蒼都になったけどバンビちゃんが死ぬほど面倒臭い(※死ぬ) 作:黒兎可
あちらのかぱぁはナーフされなかった……(動画な分よりわかりやすかった……)
聞き覚えのない聖文字だったり完聖体だったり人物名だったりは、こちらで勝手に用意してるやつなのであしからずです汗
「お前には――――お前が本来受けるはずだった“Ⅰ”の
かくしてその日、一人の青年が星十字騎士団、その聖章騎士へ正式に加わった。
外見は中学生から高校生、ティーンエイジャーの若い方。いまだ霊力の成長率に幅は有るが前髪が長く目元が隠れている。そんな青年は盃にくべられた血を口に含み、呑み、そして「うげぇ」という感情を口元で表した。
その様を見て、王は、ユーハバッハと呼ばれるこの王国の陛下たる彼は。その黒いシルエットを揺らして、案外楽しそうに笑った。
「かっはっは。………不味いか?」
「不敬かもしれませんが、血って別に美味しいものじゃないので、済みません」
「いや、良い。主に鉄のごとき味を美味と言われても、感想に困るからな。
まあ我らの方が、より伝承のそれに近いかもしれんがな。…………死してなお死することを許されぬその命運。孤独を恐れるならば、手を尽くすと良い。戦争の如何に関わらず、可能性はどこにでも転がっているものだ。
精々励め――――
「………………」
「ぬ?」
ユーハバッハの言葉を前に、頭を下げたまま特に反応を示さない彼。そんな青年を見て少し目を閉じると、嗚呼、と思い出したように、ユーハバッハは目を細めた。こころなし、少し哀れんでいるようにも見える。
「ブルー・ビジネスシティは通し名だろうに、
「…………はっ!? あ、は、はいッ!」
「いかに死の危険がないと
珍しく遠い目をして困惑した様子のユーハバッハだったが、頭を振り「まぁ良い」と下がるように命じ。部屋に一人になった時点で、ユーハバッハは呟いた。
「とはいえ、それが『裏切らぬ保険』である以上、私がその手の趣味に口出しする話でもないか」
さらっと
その環境に放り込んで特に興味を持たず放置した張本人の台詞ではないが、後日似たようなことを陛下から聞いた騎士団長が内心でちょっとキレたかどうかは定かではない。
※ ※ ※
滅却師の王国
『――――状況確認、完了。ベレニケ・ガブリエリ、其方の“
片方は騎士鎧風の恰好でありながら、手元からは大砲のようなものを構え霊子を収束し放っていた男、
「意外と吸収が早かったかな? うん。ならこちらで対応しよう――――“
もう片方は独特な髪の色をした、にこやかな青年の滅却師、ベレニケ・ガブリエリ。
彼は両腕を広げて言葉をつぶやき、次の瞬間に光の柱に包まれた。
それが崩れ解け散る頃に、現れたのは6つの翼を背に生やしたベレニケ。頭上ではなく胴体にフラフープあるいは土星の環のように光のリングが現れ、髪色は銀と金、毛先の紫も含めてほぼ左右均一になるよう調整されている。彼の
「能力の性質はあまり変わらないが、より『範囲が広くなっている』。せいぜい行動を拘束されながら、新たな活路を見出すと良い!」
『協力には感謝する。人間性が最低の環境でも、探せばマシな部類の相手もいると学習した』
「それには中々同意するけれどもね!」
言いながら指をさし、弾丸の弾速計算のような数式や数字を口走るベレニケ。それと同時にBG9の銃口から放たれた弾丸が、あらぬ方向にねじ曲がり、紆余曲折を得て彼の背部に回り込み直撃した。
すかさず破損した胴体から「下半身を切り離し」、遠方で再生させはじめるBG9。そんな彼にベレニケは、槌のような大きな
二人が何をやっているかと言えば、BG9の完聖体修得のための訓練であった。
星十字騎士団に正式加入したのは、彼をロボと慕っていた少年よりも早かったが。それはそうとして覚醒した能力が特殊すぎたせいか、中々次の段階に至ることが出来ないでいた。
BG9の聖文字“
つまるところ、霊子の肉体以上にその魂、根幹にある人格さえ残すことが出来るのなら、その肉体が何であるかに拘らず「乗っ取ることが出来る」と、そう言う形に派生した。結果として現在の肉体は、霊子の胴体に現世で見繕った器子の重火器となっている。場合によってはそれこそ虚の肉体でも乗っ取ることが可能だろうが、それはさておき。
