蒼都になったけどバンビちゃんが死ぬほど面倒臭い(※死ぬ)   作:黒兎可

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久々のキルゲさんなので口調がおかしかったらすみません汗
 
例によってダイスの女神御乱心&微グロ?注意・・・


#033.心の痛まない使い捨て

 

 

 

 

 

「んん……、仲良き姉弟(きょうだい)がごとき振る舞い、中々お目にかかれる様ではありませんが。蒼都(ツァントゥ)、少々時間をもらえれば。……ツァン? はて? 一体何がどうしたというのでしょうか、む?」

 

「おい、呼んでるぞ前髪野郎ォ」

「へ? …………あっ、僕の名前か。うん、そうだね、うん、大丈夫、忘れてないからリルお姉ちゃん」

 

 いい加減覚えとけ、と「頭上から」小突かれる青年滅却師。ブルー・ビジネスシティなどと強制的に名付けられた蒼都は、あらためてキルゲ・オピーの方を向く。……何故か城の一角の廊下にて、リルトット・ランパードを肩車したまま。

 状況がいきなり意味不明につき「説明を求めますね……」と帽子を目深にかぶるキルゲ。眼鏡が若干ズレてるのは気のせいではあるまい。他の面々に比べれば身長的に低いリルトットであるが、それでも160センチ程度はある。そんな彼女をまるで幼児か何かのように肩車し、なお頭上で頭髪を弄ばれてるブルーは、本来ならばどう見ても兄妹(きょうだい)的な見た目ではある。が、ブルーの立場の事を鑑みた上であえて姉弟(きょうだい)というニュアンスを用いたあたりは、流石にキルゲも気を遣ったか。

 

 説明? とブルーは頭上のリルトットを見る。

 リルトットはブルーの前髪を三つ編みにしながら(何故?)半眼で見返す。

 

「まあ……、うん、キャンディお姉ちゃんが悪いってことで」

「だな。ビッチが悪かったつーことで」

「事情はわかりませんがバンビエッタ・バスターバインから逃げたいという意志だけは、果てしなく伝わってきましたねぇ…………。口は堅く閉ざしますので、ブルーを引き渡していただきたい」

 

 別にいいぜ、とブルーの前髪を解いてから飛び降りるリルトット。流石に飛廉脚で動いたためか、着地に一切の無駄がない。そんなリルトットを見て、ブルーは思わず苦笑いを浮かべた。なにせブルーたちが逃げて来た理由というのが――――。

 

「そりゃオメー、()()()の奴があっちにベタベタしてっからブルーが逃げ出す羽目になんだろォがヅラ野郎ォ。只でさえ爛れてンだから、より教育に悪いだろォが」

「カツラではないのですが!? れきとした地毛なのですが!!? いえそのあたりはロバート老に後程説教していただくとしまして。彼にも困ったものです、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。いえ、キャンディス・キャットニップの興味を独占しているという意味では、下手な被害者が増えていないと言う意味で蒼都共々称賛するべきことなのでしょうが」

「どう考えてもクソビッチよりかはマシだけどなぁ、ビッチは。でもまぁ、あのヤローにひっつくまでブルーすら手ェ出すつもりだったみたいだし、その言い方も妥当っちゃ妥当か?」

(あっ、キルゲさんすら気づけないのか月島さん。さすが、全部月島さんのお陰だよなぁ)

 

 そう、本日なぜかブルーを煽って来たキャンディス・キャットニップは、BLEACH原作後期を知る人間ならおそらく全員知っているだろう月島秀九郎とイチャイチャしていたのだった。

 月島秀九郎という個人について、説明するのは簡単だが難しい。とある男に拾われ、その男のためなら何だってする――例えばむこう千年以上も単純労働にいそしむような、そういったことすらいとわないのが月島と言う男である。

