蒼都になったけどバンビちゃんが死ぬほど面倒臭い(※死ぬ)   作:黒兎可

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アニメ最終回良かったですね…! 戦闘シーン多かったり千手丸さんの卍解とか死神図鑑復活とか色々嬉しい誤算も多かったり

そしてそれとは特に関係もなく何故か今回手間取りました汗
今回はちょっとだけおまけあり…!


#023.見つめる「目」

 

 

 

 

「遠慮はいらねェからな! 行くぜ、“バーナーフィンガー・(フォー)”――――」

「“背信の剣(アロガンツシュヴェールト)”……」

「――――って、一撃かよォ!? がッ!?」

 

 人差し指から小指まで四本を立てたバズビー、その手先から放たれる「熱線の剣」。それを右腕から出現させた銀の剣を用いて「バターのように」切り裂いたブルーは、そのまま「銀色になった」左手で彼の腹部を殴り飛ばす。完現術「銀の蒸着(シルバープレッシング)」で直接腕をコーティングしたことにより、バズビーの無意識に発動していた静血装(ブルート・ヴェーネ)を無効化して通常の打撃を与える。

 つまり「空中の」その場に軽くうずくまるバズビー。

 そんな彼の首筋に剣をつきつけ「一本」とブルーは声をかけた。

 

「なっ納得いかねェぞ……!? だまし討ちっつーか、もっとこう色々あンだろォ!!? というか拳が堅すぎるって、メイスでぶん殴られたみてェな痛さだったぜ!!?」

「ごめんバズお兄さん。流石に『三対一』だと普通に全力で戦えるバズさん残すとどうしようもないっていうか……。

 じゃあ、あとは二人だね」

 

「オイオイ、バズビーの奴はともかく、ありゃ聞いちゃいねェぞ……!?」

「基礎もしっかり鍛えていたということだな。私たちも鍛えねばならないなぁナジャークープ!」

「うるせェ! そのゴリラ顔で理知的なこと言われてもゴリラにしか見えねぇからな!」

 

 訓練、おまけに完聖体縛りとはいえバズビーを高速で倒したブルーに、サングラス越しに冷汗をかく肌の浅黒い男。髪型はアフロで歯はオセロのように着色されている男は、ナナナ・ナジャークープ。「U」の文字の聖章騎士である。

 対する隣に立つ巨漢は、その厳つい容姿に反して酷く態度が理知的だが、ナジャークープが言っていたとおりにイメージとしてはゴリラにしか見えない。ジェローム・ギズバット、「R」の文字の聖章騎士である。

 

 4人はともに空中に霊子を固めて足場としており、横やりの入る余地はない。

 そのまま剣を鉤爪に変化させ、また左側からも爪を生やし、ブルーはジェロームたちへ急接近。

 

「お、おおおお!?」

「こちらで受け持とう――――動血装(ブルート・アルテリエ)! うおおおおおッ!」

 

(あっちょっとゴリラっぽくなった)

 

 にらみつけすぎて白目をむいているような状態となり、さらに上半身の筋肉が活性化したのかパンプアップ。絶叫し牙を剥きながら腕を振りかぶる姿はまさに荒れ狂うゴリラ! リルトットが見れば「ゴリラ野郎」の誹りを免れない程にゴリラな有様である。

 そのまま人語を話さず獣のように襲い掛かる彼の拳を、ブルーは鉤爪で受け流し時に斬りつける。もっともタイミングを合わせ静血装へと切り替えも行っており、見た目の野蛮さからはかけはなれたクレバーな切り替え方をしていた。

 

「聖文字は使わないんですか?」

「確かに身体が大きくなるのは通常は魅力的だが、お前相手では只の的だろう。だったら純粋に技術のみで戦う方が、性に合う!」

「やっぱり理性的だ……!」

 

 そして、しばらくそんなブルーたちの格闘戦を見ていたナジャークープは、「読めたぜ」とニヤリと笑う。

 片手に複数の矢摺籐(やずりとう)があるような霊子の弓を形成すると、ジェロームとブルーが同時に動血装を発動したのを見計らい、4連射!

