蒼都になったけどバンビちゃんが死ぬほど面倒臭い(※死ぬ)   作:黒兎可

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いよいよ帰ってくる番外編… 今回はバトルメイン


#024.番外編:PRISON FROM SNOWPELLETS




 

 

 

 

 

「同士討ちとかそういうレベルちゃうやろ!? 完全にそこのイケメンぶっ殺したやろそこの姉ちゃん、何考えとんねん!? 思わず卍解解除してもうたわ、アホかいッ!!?」

「ブルー殺しちゃったのはアンタのせいでしょ!」

「殺したのに気づいても顔色一つ変えへんのは完全にヤバイ奴やろッ!」

「何ですってーッ!?」

 

「ば、バンビちゃんも平子隊長も、どうどう…………」

 

「お前が一番怒れッ!」「あなたが一番怒りなさいよッ!」

 

(そんなところで息ぴったりされましても……)

 

 困惑するブルーに怒鳴る二人。金髪のおかっぱ風ヘアスタイルな平子真子と、ご存知バンビエッタ・バスターバイン両名である。直前の戦闘中、平子の能力で「敵味方」を混乱させられた直後に、そのせいもあってブルーを爆殺したバンビエッタが顔色一つ変えずにそのまま周囲を爆撃しようとしたのに、思わずツッコミを入れた平子であった。

 なおブルーに関しては、特筆するまでもなくいつも通りという認識しかなかったりする。

 

「ぜー、はー、何やねんお前等…………、なんか調子狂うわ」

「せいぜい狂ってればいいじゃない。……ブルー大丈夫? 『イチモツ』壊れたりしてない?」

「だ、大丈夫、大丈夫…………、ついてるから触らないでね!? 一応敵前だよ!!?」

「それはいいからぎゅーってしてッ! じゃないと今すぐ爆撃したくなっちゃうからッ!」

「えぇ……?」

(一体何がバンビちゃんの恐怖の引き金を引いたんだろう)

「敵に言うのも変やけど……、お前苦労してんなぁ」

 

 どこからか取り出したハンカチで目元を覆い、涙でも拭っていそうな平子である。彼の脳裏に一体どんな映像やら何やらが思い浮かんでいるのかは定かではないが、それはさておき。

 周囲を確認して「アカンわ、相性最悪やんけ」と毒づく平子の一言に、思わずブルーは苦笑い。なんならバンビエッタをより強く抱きしめて、耳の当たりに自分のマントがかかるようにすることで音を上手く遮ってる始末。なおその様子は氷輪丸の翼に阻まれて平子側からは見えないので、バンビエッタはバンビエッタで割と自由に甘えていた。

 さて。事態が膠着すると判断したブルーは、バンビエッタに囁き彼女をこの場から逃がす。最低限のアドバイスはしたせいで、狛村とは別方向へと飛翔するバンビエッタ。

 

 そんな彼女を追おうとする平子の前に、氷の翼を展開したままのブルーが立つ。

 

「何や、あんな大事にしとった彼女だけ先、行かして。ひゅーひゅーって言っとこか?」

「それ言うと後で別な所から怒られちゃいそう何で、パスでお願いします『平子隊長』。

 まあバンビちゃんと平子隊長の相性は悪くないと思いますけど…………、『仮面の軍勢(ヴァイザード)』相手に大事な相手を置き去りにはしませんよ」

「チッ、ンなことまで調査済みかい」

 

 嫌そうな顔をする平子だが、どこか敵意は薄れている。戦意に変な形で水をかけられたせいだろうか、しかし警戒自体は解いていない。否、厳密に言えば警戒を「解けない」。目の前に立つブルーの姿を目にしてから、どうしても目を離すのに躊躇いが生じていた。

 敵として相対した時、どうしてかその存在を見失う事への不安、恐怖、言い知れない無防備さのような薄ら寒さ。そしてもう一つ。

 

「…………何で喜助のあの黒いの、あっちにも送られとん筈なんに、卍解を維持したままいられるんや」

 

 そう、その一点が何よりも不気味である。基本的に既存の滅却師は、あのバンビエッタですら卍解を使用できない。もしくは使用すれば自ずと個人の霊体へとダメージが入る状態であり、そしてそれは星章(メダリオン)を構成する滅却師の霊子にも影響を与えている。つまり本来ならば、浦原喜助と涅マユリとが共同で配った「侵影薬」の効果が出て、卍解は元の持ち主の元へと戻っているべきなのだ。

