蒼都になったけどバンビちゃんが死ぬほど面倒臭い(※死ぬ) 作:黒兎可
まだ日刊に残ってる、だと・・・? ということで予定をぶっちぎって、感謝の更新。流石に明日はメゾチャン行きます汗
バンビちゃんはどうしてまともな選択肢の展開ダイス目もあるのに、わざわざ頭バンビちゃんな判定を引き当てるんだろうか・・・(哲学)
「やれやれ……、いまだ
それはそうと、腹が減ったな」
つまり、一人で永久機関のように霊子の吸収と発散を行うことはできないのだ。その場にとどまっているだけでもないのならば、必然、食事なども戦闘魂魄には必要となってくる。ヒトは霞を食って生きるにあらずで有る。つまり霞食って生きている奴はヒトではないのだと言っても良いかもしれない。
「…………おや? 珍しい光景だ」
「ほら、あ~ん……。美味いか? 俺の菓子食ってるんだから、ちゃんと育てよ?」
「んく、ん…………、い、
「ハハ、最近少しずつ舌っ足らずとれてきたな。大人になってるって訳だ」
「
「お、オイ何で震えはじめた? ブルー何だ何かあったか? ……やっぱあの時バンビに何かされたか? あ? 大丈夫かオーイ……、ま、とりあえず食っとけや」
「う、うん……」
一般兵あるいは騎士団のうちで料理上手な滅却師が調理場に立つ食堂にて、バンビーズの一人と、それにこき使われてボロ雑巾のようになった姿を日々目撃されている男の子である。彼女の名前は…………、とっさに出てこないベレニケ。一般兵士時代から基本、バンビーズを見たまともな滅却師は
とはいえ正式に騎士団へと召されれば、そういう訳にもいかない。なので最低限、まともな会話が成立する相手を選ぶには選んでいた。
ジゼル・ジュエルは「性別的に」会話に違和感が少ないが、ダブルスタンダードをよくやらかす。
ミニーニャ・マカロンは蒼がサンドバッグになるまでよく無茶ぶりされて遊ばれていたせいか、発言にあまり責任を持たず徹底して逃げ回る。
キャンディス・キャットニップは、鋭いタイプのイケメンで物静かな男ならすぐに惚れるし飽きっぽいがそう無体なことはせず、しかし興味のない相手には徹底して短気。
その点から言えば、リルトット・ランパードは比較的マシといえた。基本的に無関心で面倒くさがりであるが、状況を判断する程度にはまともな感性が有りキャンディスと並んでまだ話しやすい。
へ? バンビエッタ・バスターバイン? 仕事は真面目にするが、それはそれとして幼子をああも手ひどく扱う相手に何を期待しろと?
声をかけたベレニケに「やらねぇぞ?」と薄切揚芋なスナック菓子を庇いながらも、最近ブルー・ビジネスシティと「改名を強要されている」男の子の口に運んでいるリルトット。やはりまだまともか、と判断し、本来は
と、突然男の子が指をさし。
「また
「ブボゥッ…………! お前、だからそれ本人に言うのは……」
「フッそうかバレてしまったか。そうとも! 僕が噂の、髪の色ヘンなお兄さんさ!」
マジで!? と何故か驚くリルトット。彼女の感性だったらそんな風な罵倒を言われようものなら瞬間湯沸かし器的沸騰不可避なのだが、ベレニケは存外ヒトが出来ていた。おぉ~! と謎の拍手をする
リルトット的にはアスキンなどで、ブルーが案外色々な滅却師と交流を作りつつあることを知ってはいるが、邪険にする気配のないベレニケは案外子供に好かれるらしかった。
(異議の人……、異議の人…………、印象薄いけどまぁ頭バンビちゃんじゃないからヨシ!)
