蒼都になったけどバンビちゃんが死ぬほど面倒臭い(※死ぬ)   作:黒兎可

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バンビちゃんが多少なりとも蒼都に心許し始めた描写として、これで良いのかどうか・・・
 
あっ今回から加入した彼については、例によってダイス結果なのであしからずです汗


#007.剃刀系女子に寄り添える距離感

 

 

 

 

 

「――――はぁ、帰った帰った。ハイ、ジジおみやげ~」

「何なのバンビちゃんこれ……? 映画のパンフレット?」

「そ! 丁度『公開直後』だったから、あなたの能力と一緒の名前のやつ」

「えぇ…………、ボクの“Z-死者-(ザ・ゾンビ)”の方がもっともっと綺麗なんだけど――――」

「あとネイルだったかしら? はい。

 ミニーは、この可愛い服! フツーに可愛いの選んできたから期待していいわよ!

 キャンディは一緒にいったし要らないと思ったけど、一応こっちでも見つけたからダブらなさそーなの買ってきたわ。ファッション誌と恋愛指南書とトレンドだったわよね? これで大丈夫かしら。

 リルは…………、とりあえず御菓子いっぱい買って来たわ!」

「ありがとうございますぅ……、ってサイズこれ昔のじゃないですかぁぁ!? こんなの今の私が来たら娼婦(コールガール)情婦(プライベートガール)ですぅぅ!?」「オッケイ! ダブりナシ。こーゆーのは外さないよなぁバンビは」「おぅサンキュー。色がドギツイけど」

 

「さーてと、じゃあブルーをボッコボコにしていきますか♪」

 

「「「「何で!?」」」」

 

 現世からの帰還後、口頭報告後にバンビーズの面々へ顔を出して早々これである。バンビーズがたむろしてる共同スペースにおいて(訓練場から場所を移した)、現世のお土産をそれぞれ適当に投げわたし(!)、その後にスキップルンルンにブルー()への襲撃予告を語る頭バンビエッタへ向けて、四人は思わず成大にツッコミを入れた。

 なお当人はきょとんとしている模様。解せぬ……。

 

「何でって……、ここ一週間は全然、あたしの“E-爆撃-(ジ・エクスプロード)”してなかったから?」

「いや、それを日課に考えるの、ちょっと止めてやれよって……。俺でさえちょっと同情するぞ」

「ジジも何か言ってあげてくださいぃぃ! 私も、ちょっとお疲れのところブルー()が可哀想って思いますぅっ!」

「プリプリ怒っててミニーもだいぶ可愛くなってきたねぇ~。まぁボクは、ほら、バンビちゃん全肯定マシーンだし」

「どうでもいいけど、情報文書(ダーテン)まとめてるの誰だって話なんじゃね? バンビお前さ、たぶんブルーに放り投げてきたろ」

 

 キャンディスの一言に「あったり前じゃない!」と胸を張ってドヤッ! と得意げなバンビエッタ。なお誇ってる内容を言い表すと「現世での調査任務の結果報告を年端もいかない普段から爆撃(誇張無)しまくっている子供に書かせ」「あまつさえ書き終わっていないだろう今の段階でさらに爆撃するためだけに連れて行こうとしている」になる。バンビエッタの頭バンビエッタすぎる冒涜的(教育的な意味で)所業を前に、4人はSAN値チェック(正気と良心を咎めた)。バンビエッタと比較すれば、4人には確かにそれなりの良識があるのだ。あるだけで活用される機会は限られてはいるが。

 

 そして肝心のバンビエッタは「そんなのその気になればテキトーにすぐ書けるじゃない? 見聞きしたのを適切にまとめるだけでしょ?」と心底不思議そうである。書類仕事を軽く見ているかのような発言であるが、全くそうではない。嫌味でも何でもなく、例えばブルー()の身体的な耐久度の上昇率やら何やらについては、彼女が意外と筆まめにまとめ考察すら添えて、その資料をキルゲに提出しているのだ。流石のキルゲですら出された書類の細かさと考えの具合の深さに「本当にバンビエッタ・バスターバインが書いたのでしょうか?」と疑うレベルだった。なお走り書きに「次からはもっと内臓をメインに爆撃すること! タノシー!」といったようなものがあったりするため、その疑いに意味はないが。

