雨中紀行〜sleepless rainy days 作:お茶会おじさん
暖かい目で(以下略)。
家の扉が閉じられたのを確認し、俺は玄関のすぐ横にあるプラスチックの箱を開け、傘をとった。この傘は親父が暇潰しに作ったもので、雨だけでなく弾丸とか、レーザーとかから身を守れるらしい。銃弾に濡れることはあり得ないのだからそんな機能はいらねぇだろと思ったけれど、それを言ったところでいまさら親父の趣味が変わるとも思えない。
視線を横にやると庭の花壇が見えた。今の時期に唯一咲いているアジサイを見てみると、確かに元気がないように感じた。雨の降りすぎで根腐れでもしてるんだろうか。
それにしても花の色が青色なのが少し怖い。死体が埋まってたりして、と考えて少し寒くなった。昔そういう漫画を読んで寝れなくなったんだよなぁ、とどうでもいいことを思い出す。
実際のところはこの雨が酸性雨だからだろうか。となると、姉の言っていた「雨が嫌な感じ」という言葉もあながち間違っていないのかもしれない。信憑性はまったくもって感じられないけれど。
ポツポツと雨が傘にあたる心地よい音と、蛙などの生き物たちが発する音がひとつの曲のように奏でられ、憂鬱だった調査を捗らせてくれる。
そして、空にかかる虹が目的地まで示している……。
そんな外出を夢見た俺は軽くへこんだ。
何故なら傘にあたる音はポツポツではなくザーザー。曲が流れていたとしてもノイズで何も聞こえない。虹は全くかかっておらず、どんよりとした雲。湿気で服の内側から不快感がこみあげてくる。
こんな雨の中どこに行けばいいのやら。
なんだか、あたってるだけで疲れるような雨だった。
頭の中を「もう帰ろう」という思考が埋め尽くすが、出て三分も経たないうちに家に帰って来たとなれば、姉からグーが飛んでくるのは確実なので、調査(笑)に行くことにした。
ああ、なんて憂鬱!
◆◆◆
調査をするにしても何をすればいいのだろうか。アジサイの様子を比較していくとか、カタツムリとカエルがストレスにあてられているのを探してみるか。
しばらく考えていると、一つ思い浮かんだ。
アマノウズメという神様を祭ってる神社が近くにあったような、と。
そこの巫女さんが知り合いの後輩だったはずだ。太陽が隠れてる状態が続いてるわけだし、なんか祈祷とかしてるんじゃないかと思い、まずはそこに行ってみることにしよう。年が近いから話しやすいかもしれない。
いつも朝に通っていた、高校に向かう道とは逆向きの道を歩いていると、いきなり横流しの風が吹き始めた。風速はわからないが、一歩歩くごとに強くなっていく。見れば、そこら辺を飛んでた、精霊?もしくは低級の神々?が吹き飛ばされていた。
飛びながら攻撃をしてくるなんて、どんだけ好戦的なんだよ。
とーべ飛べ飛べーと思っていると50m程前の方に、男の子が中に浮いているのが見えた。そこに近づいていくごとに風が強くなっている。
ということはだ、あれが完全な原因ではないにせよ、何かしらに原因があることは確かだ。たぶん。
というわけで、俺はその子に話しかけてみることにした。
「そこの僕?何してるんだい?」
かなり優しく接したつもりだったのに、その子が言った言葉は酷かった。風で声が聞こえにくいかなと思って大きな声で言ったのに。
「俺が何してようと関係なくない?うるさいからどっか行ってくんない?」
俺は切れそうになりながらも優しく接することにした。
「は?聞いたことにも答えられないのか?初対面に向かってどうかと思うぞ?(いやいや、こんな雨の中一人でいるから心配になってね、声をかけさせてもらったんだよ)」
あ、間違えた。ま、いっか。
「お前何だよ!!うるせえよ!!あと、俺の名前は‘僕’じゃなくて、帝釈天 業風(たいしゃくてん ごうふう)だ!!」
「……名前の割に姿があっていないような……」
さっきまでの勢いは何処へやら。ちょっと引いてしまった。
そう、彼の姿は小学一年生ぐらいの見た目で、赤色の短く切った髪、赤色の目で、ぶかっとした古着を着ていた。
「家出してきたのか?」
「家出?そんなもんするわけないだろ俺は神なんだからな!」
