蒼都になったけどバンビちゃんが死ぬほど面倒臭い(※死ぬ) 作:黒兎可
「奪った卍解でその隊長を殺す、か。……あまりエレガントとは言えないが、その狙いとは?」
『卍解を無力化した死神など聖兵で十分だと考えられる。我々が
円卓。
ハッシュヴァルトを含めた十七席にそれぞれのメンバーがおり、そのなかで最も奥の席に座るハッシュヴァルトの話を全員が聞いていた。
曰く、彼等の心のよりどころとなっている希望ごと、死神を滅却師の王国で殴殺すると。
「卍解がなくとも我らを倒せるかもしれない。
あわよくば卍解を取り戻せるかもしれない。
……仮に取り戻せたところで『万に一つもない』可能性を信じるその希望こそが死神たちの心の拠り所なのだ」
「…………」
そして、この場において居心地が悪そうにしているブルーこと蒼都であった。
「奴らの力、奴らの半身である斬魄刀もろとも、その希望と絆とを叩き折り。死神どもの身と心に真の敗北を刻み込む。
――――それが陛下の御意志に他ならない」
(背景を知ってる身としてはいまいち乗り気にならないって言うか……。あんまり調子に乗っててもどうせ聖別されちゃうだろうしなぁ、気を抜いてると)
酷くシビアな判定であった。原作におけるユーハバッハの「心の通わない」所業、もしくは「心が通っていたからこその」所業を知っているが故の諦観であるかもしれない。
そして“
『……悪趣味ダケド愉シソウ、ダ』
「冗談は完聖体だけにしとけよ、ヘドロ野郎ォ」
『ヘド……!?』
(あっ、マスク越しだけどお目目まんまる……。意外とリアクション幼いなノトくん)
「ヘドロ野郎だかペド野郎だかはどーでもいいの! ワンちゃんだってそうじゃない奴だって見つけ次第斬って斬って斬りまくってやるだけっ」
会話をぶった切るようなバンビエッタのその一言に、しかし彼女に対するブルーのツッコミが入り、その後にドミノ倒しのように連続で続いた。
「バンビお姉ちゃん、ペド野郎は流石に天と地ほどの差が……」
「わーお、バンビちゃんったら辛辣ぅ♡」
「キレッキレじゃねェか……」
「変態にされちゃってるって思うの…………」
「バンビエッタお前、ブルーより年上なんだから、もうちょっと『新人』相手にも気を遣った方がオシャレだぜ?」
「言葉選びをしっかりするべきだとこの“
「もう少しまともに
『気遣いの度合い0パーセント、大人げないと断定する』
「ちょっと!? どうしてみんなでバンビエッタちゃんを責める訳!? あたしが一体何をしたっていうのよ!? リルだって酷い事言ってるじゃないっ」
「酷いこと言ってるって自覚はあるのね、バンビエッタちゃん」
「モンスター扱いと変態扱いと、どっちがアレかな~、ブルー?」
「どっちもどっちじゃないかな。あと、リルお姉ちゃんも……」
「クソビッチよりはマシだろ『事実しか』言ってねェし」
「いやバンビもリルも、そいつ一応『霊的には』ともかく中身一番ガキじゃんか……」
もうちょっと考えな、というキャンディスの指摘に不満げなバンビエッタと、少し照れたのかいたたまれないのか目を伏せてため息をついたエス・ノトだった。
そしてこの空気のせいで、ユーハバッハからの「
※ ※ ※
「ほぅ! さて…………、『ここまでは』予想通り、かな」
尸魂界の瀞霊廷、その「影」より内に創造されていた滅却師が“
その周囲を見渡して、ブルーはほっと一息。周囲に比べて多少高い建造物ゆえ、少し遠い所の「霊子の爆発」やら何やらも観測できる。既に戦闘は開始されているが、それでも彼は少しだけ安心したようだった。
「………………流石にまだ『霊王宮』から来てないっぽいな、日番谷隊長。もうしばらくは気にしないで大丈夫かな」