そんな能力となってしまったせいで、純粋に自らの滅却師的な修練が上手く行かないというのが、彼の状態であった。
それ故に、能力の派生を封じることが出来る“
しばらく後、訓練を終えた二人。移動中も生真面目機械的に戦闘の際の攻防の流れなど相談や質問をしてくるBG9に、「ブルーも言っていたが、やはりロボなのでは……?」などとちょっとアレなことを考えながら、肩をすくめて応じるベレニケであった。
余談だが、最近バズビーやハッシュヴァルトあたりから「ひょっとして星十字騎士団の良心……?」と思われつつあるベレニケの周りには、比較的まともな面々が集まりやすかったりした。
無論、頭バンビエッタなバンビエッタが問答無用で突如爆撃してくる災害リスクなどは回避できないが。
『神の問答、と対訳を充てるのはそういった理由からか。なるほど、制御にまで干渉できると』
「範囲攻撃をしようとすると、他にも考えないといけないことが増えるのだけれどもね。……これですら『概念ごと』喰らってくる、リルトットの“
『上には上がいる、ということか。勉強になる。詳細な説明に感謝をする』
「何、同じ騎士団の仲間だからね。競うことはあっても追い落とすような関係にはならないさ……(やっぱり受け答えがロボっぽいね彼……)」
そんな風に楽しく? おしゃべりしながら訓練場を歩いていた二人だったが、聞きなれない掛け声に顔を見合わせる。BG9の方はモノアイランプ点滅のように「ブォン」と電子音めいた鈍い音を鳴らしながらヘルムの下の片目を赤く光らせ「やっぱりロボなんじゃ……」とベレニケの疑惑を深めながら、二人は少し隠れながら、声のする方へ飛廉脚(BG9はどう見ても足の裏からジェットを吹かしてる様な絵面)。
たどり着いた先は、十数人の青年滅却師たちが、初級で生成された不定形の霊子兵装を、各々剣や弓などに成形して素振りしている所だ。弓については矢を生成せず、しかし引き絞り、狙いをつけるように。剣や槌など近接武器も同様にだが、中には矢を放つための構えをする面々もいた。
その中心に、件のBG9をロボ! と慕っていた、少し前までは少年だった青年が、つまり蒼都がいる。
伸びた髪で目元は隠れているが、案外すくすく真っすぐ育った? おかげか目つきはさほど鋭くなく、口元の傷が与えるやや強い印象を和らげている。
そんな彼は青年滅却師たちの前に立ち、彼等の動きを観察している。状況から見て、コーチングをしているようだった。
「…………うーん、ローシュブリア君は近接武器は向かないかもね」
「そ、そうでありますか! マスター・ブルー! 光栄であります!」
「いや、
えっと、真面目な話に戻すけれど。ローシュブリア君の剣、弓の構えでプルプル震えてるから、単純にまだ腕力が足りないんだと思う。決戦まで何年あるかわからないけど、今は弓を用意しておいた方がいいと思うよ」
「かしこまりました! マスター・ブルー!」
「マスター・ブルー! 俺には何かないでしょうか!」
「俺にもご教授を! マスター・ブルー!」
「マスター!」
「マスター・ブルー!」
「皆一斉にしゃべらないで……。とりあえず一人一人話すから――――」
何と言うか、ものすごく緩い感じのコーチングだった。フワッフワである。
さもありなん、保護者として名乗り出たバンビエッタ・バスターバインの暴虐にさらされ続け成長した少年は、しかし青年になっても奇跡的に元の純真さを失わなかったのである。反面教師にしたという説もあるが、結果的に彼は、騎士団の中でも1、2を争うくらいに物腰が柔らかかった。
そのせいもあってなのか、彼の様な年代の若い滅却師たちから嫉妬されるより、慕われている傾向にある。……基本的に「見えざる帝国」は、ほぼ閉鎖環境である。結果、腕っぷしに自信がある層に関して、熟成される人間性がやや蟲毒めいているため、アスキン・ナックルヴァールを始めとした一部の良識派の滅却師は、年代問わず慕われやすかった。
もっとも、蒼都が彼等から慕われる理由はまた別な事情があるのだが。