 そうつまり、実際このバンビエッタは「仕事として与えられた作業」に関しては、意外な程かなり真面目に取り組み完成させる気質である。ある種のプロ意識なのか、集中力が飛びぬけているということか。また仕事時のみにおいてだが、異様なほど面倒見が良く、怒らず共感し、何も知らない一般滅却師のハートを射抜いていたりすることも多いのだが、それはまた別な話。

 

「ちゃんと書き方は教えたし、上手くまとまってないか後でチェックするし、駄目な書き方してたら次からどうやったらうまく書けるか一緒に考えて上げるわけだから、多少『爆発四散させても』問題ないんじゃない? あたし」

「何でそういう所はきっちり面倒見が良いのかってお前は……」

「バンビちゃんだからねぇ……、ってミニーニャ? …………あっ駄目だバンビちゃんが凄い所見て、意外すぎて硬直しちゃってる。でもほら、ミニーニャも仕事教えてもらってる時、バンビちゃん全然怒らなかったじゃん? そーゆーこと、そーゆーこと」

「そーゆーのを普段からやってたら、バンビだってすぐイケメンも寄ってくるだろうにさぁ」

 

「いやだって、仕事は…………、ちゃんとやらないと。あと別に、普段だってヘンなことしてないじゃない、あたし」

((((それは本気で言ってるのかこの頭バンビエッタ・バスターバイン))))

 

 果たしてそんな四人がバンビエッタの頭バンビエッタな言動を止めることが出来たか否かと言えば…………。数時間後、訓練場が火の海に晒されている状況が全てを物語っていた。炸裂する音と共に、飛び散る人体。霊圧の漂い方や周囲の温度上昇の仕方の違いから、“H-灼熱-(ザ・ヒート)”ではなく“E-爆撃-(ジ・エクスプロード)”が発動していることは間違いなく、近くを通りかかったベレニケは両手で顔を覆い「強く生きろ……!」と蒼都(悲しい目をした標的)へとエールを送って遁走した。

 

「ブルー、凄いじゃないの! あなた、段々あたしの“神の癇癪(ヤルダハトケフ)”でも内臓が飛び出ないようになって来て! これならミニーの“P-力-(ザ・パワー)”お腹に喰らっても分解(ヽヽ)しないで済みそうね!」

「――――――――――――」(※爆発音で掻き消されてる)

「えっ何? 何言ってるか聞こえないんだけどー! ちゃんと大声で言いなさいよ、ブルー!」

 

 無茶を言いおる。

 自らの滅却師完聖体を使用し、空中から羽根より落ちる霊子の塊を用いて雑な爆撃を繰り返すバンビエッタ。最近は訓練場の補修側もいい加減慣れて来てしまったのか、初めからバンビエッタの爆撃に「ある程度耐えられる強度」で作成するようになっていた。彼女の頑張りが無駄に滅却師の王国へと影響(迷惑)を与えているのだが、当の本人は「えっ当然でしょ?」という振る舞いである。

 なお蒼都に言わせれば「限度がある」「最低限、話を通して許可をとってからお願いするべきじゃ」となるのだが、実際は裏側で陛下から許可が下りていたりする。当然彼は知らないので、色々とまぁ強く生きる他ないのだった。

 

 そして、爆撃が一通り終了した後。つまりバンビエッタが「飽きて」完聖体を解いた後であるが。爆撃後の霊子の煙の中から現れたシルエットに、「は?」と眉間に皺を寄せた。露骨に嫌そうな顔である。

 

『――――バンビエッタ・バスターバインのこの爆撃力、通常の耐久試練としては過酷なものだな。蒼都はよく耐えている』

 