 

 とっさに何かを察したブルーが、ジェロームと競り合いするのを放棄して、一目散にナナナの方へと接近する。矢自体も交わしたり鉤爪で払ったりしながら襲い掛かる体勢に入るが――――。

 

「正面を警戒しすぎだぜガキが、チキンっぷりは直さないとなぁ!」

「ッ!? 銀筒――――」

 

 ブルーの斬り払った神聖滅矢に仕込まれていた銀の小筒。それらがくるくると回転し霊子を放ち、やがてブルー全体を覆い囲む大きな「U」の文字に。

 

「“U-無防備-(ジ・アンダーベリー)”……、モーフィング・パターン!」

 

 もっともその「U」に沿って発動した聖文字の力は、収束してブルーの全身を覆うよりも前に30センチ前後の位置で急停止。流石にその状態にはナジャークープ自身も「何だァ!?」と驚いた様子だった。

 

「ぶ、ブルーには初めて使ったが……、霊圧の(あな)、『空中にある』ぞ!? どうなってんだッ!!?」

「えっ!?」

「まぁ良い、ほらよッ!」

 

 急接近してくるジェロームとナジャークープの矢。どちらの対処を優先するかという点で、ブルーはジェロームを優先した。滅却師に関する能力、もしくは概念系能力ならばおおむね無効化できる自らの能力を信頼してのことだった。

 空中で、まるで「壁にでも刺さったように」停止した矢と、そこを起点に自らの全身に走った霊子の網が自らの全身を拘束したのを見て、おそらく初めてというレベルで驚愕した。目を見開いて「ほぇ?」と女の子めいた声を出すブルーに、ナジャークープ本人も驚いた様子だ。

 

「ブルー本人に効くわきゃ無いはずなのに……、バグったっつーことか!?」

「……っ、う、動かない――――」

 

「――――これにて、一本ッ!」

 

 そしてジェロームの拳一発がブルーの頬をえぐるように殴り飛ばす! そのまま全身の動きを拘束されたまま、ブルーは地面まで叩きつけられた。

 なお、鳩尾を押さえたバズビーすら「マジかよ」とびっくりした表情だ。

 

 なお下方で拘束されたままのブルーは「当たり前のように」元に戻った状態で、しかし動き自体は拘束されたまま身動きできないでいる。

 

「……能力が無効化される直前で止まったっつーことか? いや、意味わかんねェ」

「こっちだって知らねェっての。一体何がどうなってんだ……?」

「状態だけ見れば『ブルー本人』ではなく『その周囲の空間』を拘束しているように見えるな。……なるほど。対象が本人をとらない場合に限っては、このように攻撃効果を受けてしまうこともあるということか。

 ナジャークープ、解除してやってくれ」

「あ? いや、別にいいけど……良いのか? 前々から思ってたけど、ここまで同族特攻能力持った奴残しといて陛下は何考えてんだか…………。今の内なら頑張れば殺せるんじゃねぇか?」

「いや、そりゃお前よぉ……」

「言われてみると確かに、もし『本当に』裏切られたら弱点になるな。あるいはそれでも騎士団長(グランドマスター)なら抑え込めるということか」

「やっぱ殺そうぜ? 傷口付近にもこっちで能力かけてやれば――――」

 

 ナジャークープの不用意な発言と同時に、三人は背筋に猛烈な寒気を覚えた。霊圧、刺すような冷たさと押しつぶすような暴風がごとき圧と共に「聖隷(スクラヴェライ)」とぼそりと呟かれた少女の声。

 恐る恐る背後を振り返った三人の前に、両腕両脚に霊子の赤く光る甲冑を装着し、背中に鋭角化した左右の翼と、二砲のキャノン砲を備えたバンビエッタ・バスターバインの姿がある。頭上の()の光のせいか逆光となっており、表情は微妙に見えないが霊子の色が映り込んで赤く輝いている目には、光が入り込んでいるにもかかわらずハイライトが見えない。

