蒼都になったけどバンビちゃんが死ぬほど面倒臭い(※死ぬ)   作:黒兎可

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しれっと日刊に載ってたのにびっくりしたので、本当はメゾチャン打つ予定だったけど、せっかくなので感謝の番外編・・・
 
将来的にこうなるよ? と、予定みたいな話です汗 例によってダイス



#004.番外編:NOT KILL THE MONSTER




 

 

 

 

 

「…………この霊圧、まーたバンビちゃんは後先考えないで……。情報(ダーテン)だと、狛村隊長かな? はぁ……」

 

 白いフードに身を纏った滅却師の青年は、そう呟いて深くため息をついた。力なく、まるでいつものことだと言わんばかりの具合である。

 滅却師の国「見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)」による尸魂界(ソウルソサエティ)の襲撃。瀞霊廷への星十字騎士団(シュテルンリッター)による進撃と、護廷十三隊による防衛戦。奇襲をかける形だったのは滅却師側であり、戦況は明らかに彼等に追い風が吹いている。

 そんな光景が各所で繰り広げられていても、青年はやれやれと言わんばかりに肩を落とした。

 

「――――オイ、お前」

「?」

 

 そんな彼に背後から声がかかる。甲高い少年の、しかし苦虫を噛み潰したような低い声。青年は立ち上がり、その下方を見た。

 

「お前か? ここに来るまでの連中を軒並み『再起不能に』してたのは」

「嗚呼。…………それには、(イエス)と答える」

 

 殺した、とその白髪の少年が、死覇装に羽織をまとった「小さき隊長」、天才少年と呼ばれたこともある日番谷冬獅郎は口にしなかった。事実その通り、フードの青年は戦った死神たちの鎖結と魄睡(霊力内燃臓器)を、共に自らの技で使用不能としていた。

 かつて現世の死神代行、黒崎一護がされたことのあるようなものと同様である。ただし、損壊の仕方が著しく、命こそあれど戦士としてはほぼ再起不能だろう。

 

「そうかよ。少し、驚いた。――――わざわざウチの隊士を中途半端に殺して挑発してきた奴が、こんな所でマヌケにも油売ってるなんてなぁ」

「……………………」

 

 少年の挑発に、彼は応えない。ただ風を切り腕を振ると、その右の腕に、オオカミの上顎を思わせる、蒼と白の手甲が形成された。そこからミシミシと「何かが這い出る」ような音を鳴らし、その顎から三つの長い爪のような刃が生えた。

 少年も、自らの斬魄刀を抜刀し――――。

 

 

「――――霜天に坐せ、『氷輪丸』!」

 

 

 刀剣解放――――。柄尻から鎖に繋がれた三日月の月輪刀が伸び、冷気が放たれる。

 

 それに向けて、青年は刃を向けて構え――――刃の先から光弾のような霊圧の矢を放つ。

 振りかぶり、薙ぎ払う冬獅郎。冷気を帯びた斬撃がその軌跡に沿い、氷の竜を表出させる。

 

 矢と竜が激突――――同時に、青年の構えた手甲爪から、延々と矢が狙撃される。上あごの右、構えたその三つの爪それぞれ一つ一つに霊子が収束し、時間格を置いて絶え間なく、高速で狙撃――――。

 

 砕ける氷の竜と、周囲に散る蒸気のごとき白息。

 

 それを起点に斬魄刀を振るい、冬獅郎は空中で氷の壁を作り出す――――。

 飛廉脚。フードの青年は霊子で足場を形成し、そのまま高速で突撃。

 

 爪に収束した矢で狙撃をし、氷にわずかに亀裂を入れる。直後、その亀裂が再生するよりも前に爪を差し入れ、速度と硬度をもって破壊した。

 砕ける壁を前に、飛廉脚。青年は冬獅郎に迫り、彼も表情を変えず斬り合う。身長差の関係もあり、小柄な彼はやすやすと懐へ。そのまま袈裟斬り、フードの首筋へと斬りつける冬獅郎。

 

 だが、斬れない。

 明らかに皮膚へと接触した斬り応えがあるのに、何かが振動でもしてるように「妙な膜」のようなものが、彼の刃の貫通を拒んでいた。

 