 そこに居たのは、全身白装束に「鉄甲冑(プレートメール)」のようなものを装着した何者か。その相手を見て「何で乱入すんのよ、ロボ野郎」と舌打ちするバンビエッタ。

 こしゅー、こしゅー、と当時からすれば一昨年ほどかに公開された宇宙戦記(スペースオペラ)映画の敵将軍的な独特な呼吸音を散らすその存在に、蒼都少年は目をきらきらさせた。

 

「べー、げー!」

BG9(ベーゲーノイン)だ。正式名称での呼称を期待する』

 

 彼こそは蒼都やらバンビやらバズビーやらが現世で見つけて来た「新たな仲間」、つい先ほどユーハバッハより仮聖文字を与えられた滅却師……、滅却師? BG9(ベーゲーノイン)であった。

 なお初対面の時点でそのまんまダ〇スベイダ〇のコスプレめいた格好をしていたところを発見されており、こちらに来る際に『同系統の装備がないだろうか、確認させてもらう』と衣装を変えていた。なので「景観に合う」騎士風の恰好になっているのは完全に彼の趣味かセンスで、その素顔すら定かではない。その前後の受け答えに人間味がなさすぎたせいで、バンビエッタからはロボ野郎呼ばわりされているが、それはさておき。

 

 爆撃を中断したバンビエッタはそのまま足早に駆けて来て蒼都を抱き上げヘッドロックするように抱きしめ(というより本当にヘッドロックである)、その体勢のままBG9へと詰め寄る。

 

「あなた、ロボ野郎ねぇ。何あたしがブルーと訓練(ヽヽ)してるのに割って入って来てるのよ! 大体あなた一般兵じゃない、何騎士団専用訓練エリアまで入って来てるわけ?

 巻き込まれたら死ぬのはあなたかもしれないけど、粛清されるかもしれないのは、あたしとブルーなのよ!」

(心配するところが心配するところだし、さり気なく僕まで巻き込んで……。バンビちゃんはいつも通りバンビちゃんだなぁー。

 おっぱいは大きくなってきて、頭の裏の感触は悪くないけど)

 

 もはや蒼都の心は凪である。例によって首を“Σ-鋼鉄-(シデロ)”で頑丈な金属に変換して気道を確保しているブルー()だが、しかしBG9を見る目は不思議そうなものだった。

 

『ブルー? 個体の名称は蒼都(つぁんとう)、ないしは(つあん)であるべきと考えられるが』

「だって、恰好悪いじゃない!」

『それは一体何を基準としたものなのだろうか、バンビエッタ・バスターバイン。基準となる概念を提示してもらえなければ、こちらも判断を下すことが出来ない』

「そんなの、えっと…………、スペル(英文字)で綴ると余計なアルファベット入るのが嫌だし、あたしとしてはキレイに見えないから」

『それはあくまでバンビエッタ・バスターバインの考え方だろう推測する。感想の強要は良い事ではないと――――』

「あーもう煩いわよ、そんな話ミニーが小さかった頃に凄い怒られたから、だからニックネームなんじゃない」

(今でも時々改名を勧めて来てるんだよなぁ……、ブルー・ビジネスシティへ)

「何か文句でもある? ブルー」

「! な、何も言ってないよ、バンビお姉ちゃん」

『そういう強要は一般には虐待と米国社会で学習した』

「な、なんですってッ!?」

 

(それはそうとBG9……、こっちの方だとシャウロンっぽくないし、別人扱いなのかな? いや、まだ何か今後の動きを見ないとわからないけど。文字も僕みたいに仮らしいし)

 

 ブルーがそんな風に一人、内心で原作BLEACHとの違いについて考えていると。

 

「つれぇなー、当然のことを指摘されちまってつれぇつれぇつれぇ、つれぇぜバンビエッタ!」

「は?」

「うぐッ」

 

 揶揄う様なテンションで、実は意外と真面目な話をしようとやってきたドリスコール・ベルチの顔面を八つ当たり気味に爆破一発。クリーンヒットして気絶させた彼を特に退けることも無く、存在すら無視し始めたらしい。あれから十年以上経っているのだが、いまだに根に持っているのだろうか。