 

 キャノンは基部を彼女の背中から腰に固定しており、マニュピレーターが角度を調節して前方を向いてバズビーたちを狙っている。なお当然のようにブルーもその射程圏におり、動きを拘束されている関係上その顔は引きつっていた。

 

「早く解放しなさいよ。次、あたしの番なんだよ」

「……わ、わかったって、そうカリカリすんなよ。冗談じゃねぇか」

 

 冷汗を流しながらブツブツと文句を言いながらブルーに対する拘束を解除するナジャークープ。そのまま一目散に飛び去る彼と、それに声をかけながら追うジェローム。バズビーは「殺されるわけにゃいかねェからな……」と呟きながら、リルトットたちがいる方へと向かい。

 バンビエッタ本人は上半身を起こしたブルーに、すっと大砲2門を向け。

 

 

 

「あんな覗き魔に負けてないでよっ! ジジにボロクソに馬鹿にされて頭にくるんだからッ!」

(あ…………)

 

 

 

 そのまま絶叫して癇癪を起したようジタバタすると同時に、大砲から数重数百の霊子爆弾が射出され、そのままブルーを飲み込み「光となった」。

 ブルー!? と後方から絶叫が聞こえた気がするが、バンビエッタは気にしない。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「怖イ…………。ドウシテアノ人ハ、アンナイカレ女ト付キ合ッテルンダロウ」

「付き合ってませんよ~~~~~~、ブルーの彼女(ヽヽ)は私なんだもの(# ^Д^)」

「怖イ……」

「ガキに圧かけんじゃねーよデカ女」

 

 こちらもまた不用意な発言をした誰かに対して、ミニーニャがアルカイックな笑顔で拳を握る。既に二の腕に青筋とパンプアップした膨張が見えており、その誰かは腕を盾にするように構えながら数歩後退した。

 リルトットのツッコミに拳は下げるが、表情と視線は変えずにじっと彼を見る。見られ続ける彼は冷汗をかき、少しだけ「ここ数年」新調したマスクを引っ張って、深呼吸をした。

 

「なんかバンビのやつ、いきなり飛んでったけど…………、何かあった?」

「んふふ~~~~、ボク知らなーい♪」(※本当は聞こえてた)

「あれでクソ女もすげービビリらしいからな。何か嫌なモンでも感じたんだろ」

 

「――――おー! とりあえずこんなンだが、問題ないか『エス・ノト』」 

 

 さり気なく正当を引き当てるリルトットはともかく、遠方からこちらまで飛廉脚で飛んできたバズビーが彼に声をかけると、その彼、現在はエス・ノトを名乗る彼は「参考ニナラナカッタ」と返した。

 

「ブルー、コッチノ“F-恐怖-(ザ・フィアー)”全然通ジナイカラ、参考ニナル戦イヲ見タカッタケド、結局能力便リノ戦闘ダッタ」

「ま、そりゃーな? 噂によりゃ親衛隊のリジェの攻撃も無効化してたらしいし」

「あの超高速まばたき野郎のか?」

「マバタキ……?」

「いや判ンねーよ、その呼び方だと……」

 

 バズビーの感想はともかく、リルトットの蔑称まがいの呼び方に首を「直角90度」傾げるエス・ノト。その服装は以前の聖兵のものではない。身体に密着するような白装束にマントを纏い、口元は白いマスクで覆われている。全体的に「死化粧」のようなものを連想する恰好をしたエス・ノトをちらっと見たキャンディスは、なんとなくブルーの恰好と見比べて「何でこうなったし」と微妙な表情だ。

 

「問題でもありました、キャンディス先輩?」

「いや、問題っつーか……。態度はまだちょっとオドオドしてるけど、何かこう、大分……」

「不気味になった?」

「そうそう――――ってジジ!? ちょっと気を遣った表現考えてたのに台無しじゃんかッ!」

「ええー、だって実際そう思ってたわけだしー」

 