 その精神性はひたすらに、彼が持つ完現術「ブック・オブ・ジ・エンド」に由来していると言っても過言ではない。本の栞を媒介として白い西洋剣へと変化するその能力は、斬った対象の過去を改変するというもの。より細かく言えば、斬った対象を1つの本とみたてそこに栞をはさむように自らの存在を介入させ、そこから対象の経て来た時間を書き換える、というもの。たった一人(一つ)に対してのみ作用するタイムトラベルによる時間改変、といえば良いか。

 

 つまり理屈の上で言えば、彼の能力はすべてブルーに差し込まれ作用していることになっている。 

 そして“Ⅰ-不滅-(ジ・イモータル)”による「自己の完全性を証明し再定義・再構築する」という能力を持つブルーに対して、これが使われた場合に何が起こるかと言えば。

 

(最初は小さい僕からバンビちゃん盗ろうとしたけど爆殺されかかって断念したし、ミニーちゃんのお兄さんになろうとしてスケープゴートにされてやっぱりバンビちゃんに爆殺されかかったし、ジジさん相手には徹底的に嫌われてたからな……。今回が四度目の挑戦なのかな? たぶん僕に一度差し込んだうえで、他の人たちに差し込んで関係性を書き換えてるんだろうけど。

 でも差し込んだ時点で僕の過去について知っているのなら、多分()()について問いかけて来るかそれらしいリアクションとってるだろうし……、やっぱり僕の前世って、認識されない類のことなのかな)

 

 この通り「個人への歴史の改変」と言う事実を自身の完全性への異常事態と認知し、本来の歴史の彼の認識が上塗りされて現在に至るわけである。もしかしたら天鎖斬月に刺した後にでもユーハバッハに刺したか何かした上で、その更に過去に巻き戻っているのが彼にとっての現在なのかもしれない。結果として月島の試行錯誤を客観視してしまっており、完全に同情する気分であった。

 つまりは現在、月島が尸魂界へ復讐するために見えざる帝国へと協力している完現術師という「異様な扱い」で落ち着いているのを正しく認識できていた。

 

 なおその場合、ブルーの現在の自己認識そのものが過去改変を受けている記憶世界と言うことになるが……、そのあたりは深く考えないことで、己のアイデンティティを守護しているブルーであった。

 そして、そんな月島の能力だからこそリルトットを彼の標的にしないため、最近はよくきゃっきゃうふふとしているブルーなのである。

 

(僕ならいざ知らず、「未来で死んでないが故に過去で死ぬわけはない」ってロジックで死なないとはいえ、バンビちゃんの砲撃で流石に泣いてたし。リルちゃんを奪ったってことでグレミィさんの標的になったら可哀想だからね……。身体が死なないからって心が死なない訳じゃないんだし。

 原作からすれば、少なくとも黒崎一護たちのために動いているんだろうし、そこは気を遣ってあげないと)

 

 純然たる善意からであり、また自覚はないだろうが実際そのお陰で月島は心の命(?)を繋いでいた。

 

「キルゲさん、リルお姉ちゃんも行ったら駄目なんです?」

「駄目とは言いませんが意味がありませんねぇ。こたびの任務は、蒼都あなたのその完全性に由来する絶対耐性こそが必要とされる任務なのですから」

「絶対耐性、ですか」

「虚関係か?」

 

 リルトットの疑問に、キルゲは帽子の鍔を押さえる形で答える。口に出す権限はないが、否定はしないというポーズだった。

 

「俺が行ったって別に問題ねーと思うけど、オメー何でわざわざ俺を連れて行きたいんだよ」

「いやほら、バンビちゃんたちいないし寂しいかなって」

「子ども扱いすんなよ前髪野郎ォが」

 

 ブルーの言う通り、現在バンビエッタ、ミニーニャ、ジジの三人は別任務で現世へと出向いている。極東を中心に虚の殲滅作戦が開始されており、徐々に徐々にその勢力圏を広げる――あるいは()()()算段なのだろう。騎士団員それぞれが、聖章騎士(シュテルンリッター)をそれぞれの一般兵たち小隊の頭として戦い、尸魂界東梢局圏における虚の勢力を追い詰め始めている。

 そんな訳で月島とイチャイチャしているキャンディスを除けばバンビーズとしてリルトットは一人になるのだが、げし、と軽くブルーの鳩尾を小突いて半笑いを浮かべた。

 

「まぁキャンディも懲りずにあのイケボ野郎ォと遊んでやがっからな。何か暇つぶしでも探すわ」

「あんまり近寄らないでよね、リルお姉ちゃん」

「ンだよ、心配か?」

「うん」

「………………けっ、色ボケ野郎ォが。200年早ェよ」

(うん?)