「何してるんですぅ、ブルー?」
「あ、可愛い………って、そうじゃなくって、ミニーちゃんどうしたの?」
と、わざわざ中腰になって、ミニーニャが下からブルーの顔を覗き込んで来た。身長差的に結構ギリギリの角度である(おおよそ20センチ前後ミニーニャが大きい)。
ブルーの問いかけに「こっちの台詞なんですけどー」と人差し指で彼の額を鼻をツンツンすると、起き上ってにっこりと微笑んだ。
「暇そうにしてなさそうだったの、ブルー。どうしたのかしらぁって」
「えーっと、ほら。ハッシュヴァルトさんが言ってたよね、『自分が奪った卍解の持ち主』を殺すようにって。だからその隊長さんがいないかなーって」
「鎖結と魄睡……、死神にとっては命みたいなところを壊したんですぅ? よね。流石にそう簡単には戦線復帰できないーって思うの」
「とはいえ『零番隊』ってところの
…………無茶しないって言うと、
「実際『あの身体になってから』時間は経っていなかったかしら…………」
「―――――ってそこーッ! あたしを抜いていちゃいちゃしないの、ミニーもブルーも!」
「ぎゃふんっ!?」
「ブル~~~~(@O@)!?」
しれっと爆発を背後に背負って、その勢いで飛び蹴りをブルーの顔面に喰らわせたバンビエッタ・バスターバインである。その状態から秒速で逆肩車に移行。慌てるブルーの顔を自分の股間で押さえ両足でブルーの首を締めながら、ミニーニャに「真面目にしないとダメよ! ダメ!」と宣言。「どの口が言っているのかしら」と白けた目で見られているが、特に気にした様子もなく、顔が真っ赤になったブルーから降りて、更にボサボサになった髪を直した。
「鼻血出てるじゃないブルー、あなた。ダメよ、こんな所でシたくなっちゃっても、バンビエッタちゃんもお仕事中は弁えるんだから―――――」
「普通あの勢いでライダ〇キック喰らったら鼻から血が出るくらいじゃおさまらないからね!? あー、ちょっと
顔面を押さえながら一瞬「銀色に光る」と、折れ曲がった鼻の角度が矯正された。もっとも今回血そのものは残っているらしく、ミニーニャが彼より少し高い位置からハンカチでお世話する。それに「あは♡ ボクもボクも~!」と駆け寄り、ブルーの髪型を手櫛で整え愉しそうなジジ。
そんな三人に「ふんっ!」と鼻を鳴らすと、マイペースにキャラメルを複数口に放り込んでいるリルトットと「どっちかというとバンビの方がシたいんじゃ……?」と微妙にドキドキしてそうな顔をしてるキャンディスに「あなた達も真面目にやるのっ!」と気合十分といった具合だ。
「少なくとも陛下が勝てば、死神にも虚にも殺される恐怖なんてない滅却師だけの世界が出来上がるんだからっ! それだけは間違いないって言ってたじゃない。
遊ぶのはその後! それまではちゃんとやらないといけないんだからッ」
「やけに気合入ってるじゃん」
「ビビリだから仕方ねェだろ。ま、どうせ滅却師だけの世界なんてなっても滅却師同士で争い始めるんだろォがな」
「リルったら
「そもそもその前に、命の危険なんてブルーがいれば大体どうにかなると思うの……、病気以外」
「良い事言うじゃないミニー! だからとりあえず後先考えず――――目に入った連中は全員ぶっ殺すわよ!」
私に続きなさい! と言うバンビエッタ。そのまま飛廉脚で建物を下り、高速移動高速移動でどんどん離れていく――――「他のバンビーズが着いてきているかを確認しないまま」。
「わぉバンビちゃん
「オメーに言われたら流石にキレんだろクソビッチもよォ、ゴキブリ頭」
「ごごごご、ごっご、ごご、ゴキブリ頭!?