 それが出来ていないということ自体がおかしいのである。

 

 それには答えず、苦笑いしながら斬りかかるブルー。とっさに「解号なしで」解放した逆撫で受ける。「背信の剣」と激突、飛び散る火花と「銀色の液体」。妙な鉄臭さを感じた平子は、本能的に嫌な予感を感じ咄嗟に後退。と同時に、ブルーは指先を向けて呟く。

 

鎧鱗動血装(ブルート・アルテリエ・アンハーベン)――――」

「おわっとッ!? ばば、卍解――――」

 

 飛び散った血はその場で霊子兵装としての小型の弓を形成。そのまま妙に長い神聖滅矢を形成して光線のように放つ。

 

 瞬間的に卍解した平子は、足場に形成された花弁のような台座に座り込み、幾本の矢を逆撫で受け流す。そのまま花弁が閉じて防御態勢をつくろうとしているが、それよりも先に放たれる血しぶきから生成される矢のなんと多い事よ! ほぼ外から見れば、彼の卍解目掛けて光線が大量に放たれているような有様だ。

 うめき声を上げながら数か所、人体の方に攻撃を受ける平子。ようやく花弁が閉じ切ったものの、その逆様邪八宝塞の内側で腕の傷を押さえて冷汗を流す。

 

(まずいわ……、からめ手が通じひん割に純粋に強い。手数とか反則やろノーモーションのくせに)

 

 がんっ! がんっ! と外から殴られる平子の卍解。思わずその「トラックでも激突したかのような」音に飛び上がりそうになるが、抑えつつもホラーの怪物めいたその所業を前に、深くため息をついて。

 

「…………しゃあないわ。後で喜助にドやされるにしても、ここで死んだら話にならんわ――――」

 

 

 

面取(チャンファリング)――――ッ」

 

 一方のブルー視点で見れば、金色の花の蕾と化した平子に対して、銀一色に染まった左腕を振りかぶって殴りつけているのみ。とはいえ全身に動血装が走っており、その力は並の滅却師はおろか死神のそれでもあるまい。わずかにきしみ、少しだけ金粉のようなものが散る。

 

「……うーん、結構綺麗な卍解だからあんまり本気でぶっ壊したくないんだけどなぁ……」

 

 そしてこの状況においても、ブルーは飄々と感想を零す。決定的にここが戦場であると言う緊張感とは無縁の振る舞いだが、それに対して相手はつっこまず。

 

『――――おおきになぁ。せやけど、悪いなお兄さん。殺すで』

「ッ!」

 

 かたかたと音を立ててわずかにブルーから見た背面の花弁が開いたと同時に、自らの背後に平子の「異常に膨れ上がった」霊圧を察知したブルー。

 見ればそこには、どこか長い髪を連想するような独特の仮面をつけた平子真子の姿――――まとう霊圧は虚のものが入り混じっており、斬魄刀の刀身はそれこそ赤黒く光っている。

 

 それをとっさに右腕の背信の剣(アロガンツ・シュヴェールト)を構えて受けるブルーだったが。刀身と刀身が激突した瞬間に、ニィと平子は仮面越しに笑い。

 

『月牙天衝-―――なんつってな』

 

 接触した刀身から「卍解した霊圧で」虚閃(セロ)を放ち、ブルーのその剣を「叩き折った」。その余波はそのままブルーの身体を袈裟斬りに「真っ二つ」にし、そのまま霊圧の波動とエネルギーの奔流は彼を飲み込み、肉片を弾き飛ばした。

 ブルーの影が見当たらなくなったのを確認してから斬魄刀を鞘に納め、仮面を「握り砕く」平子。ぜいぜいと肩で息をしながら、鞘に収納されると同時に解放の解除された斬魄刀を、杖代わりにして付く。

 

「アレでようやく攻撃が通るんかい…………、はァ、せやけど『(ホロウ)の霊圧で』あれだけひき肉にしたら、流石に再生能力持ちの滅却師でも――――」

 

 と、彼の言葉が止まる。何や、と目の前に現れた「銀に光る人型」のシルエットに、瞠目。

 そのシルエットへ目掛けて、先ほどの虚閃で散らされた肉片、骨片、血液に至るまでもが「同様に」「光の奔流となって」人型へ結集。ほぼ無形の状態だったそこから、背中に氷の竜の翼を背負った元の状態まで回復した。

