蒼都になったけどバンビちゃんが死ぬほど面倒臭い(※死ぬ) 作:黒兎可
蒼都オリジナル関係は独自解釈注意&グロ注意です。
事の始まりは僕が
自らを
とりあえずその場に腰を下ろした彼に「だからその肝の据わり方は何なんだ?」と困惑しながらも、蒼都も彼に倣ってその場に腰を下ろす。
『そうだな……。あの時も僕は、日番谷冬獅郎と戦い、そして負けた。今の君と同じような形で凍結され、身動き一つ取れない状態だ』
『同じような状態、ねぇ……』
『奪われた卍解を取り戻し…………、卍解に意志が宿っているなどというのは比喩だろうが好みではないというのに、ああいった戯言によって僕は敗北させられた』
(同じような状態……? 戦績にはだいぶ違いがありそうだと思うんだけど。汎神論とか関係なしに
なおブルー個人の人格は漫画「BLEACH」原作を読んでいたタイプの転生者であるので、目の前の彼の物言いには色々思う所がありそうだ。
おおよそ原作における「汎神論は肌に合わない」発言によるネタ扱いは完全にブルー個人の記憶に強烈に残っている。斬魄刀という「魂魄が宿りし」疑似
よってブルーは生暖かい視線を送る訳だが、それに困惑するのは当の蒼都である。
ブルーもブルーで、せっかくだからと聞いてみたりするのだが。
『
だからこそ卍解に意志など僕は認めない。奪った卍解に、意志など感じたことはないのだから』
『“
『何か文句でも?』
『文句というか、種族特性的な問題なんじゃないかなって。斬魄刀の声が聞こえるかどうかって』
『だから言っただろう。好かない、肌に合わないって』
(そう言う存在がいるというのは頭では理解しているけど、実感を伴っていないから信じるに信じられない、みたいな感じなのかな? それはそれで現実から目を背けてる感じもしててちょっとアレなんだけど……)
幾何百何千とバンビエッタに殺されながらも彼女を見据え続けた結果、ジゼル・ジュエルよりはまだ性格がマシと結論付けた男の見解であった。
『話を戻すが。……ともかく、
『まあ、勝っても負けてもどうせ陛下って全部徴収するつもりっていうか、全部自分の一部みたいに思っているところあるよね。誰に殺されてもどうでも良いみたいに思ってたんじゃないかな。
だから陛下に殺されなくて悲しい、みたいな感情は絶対理解してもらえないと思う』
『何故そのことに気付けた!? い、いや、僕のそういった感情はともかくとして…………、というか、何だ君のその妙に他人事みたいな見解は?』
『リルお姉ちゃんだったら、もし陛下から裏切られるような形で徴収されたら『あの鼻毛野郎ォ、殺すぞ』くらい言いそうなものだけど』
『不遜を通り越して君の精神性が本当に意味不明なのだが!? 本当に
(言いようがなかったのかな、ウン。……でもそうか、なるほど。この人って僕の人格が主人格である自分から分裂したものだと思ってる、みたいな感じかな? まあ、もうちょっと話聞いてから振舞い方考えようか)
いくらかありそうな未来予想(?)で
このあたりの割り切り方は、バンビエッタに殺害される事実とバンビエッタへの劣情とを「異常な程」切り分けて考えている精神性らしい振る舞いと言えよう。
『と、ともかく……、君と話してると脱線して進まないから少し黙っていてくれ』
(律義だなぁ…………)
『まあ、やられた以上、少なくともバズビーに小馬鹿にされはしていたのだろうが……。次に僕が意識を取り戻したのは、そうだな。陛下の視点だった』
『?』
『
蒼都の言葉に、少しだけ原作の展開を思い浮かべるブルー。実際問題、BLEACHにおけるユーハバッハとの最終決戦は紆余曲折あれど、黒崎一護の斬魄刀による一撃が致命傷となるものであった。
それをユーハバッハ側の視点で目撃したというのは、彼からすれば何を言っているのだという話ではあるのだが……。