 そしてその怒りの矛先はBG9にも向き――――しかし、その足元に形成した霊子の球体(ボール)を雑に蹴り飛ばした一撃は、BG9の「片手剣」によって切り裂かれた。

 

『バンビエッタ・バスターバイン。星十字騎士団(シュテルンリッター)内の情報群(ダーテン)通りであると納得した』

「は? 何それ。あなたの霊子兵装?」

『肯定する。我が仮の聖文字“I-騎士-(イポテス)”による、不屈の騎士の象徴だ』

 

 気が付けば右手に片手剣、左手には円形の盾。ジェラルド・ヴァルキリーが剣闘士であるとするならば、こちらは外見通り完全な騎士スタイルの完成だ。むしろオーソドックスすぎて味がないくらいである。のちの武装群(キャノンやら触手やら)からすれば乖離が甚だしい事極まりないが、文字が「まだ」違うなら仕方ないかと蒼都は一人勝手に納得していた。

 

『これにより、私の肉体は例え損壊しても「代用品」で代替えできる。騎士の意志は残り続ける、という解釈が成り立つようである』

「へぇ? じゃあ、あなた――――こんなにあたしを怒らせたんだから、バラバラにされても文句ないわよねぇ?」

「……! べーげー、逃げて! 僕が受け持つ!」

『肯定不能。この組織の良識を疑う』

 

(まぁ元々アレな集団だしこの滅却師の軍団って。そういう貴方も最後は命惜しすぎて色々アレになっちゃうんだけどね……、悲しいなぁ…………)

 

 バンビの腕から頑張って逃れてBG9の前に立ち、両手を広げて庇う姿勢のブルー。まだまだ小学校低学年程度の年齢なので一見すれば愛らしいのだが、対するバンビエッタの顔が恐ろしい事この上ない。BG9もまだ騎士団の色々と腐ってる(?)空気に慣れていないせいか、まだ良識がある発言である。

 

 そしてそんな状況でバンビエッタの剣が「炎を纏い」振り下ろされそうになった瞬間、それ目掛けて「ギザギザした口のような形状」の鏃な神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)が放たれた。がぶり、と刀身に噛みついたそれは、一瞬にして「炎を喰らいつくした」。

 カン、と蒼の銀色の額に、バンビエッタの曲刀が激突する。

 

 ちらりと横を見るバンビエッタ。そこにはいつの間にかやって来ていた、リルトットが自らの弓を構えて苦笑いを浮かべていた。

 

「何よ、なんで邪魔したのよリル」

「いや流石にお前、自分で勧誘してきた奴を自分の手でざんばらりんは拙いだろって。それこそ俺でなくても止めるよ。粛清されないにしても、ペナルティ喰らうだろうって」

「…………ッ!」

 

 その一言に瞠目し一瞬身震いをしたバンビエッタは、そのまま剣を仕舞い、ブルー()の手を引く。動揺するブルーの素振りなど確認せず、急ぎ足のように訓練場から立ち去る彼女に、やれやれとリルトットはため息をついた。

 

「お前も悪かったな、新入り。アレでバンビはともかく、ブルーは悪い奴じゃないから、まあ程々に見てやってくれ」

『程々というのは不明だが、なるほど…………。ここは低い人間性の集団の巣窟ということは理解した』

「は? 食い散らかすぞ?」

 

 すっと「変形した」口元を見せたリルトットに、BG9は思わず後ずさった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「失礼いたします陛下……、お眠りですか? ハァイ」

「…………嗚呼、キルゲか。良い、その場で。今、夢を()ていたところだ。だが、呼び出したのはこちらだ、そう怖がる必要はない」

「恐縮です。…………それはそうと、少々ご相談したいことが」

「嗚呼、わかっている。ブルーについてだな」

「はて……?」

「…………む? そうか『まだ』か。ならば蒼都のこと、バンビエッタとのことか」

「お察しの通りです。騎士団長(グランドマスター)並びにバザード・ブラックより嘆願が行っているかと思いますが、今一度私めもそれに賛同いたします」

「そう焦るな、と言っても納得はしないか」

「陛下のお考えのこと、余程深い事情があっての『あの』待遇なのだと、このキルゲも考えてはおりますが、その部分につきましていまいち…………。ロバート・アキュトロンとの教育方針についての打ち合わせなども、どこまでこちらでフォローするのが正しくあるかというのも含めまして、ハイ…………」