 両手の人差し指を向けて嫌な風に嗤いながら視線を逸らすジジに「あたしは多少まともなんだよッ!」と切れるキャンディス。なおミニーニャは既にブルーやバンビエッタの方に視線が固定されており、リルトットがエス・ノトを見上げて「ボロクソ言われてンぞ」と声をかけていた。

 

「問題ハナイ、デス」

「オメー、俺にはなんか敬語だよな」

「ブルー、凄イオ世話ニナッタッテ言ッテタシ。実際話ガ通ジル方…………デス」

「あー、まぁブルーはなぁ…………。しなくても良い苦労だけなら一番してンだろォし」

 

 主にバンビエッタ・バスターバイン相手にであることは、三者特に口にせずとも共通見解であった。とはいえ現状でも「まだ」マシになった方でもあるし、八つ当たり先がブルーに集中していることもあって被害は騎士団規模で考えれば軽微も軽微である。そのせいもあってか、教育係を担当した一人であるキルゲ・オピーすら「処置なし……、無理な時はちゃんと言わないといけませんよ」と声をかけるに留まる有様である。

 ブルー本人に言わせればオイシイ思いもしているとのことだが、それはそうとして今日も絶好調で彼を爆殺している頭バンビエッタであった。

 

 なお当然のようにブルーから教えられた性格の悪さは、ジジ(大なり小なり)バンビ>ミニー>キャンディス>リルトットだったりするが、そこは空気を読んで言わないエス・ノトである。

 

「…………そういやその恰好、どうしたンだ? 前から聞こうと思ってたけど」

「コレハ……、恐怖」

「は?」

「何言ってんだガキ」

 

 バズビーやリルトットのリアクションに、エス・ノトは目を閉じて心臓の当たりに手をやりながら言う。

 

「自ラガ恐怖ノ象徴トナルコトデ、相手ニ対シテモ恐怖ソノモノトナルコトガデキル。ソウ、見タヒーロー映画カラ教ワッタカラ、ソレヲ実行シテルダケダヨ。自分ガ恐怖ニナレバ、モウ何モ怖クナイ、ハズ」

「いや、バ〇トマンかよッ」

「アメコミ好きだなァお前等…………。漫画なら俺はまだ日本のやつの方が色々楽しいけど。料理漫画とかで外の食べ物イメージしたり」

 

 意外とエンタメ事情が(多少は)現世基準で充実している“見えざる帝国”はおいておいて。

 

 バンビエッタとブルーとの戦闘は、バンビの聖隷した状態での完聖体の攻撃を、徹底してブルーが捌く形となっていた。

 わざわざブルー本人に直撃コースにしない砲撃をし、そこにブルーが「勝手に」行って背信の剣で切り裂き爆裂効果を無効化したりしている。これを確信犯で行っているあたり、バンビエッタも意地が悪い。

 

「ほらほらどうしたの! まだまだバンビちゃんの本気はここからだよ――――二段ジャンプキック!」

「その名前ダサいから後でキャンディお姉ちゃんとかと一緒に考えようね!?」

(OSR値があんまり低いと後々敗北条件に繋がっちゃいそうだし……、白)

 

 中々にアレな内心なブルーは、自分へ向けライダーキ〇クめいた飛び蹴りをかましてくるバンビエッタのそのヒラヒラしているミニスカートから覗く脚やら中身やらに釘付けであるが、それはそうと飛廉脚の先端に形成した球状の爆弾めいたその神聖滅矢を前に表情が引きつる。剣をやめ鉤爪に戻し、両手の爪で彼女の脚が狙う自分の胸部を庇う。

 激突、と同時に「爪が爆弾化」してその場で爆裂爆破! もっとも爆破された後に「1秒もかからず」元に戻った爪であるが、彼女のキックの威力に打撃時に更なる一発が加わったことで、バンビエッタの脚はブルーの胸部を射抜いた。

 とっさのことで銀化は間に合っていなかったこともあってか、跳ね飛ばされるブルー。胸には彼女のブーツの足跡がくっきり残っており、遠方からジジがそれを見てニヤニヤと涎をすすっている。一体何が(かのじょ)の琴線に引っ掛かったかは定かではないが、ぼそりとエス・ノトが「怖イ」と呟いていた。