 

 ちなみにリルトットとしては「(俺が月島に何かされないか)心配か?」というからかいの問いかけだったのだが、ブルーからは「うん(月島さんがグレミィさんから嫉妬されて心壊されないか)」とまっすぐに回答されてしまったのだった。表面上の字面のみを追うことで、微妙に勘違いされている。

 恋愛的なものではないにしろ、ストレートに好意をぶつけられたリルトットである。珍しくちょっとだけ赤らんで視線を外すリルトットは、足早にその場を後にした。

 

 さて。キルゲに連れられて向かった先、銀架城(ジルバーン)が地下である。場所としてはグレミィ・トゥミューが拘束されている階よりもさらに下、いわば「霊子的な影響が」上部にもたらされない程離れた場所。一時的に霊子で扉を構成し、さらには階段すら飛廉脚の要領で構成してようやく足を踏み入れられるその場所に、彼等はいた。

 

「……破面(アランカル)? 何で?」

「良い質問ですねぇ蒼都。しかし認識を新たにする必要があるでしょう――――我らの仲間、貴方の()()に対して」

 

 キルゲの言葉に、総勢十数()のシルエット――――各々が白い、洋風の死覇装を身にまとう集団は、ざわざわと声をあげる。視線は剣呑にキルゲやブルーに刺さる。言葉は怒りと屈辱に塗れており、今にも襲い掛かりかねない語気が籠っていた。

 それを前に、ブルーは一人困惑する。

 

(僕の配下って……、一時期集めようとしてたけど、結局バンビちゃんにぶっ殺されるからってナシになったんじゃなかったっけ? ハッシュヴァルトさんとバズビーさん、一緒に頭抱えてたし)

 

 実際、バンビエッタとミニーニャがそろってブルーに手を出し取り合いのため大戦争(?)を始めたころ、事の顛末を聞いた騎士団長ハッシュヴァルトは言葉を失い「お前を通常の聖章騎士(シュテルンリッター)として扱う方が逆に危険か?」と唸り声を上げる。保護者代わりについてきていたバズビーすら「まぁ、アレだ! 生きてりゃ何か良い事でもあるだろ! な!」と謎の励ましをし始め、ハッシュヴァルトと顔を突き合わせ始める始末。

 どーすんだよユーゴー、と強気な笑みが引きつるバズビー。

 むしろバズに代案はないか? とかなり真剣な顔で問い返すハッシュヴァルト。

 

 結局その場で答えは出ず、今日にいたるまでブルーの配下たる騎士団員は、皆無であった。またバンビエッタがブルーをことさらに引っ張る姿が目撃される回数が増えるにつれ、ミニーニャの配下を始めとして女性団員や一般騎士たちが、それとなく自分を売り込まなくなっていったことも特筆に値するだろう。

 つまり終始、何から何まで頭バンビエッタによる不作為の作為な工作であった。

 

 そして荒れる破面たちに対し、帽子を押さえながら「いけませんねぇ……」と呟くキルゲ。ブルーの方をちらりと一瞥し「覚悟はできていますか?」と問う。

 

「覚悟?」

「ええ。この破面(アランカル)たちは、藍染惣右介の配下として種族の境界を越え大いなる力を得たものの。それにより(ホロウ)としての成長が止まり、今以上を目指すことが出来なくなったものたち。番号で言えば中ごろから後半に値する面々と言えましょう。この中より見出されし者は十刃(エスパーダ)や補佐官として取り立てられることもあったのでしょうが、つまりこの場にいる彼らは! そんな選定からすら漏れてしまったいわば虚圏(ヴェコムンド)の恥さらし! その自覚すらなくこうも嗚呼我々に尊大な口を利くなど、身の程をわきまえるべきでしょうねぇ――――」