 そんなブルーは閉じて居た目を開けて、両手をぐーぱーして動作を確かめている。目の前で「霊的な力を伴わない」ような、それこそ「何も感じなかった」その再生を前に、言葉が出ない平子。

 

「……ごめんなさい。僕、そういうのは苦手じゃないんです」

「何…………、やて?」

「僕の聖文字(シュリフト)(アイ)。“Ⅰ-不滅-(ジ・イモータル)”。能力は『存在の完全証明』。僕という滅却師の生命を害するあらゆる要因に行き当たった際、その事象を『外側から』検閲して再度別な形で上書きして保存、最も事象衝突(コリジョン)が発生しない場所や状態に再定義、再構成して出力する」

「……………………は?」

「あー、ややこしいですよね。要するに『絶対死なない』ってことです」

 

 説明がやけに回りくどいブルーだが、大体の原因はアスキン・ナックルヴァールに能力を教えてもらった際の、彼の回りくどい物言いが原因である。悪い例を真似てしまった訳だが、実際「厳密には」かなりヤヤコシイ能力なので、リルトットすら匙を投げたという経緯があった。

 傷を負っている状態から「卍解に」「虚化」の二重がけ。瞬間的に上がった膨大な虚の霊圧、それ自体を制御するのもギリギリという有様からのこの現在。表面上はともかく肉体内部は満身創痍である。

 そんな彼に向けて、ブルーは「背信の剣」の基部に生成された、狼の咢のような神聖弓を構え。その先端に球状のエネルギーのような神聖滅矢を収束させ――――。

 

 

 

「ッ!」

「――――破道の三十八『天雷砲』」

 

 

 

 直前で腕の方向を変え、自らの背後へと振り返り射出。

 そのまま自ら目掛けて撃たれた光の大砲と神聖弓とが激突。

 

 衝撃で巻き起こった砂埃を「背信の剣」で振り払うと、そこに現れたのは。

 

「…………!」

(まさか本当に帰ってくるとは)

 

「よォ、また会ったな優男」

 

 青白い外套を纏った日番谷冬獅郎――――何故か額に「眼窩が六つあるような」仮面をつけた彼がいた。

 

「返してもらうぜ、氷輪丸を」

「――――――――」

 

 別に虚の仮面と言う訳ではあるまい。霊圧の質も平子のように変化していない。そしてそんな彼のビジュアルを見たブルーの感想は。

 

(劇場版第二作……? 馬鹿な、当時と千年血戦篇との設定は師匠(原作者)監修といえど微妙に変わっているはずでは!?)

 

 相変わらず緊張感に欠けていた。

 なおブルーの言う通り、色こそ違うが外套は劇場版で日番谷が着用していたもの、仮面は草冠宗次郎が着用していたものを少し変形させたようなものだったりする。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「霜天に坐せ、氷輪丸!」

遮霊霧(シールドガス)!」

 

 合流した松本乱菊に満身創痍の平子真子を逃がさせ、日番谷冬獅郎はブルー・ビジネスシティへと斬りかかる。もっとも本来なら氷結すべき彼の「背信の剣」は、空中に霧散された「銀色の霧」のせいか、上手くまとまらない。

 とはいえ。

 

「……! 相変わらず意地が悪いことを」

「いやその…………、流石に『それだけ上がった』霊圧でこられるとこっちも対処の仕様がさ、うん!」

 

 実際問題、ブルーが空中に張り巡らした「自らの血液の霧」すら、冬獅郎から放たれる霊圧によって散らされ始めている。剣圧もそれこそ以前のものとは比べ物にならず、こころなし右腕の大紅蓮氷輪丸の顔がちょっと誇らしげだ。

 すぐさま左手を銀で覆い殴りつけようとするが「それは前に見たぜ」と、これもまた白打でストレートに対処する。ブルーの動血装により強化された拳すら、その身体から放出する霊圧の差でもって蹂躙する。

 

 正しく「霊王宮で鍛え上げられた」死神としての、最もスタンダードな強さだ。

 

 そのまま拳を押し返されバランスを崩したブルーめがけて、氷輪丸を振り下ろす。それを卍解の翼で受け、弾き飛ばすように空中へと払い――――。

 