「気を遣わせてしまっているな。だが…………、あれはそう『歪まない』からな。複雑に考えなくても良い。ただ在るが侭を見て、在るが侭に考えていれば」

「在るが侭、ですか」

「…………あの蒼都の故郷。滅却師としての能力など関わらず、現世、かの国での革命(ヽヽ)で多くの命が堕ちた。蒼都もまた、本来ならその一人であった。

 私の元に運ばれたあの魂は、既に器子との有りようが乖離していた。すぐにでも我が帝国に受け入れるか、それとも『回収し』眠りにつかせるか。あの年代で、あの傷、あの大やけど、あの『拷問具合』……。私も山本元柳斎重國(あらゆる悪性を詰め仕込んだ鬼)ではない。一思いに、眠りにつかせてやるのが正しいと、そう考えた」

「………………」

「だが、違った。事はそう簡単に進まなかった――――あの子供は今際の時、我が聖別(アウスヴェーレン)を前に、自らの身体より『奪われた』滅却師の力を、それにより発生する『静止の銀』による死を、『自らを静止の銀』とすることで回避した」

「……………………はて?」

「フフフフ、お前もそういう顔をするか。私とて、さほど違いはあるまい。

 そう、あの子供は……、おそらく完現術(霊王に由来した力)なのだろうが、自らの手で自らの命をつなぎ留めた。流れ込んでくる辛く、痛い『だけ』の記憶をものともせず。

 私は問うた。到底耐えられるものではない。記憶だけでもそのおぞましさを理解した、その上で滅却師としての『霊的な生存力』すら奪われてなお、みずからのその生に執着するのは何故かと」

「それは、一体…………」

「死にたくない、だ」

「……ハァイ?」

「死にたくない、と。それだけを、食いしばるようにして言ったのだ、あの子は――――本来なら『逃げおおせ』、後に成長した姿で我が帝国に入る可能性もあったあの子供は、しかし巻き込まれて死にかけながらも、それでもなお自らの死への恐怖から逃れんと、無駄に足掻いたのだ!

 これを笑わずにいられようか、キルゲ。これを笑わずにいられようか、キルゲ! 嗚呼そうとも。『恐怖無き世界』において、最も必要なものはこれだ。この感情だ。これが無ければ誰しも自らが何であるかを忘れてしまうだろう。

 故に私は祝福することにした――――その魂の根幹に見えた、わずかな『視えなかった』不滅への道を信じて」

「それは、いささか…………、陛下らしくないと言いますか。いえ、私ごときが陛下の御心を計れるとは思えませぬが」

「私もその自覚はあるがな。だが命を捨てさせるにせよ、その意志だけは忘れてはいかぬと思い直したのだ。我らは、仲間なのだから――――」

 

 なおそうは言っても必要があれば躊躇いなく当然のように聖別を実行するのが、このユーハバッハである。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 どちらがブルー()を洗うかという話で勝負をしかけたミニーと、珍しくキャットファイトで済むレベルの戦闘をしたバンビエッタ。結論から言えば年の功なのかバンビエッタの勝利であったが、そんな彼女は洗い終わったブルーを抱きつぶすようにベッドで俯せに。

 なお仰向けで若干息苦しそうにしてるブルーであったが、バンビエッタの身体的な柔らかさを全力で味わうため鋼鉄化してないあたりは、中々良い根性している。

 

 もっともそんなブルーだったが、突然ぶつぶつ言い始めたバンビエッタには目を見開いて驚いた顔をする。普段ではついぞ見ないような、恐怖で塗りつぶされたような。それこそちょうど現世でパニック映画を見て来たせいもあってか、その劇中に登場する「食い殺される」人物のような動揺っぷりである。無理に強く抱きしめられるブルーは、彼女の反応を伺った。