痛みこそなかったけれどもね、と続け、蒼都は上を見上げて遠い目をする。
『そしてそこから、陛下の内側から「零れ落ちた」僕は――――気が付けば過去に戻っていた』
『過去、に?』
『ああ。大体3歳くらいの頃だ。両親も健在で平和な頃で…………、きな臭くはあったが、まあ悪い経験ではなかった。大人になって孝行するようなことも出来ず、結局は僕が
『無駄死に…………』
蒼都の話を聞きながら生返事なブルー。「話についていけてるかい?」などと気遣われているが、その思考だけは明らかに第四の壁を突破した形で考察が続いている。
(零れた、というのは無意識に使った言葉なんだろうけど、多分正解だな。……あんまり考えたくないけど、つまりこのオリジナルっぽい人は、陛下から零れた“
まあ何で過去に記憶が飛んだのかとか全然わかんないけど…………)
『つまり……、タイムリープ?』
『そういう若者言葉は肌に合わない』
『いえ、SF用語というか…………、割と一般的なものだと思うけど、続けて?』
『………………もし君が、今の記憶のまま魂だけ過去に戻れたら。過去の自分の身体に憑依するように、乗っ取るように戻ることが出来たら。君なら何をする?』
『何をする、と言っても…………』
既に人生二回目(?)なブルーにとって、蒼都の物言いは少しリアクションしづらいものであった。
別人の人生をやり直しているような状況であるため、その本人からもしタイムリープできたらという質問をされるのは、自分の正体を明かすつもりがない個人からすれば中々に難問である。
とはいえ「当たり障りない感じで言っとこうか」と思って発言するあたり、ブルーは平常運転であった。蒼都の先ほどの物言いから、色々と状況を考察した上で物を言うブルー。
『…………僕、記憶にないんだけど、家族を助けたりとか? そういうこと、するのかな』
『君は……、あのクソ女に懐いた最初の理由は、そもそも髪の色から家族の面影を感じ取ってだったか。嗚呼、そういうことだ。
僕は、僕の両親や家族を、あの戦火から救いたかった』
自嘲気に笑いながら、彼は掌を空にかざす。
曇天のような、暗転した空の色に苦笑いを零す蒼都。
ブルーはそんな彼の様子を、今度は茶化さずじっと見つめていた。
『……もともと騎士団に入る前、僕は天涯孤独の身だった。二十にはなっていなかったと思うが、それなりにもう大きくなっていた僕だったが。
『それは……、…………』
『くしくも虚が大量発生した。倒して逃げようとしても、あまりに数が多かった。
両親は僕や姉を守りその場に残り…………、姉もまた僕を庇った傷が原因で……』
『“
共に生きた者は共に死すべし。つまりそれは……、彼個人の後悔や悔恨、深い悲しみから来ている流儀ということだろう。自らが助けられ、共に死ぬことが出来ず、そのことに深い悲しみを背負っているからこそ。託された想いを裏切ることが出来ず、生き続けるしかなかったからこそ。
死に場所を探していたのだろうか、と。ブルーはふとそんなことを思った。
『…………最初はそんなきっかけを作った政府への復讐なども考えたが、丁度そんな時だった。陛下と、キルゲ隊ちょ……、キルゲ・オピーが来たのは』
『へ? “
『気にするところがそこかい君は!? い、いや、一時彼の元で修業していたし……って、そんな話はどうでも良いんだよ。むしろ君が完全に親戚の叔父さん相手にするみたいにキルゲ隊長に接しているのが謎だが……。
ま、まあ、そんな形で僕は騎士団に所属することになった。自分の力の在りようや、政治についても教えられてね。結局、僕が当時のことについていくら復讐したところで、一度腐ったシステムが存在していればそれを変えるのは容易ではなく、まっさらにしても誰しもが納得できる相手を立てることが難しく、そうなれば後は支配者と奴隷の再生産にしかならない』