ち、違いますー! ボクのこれはチャームポイントのアホ毛だしー! …………触角とかじゃないもんっ!」
「というよりバンビエッタちゃん、動きが普通に早すぎると思うの」
「どんだけ気合入ってるんだよバンビ……、アタシらも普通に追いつけないじゃんっ」
(あれ? ひょっとして原作で一緒に行動してなかったのってそんな理由……? って、そんな訳ないか)
各々が突如眼前に次々発生する爆発の光を見て、そのあまりの高速乱軌道にリアクションをとっていた。なお実際問題「霊力だけで言えば」バンビエッタがバンビーズではトップなので、本気で飛廉脚を使って縦横無尽に動き出すと誰も付いていけないのは事実だったりする。
決して彼女が嫌われているからサボっているだけ、というわけではないだろう…………、少なくとも「この世界では」。
「えーっと、とりあえずバンビちゃん一人だと『泣いちゃうかもしれない』し、僕も行ってくる」
「行ってらっしゃ~い!」「落ち着いたら私も行きますねー(^ー^)」「無茶すんなよ前髪野郎ォ」「本当、駄目そうだったら無理にバンビに合わせる必要ないからな? ホント、ね?」
キャンディスだけ異常に念押しが強かったが、そんな彼女の一言に苦笑いしつつ、ブルーは背を向け「手のひらサイズの」「メダル状の」アイテム――――
「じゃあ、
霜天に坐せ――――――――大紅蓮氷輪丸!」
そして、ごくごく自然に日番谷冬獅郎から奪った卍解を「身にまとった」。
色は、銀色。形成される氷の鎧は、背中の翼や尾のみではない。右腕からは「背信の剣」が這い出ており、そこに沿うように氷の竜の咢が形成。あたかも本来の大紅蓮氷輪丸のそれを思わせる形となっていた。
「わぉ! そっちの方がよっぽど完聖体っぽいよね~」
「ま、ブルーの場合アレは『羽根とは呼べねェ』からな」
苦笑いしてから再度「行ってきます」とだけ言って、ブルーはそのまま飛廉脚を併用して飛翔した。
「――――――――さぁワンちゃん隊長さん! 出てこないと皆、あたしの“
空中である程度のところ(爆撃の攻撃範囲ギリギリ)で滞空しつつ、ブルーはバンビエッタの様子を伺う。既にバンビーズおよびブルー付きの聖兵たちは、全体の軍団行動に併せて自由編成として分散させているため、爆撃の巻き添えになりはしないだろうが、それにしてはそれにしては、相変わらずの無差別攻撃である。
そして、その爆撃にさらされている死神たちを見ながら、ブルーはため息。聞こえない程度の声で、ぼそりと呟いた。
「……これでも『原作より一週間くらいは後』だと思うんだけど、思ったより準備は終わってないってことなのかな。終わってたら他の隊長格がすぐ出てくるだろうし」
死神側の対処を待ったというよりも、石田雨竜を“見えざる帝国”に馴染ませる時間をとったために多少は時系列に遅れが出ているのだが、その程度ではすぐさまに対策は打たれていなかったらしい。
「それはそうとあんまり殺しちゃうと『後に響く』と思うから止めさせたいんだけど、理由がなぁ…………、あっ」
そしてぼうっとしているうちに、バンビエッタの射出した「爆弾が先端についたような」神聖滅矢がブルーにも流れ弾として放たれ。当たり前のように、それを「背信の剣」で切り裂いて無効化した。
やがてしばらく撃ち尽くすと、ぜいぜいと肩で息をして「疲れた!」と文句を言うバンビエッタ。
「全く! こんなに頑張って目立つようにしてもワンちゃん隊長さんも出てこないじゃないッ! つまんないわ、こうなったらバンビーズ全員で――――――――って、あれ? ブルーだけ?」
ようやく周囲の状況に気づいたらしい彼女。子供みたいに地団太を踏みそれぞれの名前を呼び出すが、一応それでも追加で爆撃しないのは多少はしゃぎすぎて疲れたせいだろうか。
「まったく皆、リーダーに恥かかせたらどうなるか……、この辺全部更地にしてあぶり出してやるんだからねッ!」
「いや、バンビちゃんたぶん皆動けてないって言うか」
「どうしてよブルー!」
「ロバートさんも昔に言ってたかな。迷子にならないためには後ろの人が着いてきているかを確認することって」
「…………ひょっとして、あたしの方が迷子?」
「かなぁ」
その指摘は色々致命的に彼女の羞恥心を刺激したのか、顔を真っ赤にして「ばかばか、ブルーの馬鹿! もうちょっとオブラートに包みなさいよっ!」とぽかぽか殴りかかってくる。本気のそれではなくじゃれあいに近い威力に、ブルーは内心で微笑ましいものを見る気持ちだった。
(殺傷力ゼロで可愛いなぁバンビちゃん…………、普段からこうだといいのに)
前言撤回、普段から心は砂漠のようであった。
「っていうよりブルーあなたそれ、奪った卍解よね? 前はドラゴンしか見なかったけど、へぇ…………、そーなるんだ、へー」
「何? バンビお姉ちゃん」
「うん、こう、何て言ったらいいのかしら………………、ストレートに恰好良いわね! あと使いやすそう! ワンちゃん隊長さんのデカブツと違って!」
