雨中紀行〜sleepless rainy days   作:お茶会おじさん

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5.境内のダンサー

前回までのあらすじ

 

 姉から命じられた調査(笑)に出た俺は、近くの神社を目指して歩き出した。さっきなんかを倒したところ。

 さーて、行くか~と俺は背伸びをした。

 

   ◆◆◆

 

 神社に行くためには、ここから5kmぐらい歩かないといけない。前に行った時は自転車だったので15分で着いたが今日は徒歩なので40分ぐらいかかるだろう。徒歩だけにトホホ、だな。............すみません。

 

 

 

 

 歩いている途中に大きな梅の木が何本もある神社に来た。この梅の木はこの町ではかなり有名な木で、毎年この時期になると近所のおばさ...おばあさまたちが梅を取りに来る。もう梅の実はそこそこなっていた。来週ぐらいに採りに来るかもしれないな。

 

 作った梅干しを毎年分けてもらっていて、家族全員の好物である。たまにこの神社に住み着いているおっさんが作ったのが混じってるらしく、近所のおばあさまたちはそれが一番美味しいと言っていた。

 正直な感想としては、“知らないおっさんが作った”というラベルがついていると食べる気がすごく失せてしまう。

 そう言われても、梅干しに関しては舌が肥えているわけじゃないので、味は全て同じに思えるんだけどね。

 

 

 

 

 しばらく弾をかわしながら歩いて、ついにその神社まで来た。少し急な階段を登ると少し開けたところに着いた。そして遠くに踊っている人が見えた。

 

 

 

 ......いや、見間違いだろう。こんな雨の中、踊ってる人がいるなんて、想像しただけで背筋が寒くなる。

 だって怖すぎるだろ!? ガクガクブルブルだ!

 

 ふぅ、落ち着け。皆さんにも、この恐怖をお伝えしませう!まず、神社にあなたが立っているところを想像してください。あなた以外誰もいません。想像しましたか?次に10メートル先が見えないほどの霧をかけてください。(実際には雨で視界が悪い)そして、霧の先が見えるか見えないかのあたりで動く人影...

 ほら、怖くなってきたでしょう?(ならねぇよ)

 怖くても落ち着いて下し‼

 

 

 

 

 

 

 

 

 こほん。混乱していたのは僕でしたね。すみません。

 

 気をとり直して.........

 

 

 

 

 俺は見えた人影に近付いて行った。近づいて行きたくはなかったけど。少し雨に濡れて体が冷たくなっていて、誰がいようが本能的に雨宿りがしたかったからだろうか。

 いや、違うな。進まなきゃ(話が)進まないからだな。

 

 近づいていくと、その人が踊っている姿が鮮明に見えてきた。俺の視力は1.0ぐらいなはずで、その人まで20メートルはあるのに、とてもきれいに見えた。それに、そこだけ世界が違うかのようだった。

 

 俺はしばらく動けなかった。今までダンスとかにはいっさい興味がなく、テレビでどっかのグループが踊っているのを見ても何も思わなかったはずなのに。

 

 さらに近づいていくと、その人が誰だったのか分かった。

 その踊っている人というのは、中学時代の頃の後輩で、一つ年下だった。家が神社をやっていると言っていたのを聞いたことはあったがまさかここだったとは。

 前に見たときから見た目は変わっておらず、長い黒髪のポニーテール、透き通った黒っぽい茶色の目だった。

 

 あっちはこっちにまだ気づいていないようで、踊り続けていた。話しかけようかと思ったが、まだ踊りを見ていたい、という気持ちが大きく、話しかけなかった。

 

 

 

 あと、名前を忘れたからだ。(それが一番の理由だな)

 

 だけど、一瞬目を離した隙にこっちに弾がたくさん飛んできていた。

 敵意の感じられないバラバラな弾だったが、何しろ量が多い。躱しにくいわけでは無かったが踊りが見にくいので、思わず舌打ちをした。

 

