雨中紀行〜sleepless rainy days   作:お茶会おじさん

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 さて、早く完結させよ。あと4か5か。


11.邂逅

 高砂は、蛇が去ったあとも、10分ほど少しじっとしていた。久しぶりの疲労感、まさか一妖怪に過ぎないような神の外壁があそこまで固いとは思っていなかった。掃除しきった彼の金棒「反逆三代目」にはいくらかの傷がついていた。普段は汚れさえも勝手に落ちるような代物なのだが、今回は違った。

「この雨の中あんな奴が徘徊してるってどういうことだ…?ここには浄化の神がいたはずだろう?あの神ならどんな化け物が相手でも『食い殺せる』はずだ。」

 雨は木々の間をすり抜けて森の地面に落ちる。高砂は独り言ち、金棒を見回し始めた。つくづく不思議なものだと思う。古くからの下町の鍛冶職人だった祖父がある日突然倉庫から引っ張り出してきた「反逆二代目」という金棒を溶かして作り直してできたこの金棒は、自然と手になじみ昔から知っていたかのような気がしていた。祖父曰く、隕石から取り出した正体不明の金属を使っているとのことだが、そこはあまり信用していない。ただ、その丈夫さは本当に信頼している。また、いまだに使いこなせていないが、この金棒は『軸』になるのだという。何度説明を聞いても全く意味が解らなかったが、何かに吹っ飛ばされた時もとりあえず握っておきさえすれば、気づけば空中に静止しているという現象が最も起きやすく、最も体感しやすいことは分かっている。よくわかっていないが。

 今回みたいに神の退化したような者たちを殺しに行くというのは仕事とはいえ、なかなかに嫌なことだ。中にはありえないほどに退化した結果、人間の子供と同じ姿になったやつだっているし、動物の姿に戻ったものもいる。そんな奴らは大抵「助けてくれ」とか、「まだ生きたい」とかいうから辛い。この仕事をしているのはこの国で8人、外国で80人行くか行かないかぐらいだ。年々、後継者が減ってきている仕事でもある。そも、なんでこんな仕事をする必要があるのかというとだな、退化した神にはいろいろとよくないものに転化してしまうやつが多いからだ。転化したものは周りの神にまで影響を及ぼしてしまうことがある。その予防としてしているのだよ。…って、なんでこんな説明口調なんだよ。

 まぁ、今回の敵は後者の動物になってしまったやつのほうだろう。まぁ、なんだかんだと言いながら戦いになると子供のころに見ていた戦隊ものを実際にしている気分になって楽しくなってしまう。終わった後は地獄みたいな気分になることも多いけれど。

 

 そんなことを考えていると誰かの足音が聞こえた。すぐに人間だと気づく。一人だけだ。こんな雨の日に山の中になぜ…?よほどの変わり者かただのバカのどちらかであろうが、どちらにせよこの山からは今日は出て行ってもらわなければならない。

 金棒を構えて、音のほうに近づいて行った。

 

 

   昌side

 

 この山は標高503mの小さな山でちょっとしたハイキングに良く、地元の住民から愛称として「ヨモヤマ」と呼ばれている。本当の名前はもう少し難しい漢字を使った長い名前だったはずだが、よく覚えていない。山の中腹には神社があり、登る前には山の神に挨拶をしなければならないという決まりがあった。あと、帽子をかぶっていたらいつの間にかとられていたという話もよく聞く。誰もその正体を見たことはないらしい。

 さっきの子に濡らされたおかげで頭が覚めた。さっきの俺は確実にどこかおかしかったし自分でも意識が遠くのほうにあるみたいだった。何が原因だったんだろうか?まさかこの雨?それはないか。

 山に入って数分、神社に着いた。とりあえず手を二回たたいて礼をする…。ふと周りを見渡してみたが誰もいない。こんな雨の日にわざわざ山を登ってまでお参りに来るような奴はいないだろうな。そう思いつつお賽銭をいれる。コンという音が聞こえた。空っぽなのか?