 

「大丈夫よね、あのロボ野郎、全然死んでないし……、ブルーだって死んでないし、キルゲのオッサンから任せられた仕事はちゃんとこなしてるし、ブルーのお仕事だってちゃんと観てるし、アドバイスだってしてるし……、殺されないわよね、うん。殺されない、殺されない、大丈夫、粛清されない――――」

「バンビ、お姉ちゃん……?」

「――――ッ!」

 

 瞬間的にとっさに蒼の顔を爆撃するバンビエッタ。もっとも彼も彼で慣れているのか、既にその顔面はメタリック極まりない状態でダメージを回避していた。そんなブルーに力なく笑って、バンビエッタは横になる。

 

「…………そうよね、あなたは『死なない』のよね、簡単には。

 こんなクソみたいに弱い姿とか、誰にも見せられないし、見た奴がいたらフツーはぶっ殺してるけど…………、あなたは、逃げないし、言わないし」

「?」

「……本当は判ってるのよ、あたしだって。皆、あたしの陰口言ってるのだって。ミニーもあなたをあたしから引き離そうと最近は露骨だし、リルとキャンディだって『あたしの方から』無理に、寂しくて乱入してグループになった感じだったし。

 ジジはなんか、よくわからないけど」

(その警戒心の無さは色々危ないというか、流石後のゾンビエッタちゃん……)

 

 割と失礼なことを考えている蒼だが、外見上は混乱している表情のままなのでその内心は伝わらない。珍しく気の抜けた顔で苦笑いし、バンビエッタは目を閉じて。

 

「………………でも、怖いもん。あたし、だからこんなクソみたいな生き方しかできない。そんなの、しょーがないじゃないのよっ」

 

 そんなバンビエッタの手を、蒼は自分の小さな手で握り返した。

 その感触に驚いたように、バンビエッタは目を大きく開く。

 

 対面の蒼は、相変わらず前髪で隠れ気味の、まだくりくりとしている目で見つめ返していた。

 

「大丈夫」

「……何が?」

「なんか、良く判らないけれど、大丈夫」

「………………」

 

 一瞬、また爆撃モーションに入りかけたバンビエッタだった、続く蒼の言葉に、その気はなくなった。

 

「――――バンビちゃんがどんなでも、僕は、傍にいてあげるから」

「――――――――」

 

 その一言に、最初はその頬が嬉し気に歪み。しかしヒクヒクとした後、大声で笑いだした。アッハッハと笑いながら、彼女は手を放し、横向きになった蒼の肩をもって、自分の額をくっつけて。

 

 

 

「本気で言ってるのよね? 本当よね? じゃなかったら全部ぶっ飛ばすわよ? あなたにあたし以外なんて誰も目に入らないようにしてやるんだから、リルなんかに『こんな』サンドバッグなんて渡してやらないんだから。絶対、絶対、私の傍を離れちゃ駄目だから、離れるんなら最後には帰ってこないといけないんだから、サンドバッグに断る権利なんてないのよ? 当たり前じゃない、いい? ブルー。そもそもそれが出来ないならそんな無責任なこと言わないわよね? 粛清されそうになったら庇って一緒にいてくれるんでしょ? 性的なそれじゃないってのはわかってるし、そうだったらぶっ壊すし、でもそう考えると本当に死なないんだったらあたしのそういう突発的な――――」

 

(ゾンビエッタじゃなくても怖いよこのバンビちゃん…………)

 

 その後、朝まで延々と病んだ発言を繰り返し続けるバンビエッタに、蒼都はその手で頑張って抱きしめ返すしか返答の方法はなかった。

 

 なおそれでも役得だとか思っているので、蒼都の人格は案外たくましいのかもしれない。ただ、殺され続けて限界値がぶっ壊れた可能性も高いのが玉に瑕である。

 

 

 

 

 

拙作「メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)」と合流ルートに行く?(する場合はたぶんこちらで色々先行公開)

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