(口悪いなキルゲさん……って、これ挑発かな? たぶん)

 

「ふざけるな! この私が、あの腰ぎんちゃくに成り下がった()よりも劣るだと!!? ――刺し毒せ『鋏刺毒騎(グラネスコルピオ)』!」

「何を逸っているイーバーン!? 慎め!」

(あっ、本当に釣れちゃった)

 

 キルゲの言葉に激昂した破面の一人、左の顔面を覆う様な仮面を持つ赤毛の男がダガーのような斬魄刀を解放する。光と衝撃波を伴い、霊子の砂煙から現れ出たのは、六つの尾に巨大な弧を思わせる両手のハサミを持つ男の姿。仮面は変化し両目を覆うようになり、いくつか存在する眼窩のうち右目の方の1つのみが視線を宿す。

 死ね! と襲い掛かるイーバーンと呼ばれた破面を前に、キルゲは身動き一つせず。

 

 

 

「――――瞬接(ウェルディング)

「――――な、なにっ!?」

 

 

 

 そしてその延ばされた尾のすべては、キルゲの隣にいたブルーの右腕から放出された「銀の液体」、その変形した板のようなものにからめとられ、その状態で硬化していた。

 一つとしてキルゲのもとまで到達するに至らず、その全てが拘束されたまま。

 

 いけませんねぇ、と。そう言いながらキルゲはブルーの方を見て、傷ましいものを見る目をした。

 

「それではいけません、蒼都。貴方がいかにその身の完全さに確信を持ち、また自信があるのだとしても。貴方の救いたいものが必ず救える世界であるとは、この世は限らないのです。

 だからこそ、敵に情けをかけるのを止めなさい。今の状態から、すぐに彼を殺すことなどたやすいでしょう」

「いやでも、配下? いきなりそんなこと言われても、色々理解が追い付いていないんですよ」

 

 困惑したように、イーバーンの方を見るブルー。いまだに尾が抜けずに青い顔のまま決死の形相で力の限りを尽くしているようだが、隣のピアスのようなものがされた破面から「だから言ったのだ」と鼻で笑われる。

 他誰一人としてイーバーンを助ける素振りはないものの、ブルーという未知なる敵の存在に各々が警戒を深めていた。

 

「彼らは誰一人として、特記戦力たる黒崎一護の物語に端役すら存在しない。まさに藍染惣右介から無価値の烙印を押されし者ども。しかし……、そこのリューダース・フリーゲンを始めとした一派こそ、かの戦いにおける我らの存在を認識せし虚の一派。戦闘の後、わざわざ我らに接触を試み、だからこそ今日が存在する」

 

 恐れ入ります、とイーバーンを馬鹿にしていたピアスの破面が頭を下げる。イーバーンはそんな男に、心底殺意を向けていた。

 

「蒼都、貴方なら気付いているでしょう。彼らと言う存在の危うさを」

「…………はい」

 

 そして、そんな十数人の破面を見て、ブルーの表情は曇る。それはひとえに虚の霊圧、虚の力を持った存在が、騎士団に入ると言う()()()()()()()()()()()シチュエーションに対してのものだ。彼の脳裏をよぎるのは、以前虚を相手に殺された"K-殺戮機械-(ザ・キラーマシーン)"ロボことBG9かつての姿。その死体。

 光を失った目で運ばれた彼の死体の姿に、ふいにバンビエッタの顔が重なる――――。

 

「しかし同時に、貴方の配下になったのならば。貴方はその幼さゆえに彼等をも自らの心に引き入れることになるでしょう。このまま何事もなく彼らを配下に加えるのであるならば――――そんなことはいけない。