 頂上ぐらいに行けば原因が分かるかもしれない、そう判断した俺は後ろを振り返り、、、

「おい、お前さんちょっと聞きたいことがあるんだがね」

 そこには金棒のようなものを持ち、サングラスをかけた男がいた。

 

「だ、誰ですかあなたは。」

「俺は通りすがりの高砂っていうもんだ。おまえは?」

「お、俺は阿波っていいます。」

「ふーん。何の用で?」

 これじゃまるで職質じゃないかと思った。

「…特にわけはないです。あなたこそ何なんですか、警察ではないでしょう?」

「ああ。さっきも言った通り俺はただの通りすがってる一般人Aだよ。」

 どう見ても一般人Aに見えない。

「嘘だな。」

「ふっ。そうだな。ところでお前、人間じゃないだろ。」

「は?」何を言ってるんだこいつは。

「お前からはどうも人間とも神ともまた違うオーラっつうか匂いっつうか、そういうものがあるんだよ。」

「…初めてだ。初対面の人に人間じゃないって言われるなんて…。」

 地味にショックを受けていた。俺は今まで普通に人間として生きてきたはずなのに。というか自分が実は人間じゃないだなんて中二病の時ぐらいにしか考えてないぞ?

「で、もう一度聞く。お前は何だ。」

「俺は普通に人間だ。それ以下でもそれ以上でもない。」

「へぇ~。そーか。ま、どちらにせよそこで参拝をしたってことは頂上に行くつもりなんだろ?」

「まぁそうですね。」

「お引き取り願うぜ。」

 そう言って金棒を高砂は構えた。

「交渉決裂って雰囲気だな…。ま、いいよそっちがその気なら敵だし、叩き潰してやる!!」

 なぜ毎回こんな感じになってしまうんだろうか…

 

 高砂は金棒を大きく持ち上げて投げてきた。回転する棒の軌道から外れて防御のため傘を開いた。だけれど棒はカランと石畳の上に刺さっただけだった。

「え、それだけ?」

 そういった瞬間、世界が傾く感覚に陥った。神社の建物が真下にあり、鳥居が真上…!?さっきまで立っていた地面は壁になっていて、雨だけが上から降ってきていた。

「うおわ!」

「どうだ?この気分あんまりいいもんじゃないだろう?」

 気づけば高砂は真上の棒の上にいた。棒だけが重力に逆らっているみたいだ。

「よくわかってないんだけどな、これで終いだ。」

 高砂が上から降ってきた。棒を振り下ろしながら飛んで俺の頭の上に。思わず傘を上に突き出して目をつぶった。直後、ガァァンという音とともに地面に倒れた。世界がもとに戻っていた。

「ん…?」

 恐る恐る傘を外すと高砂が離れた場所に倒れていた。

「ああ!だからこれ苦手なんだよ!この感覚!これを使いこなすなんて当分無理なんじゃねぇのか?」

 ただ、ピンピンしているみたいだった。傘を見てみたが、特に目立った外傷もなく無事だった。

「親父…どんだけ丈夫な傘作ったんだよ…」

 親父に心の中で感謝しつつ、高砂のほうへ傘の先端を向ける。いまなら弾丸とか飛ばせそうな気がする。しかし高砂はもうそれに気づいたみたいだった。

「ふん、撃ってみろよ。練習もしてない弾丸なんて当たらないぜ。」

 ああ、これは勝ちだなと思いつつ撃った。だけど忘れていた。こいつのさっきの棒のことを。

「乙」

 ドンッと背中を打たれる感触がした。体が宙を舞い地面に倒れる。

「グフォエ!があああああ!がああ、がああ!うぇぇああああ、ああ、ぎっがぉぉぉぉおおおえ!」

 ありえないほどの痛み。本当はこれだけの声じゃなかったけれど割愛させていただく。

 ただ、高砂が「おいおい、今の喰らえば普通の人間なら背骨粉砕ぐらいされてるはずだぞ?なんで生きてるんだ?」とか言っていたことだけは覚えている。

 