彼は胸を張って答えた。身長が足りていないので、まったく意味をなしていないが。
「神様ね……うん。やっぱり全然見えないわ。その、なんていうの?威厳とかさ、まぁそういうのが足りてないよね。俺もお前みたいなガキの相手をしてる暇はないんだよ。俺は俺で忙しいからね。」
「は? お前、俺のこと舐めてんのか!?」
「いやいや、まぁ取り敢えず家出、頑張っt」
「もう頭に来た!暴風の神の力を見せてやる!」
「はぁ、さいですか...」
風が吹いている。
◆◆◆
一方その頃家の中では……
「私もいきたいなー。さんぽ」
「だめ。こんな雨の中散歩に行っていいのは、バカと晶だけって相場は決まってるんだよ。」
「別にいいんじゃないか?十分ひとりでも外を歩ける年に……うっ、もうそんな年になっちゃったか……お父さん泣いちゃうよ!」
「泣くなよ...気持ち悪い。なんでおじさん構文みたいに喋るんだよ。気持ち悪い。」
「あ、お前二回も言いやがったな!気持ち悪いだなんて!そんなの親父にも言われたことないのに!娘のくせに生意気だぞ!」
「うるさい」
「雫はもう十分外に出かけても大丈夫な歳だ。それに雨の日だから不審者も少ない!」
「そういう問題じゃないよ!なんかズレてるよ!」
「ほら!お父さんだって散歩行っていいって言ってるよ!ねぇ、お姉ちゃん行っていいでしょ?危ないところには絶対に近づかないし。」
「う、うーん……。絶対に近づかないね?」
「うん!大丈夫!」
「よかったな雫。あ、そうだこれを持っていきなさい」
そう言って創はそこそこの大きさの箱を取り出して言った。
「てってれ〜『超霊子砲』〜」
「「なにそれ?」」
照華はうげぇっというような顔で言い、雫は期待に満ちた顔で訊いた。
「これはお父さんが作った……作品だ。そう……だな。うん。そう、約一週間作業し続けて作った作品だ!」
「お父さんすごーい!」
「だろ〜」
「デレデレするなよ……。名前ももうちょいましなのにしようよ」
「そうか。だったら...ミニ八〇炉はどうだ?」
「アウトーだな。ファンに殺されるよ?」
「じゃあ、超霊子砲でいいじゃん。」
「そう……だね。ん?いいのか……?」
そこから雫は綺麗な雨合羽を着て、長靴を履いて準備した。
「もう行ってきていい?これ持ってくよ?」
「あ、そうだね。気を付けなよ?雨はやな感じだし。」
「そうだな。まぁ取り敢えず、帰りは晶と一緒に帰ってきなさい。」
「はーい!行ってきまーす!」ガチャっと音がして扉が開き、雫が出て、扉が閉まった。
足音が聞こえなくなってから創はため息をはいた。
「どうしたの?」
「いや、お前も晶も、雫くらい素直だったらいいのにって思ってな。」
「ふっ、そうだね、親の顔が見たいよ。」
「俺を見ろ。すぐここにあるぞ。」
「はっ!よく言うよ。……あ、そうだ。そろそろ“お話"と行こうか。一か月経ったしね。」
「そうだな。本当は明日の予定だったけれど、今日中に終わらせておくか。」
そして二人は地下室に降りて行った。
◆◆◆
晶のターン
俺は、様子見で取り敢えず帝釈天に弾を撃ってみた。
余裕であたってバタッと倒れた。それぐらい躱せよ!!と思っていると、
「お、お前、いきなりはずるいだろ!もっと敬意をもってだな……そうだ!俺が撃ってから撃て!」
「ふぁっ?」
理不尽の塊かなんかだろうか。戦いにずるいも何もないだろうに。
そう思ったのも束の間、さっきから吹き続けていた風がさらに強くなった。目の前に台風がいるかのような錯覚を覚える。
「おい!なんだよこの風は!」
「だから言っただろう?風神の力を見せてやるって!力は落ちたけどお前みたいな人間なんて一瞬だ!」
「む。風神だかなんだか知らないが、うちかえしてやるよ」
そうして、本当に戦いが始まった……
「あ、そうだ。さっきお前が自信満々にしてたから、ハンデをつけてもらうぜ。お前が一瞬で俺を倒せなかったら、お前の負けな。」
「は!? いや、それはちょっと待て……」
「なんだって? 風が強くて聞こえないなぁ。さ、いくぜ?」
「話を聞け!!」
手がいてぇ
腱鞘炎になりそうです。
今回出てきたアマノウズメについて知りたい方は、調べてください。
神社の名前とか考えないといけませんよね。