『すごい! “
『……そうか、見てて思ったが感想がことごとく子供っぽいんだな君は…………』
いやそのことは後にしよう、と、やはり痛ましいものを見るような目をブルーに向ける蒼都。ブルー本人はそんな顔をされるいわれがないため「?」と不思議そうにしている。その無邪気さ、無垢さに、また蒼都の視線の同情が重くなる。
『……だから、そう。変えるならもっと大きなところから――――生と死の循環の根本から変えれば、人がいくら愚かだろうと、生きることと死ぬことの垣根を超えることが出来る。滅却師が滅却師として迫害されず存在できる世界であるのなら、そもそも僕の家族も虚に襲われて死ぬことはなく、多くの滅却師が援護に入って助けることが出来たはずだと』
『陛下から何をするか、聞いていたの?』
『詳細は知らなかった。今も、あの時の黒崎一護と陛下のやり取りがうっすら頭の中に残っている程度だ。だが陛下は本当に、死への恐怖という
『最終的に阻止されたとしても?』
『逆に聞くが、
『…………』
『いずれまた、陛下は僕らのような悲劇を生まないために立ち上がってくれる。僕はそう信じている』
『…………』
蘇る蘇らない以前にもっと屈辱的な形で徹底的な尊厳破壊されてるんだよなぁ、と、原作および小説版を知る彼は流石に空気を読んでコメントしなかった。いくら何でも
少しだけ得意げに笑う蒼都に何も言えないでいたブルーだったが、その相手もまた表情を曇らせて深いため息を吐く。
『だが、そう………………。過去に戻った僕は失敗した。失敗したんだ』
『失敗?』
『自国のことを甘く見ていた訳じゃないが、大したことじゃない。国内での戦火というか、内乱は1つや2つじゃなかったということだ』
『あー、えっと、……?』
『君の記憶にはないだろう。というより「思い出せない」が正しいか。その記憶はずっと忘れているのが賢明だと思う。
今でも思い出すよ――――少しでも戦火から逃れるために、両親たちの意識を変えたかったがために、集会の近くに立ち寄った時のことなど』
ブルーの脳裏に、うっすらとだが映像が過る。
両親に引かれる手。先行で走って笑う姉。三人の顔は全く思い出せないが、それでも家族は所謂愛情あふれる家族で。笑顔が、楽し気な笑顔が、いくつもあった映像が――――。
―――― 一瞬にして頭を叩き割られる姉の映像に置き換わる。
『今思えば、デモだったんだろう。……そこで鎮圧に軍事力が動けば、後はどうなるか』
幼子の視点では大人の高さから俯瞰することなどできない。だからこそ銃撃と、火炎瓶と、多くの混乱と叫びと、悲鳴と、涙と、血と、肉と、血と、血と、血と血と血と血と血と――――――――。
姉の目が自分を見ている。
胴に風穴の空いた父の手がずっと自分を握って、動くことが出来ない。
その場から逃げようとした母は、虚に襲われたわけでもなく「謎の兵器を持っている」とされ、霊的な力を使う前に――――。
『わァ…………、ぁ……………………』
そして、いつの間にか自分の身体には火がともっていた。たくさん殴られた。たくさん砕かれた。それだけでも殺されなかったのに、最後には燃やされた。
単に死体に間違えられたということなのかもしれない。死体は処理するものとして、片づけるために火にかけられたのかもしれない。鼻にツンとくる独特の香ばしいような、酸味のあるような刺激臭――――。
そこから先のことが、何一つ思い出せない。
何一つ思い出せなかった。
ただあったのは、身体がまともに動かないという認識と、ひたすらに呼吸が出来ないという状況と、何も見えないという恐怖と…………。
『僕は耐えられなかった。……かつて死んでいった家族以上に、家族に対してより大きな恐怖と痛みを与えてしまったのだから』
『……ぁ…………、ァぁ…………』