「何、だと……?」

「――――――――面取(チャンファリング)!」

「な――――ッ!」

 

 一瞬の驚愕の隙を見逃すほど、青年は甘くはない。冬獅郎の腹へすかさず蹴りを一撃――――あまりにも体感したことのない「硬さ」の蹴りだった。まるで金属の塊で雑に殴られたような、そんな想像以上に重い一発に、後退させられる。

 

「隊長!」

「……わめくなッ」

 

 だが、それでも。距離を離される隙を塗って、一撃、彼の籠手を斬る程度できず何が護廷十三隊の隊長格か。副隊長、松本乱菊の声に、雑に応じる。

 斬魄刀・氷輪丸。歴代の氷雪系斬魄刀の中で随一の性能を持つその一撃は、容易く青年の右手から肩までを一瞬で凍結させる。

 

「――――これで、テメェの腕は封じた…………ッ。ヘンに手心、加えてるのかは知らねぇが……ッ、この襲撃で、多くの仲間が殺されてるんだッ。こっちは……、加減する気は無ぇぞッ」

「……………………ハァ」

 

 やはり、ため息。そしてそのまま左腕を構え直すと、そこから改めて「オオカミの下顎」じみた手甲と爪が、右腕と同様に形成される。

 

 瞬間、間合いを詰める青年。冬獅郎は右側を庇う青年のそれを、正面から刀で受ける。使い物にならなくなった腕を、そのまま盾代わりにしているのかと。考えもしたが、そんな幻想は激突した時の感触で打ち砕かれる。

 まただ、明らかにその硬度がおかしい。先ほどの蹴りも同様、今まで感じたこともないような強靭な強い「金属の塊」のような――――。 

 

 とっさの判断、瞬間的に冬獅郎は背後へ飛び退いた。突進の勢いを相殺する目的よりも、彼の構えた左腕の爪が振るわれることを恐れた。瞬歩を後方に向け、その場で地面に霊圧を溜めて蹴った――――。

 

 先ほどのダメージが胴体に蓄積している――空中で無理に方向転換し、冬獅郎は足で後方の壁を蹴った。と同時に、相殺しきれなかった威力で罅が入り、また彼の足の内も同様に――――。

 

「――――うぉおおおおおおおおッ!」

 

 だが、そんなものが何だと言うのだ。自らの足表面に氷輪丸の力を使い凍結、折れた骨の状態を固定し、即席のギプスとする。

 そのまま斬りかかる冬獅郎だったが、青年は凍結した右腕を「適当に払う」。それだけで、氷の下にあった「銀の右腕」が露わになり――――。

 

「――――唸れ、『灰猫』!」

「ッ!」

 

 両手の爪による狙撃を、乱菊が自らの斬魄刀でそらした。直撃する高速射撃された霊圧を、空中を漂う灰の塊のような状態となった自らの刀で、クッションのようにして防いだ。

 当然、ダメージは通る。いかに直撃でなかろうと、その密度と速度が彼我の攻防の差を物語っていた。

 

「ちょっと、隊長!? 本当に駄目じゃないですかそれ、昔、志波隊長が『ダイジョブ、ダイジョブ』って言ってた時より大丈夫じゃないでしょ!」

「何も言ってねぇ、松本…………、コイツ……ッ」

 

 改めて倒れる冬獅郎に、乱菊が駆け寄る。起き上がる彼を抱き起そうとするのを払い、前方を睨む冬獅郎。それにつられて視線を向ける乱菊に、青年はやはり深くため息をついた。

 積極的に攻めて来る気配はない。だからといって、このまま見逃して良いような相手ではない――――冬獅郎の決断は、早かった。

 

 

 

 それこそ眼前の青年に言わせれば、早すぎるほどに。

 

 

 

「……やるぞ松本、卍解無しで殺せる相手じゃねぇ」

「ちょ、隊長……! でも、敵は卍解を封じるからって、涅隊長の分析結果が出るまで待つようにと――――」

「――――だから言ってるだろ! そう簡単に殺せる相手じゃねぇ! それに……ッ」

 