なお蒼都の内の精神にあたる存在は、原作本編での彼の扱いのせいで記憶がほぼなかったりするのだが、誰も知らず、また言わぬが花であろう。
はてさて、ベレニケの出すなぞなぞに、ついでとばかりにリルトットも一緒になって答えを考える、ちびっ子とお兄さんお姉さんの(表面上は)微笑ましいやりとりをしたりしながら、会話の流れで何故食べさせていたのかという話になる。
「確かキャンディス・キャットニップが、君は自分の御菓子を絶対他人に手渡さないことで有名だと触れ回っていたのを、勝手な噂流してんじゃねぇぜと言って本人の御菓子まで奪い取って食べていたのを見た覚えがあるのだが、流石に幼子相手には違う扱いなのか?」
「何だテメェ、文句あるなら喰うぞ?」
「口の端を変形して脅しをかけるのを止めてくれ!? 君、確か僕の“
「……リルお
「あ゛?」
「――――、えっと、
「そうそう、そーゆー気遣いは大事だぜ? バンビにゃ通用しないだろうけど」
言いながら頭を撫でるリルトット。小学生くらいの彼女が幼児の男の子を撫でている絵面は中々微笑ましいものがあるが、口にしたら何が起こるかわからないのでベレニケは苦笑いに留めておいた。
基本バンビエッタと比較されるからマシなのであって、バンビーズもまた頭バンビーズと影で呼ばれているくらいにはアレなのだ。
「で? まー別に子供だからあげてるとか、そんな訳ねぇよ。
ちょっとバンビが思うように能力伸びなくなって来て、ブルーに八つ当たりかましてな。『共通部屋』でやったもんだから、辺り一面血まみれになっちまってミニーニャがぶち切れて大喧嘩になってなー。で、その中でバンビが盾代わりに使って、一緒にボロボロになっちまったもんだから、えーよーほきゅー」
「栄養補給といってもそれをしたところで……(それ以前にブルー呼びは確定でいいのか?)。
いや、それ以前に傷の修復などはしなくて良いのかこの子は!?」
驚愕するベレニケだが、ノースリーブな外套含めて全身特に傷の様なものは見えない蒼都。流石に着替えさせたか? と思ったベレニケだったが、違う違うとリルトットは言う。
「コイツの仮文字の“
「なるほど…………、嗚呼だから、霊子の補給をする必要があると」
「まあな。普段より大量に霊子消耗して傷を治した分、補填しないでまたバンビが頭バンビなことしたら絶対死ぬだろ? そしたら連帯責任じゃん。どー考えてもロクなことにならねーって」
彼女も彼女なりに、自己保身の意味もあってブルーに構っているらしいが。それはそうとして小さな子供に対する微笑ましい感情も無い訳ではないようなので、やはり彼女は頭バンビエッタ程ではないのだろうとベレニケは納得した。
直後、彼の意識は刈り取られる―――――――。
「――――かぁああああ、つれぇつれぇ、つれぇわ! どいつもこいつも、おれ様の訓練相手としちゃ物足りなくてつれぇわ!」
「あ、この間バンビに服装全部爆破されて全裸にされて入り口に晒されたオーバーキルじゃねーか、ケケケッ」
「傷口に塩を塗りつけるの止めろお前! おれが傷つくだろうが!」
背後からベレニケを一撃で退した大男、ドリスコール・ベルチ。自らの髭を撫でながら、筋肉質な自らの身体を魅せつけるように胸を張り、椅子に座るリルトットとブルーを
もっともリルトットは興味無と言わんばかりにブルーにスナック菓子を与えながら自分もつまんでいる。ブルーはブルーで、その前髪に隠れた未だ純粋そうな目で、大男を見上げた。
「…………
「ぶはははははは! つれぇわ、お子様にも俺様の格好良さが伝わっちまうなんてつれぇぜ! ははははははは!」
(今の格好良いって感想なのか? っていうか相変わらずコイツ容赦ねぇな形容の仕方……)
忍び笑いするリルトットだったが、ご機嫌な様子のままドリスコールは、がしりと蒼の頭を掴む。そのまま撫でる動きにならないことは、腕からわずかに漏れている霊圧の具合で察することができたリルトットである。「あ゛?」と睨み上げる彼女に、やはり見下したような嫌な笑みで嗤う男。
「つらすぎて暇なもんでなぁ、今度こそバンビエッタの奴をボッコボコにして服脱がして晒し返してやろうかと思ったが、気が変わった。坊主、おれの鍛錬相手になれよ」
「…………?」
「言っとくが拒否権はねぇからな! がはははははは――――!」
そう言いながら蒼を立たせるドリスコール。若干足をもつれさせながら、無理やり連れていかれる蒼は、その場で倒れてるベレニケの方を見て「
基本、ここで色々慮って起こしてやるような性格なら、リルトットもリルトットでバンビーズの一員ではなかった。
ただ、あきらかにバンビエッタに対する意趣返し、八つ当たりのためにブルーを連れて行こうとする男の背中に、最低限「聞いてない」と後で絡まれない程度には忠告をしておく。
「言っておくけど、死なすんじゃねーぞー? 命の保証はできねーからなー」