 良いですか? 蒼都。これは私からの最後の訓示です――――非情になることをためらってはいけません。貴方が守るべきもののために、貴方が守りたいもののために」

「キルゲさん……」

「本来、陛下に仕える身としては甚だ不遜なことを言っているに違いはありませんがね。それでも幼少の頃より()()にさらされていた貴方を見れば、思う所も多いのです」

 

 どこか寂し気に微笑むキルゲに、ブルーは言葉を返さない。正しいとも、間違っているとも、何も言わず。ただ何かをこらえる様に、拳を握る。

 

「――――では、手始めに。蒼都、彼等の斬魄刀を回収なさい」

「回収?」

「ええ。虚の霊圧などこの神聖なる城へ入れていること自体がそもそも不遜! 故にこそ彼らが人の形をとるさいに自ら切り離した汚らわしきその力、このような場所に残す必要もない。

 逆らうものは皆殺しに。躊躇わず――――ひいてはそれが、陛下が貴方の望みをかなえることにもつながるでしょう」

「…………」

 

 言葉は発せず。しかし、ブルーは視線を破面たちに振る。

 バンビお姉ちゃん、とだけぼそりと呟き、彼は両手を交差させる。

 

 何をしたわけでも無く、しかしこれから何かをするのが如実にわかるその様を見て。破面たちは一斉に斬魄刀を解放し――――。

 

 

 

聖隷(スクラヴェライ)――――“神の完全(メタハエル)”」

 

 

 

 果たして両腕を振り払ったブルーに、周囲の霊子が猛烈な速度で集まり。

 目元からは、霊圧の奔流が翼か耳か……、あるいは涙のように放たれていた。

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 そこからの展開は、一方的極まりないものであった。

 

約定(コミットメント)

 

 ブルーがそう呟くだけで、イーバーンの刀剣解放によりもたらされた尾は全て叩き斬られた。気が付けば両腕からは鉤爪のようなものを出し、かの滅却師はイーバーンに何もさせる隙さえ見せずに事を完了させていた。

 絶叫を上げのたうち回るイーバーン。をのれ、と声を上げ襲い掛かる鳥の破面も――。

 

約定(コミットメント)

 

 ――翼を捥がれ堕ち、腹を捌かれる。

 

約定(コミットメント)

 

 ――西洋竜のような大型の破面が、その頭を蹴り砕かれ脳天から捌かれる。

 

約定(コミットメント)

 

 ――ワニのような破面の顎が引き裂かれ、奥にあった顔面を蹴り潰される。

 

約定(コミットメント)

 

 ――単眼の大男のような仮面を持つ破面が、斬魄刀を解放するよりも先に脳天から真っ二つに斬り殺される。

 

約定(コミットメント)」「約定(コミットメント)」「約定(コミットメント)」「約定(コミットメント)」「約定(コミットメント)」「約定(コミットメント)」「約定(コミットメント)」「約定(コミットメント)」「約定(コミットメント)」――――――――。

 

「臣従するのに躊躇いはないとはいえ、これは……。

 (まみ)えろ、裁定宮官(イスカラ)!」

 

「――――約定(コミットメント)

 

 解放した斬魄刀の効果か、自らとその背後……結果的にイーバーンも庇う形になった破面は、その左側に形成されていた仮面もろとも肥大化した自らの翼のようなものまで含めて、完膚なきまでに粉々に粉砕されていた。

 白くなった左側の長髪が、自らの血に塗れる。彼が殺されなかったのは、ブルーへと積極的に攻撃しなかったせいからか……。倒れ伏す破面に、「余計なことを、リューダース・フリーゲン……!」とイーバーンが呻きながら言う。

 イーバーン共々庇われていた破面のうち数名はその場で膝をつき、震える者もいる。

 

 わずかにブルーへと襲い掛かる三人の破面――――それぞれが斬魄刀を解放し、融合し、三つ首の大きな獣のようになった破面へと向けて。

 

背信の剣(アロガンツ・シュヴェールト)――――約定(コミットメント)

 

 瞬間的に、そうまるで「映画のシーンを切り抜いたかのように」、例によって次の瞬間にはその獣の腹部へと移動していたブルーは。鉤爪が変形した剣のような形状のそれを持つ右腕を振りかぶり、腹部に突き刺し。