「補佐官や部下の滅却師…………、ではないね」
『ブルーではなく、キャンディス・キャットニップの配下だったと記憶している』
「うん。皆、イケメンだ」
ブルーこと蒼都の指導をうけている青年滅却師の面々は、その全てが種類こそ違えど、容姿の面でイケメンと呼んで差支えがない面々だった。ワイルド系、純朴系、俺様系、マッチョ系、色々と種別はあるものの、総じて現世の都心を歩けばモテモテだろうことが伺える、そんな滅却師たち。
彼らはBG9が言った通り、バンビーズのキャンディスが部下の面々であった。
そんな彼らが何故、騎士団への加入前までバンビエッタ・バスターバイン「唯一の」補佐官のようなものであった蒼都のことを慕っているかと言えば…………。彼らのうちの七割近くが、青年が少年であった時代から、つまりバンビエッタの虐待と呼ぶのが妥当な扱いを受けていた姿を見続けていたからだ。
バンビエッタがバンビーズと自称する滅却師の女性(を主とした)グループは、その全員がバンビエッタの気に入るくらいには美少女や美人と呼んで差支えがない面々である。その中でも特に色恋、というより男性関係でマウント合戦をしていたのが、バンビエッタ本人とキャンディスであった。
当然二人とも容姿、スタイルともに優れており、霊圧の成長に従い身体も年頃に成長し性長。順当に、順々に、自分の好みと必要性と
この状況に置いて、両者の明暗をわけたのが、補佐官としての滅却師の扱いだった。
キャンディスにとって補佐官は恋人であり、肉体関係を持ち情を通わせ、飽きて別れても部下に据えたまま放流せず、結果として人が増え。
バンビエッタにとって補佐官に限らず大体はサンドバッグ
後者に関してはそこまで酷いとは知られていまいが、日常的に何かあれば蒼都少年をズタボロに殺しかけ、むしろ死んでいた方が彼の為と思われる程にしていたのが、結果として一般イケメン滅却師たちを、バンビエッタの色香から正気に戻していた。
つまるところ、人身御供の類である。
そして何度か蒼都に飽きて他の男性滅却師を誘惑(?)しようとしたバンビエッタを止めて逃がしたりと、そういった行動が人望を集めていた。
その結果、年齢に関わらずの兄貴呼びであり
「それはそうと、一体何をやっているのだろう?」
『訓練には違いないだろう。…………全員、飛廉脚でマラソンを開始した』
「本格的に基礎トレーニングのようだ。これは…………」
「あたしが面倒見るの、ちょっと無理だし。頼んだらやってくれるって言うから頼んだだけだよッ」
噂をすれば何とやら。ベレニケとBG9が振り返れば、こちらに欠伸を噛み殺しながら歩いてくるキャンディス・キャットニップの姿。どういう事情か、今日はややダボついた現世現代風な服装である。被った帽子の位置を整え、彼女は「珍しー組み合わせじゃんか」とベレニケとBG9を見比べた。
「まあ訓練の適性の問題でね。
それはそうと、彼に頼んだと……。あまり仕事を割り振るのは止めて上げた方が良いのではないかな? ただでさえ本日、昇進したてだというのに」
「そんなのお前に関係ないじゃんかッ。……いや、まあ、今後絡む機会減るかもしれないしってことで、気を利かせてくれたかもしんないけど」
バツが悪いのか視線を逸らすキャンディスだったが、蒼都を慕い一緒に声を出しながら空中でスライドし続ける一団を見て「シュール」と呟いて微笑んだ。こころなし、蒼都を見る目もどこか弟が成長した姿を見守るお姉さんめいている。
その様を見て、BG9は。
『成長して性的な対象にカテゴライズされるようになったから、頼ってみたくなったということか。成程、コミックス・コードはかくも難しい』
などと、とぼけた一言。そうなのか!? とびっくりするベレニケとBG9に「止めろってッ! あたしはバンビみたいに変態じゃないってのッ!」と顔を赤くして慌てた。その反応だと少し言い逃れが難しくなりそうだが、ともかく。
「まあ、ガキは流石に対象じゃなかったっつーのもあるけど、最近アイツがバンビが見てないときにバンビに向ける白けた目は結構ゾクゾクするし…………って、そんな話じゃなくって!