「がははははははは――――!」
「聞いちゃいねぇし。アレ、バンビのお気に入りだって判ってやってるんだよな……。
ま、コイツ起きたら呼びに行かせるか。どうせキャンディスと一緒に、ミニーニャ『提督』の傘下で部屋の大掃除させられてんだろうし」
白目で倒れてるベレニケの顔を靴の踵で軽くふみふみしながら、リルトットは残りのスナックの袋の中へ「変形した口元」を突っ込んで、猛烈な勢いで咀嚼し始めた。
さて、ところ変わって訓練場。バンビエッタとキャンディスのいい加減な仕事で集められた霊体をもとに修復されたここで、ドリスコールは腕を組み、がははははと蒼を笑い飛ばす。
「おれ様は“O-
「…………?」
「おう、こういうのは名乗られたらな、名乗り返すってモンだぜ? そっちの方がカッコ良いからなぁ!」
「
(でも名乗ったところで一瞬で消し炭でしたよねこの人? 意味ないよ)
蒼都の内の人格は、割とシビアな判定であった。
とはいえ無理やり連れてこられた以上、彼に選択肢はない。既にかなり疲弊しており、聖文字を追加で使用するといよいよもって気絶してしまうのではと言う不安もある。流石に気絶した状態でバンビエッタに発見されなどした場合、一体何が起こる……。そういった恐怖心から、蒼は「なんとなく」習得していた静血装を全身にまとった。
「じゃあ行くぜ、おおおおお、らァ!」
手元に形成した神聖滅矢を掴み、槍のように持ちかえ襲い掛かるドリスコール。蒼は両腕に形成した狼の顎風な籠手型の神聖弓を盾に防御する――――視ようによっては、その籠手にすら「血装が乗っている」のだが、その少し変な事実に気付かず、ドリスコールは連撃を繰り返していた。
「オラ! どうしたどうした、そんなんじゃバンビエッタだって組み伏せられねーぞ?」
「………………?」
「お? 意味わからねーか? あのビッチ共に囲まれてそういう話題も出てこないってことは……、よっぽど可愛がられてるんだなお前! ガハハ、ますますもってつれぇぜつれぇぜ、ムカムカしてきてなァ!」
「――――っ!」
ほぼ至近距離での、槍の投擲――――籠手を回すのが間に合わず、さらに言えば再生成された矢をその場でマウントポジションから追撃され。蒼はその一瞬で「普通ならば」瀕死となった。本来ならば血装の対応速度が追い付くはずなのだが、どうやら未だ霊子が足りていないと見える。
左腕は肩から先が欠損し、両脚は折れ、右腕も突然の圧迫でぺしゃんこになり赤黒い。
つれぇわつれぇわ! と大声で笑い飛ばすドリスコール。と、その身からわずかに霊圧が立ち上る。
「つれぇ、つれぇぜ……! 前途有望な騎士団新入りの坊主を、このおれが最強になるための礎として有効活用しちまってあー、つれぇわ!」
(あっ、やっぱりリルトットの話を全然聞いていなかったなこの男)
「おれの聖文字“O-
痛みに表情こそゆがめているが、特に絶叫などは上げない蒼。そんな彼の様子も気にせず、ゲラゲラとご機嫌に大笑いするドリスコールであるが。
(…………これでもまだ「バンビちゃんの方が酷い」からなぁ)
当の本人の内心は、意外と余裕だった。
完全に油断している隙をついて、一気に霊圧を解き放つ――――放った霊子を血装に沿わせて、身体の内側に「新しい身体を」造り出すようなイメージで。自らの骨を軸に、自らの意志だけで動くシステムを構築し、折れた足を「強引に」立て直した。
「――――――がはははは、は……、何、だ?」
完全に殺しきったと思っていた男の子が立ち上がる――――乱装天蓋。ある一定以上の技量をもつ滅却師が、自らの身体の損壊を無視して行動する際などに使用される高等技術の一つ。
もともと彼が、騎士団の中でも群を抜いて基礎技術を鍛錬しているキルゲの下で修業していることを思えば、使えることに納得できなくもないが。いくら何でも、騎士団に来てから数年でその域に至っていると言うのは、いくら何でも早すぎる――――。
実際、蒼は少しだけズルをしている。それは――――。
「――――“
「おぉッ!?」
自らの「血液を」金属と化し、そこから霊力を強引に全身に廻しているのだ。理屈から言えば乱装天蓋だが、キルゲ本人が見れば「全く見るに堪えませんねぇ……」と呆れることは必定。子供に優しい方のキルゲではあるが、授業はしっかり手を抜かない彼である。
だが、そんな技であっても、今のタイミングでは使うことが重要であり――――。
『――――良いですか? 蒼都。いかに滅却師といえど、生き残るためには時に虚の力すら使わなければなりません。むろん最後は滅却するのは必然ですが! だとしても、我々にとっての敗北は、陛下の手による死以外であってはなりません。
何より、生き残るのです。そのためなら多少の邪道邪法はなんのその――――』
「――――――――!」
