったけど……」と言いながら深呼吸し、気を取り直した。
「じゃあもう最後になっちゃったけど、ミニーはどうなのよ?」
「身長大きくなった」
「…………へ? それだけ? おっぱいすら言わないの?」
「どうして私がオチみたいになってるのバンビエッタちゃん!?」
ミニーニャ・マカロン、魂の絶叫である。なんならおっぱいについてすら言及がなかった。方々それぞれがそれぞれに納得がいかないと言う顔をしている中、どういうこと! とベレニケに向けて剣を付きつけるバンビエッタ。ついでにその瞬間に本物ブルーの首が飛んだのを見て「ひぇ!?」とドン引きしながら尻もちをついた。びしゃびしゃとブルー本人の血が勢い良くまき散らされる。
「どういうことなのか説明しなさいよ頭ヘンなニケ!」
「お、落ち着き給え、そして落ち着いて自分の行動を振り返り給え、一体僕に何の罪があると言うのだ!?」
「納得いかないから死刑」
「私刑の間違いじゃなーいー?」
「どっちにしても酷いと思いますぅ~」
「いや、色々言ってるけどこんな理由でバンビも本気で殺すつもりないだろ? ないって言ってくれよ?」
「それは、まあ、あったり前じゃない? 陛下の私兵みたいなあたし達なんだから、理由もなくそこそこ長いのをぶっ殺したら、逆にあたしが殺されちゃうし。もうそこは、昔のバンビエッタちゃんみたいな軽率さじゃないし……。
って、あなた達あたしのこと何だと思ってるのよ」
((((((そこに転がってるブルーの死体を見て自分の胸に手を当ててみろ))))))
言葉にはしなかったが、一同一様に同じようなことを考えていた。
なお該当する当人も、首から出た血が「銀色に変化し」そのまま遠方にある頭を引き寄せて接着、既に接合部が銀色な事以外は元に戻っている有様だった。
そしてコピーの方のブルーも、ロイドロイドの地が出ているのか「やはり命は大事にしないと……」と椅子に座りながら、ガタガタ足が震えていた。
「う、うーん……、ちょっと呼吸器がまだうまく接合できてないっぽいな…………」
「おぉ、しばらく喋んなくて良いぞ。
で、あー、アレだろこれ多分。やっぱりブルー本人じゃないから、っていうのが一番ネックなんじゃねーの? ロイド・ロイドにコピーさせたところで」
「どういうこと?」
震えるベレニケを庇う訳ではないが、それより上半身を起こしてせき込むブルーの背を撫でてやりながら、リルトットはバンビエッタに半眼を向ける。
「コピーって言っても、あくまでベースは『なりきり』なンだろ? 陛下があっちのを傍に置いてるって言うのは、それだけ自分のことを常に見せて、考えを真似させようってことなんじゃねェか。
だから、あんまり面識がないブルーの真似したところで、上手くはいかないんじゃねーかって話」
リルトットの推論にはある程度納得がいったのか、とりあえず微妙な空気は少し解消されたものの。
「それで、そうなると結局ブルーって誰が一番好きなのか―――――」
「上手く本題ボカしてまとまろうとしてんだから、余計な事思い出させちゃ駄目じゃんっ!」
キャンディスが空気を読まないジジにツッコミを入れたあたりで、自分のアイデアが上手く行かなかったことに飽きたのか「じゃあ、またミニーと相談して考えるわ」とこのイベントはお開きになった。
※ ※ ※
お開きにはなったが、リルトットはブルーの手を引いて、どこかへと連れ立っていた。
「リルお姉ちゃん?」
「ま、俺があんまり面倒見てやる話でも無ェんだろうけどな……。普通にやったらゲロ吐いてバンビのことまともに見れなくなるまで放置しちまってたみたいだし、ちょっとくらいは真面目に考えてやんよ」
(そんなに気にしなくても良いんだけどなぁ、結構オイシイ思いもしてると思うし…………、それはそうとリルちゃんのお手々やわらかいな、女の子って感じだ)