 色んな場所で飛び跳ねるように飛んでくる弾と、雨粒を同時に躱すのは、かなり大変だったがなんとか躱しきった。途中で境内に戻ってしまったが、踊りをある程度見ることが出来て満足した。

 

 俺は文句の一つでも言いに行こうかと思ったが、名前を本当に思い出せないので諦めて帰ろうとした。

 だけど、この雨の理由が何もわかってない状態で帰ったら...言わなくてもわかるだろう?あれですね。はい。

 

 名前を思い出せないが、話しかける他ないだろう。彼女も俺の名前を忘れてるかもしれないな~と思いながら境内に入って行った。

 

 少し進むと彼女が近寄ってきて話しかけてきた。

?「あれ〜先輩じゃないすか。どうしたんすか?こんな寂れたところに来て」

 

 

 

 俺は思わず言った。

 

 

 

俺「お前、結構変わったな」

 俺の記憶では、いつも敬語で話してたはずだが。敬語で話さなくてもいいと言っても、「癖なんですよ~」と言ってたんだけどな。

 

?「いや~、色々吹っ切れちゃいまして」

俺「吹っ切れたって...この3ヶ月の間に何があったんだよ」

?「...まぁ、色々っすよ」

 聞かないほうが良かったか。何か事情があるのかもしれない。

 

?「と、ところで晶先輩は何しに来たんすか?」

 

 まずい。どうやら相手は俺の名前を知ってるようだ。

 どうしよう。ほんとにどうしよう。

 そんな気持ちが脳内を占めたが、まずは理由だけ伝えることにした。

 

俺「この県って降水量少ないだろ?だけどこんなに雨が降ってるから、俺の姉さんが原因を調べてこいって」

?「あー、あの人っすか〜。怖いっすよね」

 中学でも、軽く伝説になってたらしい。詳しくは知らないが。

 

 そこで俺は本題に入ることにした。

俺「...で、でですね、あのー、名前何でしたっけ...」

 すると彼女は呆れた目で見て、こう言った。

 

?「...フッ...まあ、先輩はたぶんは忘れてるだろうなって思ってたっすけど。まさかここまでとは思ってなかったっすよ」

 

 グサッ。そんな音を立てて、俺の胸に刺さったのを感じた。

俺「なんか...すみません...」

?「別に良いっすよ。気にしてないんで」

 それは眼中にない、ということだろうか。

?「いえ、別にそういうことじゃないっすよ」

 

俺「心を読んだ!?」

?「いえ、別にそういうことじゃないっすよ?そんな顔をしてたんで。これ、癖なんすよ...」

俺「へー。すげぇな」

 俺は称賛を込めて言ったが彼女は暗い顔をした。

?「別に...そんなんじゃないっすよ...」

俺「そうか...」

 そういえば、こいつ家のことで結構揉めてたな。まだ、解決してないのかも知れない。

 

 高校行ったあとからこいつの噂がいろいろ聞こえるようになったことも思い出した。クラスの男子をいきなり殴ったとか、教室の窓ガラスを全部割ったとか。情緒不安定でいきなり笑ったり怒ったりとか。でも、泣いた姿を見た人がいないらしい。

 

 

 会話が途切れた頃、

?「...あ、そういや私の名前っすよね?前にも言ったっすけど...天野 花楽(あまの かぐら)って言います。花楽って呼んでください」

俺「あー!そうだった!分かった。了解です」

 重くなった空気を打ち消すかのように花楽は喋った。俺もそれに従うように声を出した。どうしようもない。

 

 

 

 その後しばらく話をした。今中学がどうなってるかとか、部活の話とか、ゲームの話とか。おそらく20分ほど話してからだろう。家の話や、聞いた噂話のことは避けて。

 

 

 名前も分かった事だし、帰ろっかな。そう思ったとき。

花楽「そういえば先輩って、雨がこんなに降ってる理由知りたいんじゃないすか?まぁ、完全に分かってる訳じゃないすけど」

 