「手ごたえが、あれ? ……っ、まさか氷人形!?」 

「――――よく見破ったな」

 

 上空、剣を受けた姿勢で固まった冬獅郎の姿を見て驚愕するブルーの背後、半笑いで声をかけて来る「本物の」日番谷冬獅郎が氷輪丸を振り上げ。

 

「破道の七十八『斬華輪(ざんげりん)』」

「ッ!」

 

 先ほどの平子のような虚閃(セロ)ではないが、その一撃はむしろブルーの内側へと溶けている氷輪丸の霊圧へと直撃した。

 瞬間、彼の胸を突き破って現れる巨大な氷の竜――――背中の翼からそのまま一緒に彼の胴体をえぐるように、無理やりその身体から「這い出た」氷輪丸。その頭上に乗った冬獅郎は、ブルーの倒れた下半身に目もくれず空中で斬魄刀を構え直し。

 

「卍解――――大紅蓮氷輪丸!」

 

 空中で飛び上がり、氷輪丸が冬獅郎へとまとわりつくような形を経て姿を変化させる。色は輝く深い青を称えた水。氷の竜と正しく一体化したその姿。右手の咢が少し唸り声のようなものを上げると、冬獅郎は少しだけ顔をしかめた。

 

「遅ぇって俺のせいじゃないだろ。……何? 結構面白かった?

 いや別に興味は無ェけど」

 

 苦笑いしながら右手の斬魄刀を肩に担ぎ、下方を見る冬獅郎。以前、松本乱菊いわく「怪物」を自称していたらしいあの男。そこから放たれる潜在的な「嫌な感覚」は未だ晴れず。故に警戒を解かず、彼はいつでも斬魄刀を走らせられるように構えていたが。

 

 

 

「――――――――あー、やっぱり戻っちゃったか。割と『天使らしくて』お気に入りだったんだけどな」

「……ッ」

 

 

 

 先ほどの意趣返しではないだろうが、さも当たり前のように「自らの背後に」現れたブルー。だが、冬獅郎はその瞬間に「猛烈な寒気を感じた」。

 一瞬、わずか一瞬だがそこにほとばしった霊圧――――――――おそらく以前の自分なら、あの藍染惣右介を前にした時のように何も感じなかったろうと言う確信を抱く、それこそ「はるか高みから」何かしら手を加えられたと言われた方がまだ理解が出来るほどの、膨大な霊圧。

 

「どんな霊威してやがる、お前」

 

 そう、つまり。バンビエッタたちを始めとして大半の滅却師がその能力を「霊的なそれではない」と感じていた論拠になっていた「霊圧の有無」だが。実際のところ、ブルーが再生する度に霊圧は走っていたのだ――――彼我の差があまりに開きすぎたため、それを霊圧と認識できないほどの差が生じていたのだ。

 それこそ藍染を思わせる圧倒的な霊圧だが、現在は感じずとぼけた顔をした優男が、空中でため息をついてじーっと自分を見つめている姿だけがそこにある。霊圧自体も青年のそれを逸脱せず。

 

 嗚呼つまり、それだけの膨大な霊力は彼が能力を発動した際にのみ働いているということか。

 しかしその霊的な存在階位の高さは、下手をすれば零番隊のそれを上回りかねない。その妙な矛盾した存在の在り方こそが、おそらく本能的に目の前の相手への警戒を解けない理由なのだろう。

 

「なるほど。確かにこれはバケモノだ――――再生することだけで言えばな」

「日番谷隊長?」

「その妙にやる気が無ェのも、お前が自分自身の存在の絶対性に自信があるからってことだ。だがなァ、お前の能力の発動条件は『果たしてどこまでに』作用するんだ?」

「おっとッ!」

 

 瞬間、目の前に左手を構えるブルーだったが、同時にその左腕が「凍てつく」。それを払えば、凍傷で一気にボロボロとなった腕に銀色の光が伸びて覆い改めて腕の形を形成する。その腕を振りかぶって殴りかかるブルーに、冬獅郎は瞬歩で半歩(ヽヽ)ずれ、刀の峰を彼の左肩に当てる。

 同時に凍り付く衣服と、その延長に形成される「左腕の表面のわずかな隙間」の氷――――ブルーの人体を直接凍らせず、表面を覆うように凍結させた。

 