 乱菊も気付いた。明らかに冬獅郎の消耗が激しすぎることに。まるで戦うごとに、自らの霊力を相手に吸われてでもいるような……。

 なればこそ、戦線を維持するためにも。自らの霊圧を底上げするために、卍解の使用は必須。

 例えそれを封じる術を相手が持っているにしても、もはやこのままでは何もしないでは、座して死を待つのみとなるのだ。

 

 後を頼むと言い放ち立ち上がる冬獅郎。――――肌で感じる、周辺の隊長格もそろって卍解を発動したことを。彼等もまた、それぞれにそれぞれの必要性をかられての事なのだろう。

 

 そんな一連の流れに、青年はやはりため息をつく。

 

「どうして皆、正体不明の相手に安全策をとらないのかな。あるいは、他に手段を用意していなかったってところなのか……」

「…………ハッ! テメェで言ってたら世話無ぇ、だろ……ッ!」

 

 内容はまるで、こちらを馬鹿にするような。しかし声音は不思議と労わるような、全く以て「妙な」感覚を抱く冬獅郎。つい軽口が出たのも、彼のそんな雰囲気に呑まれてのことか。フードでその表情が見えないまでも、口元が僅かに微笑んだ。

 

 斬魄刀を構え、霊圧を高め始める冬獅郎の耳に聞こえる、青年の独り言。

 

「僕は殺すのも、殺されるのも嫌いだ。痛いのも、我慢にだって限界はある」

「…………」

「だから陛下の作る世界がどうなるかも、本当を言えば興味はないけど――――」

 

 わずかに顔を上げたその目は――――まるで自分よりも年下の少年のように、妙に澄んだものだった。

 

「――――それでもまぁ、バンビちゃんが『殺されない』程度には、適度に、ね?」

  

 意味が解らないが、おそらく仲間の誰かなのだろう。それに対する声音は優し気で、しかしどこかあきらめ気味のようなもので。自分が雛森(幼馴染)へ向ける声音のようなものを感じた冬獅郎は、しかし鈍ることなく刀剣解放を続けた――――。

 

 

 

「――――卍……解…………ッ、『大紅蓮氷輪丸』ッ!」

 

 

 

 顔をしかめる。卍解したが、やはり妙な感覚がある冬獅郎。自らに纏う氷の竜も、それに伴い先ほどまでと比べようもない程の冷気も、普段より何故か霞んでいるような感覚があった。

 卍解を封じるような挙動を、男は見せない。それに対し、自らの卍解を彼は封じられないのだと冬獅郎は驕らず。しかし警鐘を鳴らす自らの戦闘勘に従い、一気に決着を――――。

 

「氷竜旋尾――――!」

「――――重継(ダブルシーミング)ッ」

 

 冷気による猛烈な斬撃――――軌跡に沿って冷気が刃となり、すぐさま凍結するこの一撃を。青年は突きだした左腕の手甲を構え。その爪先が、ゴリゴリと猛烈に「嫌な音を立てながら」、うねうねと変形した。渦を巻くような巨大な盾。それが冬獅郎の一撃を当たり前のように防ぐ。

 と同時に、気付いた――――防いだ傍から、冬獅郎の霊圧がその壁に「喰われている」ことに。自らの竜でさえ、その霊子が徐々に徐々に霧散し、男の周囲で滞留しているではないかっ!

 

「――――何、だ?」

 

 感じたことのない怖気――――かつて涅マユリが挙げた滅却師の報告にあったその現象を体感する冬獅郎。と同時に、その渦が「突撃槍(ランス)のように」変形し。空中の冬獅郎、振り下ろした刀を構え直す前の彼に目掛けて、放たれ――――。

 

 灰猫の動員すら間に合わず、彼の腹には大きな風穴が開けられた。

 

 砕ける卍解の氷。空中から落下し倒れ伏す冬獅郎を前に、乱菊は間に合わなかった灰猫を構え直し。

 しかし、青年は右手の爪を左手同様に「嫌な音を立てて」変形させた。形状はまるで手錠のようなそれで――――彼女が身動きするよりも先に、その腕をとり、殴りつけ、叩きつけ、巨大な手錠のようなそれで全身を縛り上げた。