「ま、あぁあっちにはあっちでメリットはあるから……」
実際、卍解の使用は一度だけのバンビエッタである。どうやら「卍解が傷ついた分」「本体たる使い手も傷つく」という仕様が、彼女としては大層お気に召さなかったらしい。戦闘=自分の命を守るため、という考え方のバンビエッタからしてみれば、使用するだけでリスクが大きい武器など扱に能わずといったところだ。
と、そのままブルーの首に抱き着く形で、飛廉脚を使って器用に位置調整するバンビエッタ。
「抱っこ」
「……えっ?」
「だから、抱っこ。疲れたからっ! それにミニーたちの目もないし…………」
「………………ひょっとして結構『怖い』?」
「…………………………………………」
ブルーの言葉に音を出しては答えず、ただ顔を隠す様に彼の胸元に額をくっつけるバンビエッタ。どうやらはりきっていたように見えたのは、空元気だったらしい。いつものような「外向けの」つよつよバンビエッタちゃんというやつだ。
やれやれ、とは思わない。ブルーは基本的に、ジジのような完全イエスマン(に見せかけた反逆者)ではなく、自分で引き受けられる部分はしっかり引き受けるタイプである。
なので何を考えているかと言えば、いつものようにちゃっかりしているくらいだ。
(卍解状態でお姫様抱っこしながら、バンビちゃんのおっぱいぎゅってしてもらってるこの状況…………、せめて第二次侵攻前だったらなぁ…………。
ゴメンね日番谷隊長、こんな邪心まみれのまま氷輪丸を使っちゃって)
なんとなくだが、ブルーの右手で竜の咢が、少し呆れたように軋んだ気がした。
そのまま高度を下ろしていくと、どこか「妙な霊圧」。その主は編み笠を被り、たった今この場にたどり着いたという風だった。
『………………貴公たちは、こう、何と言うべきか……』
「あっ狛村隊長」
「ワンちゃん隊長さん……? あっ! ちょ、ちょっと待っててッ! 今『つよつよバンビちゃん』に切り替えるから。ブルーちょっと「ぎゅーっ」って抱きしめて! すぐ!」
「無茶ぶりだなぁ……」
言われながらも彼女を下ろしつつ「ぎゅーっ」と抱きしめてあげるブルー(当然「色々と」堪能)。数秒してテンションを取り戻したのか、彼女は快活に笑いながら腕を組み、「編み笠姿の」狛村左陣の前に堂々と立った。
「お待たせワンちゃん隊長さん! …………って、何でバケツ被ってるの? 全然オシャレじゃないわよ?」
「そういう理由じゃないと僕、思うんだけどな…………」
『…………我が黒縄天譴明王を奪った貴公らには思う所も多いが。わざわざ構わなければ、「今すぐに」対峙する必要もなし。
この刃は今、元柳斎殿の無念を晴らすため! 故に、わしはユーハバッハの首を取る!』
「えっと、何?」
「戦わなければ見逃してくれる、って言ってるんだよ」
「それは―――――――――ちょっとナマイキじゃない?」
すっと、ナチュラルにバンビエッタの視線が鋭くなる。すぐさま自らが持つ
「そういうこと。ふぅん…………、だからちょっと『粋がってる』のね」
「そういう言い方ダメだってバンビちゃん。散々ゲームやったんだから、そんな『かませ犬みたいな』言い回ししたら負けちゃいそうじゃない?」
「あたしはそんなに雑魚雑魚じゃないのッ! ちょっとブルー、現実とゲームとか漫画とかをごちゃごちゃにしたらダメなのよ? わかってるの?」
(一番わかってないのはバンビちゃんなんだよなぁ…………)
『このような場でなければ、見逃したいところだが……』
苦悩する声に、ブルーは苦笑い。以前刃を交えた時に、彼個人としては一切死神側に含むところはなく、なんなら本当は戦いたくすらないというのを「適当に戦いながら」伝えている。それでも立場上争わないといけないというのも、相手も理解しているだろう。
だからこそ「原作同様」、ヒーローは遅れて来るもの的煽りをこの後に狛村へとしたバンビに続き、後方から平子真子が現れたことが多少は救済となる。
「ここは任せて先に行き」
「えっ? あっちょっと――――」
『すまぬ、平子隊長!』
「――――ちょっと何よ! 逃げられちゃうじゃない、このおかっぱ出っ歯!」
「おかっぱ出っ歯ァ!?」
「あのワンちゃんは、あたしの獲物なのよ! そう指示されてるんだから『指示通りにしないと』いけないのに――――――――」
そして狛村が瞬歩で移動した瞬間、バンビエッタが文句を言いながら足元に霊子を集め始めた瞬間。
「卍解――――――――
「えっ?」
(あっ)
そのほぼ直後。なんらノータイムでブルーを爆撃するバンビエッタと、それに慣れたように「あー、いつも通りといえばいつも通りかなー」と遠い目をしてしれっと復活するブルーに、どないなっとんねんお前等!? と平子がドン引きしながらツッコミを入れたりするのだが。
その際のテンションのせいで、当たり前のように平子の卍解、味方同士の認識を誤認させて同士討ちさせる能力を「ブルーが完全に無効化している」ことに気づかなかった。