 早っ! と声を荒げたブルーは、そのまま左腕ごと右手の剣で肩を切除。出血を霊子収束で抑えながら飛廉脚で距離を取り、銀の腕の形で再生するのを待つ。

 それを見逃す彼ではなく、氷輪丸で斬りかかる。

 

「やっぱりな。

 今の俺の霊圧なら、お前のあの銀の攻撃はある程度蹴散らせる。

 そしてお前は――――人体に直接作用しえない攻撃を、無効化することはできない」

「…………、いや、やっぱり早いって察するの。流石天才児……」

「褒めても何も出ねェぞ。それに――――これでも200年以上は生きてるからなぁ」

「リルお姉ちゃんと同じくらい!?」

 

 謎の驚愕をする彼に一瞬半眼で笑うと、そのまま彼の「体表面で」斬撃を寸止めする冬獅郎。それと同時に瞬時に形成される氷から逃れるため、ブルーは防戦一方となっていた。

 

「そっちは攻めねぇのか」

「あー、もう! 察されちゃったからこっちから攻撃したら、接触箇所を起点に氷張ってくるよね!? それくらい出来るって情報(ダーテン)で知ってるからッ!」

「急にガキっぽくなったな」

「元々あんまり余裕がないものでッ!」

(むしろ「死ぬ」んだったら復活の目途があるけど、中途半端に拘束だけされると復活できないのはナナナさんに思い知らされちゃってるからなぁ)

 

 的確に弱点を把握して攻撃してくる日番谷冬獅郎に、ブルーは悲鳴に近いトーンで声を上げていた。

 

 実際問題、冬獅郎の読みは当たっている――――ブルーの“Ⅰ-不滅-(ジ・イモータル)”で証明や定義される=復活するための条件というのは、つまるところ「ブルー本人が」「直接害される」ということに限られていた。

 例えば毒、例えば殺傷、例えば感電、例えば損壊、例えば爆裂、例えば精神汚染。いずれの加害においても、それらはブルーの身体へと異常が発生する。精神攻撃すら、大きく区分すれば「脳」への加害だ。故に定義された蒼都(ブルー)という滅却師の「完全な状態」から逸脱したそれらは、外部から「現在の状態」を「元の状態」へと再定義されてブルー本人に上書きされ復活する。

 

 故に、例えばナナナ・ナジャークープが能力を使用したときのように。ブルー本人ではなくブルー周辺の空間を拘束、固定するといったことをされると、彼は逃げることが出来ない。

 故にこの場合、氷輪丸の氷が彼の身体を凍らせず、絶妙な距離と温度で動きのみを封じる牢となるのならば――――。

 

 そしてそれだけの微細な操作も、日番谷冬獅郎には不可能ではない。

 

「こりゃ本格的に厳しいかな…………、ここで使うと思いっきり負けちゃいそうなんだけど、しかたないか。

 外殻静血装(ブルート・ヴェーネ・アンハーベン)

「ッ!」

 

 そして空中で、自らを覆う球状に銀の血を展開。そこに血装を走らせ冬獅郎の侵入を阻むと、彼は手元の武装を解除し、腕を交差させ。

 

 

 

聖隷(スクラヴェライ)――――――――」

 

 

 

 鐘の音と共に、周囲へと散った自らの血や、氷輪丸が作り出した氷を分解してその霊子を収集。立ち上る青の光の柱を前に、冬獅郎は冷汗をかく。

 

 やがて柱が砕けた後。現れたブルーは――――青白いプロテクターを肩、腕、脚部に装着し。首にはなびくような青白いマフラー。そして目元からは、まるで獣の耳のように、あるいはほとばしる血のように、青い霊子が棚引いて放出されている。

 翼らしい翼はない。あるいは目から流れるそれが彼の翼か。

 頭上に()もない。その代わりに、環は彼の腰のベルト、スペードのマークを覆うようにバックルのごとく鎮座していた。

 

「――――“神の完全(メタハエル)”」

 

 ギン、と。目から迸る霊子に、二つの眼窩が開く。剥きだされたそれは、まるでコミックのヒーローがごとき白目であり、妙に目立っていた。

 

 

 

 

 







本当は完聖体の絵を描くつもりだったけど、画力の問題から迫力が全然なかったのでお蔵入りです…
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