と、とにかく、騎士団同士でそういうことやったらマズいじゃんかっ! 別れたりしたら顔合わせづらいしっ」
「……君は、自分の配下に何人も元恋人が溢れかえっていると思っているのだが」
「いや、皆ちゃんと仲良くできるの選んで手を出してるし。拗れると任務に支障が出るじゃん? そう言うトラブルは起こさないっての。当然じゃんかー」
『理解の外である』
「そこまで執着する恋愛はしないということなのかな……? ふむ」
そんなだからジジあたりに
「…………おー、やってんなーお前ら」
「リルじゃん。あ、準備終わった?」
と、そんな風に色々話していると、今度はリルトットが階段を下りて来た。黄色いブーツにダボダボなパーカー姿で、既に口にはキャラメルかガムかハイチュ〇でも入ってるのか、くちゃくちゃと小さく音を立てている。
そんな風に現代風な恰好が追加されたことで、ベレニケたちもその服装の理由を確認した。
「こんなカッコーしてる理由? あー、アレだ。バンビが言い出したんだよ」
『バンビエッタ・バスターバインが?』
「ん。ブルーのやつ、ちゃんと入団したってから、お祝いやろーってなー。そのくせ自分じゃ準備しねーから、アイツ本気でやっぱ頭バンビだわ」
「ちなみに現世でやる予定だっぜ!」
「よく許可が下りたなぁ…………」
「ミニーがちょっと頑張った。
で、店はジジが予約しに行ってるから、こっちはこっちでその間、少し仕事の消化とかなー。…………って、いや何で自分の仕事ブルーにやらせてんだよ……。俺でさえ気を遣うぞ、お祝い当日じゃねーか」
「うっ」
リルトットの半笑いに、やっぱりバツが悪そうなキャンディス。と、猛烈な赤い人型のシルエットが、高速で上空から飛来。別な出入り口から入ってきた誰かだろうが、その相手はまっすぐ、連隊を組んで空中をスライドしている青年滅却師の一団に突撃していき――――。
「いや、ちょっと行動の意味わからないよ、バンビちゃん!?」
右手に生成した狼の
と、それを見てバンビエッタは嬉しそうに表情を晴らし、そのままの勢いで蒼都に抱き着く。「ぐぇっ」と声を出しながら、二人そろって勢いよく地面に突き刺さり、砂煙を立ててしばらく前進した。
流石に空中で停止するイケメン滅却師たちの一団だったが、状況を察したのか一目散にバラバラとなり、キャンディスの背後に集結して隊列を組んだ。アンタたちさぁ……、と呆れたようなキャンディスだが、誰だって命を無駄に散らしたくはないから仕方ないね!
『流石に聖文字を与えられ、仮聖文字から能力変更中ゆえにか、自重したと判断する』
「爆撃しないだけを自重と呼ぶのは、いささか苦しい気もするけれどね」
「あんま真面目に考えると、頭おかしくなるぞ。
おーいバンビー、来たってことはジジから連絡来たのかー?」
リルトットの声に、空中で花火のごとく霊子が爆裂して応えた。
一方のバンビエッタだが、ブルーこと蒼都に笑顔で頬ずりしながら抱き着いていた。もはや猫かわいがりの域である。かつての二人の関係を前提に考えれば何かがおかしい二人の距離感だが。
「ブルー? 前に言ったわよね、あたし。あたしの許可なく他の奴にサンドバッグさせたら駄目だって。忘れたの? ねぇ、ブルー? ねぇ、ちょっと?」
(笑顔なのに目が笑って無いんだよなぁ……)
なお彼も彼で恐怖を抱きながらもバンビエッタの無防備な腰の裏側を撫でて体温を感じて居たり、そこは何も変わらず案外ちゃっかりしていた。
とはいえ、それはそうと。以前よりはバンビエッタに物申せるようになっている蒼都である。
「いや、だってサンドバッグじゃないし。一応、単独任務とか入ったらバンビーズとも別行動増えるかもしれないから、今までお世話になった分は、少しくらいはお返ししないと――――」
「あなた、あたしを捨てるつもり!? ずっとずっと一緒に居てくれるって言ったのに!」
「凄い人聞き悪い感じの言い回しになってるよ!!? バンビちゃんそれで良いの!?」
「よ、良くないけど、何かこう、映画とかで上京するときの、独り立ちする子供みたいなこと言い出したから……」
(一体なんであのハートフルストーリーに感動できる感性持ってるくせに、やることなすこと頭バンビエッタなんだろうこの娘……)
天を仰ぎながらも、ブルーはバンビエッタと額を合わせて。
「任務は仕方ないけど、別にどこにもいかないって。バンビ『お姉ちゃん』」
「うん……………………」
「どこにもいかないから、さぁ…………、抱き着きながら首の裏側に爪立てるの止めない?」
「だって能力発動できない今とかじゃないと、滅多にこーゆー攻撃できないもん」
「もんって…………」
面倒臭ぇと思いながらも、目からハイライトを失ったバンビエッタをなだめつつ、蒼都はリルトットたちの方へ彼女をお姫様抱っこして向かった。
なおその後の打ち上げ、現世のカラオケボックスでミニーニャが100点を出してバンビエッタとキャンディスが我先にと張り合ったり、そのすきにジジがブルーとラブソングをデュエットをしようとしてバンビエッタとミニーニャとで一騒動勃発したり、焼き肉屋でリルトットが何枚も何枚もカルビ皿を平らげお財布担当のジジとミニーニャが涙目になったりといった話もあるが、それはまた別な話。
※バンビーズの現代服については新OPのアレな感じです
※久々だったから盛大に誤字りまくってた騎士団名称とか一部修正
拙作「メゾン・ド・チャンイチは事故物件(物理)」と合流ルートに行く?(する場合はたぶんこちらで色々先行公開)
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