 

 地面で某犬〇家がごとく「首から上が」地面に埋まった状態で胴体が真っ逆さまに立っているような状態のブルー。そんな彼を見下ろしながら、上空からバンビエッタが腕を組んで降りてくる。見ればキャノンの角度調整がされており、背部に回ってジェットパックのような役割で高度を微調整していた。

 

「全く、ハゲもどき(ヽヽヽヽヽ)たちじゃないんだから……。あたし、別に完聖体ならないでって言って無いじゃない。なんでブルーやらないのかな」

 

 しばらく直立していたせいか、首が限界に来たらしい。ごきっと音を立てて有り得ざる角度で首が曲がり、身体が背中から地面につく。もっとも数秒で「地面に埋まった」頭が光と共に抜け出し、胴体の延長上に再構成される辺りは普段通りのご愛敬。

 遠方から「ハゲたァどういう了見だこのキレッキレのモヒカン見てよォ!」とブチ切れてるらしいバズビーに苦笑いを送るブルー。そのまま頭を振ってから立ち上がり、バンビエッタのスカートのギリギリのあたりをじーっと見た。

 

「な、何よ、何か言いなさ――――、ッ!? え、エッチ! 今時パンチラ狙いとかガキンチョでもやらないでしょーがッ!?」

「“背信の剣(アロガンツシュヴェールト)”――――」

「しょーもないことの防御にそれ使ってるんじゃないよッ!」

 

(いや、だって無効化しないと修練場が「原形も残さず消し飛ぶし」……。それに完聖体はなぁ……)

 

 実際問題、バンビエッタの能力は「自らが霊子に触れた物体を爆弾化する」というものがメインである。この特性を拡大解釈して「爆弾属性を付与する霊子」と「特に何ら変哲もない霊子」とを分けることで、これらを空中で混合させ「霊子の爆弾」としても扱ったりしているが。それはそうと完聖体時に扱える霊子の量を考えれば、ブルーが率先して無効化しておかないと「全員怒られる」から、という配慮がそこにはあったりした。

 なお伝わっているのはリルトットやジジくらいなものとする。

 

「……でもまあ、あんまり練習できてないし、やってみようか。『怖くなったら』言ってね、止めるから」

「う、うん」

 

 とりあえず腹をくくったブルーはバンビエッタに断りを入れる。それに対して妙に素直にうなずいた彼女に微笑み、彼は体勢を変える。両手の爪を出したまま、胸の前で両腕を交差。エジプト王墓のミイラあたりがしていそうなポーズを思わせるそれをして、バンビエッタを見上げながら呟き。

 

聖隷(スクラヴェライ)―――――――――、ん!?」

 

 霊子を集め始めたのと同時に、「世界が歪んだ」。

 いや、より正確には「何かが視ている」ような感覚を覚えたブルー。

 

 

 

 それと同時に、その場にいた滅却師8人全員に、青く輝く「光の柱」が降り注ぎ、全員の姿を覆った。

 

 

 

「怖イ……」

「えっちょっと嫌だ、何かボクの中に『入ってくる』んですけど!? キモいんですけどー、何か『ボクじゃない霊力』が入って来てるー!?」

「百年ぶりくらいじゃんか……」

「キャンディス先輩、知ってるんですぅ?」

「こりゃアレだな…………、まァ悪いもんじゃねーだろクソビッチ共。

 俺よりこっちのトサカ野郎ォの方が詳しいだろ」

「お前等揃いも揃ってこのモヒカン馬鹿にしやがって…………」

 

 自分の身体を抱きしめて目を見開き震えるジジと、似たようなポーズで震えるエス・ノト。特に恐怖はないらしいミニーニャは自分の掌を開いて閉じてを繰り返し「何か」の具合を確かめている。そしてとくに何ら感慨もないキャンディス、リルトットに加え、どこか苦い顔のバズビーである。