 

「――――ァッ!? こん、な……」

「ハァ…………」

 

 一撃の重さに、やはり体感したことのない「超重量の金属で殴りつけられたような」痛みに、言葉を奪われる乱菊。

 その手から斬魄刀の柄を無理に放させ、やはりため息をついた青年。フードが落ち、その顔が見える――――長い前髪から覗く目元は、案外とすっきりして子供のようである。そんな青年は、とても悲しそうな表情をして、掌大の円盤を構えた。

 

 

 

 瞬間、冬獅郎の卍解を形成する霊子が「吸い上げられ」――――同時に、大前田希千代の鬼道によって全隊へ通達される。敵は、卍解を封じるのではなく奪い取るのだと。

 

 

 

「…………ッ!? 何とか、言えよ……、氷輪丸……!」

「隊長……っ」

 

 突然、自らの斬魄刀に起こった異常に顔をしかめる冬獅郎だったが、状況はそれで終わりではない。まるで当たり前の作業をするように、再び爪の形となった右の手甲を構え。青年はその腕を、冬獅郎の背中に振り下ろす――――。

 激痛とうめき声――――同時に、自らの内から吸い上げられる、「有り得てはならない」その感覚――――。

 

「テメェまさか……っ、俺の魄睡を……!」

「…………『共に生きたものとは共に死すべし』。君の斬魄刀から『その映した魂』は裂かれたんだ。君も、この場でその刀と共に、その『力』に別れを告げてくれ」

「が、ああああああああああ――――――――ッ!」

「隊長――――ッ!」

 

 気絶した少年から爪を抜くと、青年は腕を払い血を散らす。その視線は乱菊らをもう見ていない。どこか遠くへと向けられた視線は、まるでこの世の終わりでも見ているようなもので。

 

「………………逃げれば、僕は追いはしない。しばらくしたら、その錠も消えるから。……これから此処はきっと、今まで見たことのないような『地獄になる』。陛下はそれほどに、護廷十三隊へと強い感情をお持ちだ」

「……ッ! ふざけんじゃないわよ、アンタたち、勝手にこっちに攻めて来ておいて、何居直って――――なんでそんなに、アンタ、やりたい放題ッ」

 

「――――だって、僕は不死身のバケモノだから。怪物って言うのは加減を知らず、好き勝手やるものでしょう?」

 

 

 

 星十字騎士団 “I-不滅-(ジ・イモータル)” ブルー()ビジネスシティ()

  

 

 

 青年は彼女に苦笑いを浮かべ、その場から立ち去る。空中へと飛び出し、他の戦場の状況を観察。

 彼に倒された死神は、命は奪われずとも戦士としては再起不能。意図的に、それは徹底的に行われている。それはある意味で、単純な死よりも生存者の誇りへ泥を塗る行いであり――――。

 

 

 

「…………とはいえ全員『回復の目途が無くならない程度には』残してるから、完全引退まではいかないんだよねぇ、たぶん。

 後この調子だと、日番谷隊長も霊王宮行きになるかな? 流石に回復速度も追い付かないだろうし。…………ハァ、『読者ヘイトを』『買わない程度に』倒すのは面倒だぁ。回り回って僕が自分で処理しないといけなくなるし。

 後たぶん、帰ったらバンビちゃんが奪った黒縄天譴明王で『あーそぼ♡ 死ね♡』してくるんだろうなぁ、ハァ…………。爆裂より打撃の方が嫌なんだよなぁぁ……。あのバスターバインバイン(意味深)め、最近は『昼も夜も』手ごたえ感じなくなってきたとか言ってたし……」

 

 

 

 しかし一人でいる本人は、とても自由気ままとは縁のない。どちらかといえば、死ぬほど面倒くさそうな表情でため息をついていた。

 

 

 

 

 







※バンビちゃんが頭バンビちゃんして原作開始前までずっと頭バンビちゃんな振る舞いを蒼にした結果、目覚めた聖文字

拙作「メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)」と合流ルートに行く?(する場合はたぶんこちらで色々先行公開)

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