「ぜぇぇはぁぁ…ああ!ぐっ、はぁ、ぃぃぃぃがっ!」

「どうだ?初めてこんなの喰らったんじゃないか?」

「あ、ああ、ああ、そうだなぁ!……お、おまぇは!敵だ!ぶっ殺してやる!!」

「やってみろよ!」

「うおらぁああぁぁぁあああ!」

 その時のことはよく覚えていない。ただ、傘を振り回して、ひたすら弾を打っていたことしか。

 撃って、防いで、躱して、突いて、殴って、受け止めて、走って、ズレて、傾いて、倒れて、立って、撃つ。の繰り返しだったように思う。どれだけの時間、攻撃をしていたかはわからなかったけれど、何度弾き飛ばされようと、不思議としばらくすれば痛みはなくなっていったし、傷ついて血が出たはずの体はだんだんと治っていった。

 高砂の服がだんだん傷つき始め、弾丸のかすり傷が体にでき始めたころ、高砂はこう言った。

「いやぁ、案外強くて驚いたぜ。ふつう死んでるんだけどな?こんだけ殴ったら。それにしても、何にも理由とか、使命とかなさそうなくせになんでこんなに戦ってるんだ?」

 言われたときは頭に血が上っていて聞いていなかったが、お互い距離をとってまた戦いだして5分ほど経った頃にやっと落ち着いてきた。なんでだろう。普段は全然こんなんじゃないのに。何がこんな気分にさせたのか。やっぱり今日の俺はおかしい。

「お前、ちょっと止まれ。」

 唐突な言葉だったが、素直に止まった。そうしたほうがいいと思ったからだろうか。

「ああ、お前、なんかいるな。」

「いるって?」

「蛇だよ。蛇。」

「は?」

「誰がしたかはなんとなく分かるぜ。そいつは…」

 高砂が言葉を続けようとしたとき、鳥居の上から声が聞こえた。

「それはここの山に死者の国への道を作ろうとしている奴のせいだよ!」

 そこには、妹と同じくらいの子供がいた。

「あ!お前、さっき俺が見逃した奴じゃねぇか。逃げたのにみすみすやられに来たってのか?それに俺のセリフを途中から取りやがって!台本と違うぞ!」

「逃げたわけじゃないよ!ボクのほうが一対一では強いし!」

「誰?高砂の知り合い?」

 気づけば高砂に丁寧な態度なんてとっていなかった。まぁ、当たり前だろう。

「ん?ああ、さっき蛇とやりあってたカタツムリだ。」

 カタツムリの神とかいたんだ。…カタツムリは蛇に勝てるのか…?

「こほん!紹介しよう。ボクの名前は忌部マイ。この山に昔から住んでる神様さ。君たちとは協力できると思ったから姿を現したんだ。それはわかるだろう?」

「わかるけれど、神様、協力ってどういうことなんですか?」

「ああ、それはね、その高砂クンが言った蛇を止めることだよ。」

「いいけど、なんかメリットって俺にあんのか?カタツムリ。」

「もちろん。あいつを止めないとこの街自体が死者の国と混ざってしまってみんな死んでしまうんだよ。」

「はえー。そうなんすね。」

「そこの昌クンは飲み込みが早いね。で。高砂クンはどうする?」

「ひとまずそのクンっていうのやめろ。…まぁ、『逃げたやつは追いかける』っていう諺もあるしな、手伝ってやるよ。」

「「そんな諺初めて聞いた」」

「うるせぇ」

 まぁ、気づけばイライラも収まっていたしこの雨を止めれるとかの話になると、神様がいるっていうのは心強い。俺はマイという神につくことにした。

「じゃあ、出発しようか!」

 マイはシュタッと鳥居から降りて山道を先導し始めた。ここまで来たら話に乗って楽しく行こうと思った。

 

 高砂は許さんが。いつか仕返ししてやる。そう心に決めた。

 




 雨はいつかきっと止む。


 やっとここまで書けた…。今までと比べたらマシな文章になっていると思います。
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