 ……まあ髪型に対する暴言への苛立ちも大きいだろうが、それよりも虚空を見上げ、この光の「大本になっただろう」誰かへと、鋭い視線を向ける。

 

「…………聖別(アウスヴェーレン)。陛下がやる、滅却師の命と力の振り分けだ。

 この間『日本で』集めて来た分で現世からはほぼ全部徴収したってユーゴーの野郎が言ってたし、その時の分まで含めてを振り分けてンだろ」

 

 バズビーの言葉の通り、その光によって自らの能力が強化されるのを感じるミニーニャたち。ジジも怯えていた様子だったが「キモい」という感想は変わらないまでも、段々と震えがおさまり「キモーい♪」と楽しそうである。いまだにずっと怯えているエス・ノトとは大違いだが、彼はぼそっと「気軽に与えられるってことは……」と「逆の真実」にも気付いているため、仕方ない所はあった。

 

 当然その光はブルーたちにも影響しており、発動しかかった完聖体の一部、形成途中だった「目から噴き出だすような」霊子の一部が右側からだけ異様な状態になり、「痛い痛い痛い!?」とびっくりしているブルーと。

 

「ダメ、見ないで(ヽヽヽヽ)……………………、もう『真空』は嫌あああああッ!? こんなに息苦しいのなんて止めて! 胸も頭も破裂しちゃうから……、あたしはお父様やお母様とは違うのぉッ! 無実なのッ! 良い子なのに、皆よりも誰よりも良い子にしてたのに――ッ!」

(なんか凄い取り乱してる!? って、それはそうとバンビちゃんもなんとなく「視られてる」のは判るんだ)

 

 他の面々は気付いているか気付いていないか不明だが、ブルーには彼女が言う「見ないで」という意味が正確に伝わっていた。

 

 

 

 それは例えるなら、天空から見下ろす一つの巨大な「目」。

 

 

 

 その「知覚できない」目により、全ての滅却師たちが何かしら「見定められている」。値踏みされている、が正しいかもしれないが、そんな視線がどこかから、自らの全てを丸裸にされているような、そんな感覚。

 どうやらその何かが、バンビエッタのトラウマに直撃したらしい。錯乱しながら爆撃しかける彼女の背後に回り込み、その腕を掴んで「銀の蒸着」で頭部の環やら背中の翼やらを溶かしていくブルー。そのまま動揺する彼女を正面に向けて抱きしめ、何も言わずにそのままじっと光が晴れるのを待つ。

 ブルーが抜けた光の柱は徐々に移動し、バンビエッタと彼とをさらに包み込むよう太く交わった。

 

「ブルー……、あたし嫌なのぉ…………、死にたくないの、死にたくないの。『ギリギリ』死ななかっただけだから、もうあんな想いはしたくないの……」

「バンビちゃん……」

 

 それ以上言葉を続けず、彼の胸に顔を埋めて泣き続けるバンビエッタ。

 そんな彼女を辛そうに見た後、ブルーは光の先を見上げ「本来なら」「知覚できないはずの」「巨大な目」に向けて、一言。

 

「…………約束は守ってくださいよ、陛下」

 

 にやり、と。その一言を聞いた目が、少しだけ笑ったような。

 そんな気配を感じて、ブルーは少しだけ頭を下げて、再度頼み込んだ。

 

 

 

 

 


【おまけ】

・もし“F-恐怖-”トラウマ刺激を本作バンビーズ他メンバーが受けたら・・・

 

ミニーニャ:

「私には何もかもが足りなかったの…………、わがままを通せる体力も腕力も権力も資本力も何もかもが……」

(その場で膝を抱えていじけだす)

 

キャンディス:

「戦争とかもう止めなってさァ! 領土問題とかもう面倒極まりないじゃんかあああああッ」

(絶叫しながら頭を抱えつつ走り去る(逃げる?))

 

リルトット:

「まァ…………『餓死』くらい今更怖くも無ェからな……」

(普段よりもお菓子を多めに食べるのみで錯乱なし)

 

 

 

 

 

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