「お、オイオイ本気か!? つれぇ、つれぇわ……! 普段どんだけバンビエッタ達から虐められてるんだ……」
蒼は、自らの「ねじ斬られた左腕」を拾い上げ。そのまだ「霊的には」生きている腕を能力で鋼鉄化し、さらには「骨を変形させ」、刃のように成型した。絵面があまりにもひどく、そうなった原因でもあるドリスコールですら声が引いている。
明らかに、それを実行できてしまう
斬りかかる蒼。自らの霊的な損亡を度外視して全身を鋼鉄化し、さらにはその上に静血装を重ね掛けしたまま、全力で向かってくる彼に、ドリスコールは困惑しかない。直接的な攻撃力はともかく、そんな状態でも「当たり前のように」戦おうとする、その幼児の精神が全くもって酷いことこの上ない。密かに「バンビーズってあれ? ひょっとしてビッチじゃなくてクズ集団……?」などと思い始めながらも、しかしドリスコールはしっかり蒼の攻撃をさばいていた。
そして、全く持って想定外なことに――――ドリスコールの霊圧は「上がり続けていた」。
「オイお前よぉ……、それ普通に考えて死んでるぞ? どーしてそのままやってんだよ……?」
「――――――――ッ」
鬼の目にも涙ではないが、ドリスコールとて多少は良心こそある。自分がクズである自覚はあるが、それだって頭バンビエッタまではいかない。
なのでここまでくると、もはやどうして彼が生き残っているのかすら不思議な有様で――――体の良いサンドバッグではあるが、いっそ哀れに思えた。
だからこそ彼の腹を蹴り飛ばし、距離を取らせ。
「……仕方ねぇ。そんなに酷ぇ人生なんざ、ここでオサラバしちまいな! せめて一思いに、楽に送ってやるぜ!」
言いながら腕を空に突き上げるとと同時に、全身の霊圧が収束して柱のように伸びる――――光の、柱。釘打つように内側から幾重も十字が伸び、砕け。
『刮目しな、このおれの滅却師完聖体! その名も“――――』
『――――“
ドリスコールが自らのその姿を魅せつけようとした、その瞬間。蒼の視界一帯が、すべて「猛烈な爆撃に」さらされた。
煙が晴れる頃には、完聖体を強制解除されて気絶しているドリスコールの姿が。
それを見ている真っ黒にすすけた蒼であったが、いつの間にやらその全身の傷は「戻っている」。取れてしまった左腕も、いつの間にか肩にとりつけて「再生していた」。
そして煙が晴れると、上空からミニスカートであることを忘れたように慌てて飛び降りて来るのは。
「馬っ鹿じゃないの!? ヘンな頭のやつに聞いたけど、何をあたしとか、あたしがレンタルした相手以外にぶっ殺されかけてんのよ、あなた! あなたは、あたし専用のサンドバッグなんだから! 他の奴が使いたいって言っても、あたしに断りなくなんてぜーったい使わせないのよ! いい?」
明らかに心配する部分が異常極まりないその発言を前に、蒼都の人格は「ああやっぱり今日も頭バンビちゃんなんだなぁ……」と色々と諦める。純真なくりくりとした目に似つかわしくない、死んだ魚の様な生気のなさだ。
そんなこと気にせず彼を持ち上げて、ボロボロに倒れたドリスコールに「いーだっ!」と舌を出し、あまつさえ顎髭を爆破してすっきりさせて「うん、これで良し!」などとご満悦。
そして「ボロボロじゃないあなた……、仕方ないわねぇ、洗ってあげるからついてらっしゃい!」とか言いながら、彼の首をヘッドロック。胸が頭の後ろにあたっている恰好であり、扉の影に隠れていたベレニケは羨ましそうな表情になる。
が、
「ってブルー、別に目を閉じてなくてもいいわよ? 流石にサンドバッグ相手に『オトコ』だとか思わないから。ちゃんとした男だったら、私の裸見て勝手に気持ち良くなるのとか万死だから『真っ二つ』だけど」
(ひっ…………!?)
「何、逃げてるのよ? ほらほら、えいっ、かーわーいーいーじゃないのよー」
「うぅ…………、く、くすぐったい……」
「……やっぱりまだ『為らない』わね。皆も言ってたけど、後どれくらい経てば『使える』ようになるのかしら、あなた。ちびっ子な割には…………、って思うけど…………。
あたし爆破しすぎて、あなたの機能壊してないわよね? 大丈夫よね? バレてキルゲから騎士団長とか陛下に連絡がいって粛清とかされないわよね? あたし……」
なおこの数日後、ブルーの話し方から舌足らずさがさらに取れ始め。改めてバンビがまた
なおその件についてバンビエッタ的には、へぇ~こうなってるんだ~的な興味本位以上の感情がないため、蒼都のメンタルには大ダメージであった。
拙作「メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)」と合流ルートに行く?(する場合はたぶんこちらで色々先行公開)
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