 そうだった。ずっと忘れてた。

俺「あ、お願いします」

花楽「ただで教えるのはなんかな~、なんで。そうっすね〜...私と勝負して先輩が勝ったら教えるっす」

 

俺「してもいいけど、何で勝負するんだ?」

花楽「そりゃもちろん、『ダンスバトル』っすよ!!」

 

俺「あ、それ無理です」さっきの見てからじゃ、勝てる気がしねぇ。いわゆる、「ダメだ、勝てねぇ」状態だ。

 

花楽「諦めるの早くないすか!?」

 驚いているが俺とのレベルの違いをまずは理解してほしい。ボックスもろくに踏めない奴に何をさせようってんだ。

 

俺「べ、別のにしませんか...」

花楽「仕方ないっすね~先輩がそんなに言うなら私もひと肌脱ぎましょう!!ふつうに戦ってあげますよ。先輩のためにわざわざ‼」

 

俺「...なんかそういうこと言われるとめっちゃ腹立つな」

花楽「ん?何か言った?」

 

俺「イエ、マリモ。(いえ、何も。)」

 

花楽「ソーデスカ。なら、いいっすよ」

 

   そうしてやっと戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  (.........やっと始めれた.........)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     と思ったのもつかの間。

 

 

 

 

花楽「やっぱ、どっちがダンス上手いかにしません?そっちのほうが得意なんすけど」

俺「嫌です。無理です。勝てません。」

花楽「それって先輩の実質的な負けじゃないすか?」

俺「うるせぇ!!行くぞ!!」

花楽「えーー...」

 

 

 

 はい。これで開始です。すみません。何度も何度も。

 

 

 

 

 

      ◆◆◆

 

 

   雫のターン

 

 

 さっきの子と別れて、指さされた方に進んでいくと、大きな梅の木がたくさんある神社の前に着いた。ここの梅で作った梅干しを思い出して、また食べたいな~、と思っていると、男の人の声が聞こえてきた。

 

?「お嬢さん、こんな雨の中どこ行くんだい?」

 

 声のしたほうを見ると、木の上にはきれいな服を着たお父さんの年に近いおじさんがいた。

 

私「散歩に行ってるの。お兄ちゃんがどこいったか知らない?」

 正直、お兄ちゃんがどこに行ったか忘れちゃったのでダメで元々、あたって砕けろ、で聞いてみた。お父さんは、知らない怪しいおじさんと話しちゃダメって言ってたけど別に良いよね。

 

おじさん「むーん。お嬢さんのお兄ちゃんが誰かは知らないけど、どこに行ったかはなんとなくだが分かるな」

 

私「え、どこ?」あたっても砕けなかったみたいだ。やった。

 

おじさん「きっとあの神社に行ったんだな。さっきここを通ったよ。それにしてもさっきの風の中よくここまでこれたね。大丈夫だったかい?」

 

 そう言いながら、おじさんは丘の上にある神社を指さした。前にお姉ちゃんと一緒に行ったことあるけど、ここからはちょっと遠いんだよね~。

 聞いたけど何も言わないのはダメだと思っておじさんにお礼を言う。

 

 

私「わかった!ありがとう!あとね、風は途中で止んだから全然大丈夫だったよ。それにしても、そんなことがわかるなんておじさんすごいね!!」

おじさん「えっ!...おじさん...か...そうか......あ...これあげるよ...」

 そう言って、おじさんは梅の花がついた髪留めをくれた。今までに見たことがないような物だった。

私「えへへ、ありがとう!おじさん!」

 

 おじさんは少しがっかりした顔をしたまま、スゥっと消えてしまった。神様だったのかな?そう思いながら、髪留めを頭につけて私は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      ◆◆◆

 

 

  雨はまだ降っている。止む気配はない。

   降らせる気もないが、やませる気もない。

 

 

 

 




投稿まで時間が結構かかりました。いきなり字数が4000台になっちゃいました。

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