 右腕から銀色の液体のようなものを零しながら、腕力だけで持ち上げるブルー。どくどく、と、何か脈打つような音と共に、がたがた震える巨大な破面。全身が痙攣するその破面は、一目で何かその()()にて尋常ではないことが起こっているのを察することが出来る。痛みゆえにかもがくことすらできず、怯える視線をブルーへと向け、見下ろしながらも畏怖する破面たちは。

 

『『『が、が……、も、もう、逆らいません、助けて……!』』』

「うん。……()()()()はこれで最後かな」

『『『や、やめ――――――――』』』

 

 次の瞬間、破面の全身は爆発的に膨れ上がり、まるで風船か何かのように破裂した。

 爆散。飛び散る欠けた獣の顔が、三つ。飛散する臓器と共にまき散らされる、膨大な量の「銀の液体」。

 

 破面の体内を蹂躙し、破裂させたものだろう液体。それらがブルーの元へと戻っていく様を、フリーゲンやイーバーンは唖然とした表情で眺めていた。

 

 姿が元に戻ったブルー。収束していた霊子が散り、腕の爪や刃を引っ込めたところで、ブルーはその視線を彼等破面へと向ける。先ほどまでの優し気な雰囲気が消え失せた、暗い、暗い、鋭い視線を。

 自分たちをゴミとも思っていないようなその視線を前に、引きつった声を上げるフリーゲン。生き残っている破面はもはや両手で数えられるほど。しかし、果たしてその場で最初に動けたのはイーバーンであった。

 両腕の鋏すらもはや砕かれ、破面どころか虚としての尊厳を持つものは何一つ残っていない彼は。言葉を重ねず、ただ膝をつき、姿勢を正してブルーへと頭を垂れる。その手前に折れた斬魄刀を置く様は、獣が服従を示すような雰囲気さえ漂う。

 

 おずおずと、徐々に徐々に他の虚たちもそれに続く様を見て。キルゲ・オピーは右手で自分の口を押さえ呟いた。

 

「素晴らしい……。やはり陛下の与えた力は、すさまじいの一言ですねぇ。完現術込と言えど、圧倒的にすぎます。そしてブルーも、安心なさい。貴方が騎士団としてふるまう限り、私も陛下も、貴方の願いを裏切ることはありません。

 それに……非情になれるのならば()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()でしょう。所詮は(ホロウ)、我ら滅却師(クインシー)の安寧のためには、決して許してはいけない存在なのですから」

 

 ともすればそこには、わずかなりともブルーの養育に関わったことのあったキルゲなりの親心のようなものもにじみ出ていたのかもしれないが。当のブルーはと言えば右手を強く握り、震え。

 

(………………思い出したよこの手前の二人、完全に原作ネームドキャラだよ。()()()()()()()()()()()()()さんだし。生きててほしいってわけでも無いけど、こうやって甚振るようなことってその、うん……うんでも、まあ、どうあがいてもバンビちゃん生存のためには陛下に逆らえないからなぁ、うん…………、キルゲさん経由で陛下に報告行くんだろうし、ポイントは稼いどかないと、うん)

 

 色々と納得できない内心……、ともすれば彼の幼少期に刻まれた精神的外傷(トラウマ)に多重に引っ掛かっていたせいで、キルゲの気遣いはいまいち伝わっていなかった。

 

 

 

 ちなみに帰った後、リルトットから「何かあったか?」と問われ、口の中にマシュマロを大量に放り込まれたのは余談である。

 

 

 

 

 


・補足→月島さん:

 実はブルーに干渉している訳でもなく、ブルーが見ている光景はリアルタイムのもの。“Ⅰ”の聖文字(というか観測してる人)が反応した結果、ブルー側がバグってしまったため、本来なら認識できないはずの「栞が挟まれた時間軸」を認識してしまっている状態。

 月島さんが去れば何事もなかったようになる。

 

 

 

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