面倒こそ見てもらっているが、あくまで一線を引いていたリルトット。その彼女から積極的にどこかへと連れていかれるというのは初めてなこともあり、ブルーこと蒼都は緊張していた。緊張していたが、それはそうとレアなイベントを楽しむ(?)的発想が湧くあたりは、中の人は相変わらず中の人である。
さて、彼女に連れられて行った先は、普段なら鹵獲された虚が監禁されている銀架城の地下一角。そこに青白いオーラ、明らかに尋常ならざる結界に覆われた檻。その奥に、リルトットが目的としている彼はいた。
「よォ来てやったぞ、
「――――君にクズ呼ばわりされるのは、妙な気分だね。リルトット」
白いジャケットのような制服をローブ付きでまとい、ポケットに手を入れたまま、カールがキュートな金髪をした少年が、檻の手前に立つリルトットとブルーを見た。
くい、とリルトットが少年を親指で指さす。
「こいつ、グレミィ・トゥミュー。あんま面識ないだろ、紹介しとく」
「あ、どうも。えっと僕は――――」
「――――
片手を上げて微笑むグレミィ。さわやかなその一笑に「うげ」と顔をしかめるリルトット。明らかに嫌がっているように見えるが、お互いに纏う空気は気易い。
ブルーから見れば、彼女たちの関係については小説版の一節より、意外と悪態をつき合ってお互い話し相手として認識できる程度には仲が良い認識(つまりバンビーズを除いた上でのリルトットのオトモダチという認識)である。
何故そんな彼を紹介したのだろうかと聞けば「こいつ便利屋みてェなもんだからな」と肩をすくめるリルトット。
「陛下ほどじゃないけどチート野郎だし、何か知ってるんじゃないかって思ってな。お前の能力とかについても」
「僕の能力?」
「多分だけど、ロイド・ロイドのやつのコピー。あの時はああ言ったけど、本当はロイド・ロイドが『真似しきれない』のが出てくるのって、フツーはわからないレベルなんだよ。ちょっとしたしぐさの違いとか、物言いがズレたりとか、そンくらい。
それが出来なかったってことは、お前の聖文字、じゃない能力みたいなのだっけか? そっちが影響してるって考えるのが筋だろ」
「う、うん……」
「まーつまり、今まで制御出来てなかったからこうなっちまってたけど、もしちゃんと扱えればバンビの頭バンビな行動とかも、多少は前より楽に耐えられるんじゃねェかって話だ」
なるほど、と頷くブルーと「ま、仮説だけどな」と肩をすくめるリルトット。そんな彼女たちを見て「いつまで手を繋いでいるんだ? 仲良しかい」とニコニコ微笑みながらツッコミを入れるグレミィ。
ふと見れば、リルトットはいまだブルーの手を引いた状態のままだった。言われて「あァ」とバツが悪そうに言いながら手を離すリルトットである。異性としての意識はそこになく、どちらかというと幼児を相手にしていたような、そんな微妙な生暖かさのある声音だった。
「どーにも俺の15%も生きて無ェからなコイツ。ガキ扱いしちまうな」
「見たところ罪悪感みたいなものもありそうだけれど、君にそんな殊勝な心があるとは驚きだクズ女」
「おぅわざわざ指摘するところに底意地の悪さが染み出てんぜクズ野郎」
(やっぱり仲良さそうだな、なんかニヤニヤニコニコしあってるし)
「それで、僕を頼れないかと来たわけか。うん、なるほど…………」
そしてグレミィとブルーの目が合った次の瞬間――――――――。
ブルーは、宇宙空間に投げ出されていた。
「ぴょっ?」
あまりの超展開に思わず変な声が出たが、そんな彼が状況を観察するよりも先に、彼の四方八方から「隕石が」「彼目掛けて」集まって来て、それこそ惑星に落下する勢いのそれらに押しつぶされ、ブルーはまた死んだ。