『だからきっと、その時に君が生まれた。死にゆく自らの罪深さに耐えられず、死に瀕した自らの状況すらまともに理解したくなかった僕が、その痛みから逃げるために、生贄として作ったのが。
……って、だ、大丈夫か!? ブルー、しっかりしてくれ嗚呼、いや話すべきではなかったか? しかし僕の事情を語る以上はそんなアンフェアなことはしたくないし…………』
(やっぱり妙に律義だな、この蒼都。そのせいで状況が悪化してるんだけど……)
動揺しフラッシュバックした記憶に囚われていても、内心でツッコミが出る程度にはブルーはいつも通りである。流石に本人もここまで切り替えが早いことの異常性には気付いているが、しかしブルーはあえてその事実からは目を逸らし、深呼吸を何度か繰り返す。
(つまり……、まあ実際は僕がそのあたりで憑依したってことになるんだろうけど――――)
『――――えっと、…………僕が君のスケープゴートとして生まれたって思ってる、っていうのはわかった』
『……嗚呼、本当にすまない。そしてその時に、僕はこの身体の制御権を失った』
『制御権?』
『おそらくだが、その時に僕は
だから僕は裏方に徹することにしたんだ、と蒼都はブルーに少しだけ微笑む。
裏方? と聞いてくるブルーに、彼は指を立てて空を指した。
『君の“
『?』
『――――存在証明をして再定義する。だとするならば、それは
何やら核心的なことを言ったはずの蒼都だが、ブルーはいまいちレトリック的に意味を解することが出来なかった。「?」と継続して不思議そうな、それこそ幼児のような無邪気な疑問である。
やっぱり分かりにくいな、と蒼都も文句は言わずに苦笑いを浮かべた。
『存在の完全性を保証するのは誰か、という話だ』
『…………えっと、もしかして、あなた?』
『結果的にはそういうことになっている。君の状況を「僕の視点から見て」、君が害されているかそうでないかを判断して、その結果が聖文字の力に作用して身体が再構成されている。
端的に言うとそういうことになる。フッ…………、だから共に生きた者とは共に死すべし、と言いつつ僕らは現状、ほぼ死ぬ余地がないってことだ』
何せ僕という存在が継続して存在しているのだから、君の完全性は僕が保証しているし、僕という対象は君の完全性が逆説的に証明していることになるのだから。
続いて言われた言葉が、やはり蒼都には判りにくい。分かりにくいが、つまりは「どちらか片方が生き残っていれば死なない」タイプのモンスターみたいなものだろうと、とりあえずは仮定することにした。
(どっちも死んではいるから、微妙に違うんだろうけどね。でも何だろう、僕がそこまで頭悪いって訳じゃないと思うけど、説明妙に回りくどいなぁ……。
って、あれ?)
『とすると、僕の
『――――いやそれは僕じゃないよ。そんな気持ち悪い……』
『な、何で気持ち悪いとか言うのさ。あなた、僕だよね?』
『君だって僕だが、だからこそ原理を聞いたら心底僕と同じような感想になるよ』
『何で?』
ブルーが不用意に聞いたその一言に、蒼都は律義にもきちんとした解答を提示した。浦原喜助も見習え。
『君が僕に生まれた別な人格であるとはいえ、君は僕ではある。そして同時に、蒼都という滅却師の肉体を使っていた魂というわけではない。
つまり君の完現術っていうのは――――
『…………』
『――――それは、まあ、そう言われると、キモいね』
(そっか……、ウルヴァリ〇っぽい爪こうしてたのって結構格好良いって自分で思ってたけど、当の本人からしたらグロ系のホラー映画とかに出て来る猟奇描写と一緒か…………)
急激に悲しい気持ちになったブルー。しゅん、として膝を抱えた彼に、蒼都は無言で何度も首肯した。激しく首肯する動きからして、猛烈な勢いで同意していた。
むしろ暗に叱っているのかもしれないが。